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抗HIV薬 血中濃度測定マニュアル 厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業 「国内で流行するHIVとその薬剤耐性株の動向把握に関する研究」班 研究代表者 杉浦 亙 国立病院機構名古屋医療センター 第2版

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抗HIV薬血中濃度測定マニュアル厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「国内で流行するHIVとその薬剤耐性株の動向把握に関する研究」班

研究代表者 杉浦 亙 国立病院機構名古屋医療センター

第2版

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 HIV感染症の治療の成功は、患者の服薬アドヒアランスに大きく依存していることは

周知の通りです。有効な抗HIV療法も様々な副作用や薬物間相互作用が出現すれば、服薬

アドヒアランスが低下し、やがて服薬の中断あるいは治療失敗につながることもあります。

 また、薬剤耐性を獲得すれば、抗HIV薬の変更を余儀なくされ、結果として選択肢が

狭まってしまうことになります。従って、抗HIV薬の有効性を保ちつつ、副作用・相互作用の

出現を最小限度に留めることは臨床的意義があります。薬物動態学的観点から抗HIV薬

の有効性を維持するためには、抗HIV薬の血中濃度を一定値以上に保つことと、副作用が

発現した場合でも有効血中濃度内でのコントロールが求められます。抗HIV療法は、多剤

併用療法が行われることに加え、抗HIV薬以外の薬剤を併用する機会も数多くみられます。

遺伝子多型など個々の薬物動態を十分に把握し、相互作用を理解するとともに、有効性・

安全性の最適な管理を実現するためにも治療薬物モニタリング(TDM)は重要です。

 今回、厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「国内で流行するHIVとその薬剤

耐性株の動向把握に関する研究」班で「抗HIV薬血中濃度測定マニュアル」を作成しました。

臨床現場において、抗HIV薬の血中濃度測定を検討する際の資料としてご活用いただければ

幸いです。

2015年1月分担研究者 吉野 宗宏

国立病院機構大阪医療センター 薬剤科

抗HIV薬血中濃度測定マニュアル 第2版  2015年1月発行厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「国内で流行するHIVとその薬剤耐性株の動向把握に関する研究」班 作 成  吉野 宗宏 (分担研究者) 国立病院機構姫路医療センター 薬剤科     矢倉 裕輝 (研究協力者) 国立病院機構大阪医療センター 薬剤科     櫛田 宏幸 (研究協力者) 国立病院機構大阪医療センター 薬剤科     冨島 公介 (研究協力者) 国立病院機構大阪医療センター 薬剤科

発行者  杉浦 亙 (研究代表者) 国立病院機構名古屋医療センター

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はじめに

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目 次

はじめに

第1章 抗HIV薬の血中濃度測定について1.どのような時に血中濃度測定を考慮するのか?

2.適正な血中濃度測定とは

3.測定のタイミングは

4.測定時期は

5.目標濃度は

第2章 測定の実際について1.測定方法

2.依頼から測定結果報告までの流れ

3.測定できる薬剤は

第3章 CYP2B6遺伝子多型の測定について

第4章 血中濃度測定 Q&A

参考) 薬物間相互作用のデータベースの紹介

参考文献

1

3

3

3

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抗HIV薬は、薬剤ごとに定められている有効血中濃度以上の濃度を常に保つことが重要です(図1)。

血中濃度の測定の目的は以下のようなものが挙げられます。1) 服薬アドヒアランスの確認2) 治療効果の確認3) 薬物間相互作用の確認4) 副作用が発現した場合5) 耐性ウイルス発現の可能性が疑われる場合

1. どのような時に血中濃度測定を考慮するのか?

抗HIV薬の血中濃度測定について第1章

2. 適正な血中濃度測定とは

3

図1 適正な濃度の場合

副作用発現の危険域

効果不良域

時 間

薬物濃度

など

服薬 服薬 服薬 服薬 服薬

有効濃度

抗ウイルス効果が良好であり、副作用発現のリスクも低い

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濃度が低くなりすぎると、抗ウイルス効果の不良、耐性ウイルスを誘導してしまうことが懸念されます(図2)。

図2 濃度が低い場合

副作用発現の危険域

効果不良域

時 間

薬物濃度

有効濃度

濃度が高くなりすぎると、副作用の発現が懸念されます(図3)。

図3 濃度が高い場合

効果不良域

時 間

薬物濃度

想定される状況

有効濃度

抗ウイルス効果が不良であり、耐性ウイルスの発現のリスク

抗ウイルス効果は問題なし、副作用の発現のリスク

服薬 服薬 服薬 服薬 服薬

服薬 服薬 服薬 服薬 服薬

副作用発現の危険域

①服薬アドヒアランス不良②薬物間相互作用③吸収不良 

など

想定される状況

①薬物間相互作用②過量服薬 

など

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図4 トラフ濃度とは

 血中濃度測定では、トラフ値の測定を基本とします。最高血中濃度(ピーク)については、効果及び副作用との関連を示すデータは報告されていません。抗HIV薬の薬物動態は、個人差が大きく、PK-PD理論も確立していないことから、現時点においては、ガイドライン等で薬剤ごとに目標濃度が定められているトラフ値を測定し、評価することをお勧めします。

最も重要な血中濃度測定ポイントは投与直前の値、血中濃度の山が続いていて、谷間(トラフ)という意味でトラフ値ともいいます(図4)。

3. 測定のタイミングは

 測定時期については、薬剤の半減期、代謝酵素や誘導・阻害作用によっても異なりますが、一般的には、酵素誘導等が行われ、体内の血中濃度の推移が定常状態に落ち着いた時期(投与開始14日目以降)での測定が望ましいとされています。投与開始直後に副作用が発生し、血中濃度測定を行っても、血中濃度が定常状態に達していない可能性もあることから、投与開始14日目以降に再度、血中濃度を確認していただくとよいと思います。

4. 測定時期は

副作用発現の危険域

効果不良域

時 間

薬物濃度 服薬 服薬 服薬 服薬 服薬

有効濃度 ここがトラフ値

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 抗HIV薬の血中濃度測定については、厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「抗HIV薬の血中濃度に関する臨床研究(http://www.psaj.com/)」研究班を経由して費用の負担なしで測定を依頼することができます。 ホームページにアクセスし、ID ・パスワードを取得後、必要事項と測定希望薬剤を入力すれば、採血管が各施設宛に送付されます。同時に血中濃度測定に関するプロトコール、報告用ケースカードが自動送付されます。

1. 測定方法

2. 依頼から測定結果報告までの流れ

①血中濃度測定を希望する施設は、氏名、所属施設等を研究班のホームページに入力しID、パスワードを取得する。 測定希望薬剤名、本数等を入力し送信する。②事務局より、㈱BMLへ採血管の郵送を依頼。③㈱BMLより、測定依頼伝票、採血管等が申し込み施設へ郵送される。 同時に血中濃度測定に関するプロトコール、報告用ケースカードが電子メールにて申し込み施設へ送付される。④採取後、申し込み施設は㈱BMLにて検体回収を行う。同時に報告用ケースカードを事務局に送信する。⑤結果は㈱BMLより、申し込み施設・事務局宛に郵送される。

1

3

3

2

55

4

4

測定依頼画面から送信(またはFAX送信)

ケースカードダウンロード

ケースカード回収

採血管、依頼伝票

採血管、送付依頼

検体回収

検査結果報告 検査結果報告

申込み施設

㈱BML(検査委託先)

国立病院機構大阪医療センター(事務局)

図5 依頼から測定結果報告までの流れ

測定の実際について第2章

表1 DHHSガイドラインに記載されている目標濃度(トラフ)

厚生労働省抗HIV治療ガイドライン2)より抜粋

濃度(ng/mL)薬剤名※

400100(130nM)

1,0008002,100

100ー250150

1,000(3,170nM)3,000>50

APV(FPV)IDVLPVNFVRTVSQVATVEFV*

NVPMVC

※APV:アンプレナビル、FPV:ホスアンプレナビル、IDV:インジナビル、LPV:ロピナビル、NFV:ネルフィナビル、RTV:リトナビル、SQV:サキナビル、ATV:アタザナビル、EFV:エファビレンツ、NVP:ネビラピン、MVC:マラビロク

*EFVについてはめまい、ふらつきといった中枢神経系の副作用が高頻度に発現するため、 服薬時間は原則眠前です。また、半減期が長いこともあり、目標濃度は14時間値です。

DHHSガイドライン1)では薬剤ごとに目標トラフ濃度が定められています(表1)。

5. 目標濃度は

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 抗HIV薬の血中濃度測定については、厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「抗HIV薬の血中濃度に関する臨床研究(http://www.psaj.com/)」研究班を経由して費用の負担なしで測定を依頼することができます。 ホームページにアクセスし、ID ・パスワードを取得後、必要事項と測定希望薬剤を入力すれば、採血管が各施設宛に送付されます。同時に血中濃度測定に関するプロトコール、報告用ケースカードが自動送付されます。

1. 測定方法

2. 依頼から測定結果報告までの流れ

①血中濃度測定を希望する施設は、氏名、所属施設等を研究班のホームページに入力しID、パスワードを取得する。 測定希望薬剤名、本数等を入力し送信する。②事務局より、㈱BMLへ採血管の郵送を依頼。③㈱BMLより、測定依頼伝票、採血管等が申し込み施設へ郵送される。 同時に血中濃度測定に関するプロトコール、報告用ケースカードが電子メールにて申し込み施設へ送付される。④採取後、申し込み施設は㈱BMLにて検体回収を行う。同時に報告用ケースカードを事務局に送信する。⑤結果は㈱BMLより、申し込み施設・事務局宛に郵送される。

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3

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4

測定依頼画面から送信(またはFAX送信)

ケースカードダウンロード

ケースカード回収

採血管、依頼伝票

採血管、送付依頼

検体回収

検査結果報告 検査結果報告

申込み施設

㈱BML(検査委託先)

国立病院機構大阪医療センター(事務局)

図5 依頼から測定結果報告までの流れ

測定の実際について第2章

表1 DHHSガイドラインに記載されている目標濃度(トラフ)

厚生労働省抗HIV治療ガイドライン2)より抜粋

濃度(ng/mL)薬剤名※

400100(130nM)

1,0008002,100

100ー250150

1,000(3,170nM)3,000>50

APV(FPV)IDVLPVNFVRTVSQVATVEFV*

NVPMVC

※APV:アンプレナビル、FPV:ホスアンプレナビル、IDV:インジナビル、LPV:ロピナビル、NFV:ネルフィナビル、RTV:リトナビル、SQV:サキナビル、ATV:アタザナビル、EFV:エファビレンツ、NVP:ネビラピン、MVC:マラビロク

*EFVについてはめまい、ふらつきといった中枢神経系の副作用が高頻度に発現するため、 服薬時間は原則眠前です。また、半減期が長いこともあり、目標濃度は14時間値です。

DHHSガイドライン1)では薬剤ごとに目標トラフ濃度が定められています(表1)。

5. 目標濃度は

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表2 測定可能な薬剤一覧(2015年1月現在)

図6 CYP2B6*6/*6(516TT)保有とEFVの血中濃度

測定可能薬剤は以下に示す通りです*(表2)。

3. 測定できる薬剤は

薬剤名※薬剤のカテゴリーTDF(テノホビルとして)EFV、ETR、NVP、RPV

ATV、DRV、FPV(アンプレナビルとして)、LPV、RTVRAL、EVG注)、DTG

MVC

NRTINNRTIPIINSTICCR5I

例1) TDF、DRV、RTVを測定したい例2) TDF、LPV、RTVを測定したい

→ それぞれの薬剤の検体が必要(計3検体)→ TDFで1検体、LPVとRTVは同時測定のため1検体(計2検体)

※TDF:テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩、EFV:エファビレンツ、ETR:エトラビリン、NVP:ネビラピン、 RPV:リルピビリン、ATV:アタザナビル、DRV:ダルナビル、FPV:ホスアンプレナビル、LPV:ロピナビル、 RTV:リトナビル、RAL:ラルテグラビル、EVG:エルビテグラビル、DTG:ドルテグラビル、MVC:マラビロク、 COBI:コビシスタット

注)EVGのブースターとして併用するCOBIの測定も可能です。

*提出検体は原則として1薬剤につき、1検体必要です。但し、EFV、ATV、FPV、LPV、RTVは 同時測定可能であるため、これらの薬剤の中で複数の測定を希望される場合は、 1検体の提出で測定可能です。以下に、例を示します。

 エファビレンツの場合、*6/*6という遺伝子多型を持つ人は薬の代謝が遅れ血中濃度が高くなり1)、ふらつきやうつ症状が強く現れることが報告されています。遺伝子型 *6/*6を正確に決定するためには少なくとも5カ所の多型を調べる必要があります。しかし、日本人での検討結果ではG516Tの解析結果が「T/T(変異型ホモ)」の人は、ほぼ *6/*6 であるということがわかっています(図6)3)。投薬前に遺伝子多型を解析することで、副作用予測ができ投薬量を調節できる可能性があります。

CYP2B6遺伝子多型の測定について第3章

15,000

12,000

9,000

6,000

3,000

0

(ng/mL)

G/Gnon-*6,*26(n=67)

CYP2B6G516T genotype& allele type

G/T*6(■),*26(■)-heterozygote

(n=28)

T/T*6/*6(●),*6/*26(●)

(n=16)

EFV:standard dose(600mg)mean±SD

Gatanaga H, et al. : Clin Infect Dis. 2007 ; 45(9) : 1230-1237.

EFV

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表2 測定可能な薬剤一覧(2015年1月現在)

図6 CYP2B6*6/*6(516TT)保有とEFVの血中濃度

測定可能薬剤は以下に示す通りです*(表2)。

3. 測定できる薬剤は

薬剤名※薬剤のカテゴリーTDF(テノホビルとして)EFV、ETR、NVP、RPV

ATV、DRV、FPV(アンプレナビルとして)、LPV、RTVRAL、EVG注)、DTG

MVC

NRTINNRTIPIINSTICCR5I

例1) TDF、DRV、RTVを測定したい例2) TDF、LPV、RTVを測定したい

→ それぞれの薬剤の検体が必要(計3検体)→ TDFで1検体、LPVとRTVは同時測定のため1検体(計2検体)

※TDF:テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩、EFV:エファビレンツ、ETR:エトラビリン、NVP:ネビラピン、 RPV:リルピビリン、ATV:アタザナビル、DRV:ダルナビル、FPV:ホスアンプレナビル、LPV:ロピナビル、 RTV:リトナビル、RAL:ラルテグラビル、EVG:エルビテグラビル、DTG:ドルテグラビル、MVC:マラビロク、 COBI:コビシスタット

注)EVGのブースターとして併用するCOBIの測定も可能です。

*提出検体は原則として1薬剤につき、1検体必要です。但し、EFV、ATV、FPV、LPV、RTVは 同時測定可能であるため、これらの薬剤の中で複数の測定を希望される場合は、 1検体の提出で測定可能です。以下に、例を示します。

 エファビレンツの場合、*6/*6という遺伝子多型を持つ人は薬の代謝が遅れ血中濃度が高くなり1)、ふらつきやうつ症状が強く現れることが報告されています。遺伝子型 *6/*6を正確に決定するためには少なくとも5カ所の多型を調べる必要があります。しかし、日本人での検討結果ではG516Tの解析結果が「T/T(変異型ホモ)」の人は、ほぼ *6/*6 であるということがわかっています(図6)3)。投薬前に遺伝子多型を解析することで、副作用予測ができ投薬量を調節できる可能性があります。

CYP2B6遺伝子多型の測定について第3章

15,000

12,000

9,000

6,000

3,000

0

(ng/mL)

G/Gnon-*6,*26(n=67)

CYP2B6G516T genotype& allele type

G/T*6(■),*26(■)-heterozygote

(n=28)

T/T*6/*6(●),*6/*26(●)

(n=16)

EFV:standard dose(600mg)mean±SD

Gatanaga H, et al. : Clin Infect Dis. 2007 ; 45(9) : 1230-1237.

EFV

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Q A&

Q 1

A 1

Q 2

A 2

Q 3

A 3

結果報告までどれ位の期間がかかりますか?

原則として、薬剤ごとに1ヵ月に1回、測定を行っています。測定スケジュールについては、メーリングリストに登録している方を対象に「psaj.com News」を月1回配信しています。例えば、測定開始日が1月10日→報告日が1日20日の場合、1月10日までに受け付けた検体の結果を1月20日に発送しますので、1月9日に提出された検体は約10日で結果が届きます。1月10日以降に受け付けた検体は次月の測定となりますので、結果が届くまで1ヵ月以上かかることになります。

Q 4

A 4

テノホビルの濃度はどのように評価すればよいのでしょうか?

テノホビルを含む核酸系逆転写酵素阻害剤は細胞内でリン酸化された上で、抗HIV作用を発揮し、細胞内濃度が治療効果に影響するとされていますので、血中濃度は治療効果の指標には適さないとされています。しかし、腎機能障害を発現した症例において、テノホビルのトラフ値が高かったとの報告4)もあるため、多くの場合、服薬アドヒアランスの確認と腎機能障害発現の指標に利用されています。

倫理委員会で審議する必要がありますか?

血中濃度測定が治療上必要な場合は、倫理委員会で検討する必要がない可能性もありますが、測定は保険適応となっておりませんので、倫理性の検討については、施設ごとでご判断いただき、必要に応じて倫理委員会にご相談いただいております。

Q 5

A 5

採血した検体はどのように保存して提出すればよいのでしょうか?

採血した検体を速やかに遠心分離(3,000rpm、10分間)し、血漿を分取後、原則として-80℃で凍結保管して提出してください。

Q 6

A 6

血中濃度が高い・低い場合は、投与量を調整するのでしょうか?

血中濃度が高い場合は副作用発現に、低い場合は治療効果に注意を払うための指標となりますが、治療効果判定は血中濃度のデータだけではなく、他の情報と合わせて行なう必要があります。抗HIV薬は薬剤によって、血中濃度の評価は定まっていないのが現状です。血中濃度が高い場合や低い場合には、専門家にご相談ください。

DHHSガイドラインに目標トラフ濃度が定められていない薬剤の評価は?

ガイドラインに目標濃度が定められていない薬剤であっても、インタビューフォームに目標濃度(例:DRV)が記載されているものや、EC50やIC95が記載されています。それらの値を参考にすることをお勧めします。また、DHHSガイドラインでは過去の臨床試験で測定されたトラフ濃度の中央値が示されている薬剤(DRV、ETR、RAL)もあります(表3)。

※DRV:ダルナビル、ETR:エトラビリン、RAL:ラルテグラビル

表3 過去の臨床試験で測定されたトラフ濃度の中央値が示されている薬剤

厚生労働省抗HIV治療ガイドライン2)より抜粋

濃度(ng/mL)薬剤名※

3,300(1,255ー7,368)275(81ー2,980)72(29ー118)

DRV(1,200mg/分2)ETRRAL

血中濃度測定第4章

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Q A&

Q 1

A 1

Q 2

A 2

Q 3

A 3

結果報告までどれ位の期間がかかりますか?

原則として、薬剤ごとに1ヵ月に1回、測定を行っています。測定スケジュールについては、メーリングリストに登録している方を対象に「psaj.com News」を月1回配信しています。例えば、測定開始日が1月10日→報告日が1日20日の場合、1月10日までに受け付けた検体の結果を1月20日に発送しますので、1月9日に提出された検体は約10日で結果が届きます。1月10日以降に受け付けた検体は次月の測定となりますので、結果が届くまで1ヵ月以上かかることになります。

Q 4

A 4

テノホビルの濃度はどのように評価すればよいのでしょうか?

テノホビルを含む核酸系逆転写酵素阻害剤は細胞内でリン酸化された上で、抗HIV作用を発揮し、細胞内濃度が治療効果に影響するとされていますので、血中濃度は治療効果の指標には適さないとされています。しかし、腎機能障害を発現した症例において、テノホビルのトラフ値が高かったとの報告4)もあるため、多くの場合、服薬アドヒアランスの確認と腎機能障害発現の指標に利用されています。

倫理委員会で審議する必要がありますか?

血中濃度測定が治療上必要な場合は、倫理委員会で検討する必要がない可能性もありますが、測定は保険適応となっておりませんので、倫理性の検討については、施設ごとでご判断いただき、必要に応じて倫理委員会にご相談いただいております。

Q 5

A 5

採血した検体はどのように保存して提出すればよいのでしょうか?

採血した検体を速やかに遠心分離(3,000rpm、10分間)し、血漿を分取後、原則として-80℃で凍結保管して提出してください。

Q 6

A 6

血中濃度が高い・低い場合は、投与量を調整するのでしょうか?

血中濃度が高い場合は副作用発現に、低い場合は治療効果に注意を払うための指標となりますが、治療効果判定は血中濃度のデータだけではなく、他の情報と合わせて行なう必要があります。抗HIV薬は薬剤によって、血中濃度の評価は定まっていないのが現状です。血中濃度が高い場合や低い場合には、専門家にご相談ください。

DHHSガイドラインに目標トラフ濃度が定められていない薬剤の評価は?

ガイドラインに目標濃度が定められていない薬剤であっても、インタビューフォームに目標濃度(例:DRV)が記載されているものや、EC50やIC95が記載されています。それらの値を参考にすることをお勧めします。また、DHHSガイドラインでは過去の臨床試験で測定されたトラフ濃度の中央値が示されている薬剤(DRV、ETR、RAL)もあります(表3)。

※DRV:ダルナビル、ETR:エトラビリン、RAL:ラルテグラビル

表3 過去の臨床試験で測定されたトラフ濃度の中央値が示されている薬剤

厚生労働省抗HIV治療ガイドライン2)より抜粋

濃度(ng/mL)薬剤名※

3,300(1,255ー7,368)275(81ー2,980)72(29ー118)

DRV(1,200mg/分2)ETRRAL

血中濃度測定第4章

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参考) 薬物間相互作用のデータベースの紹介

参考文献

1) 「抗HIV薬の血中濃度に関する臨床研究」   http://www.psaj.com/index.htm

2) University of California, San Francisco 「HIVinsite」   http://hivinsite.ucsf.edu/

3) University of Liverpool 「www.hiv-druginteractions.org」   http://www.hiv-druginteractions.org/

1)The Department of Health and Human Services : Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV-1-Infected Adults and Adolescents, revised on November 13, 2014.

2)平成25年度厚生労働科学研究補助金エイズ対策研究事業,HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究班 (主任研究者 白阪琢磨) : 抗HIV治療ガイドライン, 2014年3月.

3)Gatanaga H, Hayashida T, Tsuchiya K, Yoshino M, Kuwahara T, Tsukada H, Fujimoto K, Sato I, Ueda M, Horiba M, Hamaguchi M, Yamamoto M, Takata N, Kimura A, Koike T, Gejyo F, Matsushita S, Shirasaka T, Kimura S, Oka S. Successful efavirenz dose reduction in HIV type 1-infected individuals with cytochrome P450 2B6 *6 and *26. Clin Infect Dis. 2007 ; 45(9) : 1230-1237.

4)Rodríguez-Nóvoa S, Labarga P, D'avolio A, Barreiro P, Albalate M, Vispo E, Solera C, Siccardi M, Bonora S, Di Perri G, Soriano V. Impairment in kidney tubular function in patients receiving tenofovir is associated with higher tenofovir plasma concentrations. AIDS. 2010 ; 24(7) : 1064-1066.

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参考) 薬物間相互作用のデータベースの紹介

参考文献

1) 「抗HIV薬の血中濃度に関する臨床研究」   http://www.psaj.com/index.htm

2) University of California, San Francisco 「HIVinsite」   http://hivinsite.ucsf.edu/

3) University of Liverpool 「www.hiv-druginteractions.org」   http://www.hiv-druginteractions.org/

1)The Department of Health and Human Services : Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV-1-Infected Adults and Adolescents, revised on November 13, 2014.

2)平成25年度厚生労働科学研究補助金エイズ対策研究事業,HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究班 (主任研究者 白阪琢磨) : 抗HIV治療ガイドライン, 2014年3月.

3)Gatanaga H, Hayashida T, Tsuchiya K, Yoshino M, Kuwahara T, Tsukada H, Fujimoto K, Sato I, Ueda M, Horiba M, Hamaguchi M, Yamamoto M, Takata N, Kimura A, Koike T, Gejyo F, Matsushita S, Shirasaka T, Kimura S, Oka S. Successful efavirenz dose reduction in HIV type 1-infected individuals with cytochrome P450 2B6 *6 and *26. Clin Infect Dis. 2007 ; 45(9) : 1230-1237.

4)Rodríguez-Nóvoa S, Labarga P, D'avolio A, Barreiro P, Albalate M, Vispo E, Solera C, Siccardi M, Bonora S, Di Perri G, Soriano V. Impairment in kidney tubular function in patients receiving tenofovir is associated with higher tenofovir plasma concentrations. AIDS. 2010 ; 24(7) : 1064-1066.

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Page 15: Å)* 7 B ¤ ñ S ÚÇá ç - 抗HIV薬の薬物動態に関する臨床研究„Ÿ染症の治療の成功は、患者の服薬アドヒアランスに大きく依存していることは