14
8 3 次実対称行列の対角化とその応用 6 章では,2 次の実対称行列の直交行列による対角化を紹介し, これを応用すれば,x y 2 次方程式が表す曲線の種類を判定 できることを示した. この章では,まず 3 次の直交行列を復習し,ついで,3 次の実対 称行列の固有値がすべて実数であること,固有ベクトルとして実ベ クトルを選べること,直交行列によって対角化できることを学修す る.最後に,xyz 2 次方程式がどのような曲面を表すかを判 定する方法を紹介する. 8.1 直交行列は合同変換を表す 6 章で紹介したように, t PP = P t P = I を満たす実正方行列 P を直交行列 という.P を直交行列,xy を任意のベクトルとすると,(6.1) で詳細に解説 したように (P x,P y)=(x, y) が成り立つから,P が表す線形変換は合同変換である. P = ( p q r ) が直交行列ならば, t PP = I より t PP = t p t q t r ( p q r ) = t pp t pq t pr t qp t qq t qr t rp t rq t rr = 1 0 0 0 1 0 0 0 1 であるから |p| = |q| = |r| =1, p q, q r, r p である.直交行列 P = ( p q r ) によって,ベクトル e 1 = t ( 1 0 0 ) e 2 = t ( 0 1 0 ) e 3 = t ( 0 0 1 ) は,それぞれ,pqr に移される.Figure 8.1 P による合同変換の様子を示すものである. O O 1 e 3 e 2 e ( ) P = p q r p q r (合同変換) Figure 8.1: 直交行列による線形変換 105

8 3 次実対称行列の対角化とその応用 - Ryukoku …tsutomu/LA1/11/lecture...8.1 直交行列は合同変換を表す 第6 章で紹介したように, tPP = P P = I を満たす実正方行列P

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Page 1: 8 3 次実対称行列の対角化とその応用 - Ryukoku …tsutomu/LA1/11/lecture...8.1 直交行列は合同変換を表す 第6 章で紹介したように, tPP = P P = I を満たす実正方行列P

8 3 次実対称行列の対角化とその応用

第 6 章では,2 次の実対称行列の直交行列による対角化を紹介し,これを応用すれば,x と y の 2 次方程式が表す曲線の種類を判定できることを示した. この章では,まず 3 次の直交行列を復習し,ついで,3 次の実対称行列の固有値がすべて実数であること,固有ベクトルとして実ベクトルを選べること,直交行列によって対角化できることを学修する.最後に,x,y,z の 2 次方程式がどのような曲面を表すかを判定する方法を紹介する.

8.1 直交行列は合同変換を表す

第 6 章で紹介したように,tPP = P tP = I を満たす実正方行列 P を直交行列という.P を直交行列,x,y を任意のベクトルとすると,(6.1) で詳細に解説したように

(Px, Py) = (x,y)

が成り立つから,P が表す線形変換は合同変換である.P =

(p q r

)が直交行列ならば,tPP = I より

tPP =

tptqtr

(p q r)=

tpp tpq tprtqp tqq tqrtrp trq trr

=

1 0 0

0 1 0

0 0 1

であるから

|p| = |q| = |r| = 1, p ⊥ q, q ⊥ r, r ⊥ p

である.直交行列 P =(p q r

)によって,ベクトル e1 =

t(1 0 0

),e2 =

t(0 1 0

),e3 = t

(0 0 1

)は,それぞれ,p,q,r に移される.Figure 8.1

は P による合同変換の様子を示すものである.

OO1e

3e

2e

( )P = p q r

p

q

r

(合同変換)

Figure 8.1: 直交行列による線形変換

105

Page 2: 8 3 次実対称行列の対角化とその応用 - Ryukoku …tsutomu/LA1/11/lecture...8.1 直交行列は合同変換を表す 第6 章で紹介したように, tPP = P P = I を満たす実正方行列P

8.2 実対称行列の固有値と固有ベクトル

≪固有値は実数であり,実の固有ベクトルが存在する≫ 第 6 章では,固有方程式の判別式が正または 0 であることを利用して,2 次の実対称行列の固有値が実数であることを示した.一般の n 次の実対称行列の場合には,固有値が実数であることおよび固有ベクトルとして実ベクトルを選べることがつぎのようにして証明される.

λ を実対称行列 A の固有値とし,対応する A の固有ベクトルを v とする.λ の共役複素数を λ̄,v の各成分をその共役複素数で置き換えたベクトルを v̄

とすれば,A が実行列であるから,Av = λv,Av̄ = λ̄v̄ である.これを利用すれば,

λtv̄v = tv̄(λv) = tv̄(Av) = (tv̄tA)v = t(Av̄)v = t(λ̄v̄)v = λ̄tv̄v

=⇒ λ = λ̄ (... tv̄v > 0)

であるから λ が実数であることが分かる.また,Av = λv の実部および虚部をとれば,A は実行列,λ は実数であるから,

A(Rev) = λ(Rev), A(Imv) = λ(Imv)

となる.ここに,Rev は v の各成分の実部を成分とするベクトル,Imv は v

の各成分の虚部を成分とするベクトルである.v は零ベクトルではないので,Rev と Imv の少なくとも一方は零ベクトルではない.すなわち,実ベクトルである Rev と Imv の少なくとも一方が λ に対応する A の固有ベクトルであることが分かった.

≪固有ベクトルの直交性≫ 実対称行列 A が相異なる固有値 λ1,λ2 を持つとする.v1,v2 を,それぞれ,λ1,λ2 に対応する A の実の固有ベクトルとする.すると,2 次の実対称行列の場合 (6.7) とまったく同じ論法によって v1 と v2

が直交することが証明される.

8.3 実対称行列の直交行列による対角化

≪すべての固有値が相異なる場合≫ n次の実対称行列 Aの固有値 λ1,λ2,· · ·,λn がすべて相異なるならば,それぞれに対応する固有ベクトル v1,v2,· · ·,vn は互いに直交する.したがって,固有ベクトルを |v1| = |v2| = · · · = |vn| = 1

となるように選び P =(v1 v2 · · · vn

)と置けば,P は直交行列であり,A

は P によって

tPAP =

λ1 0 · · · · · · 0

0 λ2. . .

......

. . . . . . . . ....

.... . . λn−1 0

0 · · · · · · 0 λn

と対角化される.

106

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≪固有値に重解があっても直交行列による対角化が可能≫ 最初につぎの定理を紹介する.

Tidbit: 定理(直交行列による三角化)� �実の n 次正方行列 A の固有値 λ1,λ2,· · ·,λn がすべて実数ならば,A はある直交行列 P によって

tPAP =

λ1 # · · · · · · #

0 λ2. . .

......

. . . . . . . . ....

.... . . λn−1 #

0 · · · · · · 0 λn

(8.1)

と三角化される.ここで # には何らかの数が入る.場所によって異なる数であり,0 の場合も 0 でない場合もある. 証明については,たとえば,高橋大輔,理工基礎 線形代数,サイエンス社の定理 6.7(p. 148)を参照せよ.� �

n 次の実対称行列 A の固有値に重解があっても,A は直交行列によって対角化されることが上の定理を使って証明できる.実際,A を n 次の実対称行列としてみよう.すると,A の固有値 λ1,λ2,

· · ·,λn はすべて実数であるから,上の定理によって (8.1) が成り立つような直交行列 P が存在する.さらに,t(tPAP ) = tP tAP = tPAP であるから,(8.1)

の # の部分はすべて 0 になる,すなわち,A は P によって対角化される.

例題8-1 つぎの実対称行列を直交行列によって対角化せよ. 5 1 −2

1 6 −1

−2 −1 5

(解答例)この行列を A と置く.det(A− λI) は∣∣∣∣∣∣∣

5− λ 1 −2

1 6− λ −1

−2 −1 5− λ

∣∣∣∣∣∣∣ = (5− λ)2(6− λ) + 2 + 2− 4(6− λ)− (5− λ)− (5− λ)

= −(λ− 5)2(λ− 5− 1) + 4 + 4(λ− 5− 1) + 2(λ− 5)

= −(λ− 5)3 + (λ− 5)2 + 6(λ− 5) = −(λ− 5){(λ− 5)2 − (λ− 5)− 6}

= −(λ− 5)(λ− 5− 3)(λ− 5 + 2) = −(λ− 5)(λ− 8)(λ− 3)

と整理される.したがって,固有値は λ1 = 8,λ2 = 5,λ3 = 3 である.

107

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λ1 = 8 に対応する固有ベクトル v1 は,行基本変形

A− λ1I =

−3 1 −2

1 −2 −1

−2 −1 −3

(1)⇐⇒(2)−−−−−→

1 −2 −1

−3 1 −2

−2 −1 −3

(2)+3×(1)−−−−−−→(3)+2×(1)

1 −2 −1

0 −5 −5

0 −5 −5

(3)−(2)−−−−−→(2)/(−5)

1 −2 −1

0 1 1

0 0 0

(1)+2×(2)−−−−−−→

1 0 1

0 1 1

0 0 0

から v1 =1√3

−1−11

と選ぶ.係数 1√3は |v1| = 1 とするためのものである.

λ2 = 5 に対応する固有ベクトル v2 は,行基本変形

A− λ2I =

0 1 −2

1 1 −1

−2 −1 0

(1)⇐⇒(2)−−−−−→

1 1 −1

0 1 −2

−2 −1 0

(3)+2×(1)−−−−−−→

1 1 −1

0 1 −2

0 1 −2

(3)−(2)−−−−→

1 1 −1

0 1 −2

0 0 0

(1)−(2)−−−−→

1 0 1

0 1 −2

0 0 0

から v2 =1√6

−121

と選ぶ.係数 1√6は |v2| = 1 とするためのものである.

λ3 = 3 に対応する固有ベクトル v3 は,行基本変形

A− λ3I =

2 1 −2

1 3 −1

−2 −1 2

(1)⇐⇒(2)−−−−−→

1 3 −1

2 1 −2

−2 −1 2

(2)−2×(1)−−−−−−→(3)+2×(1)

1 3 −1

0 −5 0

0 5 0

(3)+(2)−−−−−→(2)/(−5)

1 3 −1

0 1 0

0 0 0

(1)−3×(2)−−−−−−→

1 0 −1

0 1 0

0 0 0

から v3 =1√2

101

と選ぶ.係数 1√2は |v3| = 1 とするためのものである.

以上より,Aは直交行列 P =(v1 v2 v3

)=

1√6

−√2 −1

√3

−√2 2 0

√2 1

√3

によって  tPAP =

8 0 0

0 5 0

0 0 3

 と対角化される.108

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例題8-2 つぎの実対称行列を直交行列によって対角化せよ.0 1 1

1 0 −1

1 −1 0

(解答例)この行列を A と置く.det(A− λI) は∣∣∣∣∣∣∣

−λ 1 1

1 −λ −1

1 −1 −λ

∣∣∣∣∣∣∣ = −λ3 − 1− 1 + λ+ λ+ λ = −(λ3 − 3λ+ 2)

= −(λ− 1)(λ2 + λ− 2) = −(λ− 1)2(λ+ 2)

と整理される.したがって,固有値は λ1 = 1(重解),λ3 = −2 である.λ1 = 1(重解)に対応する固有ベクトル v は,行基本変形

A− λ1I =

−1 1 1

1 −1 −1

1 −1 −1

(2)+(1)−−−−→(3)+(1)

−1 1 1

0 0 0

0 0 0

(1)×(−1)−−−−−→

1 −1 −1

0 0 0

0 0 0

から v =

p+ qpq

(∀(p, q) ̸= (0, 0))である.λ1 = 1 に対応する 2 つの固

有ベクトル v1,v2 を v1 ⊥ v2 となるように選ぼう.種々の選び方があるが,

ここでは,v1 については p = −q =1√2,すなわち,v1 =

1√2

01−1

と選ぶ.係数

1√2は |v1| = 1 とするためのものである.v1 ⊥ v2 となるために,

v2 =

p+ qpq

は tv1v2 =1√2(p− q) = 0 を満たさなければならない.ここで

は,v2 =1√6

211

と選ぶ.係数 1√6は |v2| = 1 とするためのものである.

λ3 = −2 に対応する固有ベクトル v3 は,行基本変形

A− λ3I =

2 1 1

1 2 −1

1 −1 2

(1)⇐⇒(2)−−−−−→

1 2 −1

2 1 1

1 −1 2

(2)−2×(1)−−−−−−→(3)−(1)

1 2 −1

0 −3 3

0 −3 3

(3)−(2)−−−−−→(2)/(−3)

1 2 −1

0 1 −1

0 0 0

(1)−2×(2)−−−−−−→

1 0 1

0 1 −1

0 0 0

109

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から v3 =1√3

−111

と選ぶ.係数 1√3は |v3| = 1 とするためのものである.

以上より,Aは直交行列 P =(v1 v2 v3

)=

1√6

0 2 −√2

√3 1

√2

−√3 1

√2

によって  tPAP =

1 0 0

0 1 0

0 0 −2

 と対角化される.�

�課題8-1(TAチェック) つぎの実対称行列を直交行列によって対角化せよ.

(1)

2 1 11 2 11 1 4

(2)

6 2 22 0 −12 −1 0

�課題8-2(TAチェック) つぎの実対称行列を直交行列によって対角化せよ.

(1)

4 2 22 3 −12 −1 3

(2)1

2

0√0.9

√0.1√

0.9 0 0√0.1 0 0

�課題8-3(TAチェック) つぎの実対称行列を直交行列によって対角化せよ. 1 1 −11 1 −1−1 −1 1

8.4 2 次曲面

≪直交行列による 2 次方程式の変換≫ (1.3) で紹介したように,3 次元空間で,x,y,z の 2 次方程式

a11x2 + a22y

2 + a33z2 + 2a12xy + 2a13xz + 2a23yz

+ b1x+ b2y + b3z + c = 0(8.2)

を満たす点全体からなる図形を 2 次曲面という.ここに,aij,bi,c(1 ≤ i ≤j ≤ 3)はすべて定数であり,aij(1 ≤ i ≤ j ≤ 3)の少なくとも 1 つは 0 ではないとする.(8.2) に現れる定数から,3 次の実対称行列 A および 3 次元ベクトル B を

A =

a11 a12 a13

a12 a22 a23

a13 a23 a33

, B =(b1 b2 b3

)110

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として構成すれば,(2.23) で説明したように,(8.2) は

(x y z

)A

xyz

+B

xyz

+ c = 0 (8.3)

の形に書くことができる.3 次の実対称行列は直交行列によって対角化できるから,A もある直交行列 P によって

tPAP =

λ1 0 0

0 λ2 0

0 0 λ3

のように対角化される.ここに,λ1,λ2,λ3 は A の固有値である.変数変換x

yz

= P

uvw

(8.4)

を施すと,(8.2) ≡ (8.3) は

(8.3) ⇔(u v w

)tPAP

uvw

+BP

uvw

+ c = 0

⇔(u v w

)λ1 0 0

0 λ2 0

0 0 λ3

uvw

+BP

uvw

+ c = 0

を経て,つぎのように変換される.

λ1u2 + λ2v

2 + λ3w2 + d1u+ d2v + d3w + c = 0 (8.5)

ここに,BP =(d1 d2 d3

)と置いた.直交行列は合同変換を表すから,u,v,

w の 2 次方程式 (8.5) が表す 2 次曲面は x,y,z の 2 次方程式 (8.2) ≡ (8.3)

が表す 2 次曲面と合同である.

≪ 2 次曲面の標準形≫ 2 次方程式 (8.5) につぎの操作

    ・平方完成

    ・定数(̸= 0)倍

    ・変数 u,v,w の平行移動と符号の反転

    ・変数 u,v,w の順番の交換

    ・u 軸を中心とする回転変換

を施すと (8.5) は以下に紹介する 17 個の標準形のいずれかに変形される(α,β,γ は正の整数を表す).

111

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【固有値がすべて正であるか,すべて負】

(1-1)  u2

α2+

v2

β2+

w2

γ2= 1   (楕円面,Figure 8.2)

(1-2)  u2

α2+

v2

β2+

w2

γ2= 0   (1点のみ)

(1-3)  u2

α2+

v2

β2+

w2

γ2= −1  (空集合)

Figure 8.2: 楕円面u2

4+

v2

2+ w2 = 1

【3 個の固有値のうち,2 個が正で 1 個が負か,2 個が負で 1 個が正】

(2-1)  u2

α2+

v2

β2− w2

γ2= 1   (単葉双曲面,Figure 8.3 左)

(2-2)  u2

α2+

v2

β2− w2

γ2= 0   (2 次錐面,Figure 8.3 中)

(2-3)  u2

α2+

v2

β2− w2

γ2= −1  (双葉双曲面,Figure 8.3 右)

Figure 8.3: 左:単葉双曲面 u2 +v2

2− w2

2= 1,中:2次錐面 u2 +

v2

2− w2

2= 0,

右:双葉双曲面 u2 +v2

2− w2

2= −1

112

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【3 個の固有値のうち,2 個が正で 1 個が 0 か,2 個が負で 1 個が 0】

(3-1)  u2

α2+

v2

β2= 1   (楕円柱,Figure 8.4 左)

(3-2)  u2

α2+

v2

β2= 0   (1 直線)

(3-3)  u2

α2+

v2

β2= −1   (空集合)

(3-4)  w =u2

α2+

v2

β2  (楕円放物面,Figure 8.4 右)

Figure 8.4: 左:楕円柱u2

4+ v2 = 1,右:楕円放物面 w =

u2

4+ v2

【3 個の固有値のうち,1 個が正,1 個が負,1 個が 0】

(4-1)  u2

α2− v2

β2= 1   (双曲柱,Figure 8.5 左)

(4-2)  u2

α2− v2

β2= 0   (交わる 2 直線,Figure 8.5 中)

(4-3)  w =u2

α2− v2

β2  (双曲放物面,Figure 8.5 右)

Figure 8.5: 左:双曲柱u2

2− v2 = 1,中:交わる 2 直線

u2

2− v2 = 0,右:双曲

放物面 w =u2

2− v2

113

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【3 個の固有値のうち,1 個だけが 0 ではない】

(5-1)  u2

α2= 1   (平行な 2 平面,Figure 8.6 左)

(5-2)  u2

α2= 0   (1 平面,Figure 8.6 中)

(5-3)  u2

α2= −1   (空集合)

(5-4)   v =u2

α2  (放物柱,Figure 8.6 右)

Figure 8.6: 左:平行な 2 平面 u2 = 1,中:1 平面 u2 = 0,右:放物柱 v = u2

例題8-3 (例題8-1参照)つぎの 2 次方程式が表す 2 次曲面を標準形

に変換し,2 次曲面の名称を書け.

5x2 + 6y2 + 5z2 + 2xy − 2yz − 4zx+ 3√2x+ 3

√2z = 0 (8.6)

(解答例) A =

5 1 −2

1 6 −1

−2 −1 5

,B =(3√2 0 3

√2)と置く.すると,上の

2 次方程式 (8.6) は

(x y z

)A

xyz

+B

xyz

= 0

と表現される.例題8-1で示したように,実対称行列 A は直交行列 P =

1√6

−√2 −1

√3

−√2 2 0

√2 1

√3

によって tPAP =

8 0 0

0 5 0

0 0 3

と対角化される.そこ114

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で,変数変換

xyz

= P

uvw

を施せば,BP =(0 0 6

)であるから,(8.6)は

(8.6) ⇔(u v w

)tPAP

uvw

+BP

uvw

= 0

⇔(u v w

)8 0 00 5 0

0 0 3

uvw

+(0 0 6

)uvw

= 0

⇔ 8u2 + 5v2 + 3w2 + 6w = 0

⇔ 8u2 + 5v2 + 3(w + 1)2 = 3

⇔ u2

3/8+

v2

3/5+ (w + 1)2 = 1

に変換される.これは Figure 8.7 の左側に示したような楕円面を表す.これをP で変換すれば,左側に示したような xyz 空間における楕円面が得られる.

P

( , , )u v w ( , , )x y z

Figure 8.7: 5x2 + 6y2 + 5z2 + 2xy − 2yz − 4zx+ 3√2x+ 3

√2z = 0 は楕円面

例題8-4 (例題8-2参照)つぎの 2 次方程式が表す 2 次曲面を標準形

に変換し,2 次曲面の名称を書け.

2xy − 2yz + 2zx+√2y −

√2z − 3 = 0 (8.7)

(解答例) A =

0 1 1

1 0 −1

1 −1 0

,B =(0

√2 −

√2)と置く.すると,上の 2

115

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次方程式 (8.7) は

(x y z

)A

xyz

+B

xyz

− 3 = 0

と表現される.例題8-2で示したように,実対称行列 A は直交行列 P =

1√6

0 2 −√2

√3 1

√2

−√3 1

√2

によって tPAP =

1 0 0

0 1 0

0 0 −2

と対角化される.そこ

で,変数変換

xyz

= P

uvw

を施せば,BP =(2 0 0

)であるから,(8.7)は

(8.7) ⇔(u v w

)tPAP

uvw

+BP

uvw

− 3 = 0

⇔(u v w

)1 0 00 1 0

0 0 −2

uvw

+(2 0 0

)uvw

− 3 = 0

⇔ u2 + v2 − 2w2 + 2u− 3 = 0

⇔ (u+ 1)2 + v2 − 2w2 = 4

⇔ (u+ 1)2

4+

v2

4− w2

2= 1

に変換される.これは Figure 8.8 の左側に示したような単葉双曲面を表す.これを P で変換すれば,左側に示したような xyz 空間における単葉双曲面が得られる.

P

( , , )u v w( , , )x y z

Figure 8.8: 2xy − 2yz + 2zx+√2y −

√2z − 3 = 0 は単葉双曲面

116

Page 13: 8 3 次実対称行列の対角化とその応用 - Ryukoku …tsutomu/LA1/11/lecture...8.1 直交行列は合同変換を表す 第6 章で紹介したように, tPP = P P = I を満たす実正方行列P

�課題8-4(TAチェック) (課題8-1 (1) 参照)つぎの 2 次方程式が表

す 2 次曲面を標準形に変換し,2 次曲面の名称を書け.

(1) 2x2 + 2y2 + 4z2 + 2xy + 2yz + 2zx+ 2√3x+ 2

√3y − 2

√3z + 3 = 0

(2) 2x2 + 2y2 + 4z2 + 2xy + 2yz + 2zx+ 2√3x+ 2

√3y − 2

√3z +

9

2= 0

(3) 2x2 + 2y2 + 4z2 + 2xy + 2yz + 2zx+ 2√3x+ 2

√3y − 2

√3z + 5 = 0

�課題8-5(TAチェック) (課題8-1 (2) 参照)つぎの 2 次方程式が表

す 2 次曲面を標準形に変換し,2 次曲面の名称を書け.

(1) 6x2 + 4xy − 2yz + 4zx+√2y −

√2z = 0

(2) 6x2 + 4xy − 2yz + 4zx+√2y −

√2z + 1 = 0

(3) 6x2 + 4xy − 2yz + 4zx+√2y −

√2z + 2 = 0

�課題8-6(TAチェック) (課題8-2 (1) 参照)つぎの 2 次方程式が表

す 2 次曲面を標準形に変換し,2 次曲面の名称を書け.

(1) 4x2 + 3y2 + 3z2 + 4xy − 2yz + 4zx+ 4√6x+ 2

√6y + 2

√6z + 4 = 0

(2) 4x2 + 3y2 + 3z2 + 4xy − 2yz + 4zx+ 4√6x+ 2

√6y + 2

√6z + 6 = 0

(3) 4x2 + 3y2 + 3z2 + 4xy − 2yz + 4zx+ 4√6x+ 2

√6y + 2

√6z + 7 = 0

(4) 4x2 + 3y2 + 3z2 + 4xy − 2yz + 4zx+√3x−

√3y −

√3z − 1 = 0

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Page 14: 8 3 次実対称行列の対角化とその応用 - Ryukoku …tsutomu/LA1/11/lecture...8.1 直交行列は合同変換を表す 第6 章で紹介したように, tPP = P P = I を満たす実正方行列P

�課題8-7(TAチェック) (課題8-2 (2) 参照)α =

√0.9,β =

√0.1 と

置く.つぎの 2 次方程式が表す 2 次曲面を標準形に変換し,2 次曲面の名称を書け.

(1) αxy + βzx− 1 = 0

(2) αxy + βzx = 0

(3) αxy + βzx+ βy − αz − 1 = 0

�課題8-8(TAチェック) (課題8-3 参照)つぎの 2 次方程式が表す 2

次曲面を標準形に変換し,2 次曲面の名称を書け.

(1) x2 + y2 + z2 + 2xy − 2yz − 2zx+ 2√3x+ 2

√3y − 2

√3z + 2 = 0

(2) x2 + y2 + z2 + 2xy − 2yz − 2zx+ 2√3x+ 2

√3y − 2

√3z + 3 = 0

(3) x2 + y2 + z2 + 2xy − 2yz − 2zx+ 2√3x+ 2

√3y − 2

√3z + 4 = 0

(4) x2 + y2 + z2 + 2xy − 2yz − 2zx−√2x−

√2z + 1 = 0

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