2016年

12月10日〒113-0033 東京都文京区本郷2-27-2　東眞ビル５階TEL 03(3816)1862/FAX 03(3816)1824　E-mail:onnano-shimbun@tcn-catv.ne.jp

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発行所： 女性会議第 1154 号（1963年 2月15日第三種郵便物認可）

田中寿美子の足跡　 20世紀を駆け抜けたフェミニスト

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井上 輝子 監修・ 女性会議 発行

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2016 年12月10日（土） 13 時 30分

おかかたちの米騒動は消費者運動の原点憲法理念の実現をめざす第53回護憲大会

11月12〜14日、富山市内で「憲

法理念の実現をめざす　

第53回護憲

大会」が開催された。折しも「駆け

つけ警護」任務を付与された自衛隊

の南スーダンへの派遣が実施される

か否かの攻防の最中で、全国から

１８００人が参加した。

12日の開会総会（会場：オー

パードホール）は、子どもから高齢

者まで多彩な年齢構成の「でんで

こ」の和太鼓演奏で始まった。司会

は竹内広人さん（自治労）と辻井

秀子さん（

女性会議）。藤本泰成

さん（護憲大会実行委員長・平和

フォーラム）は第２次世界大戦時、

99・５％が焼け野原となった富山市

の歴史を振り返り、「声を上げ続け

なければ戦争の時代に引き戻されて

しまう」と話した。

佐幸明さん（富山県実行委員会委

員長）は「富山大空襲という大きな

犠牲を払ってきた。二度と血を流さ

せてはいけない」とし、「どんな運

動も支持と共感を得られなければ意

味がない」と自己満足の運動になら

ないよう訴えた。

連合、民進党、社民党からも連帯

のあいさつがあった。メイン企画

は、「漂流する日本政治

安倍政権の

これまでとこれから〜戦争法阻止、

立憲主義確立、憲法擁護のため私た

ちは今後どう闘うのか」がテーマ。

「アベノミクスと格差社会」「安倍政

権と憲法」「沖縄の現状」について

講演・問題提起を受けた。

東和工業コース別男女賃金差別裁

判の原告である本間啓子さんから

は、裁判所が形式的な男女差別は認

定するものの、コース別賃金など結

果として女性の差別賃金を許してい

るさまざまなシステムを「雇用者の

裁量の範囲」と断じている裁判官の

ジェンダーバイアスを問題にした。

経営者、裁判官の中に「女の仕事は

男の補助」「男は稼ぎ主で、女は家

計の補助」という考えが染み付いて

いて、実際に示された証拠さえ採用

されない男女差別賃金裁判の厳しい

現状が報告された。

部落解放同盟の高橋定さんは

「堂々と差別することを宣言し、『全

国部落調査復刻版』を作成し、意図

的にインターネット上で拡散する差

別事件が起きている」と報告。国や

自治体による差別を許さないことは

もちろん、「自分には関係ない」と

差別を見過ごしていると、人権を認

めない、民主主義のない国になって

しまう。声を上げ続けようと確認し

た。

東京集会

最高裁は沖縄の民意に応える判決を！

日比谷野外音楽堂

※集会後デモ

差別に立ち向かう

人権確立分科会

男女共同参画のひろば

部落解放同盟、

女性会議、平

和フォーラムで企画する人権分科会

は「朝鮮学校差別に抗して〜国際人

権の視点から」と題して金キ

ムウギ

優綺さん

の講演を受け、在日朝鮮人・朝鮮学

校の歴史から学び、民族の歴史や文

化を継承する教育の重要性と、チマ

チョゴリも着られなくなった日本の

差別風土、ヘイトスピーチの問題

点。その差別を政府が扇動している

深刻さを話した。

金キ ム ウ ギ

優綺さん

男女共同参画のひろばは、

女

性会議、自治労女性部、教組女性部

などが協力して実行委員会によって

開催された。井加田まり実行委員長

は、安保法制、沖縄、福島などの国

民の声を踏みにじる安倍政治が横行

する今こそ「民の意思が国策を変え

ることを米騒動のおかかたちから学

びたい」とテーマの趣旨説明。

講師の金澤敏子さん（細川嘉六ふ

るさと研究会代表）は「米騒動は一

過性の運動ではなく、明治の頃から

何度も繰り返され、全国に広がり、

大正７年にピークを迎えた」と話し

た。　　　　　　　（※２面に続く）

第 1154 号（第三種郵便物認可） 2016 年 12月10日 2

安保法制違憲訴訟・女の会

武力による解決を正当化する社会はゴメン！

（訴状の要旨）

戦争は暴力と差別の究極の形であっ

て、戦争の承認は、軍事力（暴力の行

使）によって争いを解決しようとする

行動様式の承認である。それは、人間

を道具とし、その価値に序列をつける

体制を必要とする。差別を再生産し、

ひいては暴力を再生産する。こうした

連関は戦時だけでなく、戦争を可能と

する体制から生み出され、日常の男女

の力関係を規定し、女性に対する差別

と暴力の連鎖を加速する。

原告らは、戦時性暴力や軍隊による

性暴力、日常の労働と生活に構造化さ

れた女性に対する差別や暴力に挑んで

活動してきた。しかし、武力による問

題解決の肯定（安保法制）は、原告ら

の活動を著しく困難にしている。

●教育・研究者

大学で労働法やジェンダー法学を研

究・教育する原告は、安保法制の強行

によって憲法を支えとした教育や研究

の根底が覆され、研究者としての立場

が否定された。

●国会議員

現職参議院議員である原告は、安保

法制の審議過程で「戦争法」「鉄面皮」

等の発言を議事録から削除するよう繰

り返し要請されるなど前代未聞の扱い

を受けた。

そのうえ、審議できないまま強行採

決されるに至った。これにより、違憲

立法に突き進む重大な政治的岐路にお

いて、国会議員たる原告の職責は完全

に否定された。

●ジャーナリスト・文筆家

安保法制は日本国憲法の基本を侵す

ものであるから、とりわけ自己の知り

得た事実や意見を人々に伝えたいとい

う要求は強かったが、それは制約され

た。その結果、自由な意見表明ができ

ないまま安保法制が強行されることに

なった。

●交通・運輸労働者

戦争体制下において、国民保護体制

のための措置を実施することを含め、

地方自治体や民間企業を含む指定公共

機関等に協力することが義務づけられ

ている。

これらの業務は攻撃の対象になって

生命を失う危険性もある。かつて世界

最大の航空会社であったパンアメリカ

ン航空は軍事関係の輸送も行なってい

たが、報復テロの格好の対象となり、

利用者が激減して破綻した。航空産業

に働く労働者の直面するリスクはきわ

めて現実的である。

（中村

ひろ子）

女性の視点から④

米騒動の特徴は、第一に富山から

始まり、全国に広がった事だ。都市

部でも男性中心でもなく、地方の漁

村部の決して豊かではない女性たち

によって始まった。

おかかたちの要求は実にシンプル

で、米を適正価格で売ってくれとい

う一点だ。米急騰の原因は、①第一

次世界大戦の影響とシベリア出兵の

ための軍用米の買い付け②人口の急

増③米の高騰を狙った買占めの横行

などによる。

重労働の漁師にとって、米は重要

なエネルギー源で、日々高騰する米

の値段は農業のない漁師町の命と暮

らしに直結した問題だった。農民一

揆は米生産者の運動だが、米騒動は

米の消費者の運動だといえる。ロシ

ア革命、シベリア出兵などで不安と

不満を持っていた人々に火をつけた

のが漁師町のおかかたちだった。

「これでいいのか、くらしと命の

ための米を適正価格で売れ」と叫ん

だおかかたちはまさに地方から国を

討ったのだ。

この運動を庶民の立場に立って

全国に広げたのはマスコミだ。し

かし、今はどうだろう。安倍政権

の太鼓もちに成り下がり、「権力の

チェック機能」を失っている多くの

マスコミとの違いを金澤さんは指摘

した。

その後は、人権分科会でも報告し

た東和工業コース別男女賃金差別裁

判の原告である本間啓子さんの話。

教組からは「育児短時間勤務制度」

が導入されても、実際には代替要員

がいない、代替要員の労働条件が悪

いなどで、多くの職場で取れていな

い実態。自治労からは育児休業の取

得により昇給延伸となった女性職員

の昇給復元が追いつかず、結果的に

男女の賃金差別につながる状況が報

告された。

選択的夫婦別姓を実現する会・富

山は、夫婦が同一の姓を名乗らなけ

ればならないと定めた民法は合理性

があるとされたが、15名の裁判官の

うち３名の女性は違憲と判断したこ

とを指摘。世界でも類を見ないこの

民法を変えていきたいと原告団長の

塚本協子さんを紹介した。

民の意思が国策を変える

憲法理念の実現をめざす運動を

おかかたちの米騒動は消費者運動の原点憲法理念の実現をめざす第53回護憲大会

閉会総会

女性に「働け、介護しろ、子ど

もを産め、育てろ、輝け」と多く

を要求する安倍政権。しかし、ま

さに差別と低賃金、社会保障の補

完物としての女性の役割がこの集

会では見えてきた。それを変える

力もまた、私たち女性の中にある

ことも。

沖縄「高江」、「オスプレイ」

「もんじゅ」「再稼働」について４

人の方から特別提起を受けた。

大会のまとめとして、フォーラ

ム平和・人権・環境の勝島事務局

長は、全体の討論、分科会や広場

の問題提起に触れ、第54回大会ま

で全力で安倍政治を許さず、憲法

理念の実現をめざす運動を広げよ

うと訴えた。

「遠藤三郎賞」には、毎年憲法記

念日に平和行進を続けてきた「青

森県憲法を守る会」が選ばれた。

最後に「憲法理念を実現する営

みは、多くの人びとによる、さら

なる努力を必要とする。現実に止

まることなく、怯まず、諦めず、

そして弛まず、信念をもって全力

でとりくんでいかなくてはなりま

せん」と大会アピールを採択し

た。

（池田

万佐代）

金澤 敏子さん

第 1154 号（第三種郵便物認可）2016 年 12月10日3

いわき放射能市民測定室「た

らちね」見学ツアーに参加した

（東京・八王子の市民測定室「ハ

カルワカル広場」主催）。全国に

市民測定室は１００を数えるが、

２０１１年11月福島県いわき市に

オープンした「たらちね」は、設

備や測定実績等で群を抜いてい

る。発起人は、３・11を経験した

女性たちだ。ボランティアで運営

する測定室が多い中、職員10人の

大半が女性で有給制。見学当日

も、ブルーの検査着姿の女性がき

びきびと働いていた。

たらちね開設は「測ることは、

いのちを守るために必要不可欠」

という女性たちの強い信念による

ものだった。

事務局長の鈴木薫さんは「子ど

もたちに何を食べさせるかを選ぶ

ため測らなければならなかった。

汚染地域にある測定室として、地

域の役に立ちたいという思いで

やってきました」。

工夫された測定室内

たらちねでは、ＮａＩシンチ

レーション検出器４台を使って

食材や土壌の放射能測定（γ

ガンマー線）

を行なっている。測定器を囲んで

いるのは、何の変哲もない段ボー

ル箱（中には水の入ったペットボ

トル）。もともと空間線量の高い

場所なので、測定に影響を与えな

いためだ（本来鉛を使って遮蔽す

るが、その代用）。

床には測定を待つ土が置かれて

いた。連携をとる「ＴＥＡＭ

マ

マベク」のお母さんたちが学校や

保育園で集めてきた土の測定を行

なっている。今年10月、測定室近

くの土から１万１０００ベクレル

と驚くべき数値も出ていた。

食品では、松茸の測定値が

４００〜８００ベクレルと異様に

高い。「６年経ったから（大丈夫）

と食べる人、なぜ測るんだと怒る

人もいます」と鈴木さん。

様々な人が利用

フロアーの片隅に、段ボールに

取り囲まれたホールボディカウン

ターが１台設置されていた。リク

ライニングシートのような椅子に

座ると全身の測定ができる。原発

作業員や除染作業員からの測定依

頼も多く、私たちが訪ねたこの日

も来ていた。

別室には甲状腺の検査機器が設

置されていた。超音波を当てると

甲状腺の様子がモニターに映し出

される（７７４９人の計測実績）。

検診に当たる医師６人は全国から

謝礼なしで来てくれるのだという。

費用は無料で、３歳から事故当時

18歳以下の子どもを優先させる。

福島県が実施する健康管理調査

は２年毎なので、たとえば甲状腺

検査の結果、Ａ２（

20㍉

以下の

のう胞、または５㍉

以下の結節）

だったら心配ないとされ、次回ま

で待てと言われるが、不安で待ち

きれない。たらちねは、そんな要

望の受け皿になっていた。

子どもに何を食べさせる？

いのち守るため

女性たちは測り続ける

いわき放射能市民測定室 たらちね を訪ねて

▲測定する土は新聞紙を使って乾燥させてから

▲熱心に耳を傾ける参加者

▲手軽にβ線を図れる「たらちねメソッド」　を開発した天野光さん

▲段ボールとペットボトルに囲まれ　たホールボディカウンター

　（右下写真：クラウドファンディングサイトより）

▲甲状腺の検査機器

▲説明してくれた鈴木薫さん

来年４月には、日本初「民間の

放射能測定室兼検診センター」と

して生まれ変わるという。血液検

査や腹部エコー検査もできるよう

になる。甲状腺検診の縮小が言わ

れる中、このクリニックが補完す

ることも可能になるだろう。

β線測定にも対応

ストロンチウム90やトリチウム

などβベ

ータ線は、国の定めた測定方

法では時間も費用もかかり、市民

測定室レベルではとても手におえ

ない。それを解決したのが「たら

ちね」メソッド（方式）だ。日本

原子力研究開発機構にいた天野光

さんが開発し、テクニカルマネー

ジャーとして指導にあたってい

る。２０１５年４月から「β線核

種ラボ」として測定を開始した。

天野さんは「危険な試薬は使わ

ず、時間をかけず１週間くらいで

結果を出すようにしています」。

地元漁業者の協力を得て海洋調査

も実施している。

■認定NPO法人 いわき放射能市民測定室 たらちねhttp://www.iwakisokuteishitu.com/

福島県いわき市小名浜花畑町 11-3電話＆ FAX 0246-92-2526休業日：毎週土曜日・日曜日・祝祭日開所時間：10時から 16時

沖縄保養もサポート

たらちねでは、子どもたちの被

ばくを軽減するため、海水浴シー

ズン前には海砂の測定を実施。沖

縄・久米島（琉美の里）への保養

にも力を入れる。盛りだくさんの

取り組みに、ただただ驚くばか

り。高

価な測定機器がたくさん揃っ

ているが、運営費用はどう工面し

ているのか。検査費用は、無料や

５００〜３０００円程で、維持

会員の会費だけではとても賄え

ない。年間約４５００万円の経費

は、民間の助成金と一般の寄付金

（半々くらいの割合）で捻出して

いるとのことだ。

資金繰りには苦しんできたが、

ここまで続けて来られたのはなぜ

かと問われ「放射能とは共存でき

ないからです」ときっぱり答えた

鈴木さん。固い決意が込められた

この言葉に美しさを感じたほど

だった。

帰路の車中で参加者は、いわき

と八王子、２５０キロも離れた２

つの測定室の違いを口々に検証し

あっていた。原発事故を風化させ

ず〝市民が測る〞活動を継続して

いくためのヒントをたくさん貰っ

たようだ。　　　　　　　　（Ｍ）

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