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若者による服装の選択の要因分析 指導教員:高木英至 教授 学籍番号07CS024 曹 興彦 埼玉大学文化科学研究科文化構造専攻 2009年1月13日(火)

若者による服装の選択の要因分析 - Saitama Universityetakagi/class/2008/stock/q2008/...若者による服装の選択の要因分析 指導教員:高木英至 教授

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若者による服装の選択の要因分析

指導教員:高木英至 教授

学籍番号07CS024 曹 興彦

埼玉大学文化科学研究科文化構造専攻

2009年1月13日(火)

i

修士卒業論文概要

本論文は、ある特定の服装を好む人がいた場合、それに対応する性格特性がその人に

内在していると考える。被服行動の社会心理学(高木修、1999)における「ΟΟ な性

格特性をもっている人は、ΟΟ な服装を好む」等の先行研究の因果関係の推定手法よ

り啓発され、服装への意識による個人要因と服装の好みの差異性の分析を実施した。

2008 年 10 月 10 日埼玉大学において「社会心理学入門」を受講する学生を対象に調査

が行われた。すべての質問項目に回答した男子160人、女子110人を分析の対象とした。

そのようにして得た調査のデータに基づいて、分析を試みた。そこで、大学生は着装す

る服装の選択が自由なために、自己表現の際に被服への依存度が高い若者に注目して、

人々の外見と様々な個人要因の関連を検討し、更に外見にかかわる被服意識を基に、服

装の系統、自己概念の特徴、その暗黙の個人要因に影響を与えることを明らかにするた

め、実証的研究を行った。分析に先たって、分析に用いるカテゴリー、尺度をデータか

ら次のように導き出した。

1、 服装系統を大まかに「カジュアル系」、「お姉・お兄系、ギャル系」、「裏原系、B

系、モード系」、「パンク系・その他」の4つに分類した。

2、 日常生活における被服意識 33 項目から、下位尺度は「気分依存性」「流行嗜好性」

「TPO性能」「品質・機能」「慎み深い」の 5尺度から構成されることが確認された。

3、自己概念を記述した 40 の形容詞対について被験者が評定した結果を因子分析し、

「活発」、「理性」「親切」3因子を抽出した。

分析の結論、被服意識と被服系統の関連を規定するいくつの個人差要因について、次

のような経験的知見が得られた。

1、「カジュアル系」選択若者は「気分依存性」と「TPO性能」を重視。「お姉・お

兄系、ギャル系」選択若者は「気分依存性」を重視。「裏原系、B系、モード系」選択

若者は「気分依存性」、「流行嗜好性」を重視。「パンク系・その他」選択若者に有意な

傾向は認められなかった。

2、「活発的自己概念」と「気分依存性」、「流行嗜好性」との間で有意な正の相関

が示された。「理性的自己概念」と「TPO性能」との間で有意な正の相関が示された。

「親切的自己概念」と「気分依存性」との間で有意な正の相関が認められた。

3、「カジュアル系」を選択する若者と「活発的」や「理性的」との間の関連が有意で

はなかったため、特定の性格特性と「カジュアル系」を選択する若者との明確な関係を

判断できなかった。「カジュアル系」を選択する若者の性格特性の分布は幅広く多様で

あり、服装系統と性格特性との関係が固定されていないと思われる。「お姉、お兄系・

ギャル系、お裏原系、B系、モード系」と「活発的」との間の関連は有意であるので、

「お姉系、お兄系・ギャル系、お裏原系、B系、モード系」を選択する若者は「活発的」

といった特徴を持つ傾向がある。これら個性的な服装選択をする若者の性格特性は集中

していて、服装系統と性格特性との関係が比較的固定されていると思われる。

ii

目次

はじめに

第一章 研究の目的と意義

1-1 被服意識の認知・・・・・・・・・・・・・・・・・・・01

1-2 自己概念と被服意識・・・・・・・・・・・・・・・・・05

1-3 自己を表現する被服・・・・・・・・・・・・・・・・・08

1-4 被服意識と若者の暗黙のパーソナリティ観・・・・・・・10

1-5 本研究の焦点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

第ニ章 研究方法

2-1 調査の方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

2-2 質問紙の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

2-3 測定尺度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

2-4 コンピュータへの入力・・・・・・・・・・・・・・・・21

第三章 結果分析

3-1 服装の分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

3-2 加算尺度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

3-3 信頼性分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27

3-4 被服意識と性別・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30

3-5 分散分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33

3-6 因子分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38

3-7 相関関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42

3-8 一元配置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45

第四章 考察

4-1 下位尺度から得られた知見・・・・・・・・・・・・・・50

4-2 被服系統と被服意識との関係からの知見・・・・・・・・51

4-3 自己概念と被服意識との関係からの知見・・・・・・・・52

4-4 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53

参考文献付録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55

調査表用紙

1

はじめに

人は他人との間でさまざま行為を繰り広げながら、人間相互の関係を発展、

円滑に維持していくためには、自己の考えを正確に他者に伝え、また同時に他

者の考えを正確に把握することが必要となり、衣服を非言語的コミュニケーシ

ョンの手段として、活用することで相互の意思伝達を行っているのである。(中

島 1996)つまり、衣服によるコミュニケーションが人間の社会的活動におい

て役割を果たしていると考えられる。服装とは個人を他者に印象付ける重要な

要素である。被服意識と自己といった個人要因との関連については、自己の外

見を重視するのは、社会の中で、目立ちたい、注目されたい、尊敬されたいな

どと願うからである。このような願望を実現する手段として、現代社会におけ

る被服は、自分自身を確かめ、他者に何かを伝え、自分の個性を表現する目的

のために利用されている。外見の魅力の向上、周囲への印象操作などといった

社会心理的効果が存在しているというわけである。

衣服に個人の性格、態度、感情、意図などが反映されるという信念を人々は

もっており、他人を評価する際の重要な手がかりとして利用されていると考え

られる。例えば、この自己評価の程度が高い青年は自己外見に満足し、かつ衣

服を通じて他者の注意を引くことにも積極的で、「元気がある」、「積極的で

ある」というイメージを周囲に与えていると思われる。被服に期待される精神

的な目的は「自信を高めたい」という内面的な物や、「他者に良い印象や特定の

印象を与えようとする」といった外面的な物に大別できるかもしれない。(高木

修 1999)若者は、自分の魅力を高めたいという欲求が特に強いと考えられる。

また、他者に好ましい印象や特定の印象を与えようとする時に、若者はまず自

身の外見に注意する傾向があると思われる。そして、この種の非言語的コミュ

ニケーションの手段として、被服が重要な役割を果たしていると考えられる。

本研究では、若者の服装において、どのような性格特性の若者がどのような

服装を選ぶといった問題に答えようとする。社会生活を営む上で、服を身に着

けることは当然のことで、その理由を改めて考える人は少ない。衣生活が非常

に豊かになった今日は、単に身体を保護するためではなく、「自己表現として身

体を飾りたいという願望が、おそらく身体に衣服を着せるようになった最初の

理由であろう」(神山、1999)という主張に同感する。そこで、現代における服

装の役割を着装の動機や目的を表すものとして考える場合、被服行動を社会心

理学的に取り扱う事が一層重要であると考えた。

2

第1章 研究の目的と動機

1-1 被服意識の認知

1-1-1 マズローの欲求理論から

マズローの欲求理論は欲求の階層理論ともいい、欲求の間には階層があ

り、低次の段階の欲求が充足されて初めて高次の欲求が顕在化するという

ものである。マズローの理論の中から、1、生理的欲求。2、安全の欲求。

3、所属と親和の欲求。4、尊敬と承認の欲求。5、自己実現の欲求を取

り上げる。(中島 1996)

(図 1-1)

衣服の場合について具体的に考えてみよう。衣服は当初は寒さを防ぐこ

と(生理的欲求)、外傷から身を守ること(安全の欲求)が中心であった。

その後、人の生活が発展するにつれて、仲間に入って人並みの衣服を着る

というウエイトが移っていく。(所属と親和の欲求)この欲求が満たされ

ると、流行の衣服を着て、優越感の満足が重視されるようになる。それが

さらに進んで、流行の中にも個性を生かして衣服を着用したり、自己表現

の意味合いが強くなる(自己表現の欲求)。(小林 2003)これは人の「こ

3

ころ」が被服を決定しているということであり、逆に人の被服から人の「こ

ころ」を探る可能性を示しているといえる。

1-1-2 被服表現の機能

われわれは生活上出会った人々が、どのような人物で、どのように接す

ればよいのかを、そのつど素早く判断している。この処理過程の中で、ど

のような人でも他者を外見からとらえる傾向がある。人を分類するカテゴ

リーには、被服を通して、人種カテゴリー、性別カテゴリー、年齢カテゴ

リーがもっとも利用されやすい。(坂元 1994)なお、状況によって、カ

テゴリーの使用も異なっている。スタンゴァとファード(Stangor&Ford

1992)はカジュアルな服装やフォーマルな服装をした男女の写真を被験者

に見せると、そのままだと性別カテゴリーに注目しやすいが、「メディア

の代表者を選ぶ」という課題にすると服装スタイルをカテゴリーとして使

用しやすいことを示している。被服は、他の人間をどのように理解・判断

するかという対人認知――つまり、パーソナリティの認知ないしパーソナ

リティの印象形成に少なからざる影響を与えていると同時に、着用者の自

己表現を高めたり、低めたりする自己表現も深い関係をもっている。この

ような対人認知や対人魅力のいずれもが、被服という外観の手がかりに基

づいてなされる他人の特性帰属と関係する一方、人と人との行動のやりと

りであるところの社会的相互作用とも関係する。つまり、被服には、初対

面の人に対しては、被服などの外観からいわゆる第一印象を形成し、その

人が過去の学習を通して養ってきた何らかの象徴的意味を伝達すること

により、社会的相互作用を維持し促進させる力をもっている。

同一人物でも着ている服によってまったく違う人のような感じを他人

にあたえるのである。ウェスターマルク(Westermark,1921)は「被服の

役割は、ただ単に体をおおい隠すためよりは、むしろ、体の特徴を表した

り、強調したりすることである」と述べていた。現代社会において、社会

変化の速さは、ファッション変化の大きさに関連がある。被服は自分自身

を確かめ、他者に何かを伝え、自分の個性を表現する目的のために利用さ

れている。このような機能は、各種の装いに共通する基本的な機能を果た

4

しているといえよう。「装い」のもの機能を十分活用することができる人

は、他者に自分の理想的な方向に自分のイメージを形成させたり、自己を

確認したり強化することができる。

1-1-3 被服の非言語情報伝達の機能

言葉や文字により情報を伝えることを言語情報伝達(バーバル・コミュ

ニケーション;verbal communication)といい、言葉や文字によらない情

報の伝達を非言語情報伝達(ノンバーバル・コミュニケーション;

nonverbal communication)という。(小林 2003)

私たちが学校内を歩いてみると、同じような柄やデザインといった類似

性の要素がある服装の二人を見かけた場合、仲の良い友人同士であると考

える。この場合、「服装」が「仲の良い友人同士」であることを示す非言

語的なメッセージになっている。これは、第三者に対しての情報を与える

と同時に、自己確認のメッセージを表していると考えられる。

既存の研究では、社会・心理的目的を実現するための被服に一般的に認

められる、次のような 3 つの社会・心理的機能に着目したものがある。(神

山、1999)第一は被服によって自分自身を強め、また変えるという「自己

の確認・強化・変容」機能、第二は被服によって他者に何かを伝えるとい

う「情報伝達」機能、第三は被服によって他者との行為のやりとりを調整

するという「社会的相互作用の促進・抑制」機能という3つに分類してい

るという関連を述べた。これらの機能を効果的に活用することができれば、

外見上の魅力を高め、自分の内面までも肯定的に変えて、円滑な対人関係

を促進させることができると考えられる。

ところで、このような被服に関する諸機能を有効に活用しようと思えば、

装い自体に関心を持ち、自分自身の装いを理解し、装いの対自・対他的効

果を理解していることが必要になろう。どのような衣服を選択して着用す

るかどうかことは、個人としての一種の表現行動と考えることができる。

したがって、被服行動はたとえば、パーソナリティといったような着用者

の個人特性や自己といったような要因と深いかかわりを有することにな

5

る。衣服の表現とは、外見が少し違うというようなことではなく、個人の

内面の表れであり、時代や社会の志向の表れであるということができる。

被服は各人にとって、非常に重要なことのシンボルと見なすことができる。

自分はどのような性格の人であると思っているか、すなわち性格に関する

自己概念は着装意識に大きなかかわりを持っている。

1-2 自己概念と被服意識

私たちは自己を意識する結果、「自己概念」というものを形成するようにな

る。「自己概念」とは、所属、趣味、性格、あるいは、特技・能力など一つ一

つの領域に関して、自分が自分に対して比較的持続して有する概念、また、そ

れらを統一的に表現できる本質的な特性概念(下斗米、1998)のことである。

ストーン(Stone,1962)は、人間の初期の発達段階を、①前遊戯期②遊戯期③

ゲーム期の3つに分け、被服や外見と自己概念の形成がどのように関連している

かについて考察している。

①前遊戯期(pre-play-stage)

この時期は、乳児期や幼児期に相当する。生まれたときから被服を着せられ

ている子どもは、自分自身と被服を明確に区別することは難しいとされている。

よって、被服は、自己の身体と密接に結びついたものとして意識され、成長し

てもその意識は維持される。この時期の子どもたちは、みずから被服を選ぶこ

とはできず、彼らを世話している大人(多くの場合は親)が、彼らの考えで子

どもに着装させる。結果として、被服はその子どもやその家族の特徴を他者に

伝える手がかりとなる。その中でも、特に顕著なものが性別である。伝統的に、

男児にはブルーが、女児にはピンクの被服が選択される傾向がある。他者はそ

の被服によって、その乳児の性別を判断し、「かわいい」とか「活発」などと、

その性に合った反応を示す。そして、子どもたちは、その他者の反応を内面化

していく。このように、被服は性の識別を促進し、子どもがどう取り扱われる

かに間接的に影響を与えている。

②遊戯期(play stage)

この時期は、児童期に相当する。この時期、児童は、周囲の人々との相互作

6

用のなかで、さまざまな社会的役割を試し、それに対する他者からの反応に注

意を向ける。児童にとって、重要な他者は、両親、教師、兄弟、友人などであ

る。遊戯期における社会化には、「先取りの社会化」と「空想の社会化」があ

る。まず、先取りの社会化とは、児童が将来、実際に果たすことになる役割、

たとえば、親の役割や職業的な役割を「ごっこ遊び」などで演じてみることで

ある。ままごとで、母親の役割を演じ、母親の視点から自分を考える経験を通

して自己概念は形成されていく。他方、空想の社会化とは、将来、決してなる

ことはない理想上の役割、たとえば、テレビのなかのアニメヒーローなどを演

じることである。被服は、この2つの社会化に重要な役割を果たす。なお、2

つの社会化において、児童たちは、性の区別を厳密に意識している。性役割同

一性、つまり、自分自身の男らしさ、女らしさに関する認知の確立過程にいる

児童たちは、異なる性の役割を演じることを極端に嫌う。

③ゲーム期(game stage)

この時期は、青年期前記以降に相当する。日常的な生活範囲が広くなるにし

たがい、社会のさまざまな他者の立場から自分をみることができるようになる

と、それまでの両親、教師、兄弟よりも、仲間の規範や価値を最重視するよう

になる。仲間と同じ服装は、同じ集団のメンバーシップを獲得するための、ま

た、自分の所属する集団(内集団)と他の集団(外集団)とを明確に区別する

ための重要なシンボルとなる。そのひとつの例として、カラーギャングが挙げ

られる。カラーギャングとは、トレーナーや靴、バンダナ、帽子など赤や青の

統一カラーの服装で身を固めた不良少年グループである。繁華街にたむろし、

暴力事件や対立抗争などたびたび問題を起こした。

このように、自己概念の表現媒体として使用されている被服は、派手な、高

級な、上品な、などのように社会的に意味づけされているので、ある被服を着

用したとき、その被服に付与されている意味が他者に伝達され、それに他者が

応答することになる。

藤原(1986)は女子大学生および女子短期大学生251 名を対象した調査で、

自己概念と被服行動との関連を明らかにしている。それによれば、自分は気が

弱く、消極的で地味であるという自己概念をいだいている人は、あまり抵抗の

7

なさそうな、保守的なスタイルの衣服を買い、めだたない、慎み深い服装をす

る傾向がある。また、自分はにぎやかで、おしゃべりで、明るくて活発、つま

り、外向的であるという自己概念をいだいている人は、多くの仲間が着ている

タイプの衣服を着用し、服装に関する友人のアドバイスを受け入れる傾向があ

る。ここまで、被服を着用するとき、自己概念(自己の性格と能力)の発達に

大きく作用することが知られているので、その内面的なものいわゆる人の性格

と関係があることを深く探ることが必要である。

1-2-1 性格とは何か

性格は人間行動にみられる多様な個人差や個性を記述し説明するための

概念で、人格というときは「行動の内的規定要因として、個人に一貫した

力動的なまとまりと独自性(独自の適応と生き方を作り出す)」を指すが、

性格というときは「個人の情意面の特徴の個人差(気質や特性など)」を

示す。(社会心理小辞典 1994)例えば、「Aさんは話し好きで親切、困っ

ている人がいると親切になって相談にのってくれる。じっとしていること

が嫌いで思いついたことをすぐ実行する。……」「Bさんはおとなしくて、

自分の意見は聞かれないと言わないし、自分の話をしたがらない。争いご

とを避ける。趣味が豊かで文学や音楽のことをよく知っている。……」A

やBは男性であっても、女性であっても差し支えない。いずれもそれぞれ

の人柄を叙述したものである。(詫摩1995)以上の事例から分かるように、

Aについては親切、活動的、明るい人という印象がもたれやすい。Bにつ

いては静かで控え目、内向的な人と思われることが多いであろう。(松井

1995)らが性格について、心理学では多様な定義があるが、共通するとこ

ろは個人の行動にみられる感情や意志の特徴であること、一貫性と安定性

を持つものであることである。その人を特徴づけている基本的な行動傾向

であることを指摘した。いうまでもなく性格という「もの」があるわけで

はない。性格は、それが何らかのかたちで行動に反映されると考える。本

論文は性格というのはその人の内部にあって、その人らしい被服行動を通

して、外見的な自分という意味が含まれている。

8

1-2-2 性格と行動

性格とはその人の行動にその人らしさを与えるもので、全体としてのま

とまりと、過去から現在、現在から将来へのつながりを持つことを示して

いる。(詫摩 1995)このように性格は持続的な内的特性が個人の中に存在

すると考えられる。例えば、AはいつもAらしく、1週間前にあったとき

とは服装も違っているし、話したことも違っているが、AはやはりAであ

り、1週間後に彼と会っても基本的には違っていないだろうという認識が

ある。この違っている他人に与える認識は外見からの判断を手段としてい

ると言えよう。

ものにより、人の判断が大きく相違することがある。個人の性格はその

人の行動のどんなところを見ているか、また、被服をメディアとした場合

の見方が著しく違っているものである。

一方で、人には、自分にとって望ましくない自分よりも望ましいことを

表現しようとする傾向がある。実際の社会的環境においても、自分の心の

中においても、自己概念を確証し肯定してくれるような行動である。この

肯定的な自己概念が確証できる機会の得られる構造をした環境を作り出

すには、服装をひとつの手段として位置づけられている。しかし、環境の

諸条件が類似したものであっても、そこで認められる各自の行動には相互

にかなりの差が認められる。

性格というのは行動の個人差を環境の諸条件からではなく、個人の条件

に関しては説明しようとするときに用いられる概念なのである。(託摩

1990)

1-3 自己を表現する被服

自己は社会的状況の中で、被服なしでは、めったに表現されない。また

被服を通して、人が自分の存在や特質をどのように感じているかというこ

とも、人によって異なる。例えば:

A:私は多くの人が着ているようなごく普通の服を選ぶ。

9

B:私はその場にふさわしい服着ることが大切だと思う。明らかに場面

にそぐわない服を着ることほど不快なことはない。

A、Bのような考え方の人は、集団メンバーの多くが着ている種類の被

服に同調したい気持ちがよく表れている。また、次のような自己表現の願

望の強い人も少なくない。

C:私はいつも特異な、目新しい、刺激的な服を探している。

D:私は自分の好きな服を着る。また自分の好きなデザインの服を着る。

このように、服装で自分表現をしたいという気持ちを「個性的」あるいは

「独自的」と定義している研究者がいる。(藤原 1989)自己概念はもっと

持続性のある自分の本質について概念化したものを示しているとしてい

る。(高木修 1999)

E:被服について、まず、経済的、機能的な点を考える。

F:他の人に遅れをとってはならないとは思わないので、少しでも安価

な物を買う。

このように、経済的価値観をもっている人は通常、被服における着心地

を重視する。

以上の例に見られるような価値観は、各自の生活における被服の重

要性について、態度がそれぞれに分かれている。同調への欲求、快適

さや経済性への欲求、自己表現への欲求などである。それらの価値観

が基準となるので、服装を選ぶとき、合理的な自主的な判断を容易に

してくれるのである。場所や個性のどちらを優先させるかは、自己要

因とかかっているのである。これらが被服行動に与える影響を見てい

く前に、自己というものがどのように発達していくのかについて考え

てみたい。

1-3-1 自己形成と被服意識との関連

「自己」というのは、われわれが通常「私が、私に、私のもの、私自身」

といった言葉で表現しているようなものだということになる。そして、「自

己概念」というのは、私が「私」あるいは「私自身」をどのように考え、

どのように感じているかということである。被服に対する意識や関心の個

10

人差も自己の諸側面との関連性が非常に緊密である。個人の発言や行動に

示されるその人なりの一貫性や独自性をパーソナリティという。つまり私

たちは、ある人の言葉や行動から「あの人ってこんな子かな?」と推測し

ているのである。われわれは、個人の特性を表す言葉として「性格」や「パ

ーソナリティ」を使う。その語感から考えると性格とは個人の行動の根源

にある基本的な傾向であり、一貫性のあるもの、恒常性のあるもの、独自

のものと言える。オルポートは「パーソナリティとは個人のうちにあって、

その個人に特徴的な行動や思考を決定する心理物理的体系の力学的体制

である」(Allport.1937)と述べている。(田口则良 2000)

人は好むと好むまいとかかわらず、さまざまな他人とのかかわりの中で

生活を営んでいる。その行動は単数ないし複数の他人に影響を与える一方

で、それら他人からも影響を受けている。そればかりか、無言の言語とも

いえるこれら被服は当然に仲間集団への帰属や受容を通してアイデンテ

ィティの獲得をめざす青年期の若者にも影響を及ぼしている。被服が自己

の一部を形成していると解されるからであるが、わけても、若者に自らの

性にもとづく役割意識や、大人になるという自覚をもたらすなど、新しい

自己を形成するきっかけになっていると考えられるからである。

いずれにしろ、上述したように、青年期も若者たちに及ぼす被服の持つ

意義および果たす役割は大きい。

1-4 被服意識と若者の暗黙のパーソナリティ観

ビューラー Buhler.Charlotte,1893-1974(神山 進 1999)は青年期を

二つに分け、前期の特徴「不機嫌、不安という否定的な態度での周囲に対

する反抗」とした。そして身体の状態もだんだん安定してくるにつれて、

成長しつつある力に対する喜びが増す 17 歳ごろを境とした肯定的傾向の

出現からの、「人生に対しても積極的に新たな価値を見出し、充実や生き

る喜びを実感する」といった点を後期の特色と提唱した。いわゆる、自分

はどんな自分を選ぶべきなのか、といった決断を求められるのが青年期な

のである。青年期をどのように過ごすかが、その後の人生に与える影響も

11

注目しなければならない。

この自己性格や能力というのは、社会の中で個人間の相互交渉を通じて

学習されるものである。それは、自己に対して他人が、どのような態度を

とるかという認識はもちろんのこと、価値観、欲求、欲望、情緒などの認

識から成り立っている。(藤原 1986)人は、自分自身で、自分は何なのか、

あるいは、どうなるべきなのか、さらに、つまり、ある時点で現実の意識

として存在しているかどうかに関わりなく、その時点で自分自身に対して

暗黙のうちにいだかれている(と見てよい)各種のイメージや感情の全体

構造、として考えられるものなのである。それから、外貌あるいは外見と

それを構成するうえで不可欠な衣服は人間の発達において、とりわけ青年

期では社会化の過程において、暗黙のパーソナリティの形成は非常に重要

な意味と役割をもつといえる。

また、(藤原 1983)は古くから、被服は伝統的に女性のもの、女性がか

かわるものという考え方があり、男性は被服によって、被服は大した意味

をもたなかったのであると提唱した。しかし、現在、衣生活が非常に豊か

になった今日は、男性の被服は従来と違い、女性と同じように、自分がど

う見えるかに関心を持つようになっている。被服が男女のそれぞれの性格

を反映し、表現し、あるいは高めるために用いられるということである。

ここの性格についての関心は高く、普段の会話においても自分や他人の性

格はよく取り上げられる。

日ごろ、大学生が個性的で色鮮やかな服装を着用するのを見かけること

が少なくない。なぜ若者たちが奇妙な服装を着たいのだろうか?彼らは何

を表現したいのだろうか?

幼稚園から高校まで、制服の制度が導入されているので、社会人になっ

ても、職業上の制服を着たり、ビジネス上の制服といえる背広を着ること

になる。こうして社会環境上の影響を長期に渡って受けるため、貴重なチ

ャンスに奇異な服装を着て、自分らしさを積極的に表現したいという気持

ちの表れかもしれない。大学生の時期に、いろんな服装を着て、チャレン

12

ジすることを楽しみながら、自分のイメージをアレンジすることは大学生

活の楽しさといわれる。こういった時期を選んで奇異な服装を着用してい

る大学生は責任感在る着装基準を重視しているのではないかと考えられ

る。

1- 5 本研究の焦点

どのような衣服を着るか、衣服をどのように着るかを決めるのは、人間

の心である。

装いに関する諸研究では、男性より女性のほうが、そして高齢者よりも

若者のほうが装いへの関心が高いことを示唆した結果が多い。(箱井

2001)外見上の魅力を高め、内面までも肯定的に演出することが可能とな

ろう。自己を自ら確認し、肯定的な方向への強化を促し、安定した自己イ

メージを形成することになろうことから、以下の論文の分析を焦点とする。

焦点1:被服意識に関して、女性は男性より外見の魅力を高めようという

意識が強いことがこの研究でも再現されるかどうかを検討する。

女性の外見、特に服装についてはこれまで多くの研究が蓄積されてきた。

被服に対する意識が男性よりも女性のほうが高く、特に外見への関心が高

いこと。女性は「存在や実在(Being)」に関係するといい、したがって、

「存在」を高める被服やその特徴は女らしさに、いっそう関係するという。

(神山 1999)女たちは、被服や外見を操作することによって、女らしい

自分を獲得できると考えてきた。こうした認知がこの研究で用いた被服意

識の尺度について、男女差異に当てはまるか否かを検討したい。

焦点2:服装系統の構造はどうなっているのか?それぞれの項目と被服意

識の構造の関係はどうなっているのかを分析する。

服装が類似しているかを分析するために、クラスタ分析を用いた。分類

した服装を具体化し、特に自己表現の際に被服意識への依存度が高い若者

に注目して人々の外見と様々な個人要因の関連を検討した上、更に外見に

かかわる被服意識を基に印象形成、多種多様な服装を外面から、内面的な

ものを明らかにすることを目的として研究する。

13

焦点3: 自分の性格や能力の認知次元の仕方の構造はどうなっているの

か?それぞれの因子得点と被服意識の構造との関係はどうなっているの

かを分析する。

本研究では認知次元の形容詞対に基づく自己のイメージ評定を被験者

に求める。この評定値を因子分析することにより、自己の認知がどのよう

な意味的次元によって成り立つかが分かるだろう。またそのようにして得

られる因子得点と被服意識の項目との関係を相関によって分析する。これ

らの分析によって被服意識と自己の側面との関係を探りたい。このときに

焦点となる1つは、被験者の個人差異による、被服意識の相違がある。

14

第二章 研究方法

2-1 調査の方法

2008 年10 月10 日(金)7・8 限の社会心理学入門を履修している埼玉

大学の1—-4年生を対象として調査を行った。社会心理学入門の授業時間の

一部をして、大学生の日常行動と生活意識に関する調査票Aと生活環境と

意識に関する調査票B二部質問紙をランダムに配布することとプライバ

シーの安全を全員に伝え、実施した回答時間は約20 分。なお、調査票配

布対象者が多数いたため、二つの教室を使用した。集計の結果、有効回答

者数は270 となった。

回答者の内訳は以下のとおりである。

被験者人数分布:

被験者は全部で270人、男性 160 人、女性 110人である。

性別

160 59.3 59.3 59.3

110 40.7 40.7 100.0

270 100.0 100.0

男性

女性

合計

有効度数 パーセント 有効パーセント 累積パーセント

・ 性別と学年

性別 と 学年 のクロス表

度数

120 21 8 10 159

85 12 11 2 110

205 33 19 12 269

男性

女性

性別

合計

1 2 3 4

学年

合計

1、1年次 2、2年次、3、3年次 4、4年次。

全体人数の分布を見れば、1年生と2年生が多いと見られる。

男性において人数が多い順番は、多い方から、1年生、次は2年生、4年生、

15

3年生の順である。

女性において人数が多い順番は、多い方から、1年生、次は2年生、3年生、

4年生である。

・ 性別と学部

性別 と 学部 のクロス表

度数

22 31 35 32 39 159

20 53 21 15 1 110

42 84 56 47 40 269

男性

女性

性別

合計

1 2 3 4 5

学部

合計

1、教養学部、2、教育学部、3、経済学部、4、理学部5、工学部、

以上の表のように人数が一番多いのは教育学部、次に経済学部、理学部、教

養学部、工学部である。

男性の場合は工学部、経済学部、理学部、教育学部、教養学部という順番で

ある。

女性の場合は、教育学部、経済学部、教養学部、理学部、工学部の順番であ

る。

大まかにみれば、男性は理系が多いが、女性は文系が多いという傾向にある。

2-2 質問紙の構成

F1 性別(1. 男性 2. 女性)

F2 学年(1. 1年次 2. 2年次 3. 3年次 4. 4年次 5. その他)

F3 所属学部(1. 教養学部 2. 教育学部 3. 経済学部 4. 理学部5.工

学部 6.その他)

F4 服装構成(1.カジュアル系 2.お姉系・お兄系 3.裏原系

4.ギャル系 5.B系・HIPHOP 系・ストリート系 6.モード系

7.パンク系・ゴスロリ系・ロック系 8.その他[____] )

F5自己満足(5段階)-4項目

Q1 自己概念(7段階)―40個形容詞対

16

Q2 被服意識尺度 (5段階)―33項目

Q3 セルフ・モニタリング尺度(5段階)―25項目

Q4 自尊感情尺度(5段階)―10項目

以上の項目から、F1「性別」、F2「所属学部」、F4「服装構成」

Q1「自己概念尺度」、Q2「被服意識尺度」を分析に使用する。

2-3 測定尺度

ここでは、測定に用いた尺度について説明する。

F4、服装構成:実際にその人が身につけるファッションと、個人

要因差はどのように関連しているのかを質問紙データをもとに検証

するため、普段生活の中に、よく着るファッションについて本論文

では大学生が一般的に選ぶ服装の形態についてインターネットを参

照しながら以下7種類の服装を提案した。

(お兄系)Http://fashion.blogmura.com/onii/

17

単に言うと、いわゆるお姉系(赤文字雑誌系)のファッションの男性バージ

ョンで、「セレブの模倣(真似)+モテ」が基本。具体例を上げるとベッカムや

ホストの服装。要するにハイブランドで身を固め、モテを意識した着こなしが

お兄系である。いちおう現在は「正統派(ゲイナー的)お兄系」と「ギャル男

(メンエグ)的お兄系」の大きく 2つに分類である。(フリー百科事典『ウィキ

ぺディア(Wikipedia)』)

お姉系(おねえけい)とは、日本にお

ける女性のファッションの傾向を表す言

葉である。いわゆる「ギャル系」のファ

ッションをしている層よりは年上(お姉

さん)の、大学生、若い会社員などが行

っているスタイルであることからこう呼

ばれる。

(http://fashion.blogmura.com/onee/)

(お姉系)

(裏原系)

東京・渋谷区の裏原宿(明治通りと旧渋谷

川歩道に挟まれた神宮 3~4丁目の地域)の、

ブティックやアクセサリーなどの店から発

信されるファッション傾向をさす。中心は

ヒップホップ系のストリートファッション

である。

http://shop.beard-ec.com/shopdetail

/003000000052/

18

(ギャル系)

http://www.separam.com/blouse/CU0770-index.html

ギャル(英語:gal)は、若い女性を意味するガール(girl)が訛ったもので

あり、日本では、活発な若い女性、ピチピチした心優しい若い女性の意味であ

り、1972 年に Gals という女性用ジーンズが発売された時から広まった。

http://ja.wikipedia.org/wiki

(B系)

http://shop.yumetenpo.jp/goods/d/wor

ldwide.ne.jp/g/1295/index.shtm この言

葉を使う多くの人はこの場合の B がブレ

イクダンス(B-boying)を指すことを知

らず、black(黒人の)あるいは bad と誤

解しており、そういったヒップホップ・

カルチャーに精通していない人たちに向

けての雑誌では頻繁に「B系」という言葉

が使われる。サイズの大きい服や、大き

めのネックレスやブレスレットなどの装

飾品などの服装が好まれる。

19

(モード系)

モード系本来はこちらの意味。モ

ードという言葉は流行やファッシ

ョンといった意味を持っており、

転じてコレクションにおける最新

の表現手法を指す。これに対して

市場におけるファッションの流

行・動向や売れ筋のことをトレン

ドという。モード系を扱っている

雑誌の名前に由来して「ハイファ

ッション系」と呼ばれることもあ

る。る。//ja.wikipedia.org/wiki/

1970 年代中頃、体制かしたロッコ

音楽の批判として、ロンドンに始

まった音楽。髪を原色に染めたり

する奇抜なファッションなどもい

う 。 ( 大 辞 林 )

http://store.shopping.yahoo.co.jp/harad

a/nb440.html#

(パンク系)

以上の7つのファッション系統を提案し、当てはまる項目全てに○

をつけてもらった。7 項目にあてはまらないものは8、その他とし、

別に記述式で回答してもらった。

20

1.カジュアル系

2.お姉・お兄系

3.裏原系

4.ギャル系

5.B系・HipHop系・ストリート系

6.モード系

7.パンク系・ゴスロリ系・ロック系

8.その他〔 〕

Q1、自己概念尺度

「自己概念」---- (self-concept)とは、所属、趣味、性格、あるいは特技、

能力など一つ一つの領域に関して、自分が自分に対して比較的持続して有する

概念、また、それらを統一的に表現できる本質的特性概念のことである。その

人から考えると性格とは個人の行動の根源にある基本的な傾向であり、一貫性

のあるもの、恒常性のあるもの、独自のものと言える。パーソナリティという

ことばには私たちの感じ方や考え方、行動の特徴という意味や私たちが社会の

中で演じている役割という意味が含まれている。(末永 1989)自己概念につい

ては井上・小林(1985)は、日本でSD法を用いて行われた 233 件の論文を集

め、さらにその中から形容詞対の因子負荷量の判明している文献を詳細に検討

した使用頻度が高かった 40 個形容詞対を選択して用いる。

各形容詞対について 7 段階評価で評定し、各項目ごとに 1 点から 7 点を与え

て得点化した。

Q2、被服意識尺度

被服に関する意識のことを被服意識(clothing consciousness)と呼ぶ。(心

理測定尺度 )本尺度は、先行研究の被服に関する尺度の項目のうち、日常の

被服着用・選択における諸行動に関する項目のみを抽出した。前述の先行研究

で使用された項目のうち抽出した項目はそれぞれ 33 項目中、19 項目を使用した

田中由美子(2006)と箱井(2001)の先行文献に基づいて、33 項目の中に 14 項

目を用いて、合計 33 項目がからなった。つぎに、被服意識に関する次元として

21

以下5次元を先見的に定めた。5段階評価で評定し、各項目ごとに 1点から 5点

を与えて得点かした。回答は「いつもそうでない」(1点)から「いつもそうだ」

(5点)までの 5段階で評定を求めた。

2-4 コンピュータへの入力

個々のデータは、SPSS に入力した。原則として、○がついた選択肢の番号を

入力した。Q9ように「いくつでも○をつけてください」というものの場合は、

該当する選択肢を1、該当しない選択肢を0と入力した。また、無記入を欠損

値として9を入力した。

22

第三章 結果

この章では、分析手順を次のように示す。

1、若者がよく着られる服装を分類するため、クラスター分析法で各服装系統

を似たものどうしでまとめよう。

2、被服意識各項目を加算尺度を作り、得られた各因子が決定したら、その下

位尺度の信頼性を検討する。さらに、男女間での違いが出ることも考えら

れるため、一元配置分散分析をおこなう。

3、被服意識と服装系統との間の関連を調べるために、従属変数を被服意識の

各因子として一元配置分散分析をおこなう。

4、被服意識と自己概念の間の関係を調べるために、自己概念40項目が因子分

析をおこない、抽出された因子と被服意識から抽出された因子との相関関

係をおこなう。どのような性格特性を持つ若者がどのように被服を意識す

るのかの説明要因を探る。

5、自己概念各因子を従属変数とし、服装系統を独立要因とし、分散分析を実

施する。この分析では、どのような服装を選択する若者がどのような自己

概念特性を表しているのかを調べるものである。

3-1 服装系統の分類

この調査対象者はまず、各服装系統について、どんな服装を選んでいること

をまとめよう。

ここでは階層的クラスター分析を用いた。

階層的クラスター分析 cluster analysis

質問項目、変数などの対象を、類似したものは同一集団にまとめ、類似しな

いものは別の集団にまとめ、分類するための方法。各集団をクラスターという。

ここではクラスターを構成する過程で、同じクラスターに所属した対象同士は

クラスター数が減少してもかならず同じクラスターに所属する階層的手法を用

いている。

23

[表3-1 クラスター分析]

平均連結 (グループ間)

垂直つらら

X X X X X X X X X X X X X X X

X X X X X X X X X X X X X X

X X X X X X X X X X X X X

X X X X X X X X X X X X

X X X X X X X X X X X

X X X X X X X X X X

X X X X X X X X X

クラスタの数1

2

3

4

5

6

7

その他

バンク系・ゴスロリ系

モード系

B系・HIP

HO

P

裏原系

ギャル系

お姉系・お兄系

カジュアル

ケース

このように算出した類似性指標の行列に階層的クラスター分析を適用し、ど

の項目とどの項目がクラスターになっているかを調べた。この分析で求められ

たデンドログラムが次のグラフ1である。

24

デンドログラム

* * * * * * H I E R A R C H I C A L C L U S T E R A N A L Y S I S * * * * * *

Dendrogram using Average Linkage (Between Groups)

Rescaled Distance Cluster Combine

C A S E 0 5 10 15 20 25

Label Num +---------+---------+---------+---------+---------+

F402 2

F404 4

F405 5

F406 6

F403 3

F407 7

F408 8

F401 1

[グラフ1]

相関係数は服装項目間の類似性の指標であり、この類似性が高いほど、項目

間の距離は近いと考える。また、距離が近いほど、その似た服装を選ぶ人が集

まるとみられる。

1、第1段階(F402)と第2段階(F404)が近いものとして結びつく。いわゆ

る、F402(お姉系・お兄系)とF404(ギャル系)は類似していることが分かる。

2、第3段階(F405)と第4段階(F406)と第5段階(F403)が近いものとして

結びつく。いわゆる、F405(B系・HIPHOP系・ストリート系)とF406(モード

系)とF403(裏原系)類似していることが分かる。

3、第6段落(F407)と第7段落(F408)が近いものとして結びつく。いわゆる、

F407(パンク系・ゴスロリ系・ロック系)F408(その他)は類似していること

が分かった。

25

4、第8段落は(F401)が独自の一つのグループができる。つまり、最後に結合

するのはF401(カジュアル系)である。

このデンドログラム図に分けてみると、各グループ独自の特徴が見えてくる

かもしれない。ではこの4つのグループに基づいて、この研究では項目間の距

離が近いほど、相関が高いので、そこで、一緒に類似性の服装を選ぶことが分

かった。

回答者の埼玉大学生のファッション系統を「カジュアル系」と「お姉系・お

兄系、ギャル系」と「B系・HIPHOP系・ストリート系・モード系」と「パンク

系・ゴスロリ系・ロック系・その他」という四つのカテゴリーに分類して研究

を進める。

3-2 加算尺度

まず、被服意識全体としての構造を検討するために、加算尺度を使用する項

目の定義を行う。

「被服意識」の構成要素を測定するための 33 項目について、5 因子が適切に解

釈できる因子として抽出された。

「被服意識」の構成因子:

第一因子には、Q2-01「お気に入りの服を着ると気分が高揚する」、Q2-02「あ

る服を着ると自信を抱くことができる」、Q2-03「新しい服を買うとわくわくす

る」、Q2-04「友人にセンスのいい服を着ていると思われたい」、Q2-05「私が他

人に与える印象は重要である」、Q2-06「同性よりも異性のために服を着る」、

Q2-07「服は人をつくると思う」の 7項目が構成されている。項目の内容から見

ると、服装に対する気分が高揚する、気分転化といったようなものが寄与され

ていたので、「気分依存性」と命名する。

第二因子には、Q2-08「どんな服が流行しているか雑誌や TV を見る」、Q2-09

「友人よりも早く最新のスタイルを手に入れたい」、Q2-10「他のものより服に

お金をかける」、Q2-11「ファッション雑誌で見たような服を買う」、Q2-12 「最

新ファッションについて知るために多くの店を見てまわる」、Q2-13「最新ファ

26

ッションを着るようにいつもこころがけている」、Q2-14「今どのようなファッ

ションがはやっているかについてよく知っている」の7項目が構成されている。

項目の内容から見ると、流行への関心、流行を採用する行動といったようなも

のが寄与されているので、「流行嗜好性」と命名する。

第三因子には、Q2-15「服の着心地の良さはファッションより重要である」、

Q2-16「丈夫で長持ちする服が良い」、Q2-17「保温性や通気性の良い服を選ぶ」、

Q2-18「衣服のデザインよりはそれを着たときの動きやすさを重視する」、Q2-19

「多少値段が高くても品質の良い被服を選ぶ」、Q2-20「自分にとって高価な衣

服は必要ないと思う」、Q2-21「華美さよりは機能性を重視して衣服を選ぶ」、の

7項目が構成されている。項目の内容から見ると、被服を着用する際その機能に

注目したものであり、「機能・品質」因子とした。

第四因子には Q2-22「その場に合った服装というものは必要であると思う」、

Q2-23「その時の仕事の内容にふさわしい服装をするようにしている」、Q2-24「不

謹慎だと人に思われる服装はしたくない」、Q2-25「人が(場違いな)服装をし

ているのを見るのは耐え難い」、Q2-26「周囲の人に失礼にならないような服を

着る」、Q2-27 自分に似合いそうにない服でもグループの間では同じような服装

をする」、Q2-28「社会場面における着装の基準を重視する」などの 7 項目が構

成されている。項目の内容から見ると、衣服の社会的な適切さの関する意識次

元として「TPO性能」因子を命名する。

第五因子には、Q2-29「大胆で体をあらわにした服装をする人とは友達になり

たくない」、Q2-30「えりぐりを深くカットした衣服を着ている人を見ると」、

Q2-31「シースルーのブラウスやシャツは体を見せすぎると思う」、Q2-32「新し

いスタイルの服が店に並べられているのを見つけても、かなり多くの人々が着

るようになるまで私はそれを買わない」、Q2-33「私は一般に保守的なスタイル

の衣服を選ぶ」などの 5項目から構成されているので、「慎み深い」と名づけた。

以上のことから、被服意識の下位尺度は「気分依存性」、「流行嗜好性」、「機

能・品質」、「TPO性能」「慎み深い」の 5尺度から構成されることが確認され

た。

27

3-3 信頼性分析

次に、測定に使用した、被服意識5つの下位尺度の信頼性について、分析をお

こなった。なお、信頼度を示す指標はα係数である。

[表3-2 信頼性 気分依存性]

信頼性統計量

.796 7

Cronbach のアルファ 項目の数

[表3-3 気分依存性の各項目合計統計量]

項目合計統計量

20.43 20.639 .599 .756

20.97 21.103 .536 .768

20.03 19.769 .630 .749

20.39 19.123 .702 .734

20.44 21.177 .493 .775

21.45 23.765 .253 .816

20.59 21.039 .482 .778

Q2-01

Q2-02

Q2-03

Q2-04

Q2-05

Q2-06

Q2-07

項目が削除された場合の尺度の平均値

項目が削除された場合の尺度の分散

修正済み項目合計相関

項目が削除された場合

の Cronbachのアルファ

α係数は.796という比較的高い値を示した。この値によってこの尺度は信頼

できるといえる。

[表3-4 信頼性 流行嗜好性]

信頼性統計量

.926 7

Cronbach のアルファ 項目の数

28

[表3-5 流行嗜好性の各項目合計統計量]

項目合計統計量

12.90 36.004 .798 .912

13.50 38.908 .747 .917

13.31 38.671 .677 .924

13.10 38.155 .761 .915

13.38 37.527 .812 .910

13.60 38.942 .812 .911

13.45 38.607 .782 .914

Q2-08

Q2-09

Q2-10

Q2-11

Q2-12

Q2-13

Q2-14

項目が削除された場合の尺度の平均値

項目が削除された場合の尺度の分散

修正済み項目合計相関

項目が削除された場合

の Cronbachのアルファ

α係数は.926というかなり高い値を示した。この値によってこの尺度は信頼

できるといえる。

[表3-6 信頼性 機能・品質]

信頼性統計量

.568 7

Cronbach のアルファ 項目の数

[表3-7 機能・品質の各項目合計統計量]

項目合計統計量

18.29 12.320 .302 .525

17.73 11.480 .431 .476

18.20 10.395 .648 .392

18.63 12.384 .321 .519

18.30 12.463 .214 .560

18.46 14.913 -.091 .681

18.46 12.055 .390 .495

Q2-15

Q2-16

Q2-17

Q2-18

Q2-19

Q2-20

Q2-21

項目が削除された場合の尺度の平均値

項目が削除された場合の尺度の分散

修正済み項目合計相関

項目が削除された場合

の Cronbachのアルファ

α係数は.568というやや高い値を示した。この値によってこの尺度は信頼で

きるといえる。

29

[表3-8 信頼性 TPO性能]

信頼性統計量

.761 7

Cronbach のアルファ 項目の数

[表3-9 TPO性能の各項目合計統計量]

項目合計統計量

23.26 15.093 .662 .696

23.49 15.037 .627 .701

23.41 14.745 .610 .702

24.07 14.878 .438 .746

23.70 15.081 .620 .703

23.46 18.976 .071 .810

24.25 16.188 .427 .742

Q2-22

Q2-23

Q2-24

Q2-25

Q2-26

Q2-27

Q2-28

項目が削除された場合の尺度の平均値

項目が削除された場合の尺度の分散

修正済み項目合計相関

項目が削除された場合

の Cronbachのアルファ

α係数は.761という比較的高い値を示した。この値によってこの尺度は信頼

できるといえる。

[表3-10 信頼性 慎み深い]

信頼性統計量

.755 5

Cronbach のアルファ 項目の数

[表3-11 慎み深い 各項目合計統計量]

項目合計統計量

10.39 9.912 .533 .707

10.45 9.817 .610 .679

10.27 9.877 .585 .688

10.47 10.465 .482 .725

9.56 10.827 .406 .752

Q2-29

Q2-30

Q2-31

Q2-32

Q2-33

項目が削除された場合の尺度の平均値

項目が削除された場合の尺度の分散

修正済み項目合計相関

項目が削除された場合

の Cronbachのアルファ

30

α係数は.755という比較的高い値を示した。この値によってこの尺度は信頼

できるといえる。

以上のことから、被服意識の下位尺度は「気分依存性」、「流行嗜好性」、

「機能・品質」、「TPO性能」、「慎み深い」の5つ尺度が信頼されることが

確認された。

3-4 被服意識と性別

性別は基本的次元であり、被服意識において差があるかを調べるために、男

女の差を考慮する必要があるため、ここでは、性別による差異を分析し分散分

析を実施する。

[表3-12 分散分析 性別 ]

記述統計

被服意識

159 98.0377 14.05004 1.11424 95.8370 100.2385 50.00 132.00

109 105.9174 13.04276 1.24927 103.4412 108.3937 77.00 144.00

268 101.2425 14.16559 .86530 99.5389 102.9462 50.00 144.00

男性

女性

合計

度数 平均値 標準偏差 標準誤差 下限 上限

平均値の 95% 信頼区間

最小値 最大値

[表3-13 分散分析 性別 ]

分散分析

被服意識

4015.205 1 4015.205 21.550 .000

49562.030 266 186.323

53577.235 267

グループ間

グループ内

合計

平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

31

男性 女性

性 別

98.00

100.00

102.00

104.00

106.00

被服意識の平均値

[図 3-1]

F値=21.550、有意確率.000と有意であった。被服意識は男女によって差があ

るという傾向が読み取れる。具体的には、男性の平均値は98.0377、女性の平均

値は105.9174である、データによると、女性のほうが値は高くて、全体的には

特に女性に被服への意識が強いことが分かった。

〔表3-14 分散分析 〕

「被服意識」の5つの下位尺度について、各尺度は性別によるどのように異な

るかを分析してみる。

記述統計

160 23.1688 5.63705 .44565 22.2886 24.0489 8.00 35.00

110 25.3273 4.34754 .41452 24.5057 26.1488 12.00 35.00

270 24.0481 5.25073 .31955 23.4190 24.6773 8.00 35.00

159 13.2830 6.21567 .49293 12.3094 14.2566 7.00 33.00

110 18.8000 7.20066 .68656 17.4393 20.1607 7.00 35.00

269 15.5390 7.15887 .43648 14.6797 16.3984 7.00 35.00

159 21.5283 3.92946 .31163 20.9128 22.1438 11.00 33.00

110 21.0818 3.98191 .37966 20.3293 21.8343 10.00 30.00

269 21.3457 3.94971 .24082 20.8716 21.8199 10.00 33.00

159 27.1069 4.87644 .38673 26.3431 27.8707 11.00 35.00

109 28.3486 3.89533 .37311 27.6091 29.0882 10.00 35.00

268 27.6119 4.53684 .27713 27.0663 28.1576 10.00 35.00

160 12.9438 3.73366 .29517 12.3608 13.5267 5.00 21.00

110 12.5545 4.06955 .38802 11.7855 13.3236 5.00 22.00

270 12.7852 3.87132 .23560 12.3213 13.2490 5.00 22.00

男性

女性

合計

男性

女性

合計

男性

女性

合計

男性

女性

合計

男性

女性

合計

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

度数 平均値 標準偏差 標準誤差 下限 上限

平均値の 95% 信頼区間

最小値 最大値

32

〔表3-15 分散分析 〕

分散分析

303.712 1 303.712 11.444 .001

7112.662 268 26.540

7416.374 269

1978.976 1 1978.976 44.947 .000

11755.864 267 44.029

13734.840 268

12.961 1 12.961 .830 .363

4167.886 267 15.610

4180.848 268

99.707 1 99.707 4.915 .027

5395.935 266 20.285

5495.642 267

9.874 1 9.874 .658 .418

4021.666 268 15.006

4031.541 269

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

性別において、「気分依存性」因子の評定による、平均値は男性(23.168)女

性(25.3273)を算出した。また、「気分依存性」は(F=11.444、 有意確率0.001

<0.05)有意であるので、男性より女性のほうが高くて、気分依存性において、

女性のほうが高いと有意に評定された。

「流行嗜好性」因子の評定によると、平均値は男性(13.2830)女性(18.8000)

を算出した。また、「流行嗜好性」は(F=44.947、有意確率.000<0.05)有意で

あるので、男性より女性のほうが高くて、流行嗜好性において、女性のほうが

高いと有意に評定された。

「機能・品質」因子の評定によると、平均値は男性(21.5283)女性(21.0818)

を算出した。機能・品質において有意確率0.363>0.05有意な結果はみられなか

った。

「TPO性能」因子の評定によると、平均値は男性(27.1069)女性(28.3486)

を算出した。また、「TPO性能」は(F=4.915、有意確率.027<0.05)有意で

あるので、男性より女性のほうが高くて、TPO性能において、女性のほうが

高いと有意に評定された。

「慎み深い」因子の評定によると、平均値は男性(12.9438)女性(12.5545)

33

を算出した。機能・品質において有意確率0.418>0.05有意な結果はみられなか

った。

以上、女性は男性よりも「被服意識」がいっそう顕著であった。具体的には

男性よりも女性のほうが被服を選ぶとき、「気分依存性」、「流行嗜好性」、

「TPO性能」を意識することを表している。結果からみると、焦点1は支持

された。

3-5 分散分析 被服意識と被服系統

ここでは、基本的な被服意識特性である「気分依存性」、「流行嗜好性」、

「機能・品質」「TPO性能」、「慎み深い」を従属変数とし、具体的服装の

「カジュアル系」群と「お姉系・お兄系、ギャル系」群と「裏原系」群と「B

系・HIPHOP系・ストリート系・モード系」群と「パンク系・ゴスロリ系・ロッ

ク系・その他」群との間にどのような要因による効果が有意であるかを評価す

るため、分散分析を求めて検討した。

[表3-16 分散分析 カジュアル群]

記述統計

56 22.8393 6.70624 .89616 21.0433 24.6352 9.00 35.00

214 24.3645 4.76665 .32584 23.7222 25.0068 8.00 35.00

270 24.0481 5.25073 .31955 23.4190 24.6773 8.00 35.00

55 14.1455 8.17498 1.10231 11.9354 16.3555 7.00 35.00

214 15.8972 6.84906 .46819 14.9743 16.8201 7.00 35.00

269 15.5390 7.15887 .43648 14.6797 16.3984 7.00 35.00

55 20.6727 4.76505 .64252 19.3846 21.9609 10.00 31.00

214 21.5187 3.70473 .25325 21.0195 22.0179 11.00 33.00

269 21.3457 3.94971 .24082 20.8716 21.8199 10.00 33.00

55 25.7455 5.38935 .72670 24.2885 27.2024 11.00 35.00

213 28.0939 4.16982 .28571 27.5307 28.6571 10.00 35.00

268 27.6119 4.53684 .27713 27.0663 28.1576 10.00 35.00

56 12.2143 4.43012 .59200 11.0279 13.4007 5.00 21.00

214 12.9346 3.70831 .25349 12.4349 13.4343 5.00 22.00

270 12.7852 3.87132 .23560 12.3213 13.2490 5.00 22.00

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

度数 平均値 標準偏差 標準誤差 下限 上限

平均値の 95% 信頼区間

最小値 最大値

34

[表3-17]

分散分析

103.250 1 103.250 3.784 .053

7313.124 268 27.288

7416.374 269

134.265 1 134.265 2.636 .106

13600.575 267 50.938

13734.840 268

31.313 1 31.313 2.015 .157

4149.534 267 15.541

4180.848 268

241.083 1 241.083 12.204 .001

5254.558 266 19.754

5495.642 267

23.028 1 23.028 1.540 .216

4008.513 268 14.957

4031.541 269

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

表3-16 記述統計量により、「気分依存性」の平均値は24、3645、「TP

O性能」の平均値は28、0939である。

表3-17「気分依存性」は(F=3.784有意確率はP<.053)有意である。「T

PO性能」は(F=12.204有意確率は.00<.005)有意である。

「カジュアル系」を選ぶ人は被服意識の中にある「気分依存性」と「TPO性

能」を考えることが分かった。

35

[表3-18 分散分析 お姉系・お兄系、ギャル系 ]

記述統計

241 23.6556 5.25135 .33827 22.9892 24.3220 8.00 35.00

29 27.3103 4.01874 .74626 25.7817 28.8390 17.00 33.00

270 24.0481 5.25073 .31955 23.4190 24.6773 8.00 35.00

240 15.3917 6.97910 .45050 14.5042 16.2791 7.00 35.00

29 16.7586 8.54674 1.58709 13.5076 20.0096 7.00 31.00

269 15.5390 7.15887 .43648 14.6797 16.3984 7.00 35.00

240 21.5500 3.78469 .24430 21.0687 22.0313 11.00 33.00

29 19.6552 4.87175 .90466 17.8021 21.5083 10.00 28.00

269 21.3457 3.94971 .24082 20.8716 21.8199 10.00 33.00

239 27.5690 4.47524 .28948 26.9988 28.1393 10.00 35.00

29 27.9655 5.08838 .94489 26.0300 29.9010 11.00 35.00

268 27.6119 4.53684 .27713 27.0663 28.1576 10.00 35.00

241 12.9917 3.76164 .24231 12.5144 13.4690 5.00 22.00

29 11.0690 4.39099 .81539 9.3987 12.7392 5.00 20.00

270 12.7852 3.87132 .23560 12.3213 13.2490 5.00 22.00

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

度数 平均値 標準偏差 標準誤差 下限 上限

平均値の 95% 信頼区間

最小値 最大値

[表3-19]

分散分析

345.752 1 345.752 13.105 .000

7070.622 268 26.383

7416.374 269

48.346 1 48.346 .943 .332

13686.494 267 51.260

13734.840 268

92.896 1 92.896 6.067 .014

4087.952 267 15.311

4180.848 268

4.065 1 4.065 .197 .658

5491.576 266 20.645

5495.642 267

95.695 1 95.695 6.516 .011

3935.845 268 14.686

4031.541 269

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

表3-18 記述統計量により、「気分依存性」の平均値は27、3103、「機能・

品質」の平均値は21、5500、「慎み深い」の平均値は12.9917である。

表3-19「気分依存性」は(F=13.105有意確率.000<.005)有意である。

「機能・品質」は(F=6.067有意確率は.014<.005)有意である。「慎み深い」

36

は(F=6.516有意確率は.011<.005)有意である。

「お姉・お兄系、ギャル系」を選ぶ人は被服意識の中にある「気分依存性」

を考えることが分かった。一方、「機能・品質」と「慎み深い」を考えないこと

が分かった。

[表3-20 分散分析 お裏原系・B系・モード系]

記述統計

245 23.7306 5.21906 .33343 23.0738 24.3874 8.00 35.00

25 27.1600 4.57967 .91593 25.2696 29.0504 14.00 35.00

270 24.0481 5.25073 .31955 23.4190 24.6773 8.00 35.00

245 14.8245 6.76522 .43221 13.9731 15.6758 7.00 35.00

24 22.8333 7.11805 1.45297 19.8276 25.8390 11.00 35.00

269 15.5390 7.15887 .43648 14.6797 16.3984 7.00 35.00

245 21.2939 3.96854 .25354 20.7945 21.7933 10.00 33.00

24 21.8750 3.79144 .77392 20.2740 23.4760 14.00 28.00

269 21.3457 3.94971 .24082 20.8716 21.8199 10.00 33.00

244 27.5902 4.57089 .29262 27.0138 28.1666 10.00 35.00

24 27.8333 4.25969 .86950 26.0346 29.6320 19.00 35.00

268 27.6119 4.53684 .27713 27.0663 28.1576 10.00 35.00

245 12.9102 3.85603 .24635 12.4250 13.3955 5.00 22.00

25 11.5600 3.88458 .77692 9.9565 13.1635 5.00 18.00

270 12.7852 3.87132 .23560 12.3213 13.2490 5.00 22.00

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

度数 平均値 標準偏差 標準誤差 下限 上限

平均値の 95% 信頼区間

最小値 最大値

[表3-21]

分散分析

266.794 1 266.794 10.001 .002

7149.580 268 26.678

7416.374 269

1402.054 1 1402.054 30.354 .000

12332.786 267 46.190

13734.840 268

7.382 1 7.382 .472 .493

4173.466 267 15.631

4180.848 268

1.292 1 1.292 .063 .803

5494.350 266 20.655

5495.642 267

41.356 1 41.356 2.778 .097

3990.184 268 14.889

4031.541 269

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

表3-20 記述統計量により、「気分依存性」の平均値は27.1600、「流行

嗜好性」の平均値は22.8333である。

37

表3-21「気分依存性」は(F=10.001有意確率.002<.005)有意である。

「流行嗜好性」は(F=30.354有意確率は.000<.005)有意である。

「お裏原系・B系・モード系」を選ぶ人は被服意識の中にある「気分依存性」

と「流行嗜好性」を考えることが分かった。

[表3-22 分散分析 パンク系・その他]

記述統計

248 24.5202 4.82399 .30632 23.9168 25.1235 8.00 35.00

22 18.7273 6.86733 1.46412 15.6825 21.7721 9.00 35.00

270 24.0481 5.25073 .31955 23.4190 24.6773 8.00 35.00

247 15.9919 7.04457 .44824 15.1090 16.8748 7.00 35.00

22 10.4545 6.57359 1.40149 7.5400 13.3691 7.00 35.00

269 15.5390 7.15887 .43648 14.6797 16.3984 7.00 35.00

247 21.4089 3.86126 .24569 20.9250 21.8928 10.00 33.00

22 20.6364 4.88482 1.04145 18.4706 22.8022 11.00 31.00

269 21.3457 3.94971 .24082 20.8716 21.8199 10.00 33.00

246 27.9187 4.30205 .27429 27.3784 28.4590 10.00 35.00

22 24.1818 5.68738 1.21255 21.6602 26.7035 11.00 33.00

268 27.6119 4.53684 .27713 27.0663 28.1576 10.00 35.00

248 12.9073 3.87291 .24593 12.4229 13.3916 5.00 22.00

22 11.4091 3.66007 .78033 9.7863 13.0319 5.00 20.00

270 12.7852 3.87132 .23560 12.3213 13.2490 5.00 22.00

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

度数 平均値 標準偏差 標準誤差 下限 上限

平均値の 95% 信頼区間

最小値 最大値

[表3-23]

分散分析

678.111 1 678.111 26.970 .000

6738.263 268 25.143

7416.374 269

619.402 1 619.402 12.610 .000

13115.438 267 49.121

13734.840 268

12.056 1 12.056 .772 .380

4168.791 267 15.613

4180.848 268

281.995 1 281.995 14.387 .000

5213.647 266 19.600

5495.642 267

45.356 1 45.356 3.049 .082

3986.185 268 14.874

4031.541 269

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

表3-22 記述統計量により、「気分依存性」の平均値は24.5202、「流行

38

嗜好性」の平均値は15.9919、「TPO性能」の平均値は27.9187である。

表3-23「気分依存性」は(F=26.970有意確率.000<.005)有意である。

「流行嗜好性」は(F=12.610有意確率.000<.005)有意である。「TPO性

能」は(F=14.387有意確率.000<0.005)有意である。

「パンク系とその他」を選ぶ人は被服意識の中に「気分依存性」と「流行嗜

好性」、「TPO性能」を考えないことが分かった。

以上のことから、服装系統を具体化し、その構造を明らかにするうえで、服

装系統と被服意識の各下位尺度との関連を検討した。

「カジュアル系」を選ぶ人は被服意識の中にある「気分依存性」と「TPO

性能」を考えることが分かった、

「お姉・お兄系、ギャル系」を選ぶ人は被服意識の中にある「気分依存性」

を考えることが分かった。

「お裏原系・B系・モード系」を選ぶ人は被服意識の中にある「気分依存性」

と「流行嗜好性」を考えることが分かった。

「パンク系とその他」を選ぶ人は被服意識の中に「気分依存性」と「流行嗜

好性」、「TPO性能」を考えないことが分かった。結果からみると、焦点2を

説明することができた。

それでは、被服の選択や着装のしかたによって人の外観を変え、それによっ

て、自己内面的の側面にも影響を与えるので、その若者自身の性格特性が被服

意識を通してどのように自己概念に表出されることが検討することが必要であ

る。

3-6 因子分析

互いに相関の高い項目を選択すれば等質性の高い尺度が得られることになる

ので、全項目間の相関行列に対して因子分析を行ってみる。

ここでは、実際に分析して得られた結果を記述する。最初に、自分の性格や

能力において40対形容詞組の評定値をデータとして因子分析を行い、その中か

ら記述した40の形容詞対について、被験者が評定した結果を因子分析により検

39

討する。例えば、質問項目への回答変数間の相関関係をもとに導き出されるた

め、どのような潜在的な因子から影響を受けているかを考察し、それにもとづ

いて各因子に名前をつける。

40

[表3-24 自己概念の因子分析 (40項目)]

回転後の因子行列(a)

Ⅰ Ⅱ Ⅲ

Q1-08活発的 .81 -.02 .15Q1-31外向的な .78 -.03 .24Q1-04積極的な .75 .10 .06Q1-40社交的 .73 -.06 .29Q1-32元気的 .72 .10 .28Q1-01明るい .70 -.11 .34Q1-18おしゃべりな .60 -.23 .24Q1-24意欲的な .59 .30 .07Q1-05強い .58 .40 -.14Q1-14頼もしい .55 .42 .03Q1-37面白い .53 -.01 .23Q1-36派手な .52 .02 .05Q1-15たくましい .48 .43 -.03Q1-06静かな .48 .41 .00Q1-10良い .47 .37 .40Q1-13気持ちよい .47 .28 .25Q1-09すきな .45 .31 .20Q1-35美しい .37 .23 .22Q1-33幸福的 .36 .09 .16Q1-07陽気 .33 .00 .21Q1-22理性的 -.12 .65 .07Q1-23落ち着く -.18 .53 .14Q1-39慎重な -.06 .51 .10Q1-19きちんとした .22 .51 .17Q1-21責任感のある .23 .45 .19Q1-27勇敢な .43 .44 .07Q1-16まじめな -.01 .41 .31Q1-12鋭い .36 .37 .02Q1-34敏感な .25 .35 .12Q1-38複雑 -.03 .22 -.14Q1-30思いやりのある .19 .28 .64Q1-03暖かい .36 -.02 .63Q1-28やさしい .10 .15 .62Q1-11親切な .30 .22 .58Q1-29丸い .18 -.06 .50Q1-02やわらかい .36 -.07 .45Q1-25かわいらしい .28 .13 .41Q1-26のんびりした -.08 .11 .37Q1-17安定した .12 .34 .34Q1-20素直な .14 .28 .32

因子変換相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ

Ⅰ .88 .24 .42Ⅱ -.36 .90 .25Ⅲ -.32 -.37 .87

因子抽出法: 最尤法 回転法: Kaiser の正規化を伴うバリマックス法

41

以上「自己概念」の構成要素を測定するための40対項目について、最尤法よ

り因子の抽出が行われた。固有値の変化が緩やかになる点を目安に因子を抽出

し、バリマックス回転を実施した。各因子を構成する項目の抽出に当たっては

因子負荷量が.30以上を基準にした。因子数を決定するときには、初期の固有値

の変化の推移から見ると、3因子が適切に解釈できる因子として抽出された。

自己の性格や能力への評価は大まかには「活発的」、「理性的」、「親切的」

の3 因子で表現されることを表3-24に示す。

第1 因子は「活発的」因子といえる。負荷量が高いのは、活発的な(0.81)、

外向的な(0.78)、積極的な(0.75)、社交的(0.73)、元気的(0.72)、明る

い(0.70)、おしゃべりな(0.60)、意欲的な(0.59)、強い(0.58)、頼もしい(0.55)、

面白い(0.53)、派手な(0.52)たくましい(0.48)、静かな(0.48)、良い(0.47)、

気持ちよい(0.47)、すきな(0.45)、美しい(0.37)、幸福的(0.36)、陽

気(0.33)である(高→低、順次で)、以上の各因子負荷量が高いので項目の

内容から見ると自分の性格と能力に対する「活発的」「外向的」といったよう

なものに高い負荷量が付与されたので、「活発的」と命名する。

第2 因子は「理性的」因子といえる。負荷量が高いのは理性的(0.65)、落ち

着く(0.53)、慎重な(0.51)、きちんとした(0.51)、責任感のある(0.45)、 勇敢

な(0.44)、まじめな(0.41)、鋭い(0.37)、敏感な(0.35)、複雑(0.22)

である。(高→低、順次で)、以上の各因子負荷量が高い、項目の内容から見

ると自分の性格と能力に対する「理性的」「落ち着く」「慎重な」といったよ

うなものに高い負荷量が付与されたので、理性的(0.65) の負荷量が高いため、

これらの評定は第2 因子「理性的」と命名した。

第3因子は「親切的」因子といえる。負荷量が高いのは思いやりのある(0.65)、

暖かい(0.63)、やさしい(0.62)、親切な(0.58)、やわらかい(0.45) 、かわいら

しい(0.41)のんびりした(0.37)である。(高→低、順次で)、 以上の各因

子負荷量が高いため、項目の内容から見ると自分の性格と能力に対する「思い

やりのある」、「やさしい」、「親切な」といったようなものに高い負荷量が

付与されたので、「親切な」と命名する。

42

[3-7 因子分析の結果と被服意識との相関分析]

この節では自己への評定による因子分析の結果と被服意識5つ下位尺度がど

のように関連するかを確認したい。自己概念には様々な側面があり、活発的と

理性的のように、自己への性格や態度を持ち合わせているため、被服意識尺度

ごとに、影響を与える要因は異なってくると予想される。

[表3-25 相関分析 活発的]

相関係数

1 .259** .265** -.005 -.001 -.202**

.000 .000 .931 .984 .001

268 268 267 267 266 268

.259** 1 .496** -.007 .428** -.027

.000 .000 .915 .000 .657

268 270 269 269 268 270

.265** .496** 1 -.080 .119 -.109

.000 .000 .189 .052 .074

267 269 269 269 268 269

-.005 -.007 -.080 1 .247** .181**

.931 .915 .189 .000 .003

267 269 269 269 268 269

-.001 .428** .119 .247** 1 .128*

.984 .000 .052 .000 .036

266 268 268 268 268 268

-.202** -.027 -.109 .181** .128* 1

.001 .657 .074 .003 .036

268 270 269 269 268 270

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

活発

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

活発 気分依存性 流行嗜好性 機能・品質 TPO性能 慎み深い

相関係数は 1% 水準で有意 (両側) です。**.

相関係数は 5% 水準で有意 (両側) です。*.

「活発的」と「気分依存性」、「流行嗜好性」との間で有意な正の相関が示さ

れた。他方、「慎み深い」ではと負の相関を示していた。つまり、活発的の人

が高い人ほど、被服による気分への影響が大きいと言える。また、活発の人は

流行しているものを取り入れ、より自分を引き立て、自分らしさが表現できる

かどうかを考えて着装している。このように気分高揚や自信をもつといった内

43

面で構成されることが推測できる。一方、活発的な人は「慎み深い」への意識

が低いということである。保守的なスタイルの衣服やあまり目立たない、「慎

み深い」服装をしないことが活発的な人の特徴である。

[表3-26 相関分析 理性的]

相関係数

1 .067 -.037 .021 .124* -.009

.277 .548 .729 .044 .885

268 268 267 267 266 268

.067 1 .496** -.007 .428** -.027

.277 .000 .915 .000 .657

268 270 269 269 268 270

-.037 .496** 1 -.080 .119 -.109

.548 .000 .189 .052 .074

267 269 269 269 268 269

.021 -.007 -.080 1 .247** .181**

.729 .915 .189 .000 .003

267 269 269 269 268 269

.124* .428** .119 .247** 1 .128*

.044 .000 .052 .000 .036

266 268 268 268 268 268

-.009 -.027 -.109 .181** .128* 1

.885 .657 .074 .003 .036

268 270 269 269 268 270

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

理性

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

理性 気分依存性 流行嗜好性 機能・品質 TPO性能 慎み深い

相関係数は 5% 水準で有意 (両側) です。*.

相関係数は 1% 水準で有意 (両側) です。**.

「理性」と「TPO性能」との間で有意な正の相関が示された。つまり、理性

的な人が、被服による「TPO性能」への影響が大きいと言える。いわゆる、

時と場所と機会への配慮を示す、理性的な人はどのような場面でも、伝統やし

きたりにしたがい、その場面の雰囲気に合わせて、自分の年齢、職業や地位・

立場にふさわしいかどうかをよく考えて、服を選択、着用している。理性的な

人は社会的な場面に対応した着装基準を重視する。

44

[ 表3-27 相関分析 親切な]

相関係数

1 .154* .110 -.067 .001 -.103

.011 .073 .278 .989 .092

268 268 267 267 266 268

.154* 1 .496** -.007 .428** -.027

.011 .000 .915 .000 .657

268 270 269 269 268 270

.110 .496** 1 -.080 .119 -.109

.073 .000 .189 .052 .074

267 269 269 269 268 269

-.067 -.007 -.080 1 .247** .181**

.278 .915 .189 .000 .003

267 269 269 269 268 269

.001 .428** .119 .247** 1 .128*

.989 .000 .052 .000 .036

266 268 268 268 268 268

-.103 -.027 -.109 .181** .128* 1

.092 .657 .074 .003 .036

268 270 269 269 268 270

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

Pearson の相関係数

有意確率 (両側)

N

親切

気分依存性

流行嗜好性

機能・品質

TPO性能

慎み深い

親切 気分依存性 流行嗜好性 機能・品質 TPO性能 慎み深い

相関係数は 5% 水準で有意 (両側) です。*.

相関係数は 1% 水準で有意 (両側) です。**.

「親切的」と「気分依存性」との間で有意な正の相関が認められた。つまり、

親切的の数値が高い人ほど、被服への気分による影響が大きいと言える。以上

の分析を参考に、被服意識についての因子と自己概念を構成する因子がお互い

にどのように関連するかを相関分析して検討した。

「気分依存性」、「流行嗜好性」と「活発的」との間で有意な正の相関が示

された。

「TPO性能」と「理性的」との間で有意な正の相関が示された。

「気分依存性」と「親切的」との間で有意な正の相関が認められた。

焦点3を説明することができた。

ここで別途検討することを必要があると考えられるのは、3-5 被服意識と被

服系統との分析結果によれば「カジュアル系」を着用する人は「気分依存性」

と「TPO性能」を重視しているが、更に「カジュアル系」を選ぶ人は「活発

45

的」や「理性的」の性格特徴を持っていると言えるのだろうか? また、「お

姉・お兄系、ギャル系」や「お裏原系・B系・モード系」を着用する人は「気

分依存性」を重視しているが、更に「お姉・お兄系、ギャル系」や「お裏原系・

B系・モード系」を選ぶ人は「活発的」や「親切的」の性格特徴を持っている

と言えるのだろうか?などである。

[3-8 一元配置 自己概念と被服系統との関連性]

ここでは、他者との相互作用を通して自己への態度や性格が形成、発達した

とされる「自己概念」に注目し、特にSD法により評価を行う。次に、その結

果を因子分析して抽出した3因子と被服系統との間にどのような関連性がある

かを一元配置分散分析を用いて検討した。その結果を、以下の表に示す。

[表3-28 カジュアル系 ]

記述統計

54 17.0741 6.73165 .91606 15.2367 18.9115 4.00 28.00

214 15.3645 5.53078 .37808 14.6192 16.1097 4.00 28.00

268 15.7090 5.81980 .35550 15.0090 16.4089 4.00 28.00

54 16.2593 5.87025 .79884 14.6570 17.8615 4.00 27.00

214 17.3318 4.47604 .30598 16.7286 17.9349 7.00 28.00

268 17.1157 4.79677 .29301 16.5388 17.6926 4.00 28.00

55 17.8545 5.17264 .69748 16.4562 19.2529 4.00 28.00

213 17.7606 4.21408 .28874 17.1914 18.3297 6.00 28.00

268 17.7799 4.41737 .26983 17.2486 18.3111 4.00 28.00

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

活発

理性

親切

度数 平均値 標準偏差 標準誤差 下限 上限

平均値の 95% 信頼区間

最小値 最大値

46

[表3-29]

分散分析

126.025 1 126.025 3.759 .054

8917.274 266 33.524

9043.299 267

49.600 1 49.600 2.165 .142

6093.814 266 22.909

6143.414 267

.386 1 .386 .020 .888

5209.625 266 19.585

5210.011 267

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

活発

理性

親切

平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

表3-28 記述統計量により、「活発的」の平均値は17,0741である。

表3-29「活発的」は(F=3.759有意確率はP<.054)有意である。

「カジュアル系」を着用する人は「活発的」ではないことが分かった。また、「カ

ジュアル系」を着用する人には「理性的」と「親切」の有意の結果が認められ

なかった。結果を分析してみると、「カジュアル系」を着用する人が簡単に「活

発的」、「理性的」の人とは言えないことが分かった。カジュアル系を着用する

人は普段の生活の中で、気分依存や気分高揚などという気分転換のために、「活

発的」の持つ特徴が現れる。また、交流する相手や周囲の雰囲気に応じて自己

表出行動を調整するため、理知的に行動することはカジュアル系を着用する人

の一つの特徴である。この結果からでは、「カジュアル系」の服装を着用する

ことと性格との相関が単純に特定できず、ある要因を介して影響を与えるとい

う間接効果についての可能性を知ることができるのみである。つまり、「カジュ

アル系」の服装を選ぶ人は被服系統と自己概念が幅広く分散している多面性を

持った集団だと考えられる。あまり、固定されていない考え方と見られる。

47

[ 表3-30 お兄、お姉系・ギャル系]

記述統計

239 15.4268 5.77100 .37330 14.6914 16.1622 4.00 28.00

29 18.0345 5.79706 1.07649 15.8294 20.2396 6.00 28.00

268 15.7090 5.81980 .35550 15.0090 16.4089 4.00 28.00

239 16.9916 4.71542 .30502 16.3908 17.5925 4.00 28.00

29 18.1379 5.40320 1.00335 16.0827 20.1932 9.00 26.00

268 17.1157 4.79677 .29301 16.5388 17.6926 4.00 28.00

239 17.6695 4.41773 .28576 17.1065 18.2324 4.00 28.00

29 18.6897 4.38425 .81414 17.0220 20.3573 11.00 28.00

268 17.7799 4.41737 .26983 17.2486 18.3111 4.00 28.00

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

活発

理性

親切

度数 平均値 標準偏差 標準誤差 下限 上限

平均値の 95% 信頼区間

最小値 最大値

[表3-31]

分散分析

175.864 1 175.864 5.275 .022

8867.434 266 33.336

9043.299 267

33.983 1 33.983 1.480 .225

6109.432 266 22.968

6143.414 267

26.917 1 26.917 1.381 .241

5183.094 266 19.485

5210.011 267

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

活発

理性

親切

平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

表3-30 記述統計量により、「活発的」の平均値は18,0345である。

表3-31「活発的」は(F=5,275有意確率はP<.022)有意である。

「お兄、お姉系・ギャル系」を着用する人は「活発的」という性格の特徴をも

つことが分かった。また、「お兄、お姉系・ギャル系」を着用する人は「理性的」

や「親切的」との間に有意の結果が認められなかった。本分析の結果、「お兄、

お姉系・ギャル系」を着用する人は自分がにぎやかで積極的に活動するという

ことが分かった。気軽に熟慮せず、活発に活動する、明るい自分を表現しよう

とするのが[お兄、お姉系・ギャル系]の特徴と考えられる。

48

[表3-32 裏原系・B系・モード系]

記述統計

244 15.3443 5.69856 .36481 14.6257 16.0629 4.00 28.00

24 19.4167 5.86008 1.19618 16.9422 21.8912 6.00 28.00

268 15.7090 5.81980 .35550 15.0090 16.4089 4.00 28.00

244 17.0492 4.73817 .30333 16.4517 17.6467 4.00 28.00

24 17.7917 5.42121 1.10660 15.5025 20.0808 8.00 28.00

268 17.1157 4.79677 .29301 16.5388 17.6926 4.00 28.00

243 17.7160 4.44591 .28521 17.1542 18.2779 4.00 28.00

25 18.4000 4.16333 .83267 16.6815 20.1185 8.00 24.00

268 17.7799 4.41737 .26983 17.2486 18.3111 4.00 28.00

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

活発

理性

親切

度数 平均値 標準偏差 標準誤差 下限 上限

平均値の 95% 信頼区間

最小値 最大値

[表3-33]

分散分析

362.383 1 362.383 11.104 .001

8680.915 266 32.635

9043.299 267

12.046 1 12.046 .523 .470

6131.368 266 23.050

6143.414 267

10.604 1 10.604 .542 .462

5199.407 266 19.547

5210.011 267

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

活発

理性

親切

平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

表3-32 記述統計量により、「活発的」の平均値は19,4167である。

表3-33「活発的」は(F=11,104有意確率はP<.001)有意である。

「裏原系・B系・モード系」を着用する人は「活発的」という性格の特徴を持

つことが分かった。また、「お裏原系・B系・モード系」を着用する人と「理性

的」や「親切的」との間に有意の結果が認められなかった。本分析の結果、「お

兄、お姉系・ギャル系」と「裏原系・B系・モード系」の結果は同じで、着用

する人は、にぎやかで積極的に活動するということが分かった。気軽に熟慮せ

49

ずに、活発に活動する、明るい自分を表現しようとするのが[裏原系・B系・モ

ード系]の特徴と考えられる。つまり、お兄、お姉系・ギャル系、裏原系、B系、

モード系という個性的な服装を着用する人々は、同じタイプの被服意識が集中

している集団で、着用する服装のタイプと特定の自己概念との関係が、ある程

度、固定されていると見られる。

[表3-34 パンク系・その他]

記述統計

246 15.7602 5.72315 .36489 15.0414 16.4789 4.00 28.00

22 15.1364 6.93710 1.47900 12.0606 18.2121 4.00 28.00

268 15.7090 5.81980 .35550 15.0090 16.4089 4.00 28.00

246 17.4837 4.64030 .29585 16.9010 18.0665 7.00 28.00

22 13.0000 4.69042 1.00000 10.9204 15.0796 4.00 20.00

268 17.1157 4.79677 .29301 16.5388 17.6926 4.00 28.00

246 17.8374 4.21440 .26870 17.3081 18.3667 6.00 28.00

22 17.1364 6.35681 1.35528 14.3179 19.9548 4.00 28.00

268 17.7799 4.41737 .26983 17.2486 18.3111 4.00 28.00

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

.00

1.00

合計

活発

理性

親切

度数 平均値 標準偏差 標準誤差 下限 上限

平均値の 95% 信頼区間

最小値 最大値

[表3-35]

分散分析

7.858 1 7.858 .231 .631

9035.441 266 33.968

9043.299 267

405.979 1 405.979 18.822 .000

5737.435 266 21.569

6143.414 267

9.924 1 9.924 .508 .477

5200.087 266 19.549

5210.011 267

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

グループ間

グループ内

合計

活発

理性

親切

平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率

表3-34 記述統計量により、「理性的」の平均値は17,4837である。

表3-35「理性的」は(F=18.822有意確率はP<.000)有意である。

「パンク系・その他」の服装を選ぶ人は「理性的」ではないことが分かった。「パ

ンク系・その他」の服装を選ぶ人は「理性的」ではない性格を持っているので、

明るく積極的に行動することと考えられる。

50

第4章 考察

本研究では、埼玉大學学生を対象に、大学生の服装に注目して、彼らの日常

生活における好みの服装を分類、各個人の性格特性の評価から、被服意識の構

造「気分依存性、流行嗜好性、TPO性能、機能・品質、慎み深い」との関係

を検討してきた。

4-1被服意識認知の下位尺度から得られた知見

1、被服意識*性別

分析を行なった結果から、性別が被服意識に影響を与える要因であることが

判明した。具体的には、女性の方が被服意識が高くなるという結果が出た。し

たがって、焦点①「女性の方が、男性に比べ被服意識が高い。」は支持される。

これは、一般的な見解と一致しているといえる。世間でも、人間は自分の意識、

表情、行動などを、他人からどの様に見られているかを意識する傾向がある。

それらを自身でコントロールしようとする時、被服は非常に簡単で実行しやす

い方法であるといえる。そのため人は被服に関心を持つわけであるが、特に女

性の方が被服関心が強いということが分かった。女性は対人的外観に気を配っ

ているため、男性より女性のほうが積極的に多くの人との接触を好み、社会意

識が強いのではないかと考えられる。服装によって自己の個性や美しさを誇示

し賞賛されることができると思い込んでいる若い女性にとって被服行動は女ら

しさを表現するための有力な手段であると捉えられることもあるだろう。この

ような社会の認知に沿って行動し続けた結果、女性の方が被服意識が高くなる

のは必然といえる。

2、被服意識の下位尺度ごとの分析*性別

被服意識尺度を作成し、性別(男・女)ごとに分析した。結果は、女性は男

性よりも「被服意識」がいっそう顕著であった。具体的には男性よりも女性の

ほうが服装を選ぶときに、「気分依存性」、「流行嗜好性」、「TPO性能」を強

く意識することを示していた。このように外面的で表層的といった意識は女性

51

のほうが高いことが示された。男性より女性のほうが、気分依存性の影響を受

け、流行を取り入れるのにも積極的で、社会的場面における着装基準への意識

も高く、被服との関係がより密接であることが確認されている。

4-2 被服系統と被服意識との関係に関する知見

1、「カジュアル系」の服装を選ぶ人は被服意識の中にある「気分依存性」と

「TPO性能」を重視する傾向がある。

2、「お姉・お兄系、ギャル系」の服装を選ぶ人は被服意識の中にある「気

分依存性」を重視することが分かった。

3、「お裏原系・B系・モード系」の服装を選ぶ人は被服意識の中にある「気

分依存性」と「流行嗜好性」を重視することが分かった。

4、「パンク系・その他」の服装を選ぶ人は被服意識の中にある「気分依存

性」と「流行嗜好性」、「TPO性能」を重視しないことが分かった。

焦点2は服装系統の構造と被服意識との関係はどうなっているのかを分

析することを問題にしている。この点ではこの結果は多く実験結果が記録

されている。

「カジュアル系」を選ぶ人は「気分依存性」と「TPO性能」を重視するこ

とから見ると、「気分依存性」には服による他者への印象に関する内容も含まれ

ていることで気分の高揚を図る一方、被服による気分への影響は自己の内的側

面への意識の高まりともなり、自己を自ら確認し、肯定的な方向への強化を促

し、安定した自己イメージを形成することが可能になるのである。「TPO性能」

状況に合わせて他者に与える自己の印象を操作するために被服の機能を効果的

に活用するという意識が関わっており、こうして、服装を着用するときに、適

切性に注意を払うため、妥当な人間性であると思われる。

「お姉・お兄系、ギャル系」を選ぶ人は「気分依存性」を重視することから

見ると、「気分依存性」には服による他者への印象に関する内容も含まれている

ことで気分の高揚を図る一方、被服による気分への影響は自己の内的側面への

意識の高まりともなり、自己を自ら確認し、肯定的な方向への強化を促し、安

52

定した自己イメージを形成することになるだろう。「お裏原系・B系・モード系」

を選ぶ人は「お姉・お兄系、ギャル系」と同じ「気分依存性」のことを持つ。

さらに「流行嗜好性」を重視するので、流行を取り入れるのにも積極的で、常

に目新しいものを求め、派手な服装をしておしゃれを楽しむ傾向にあるこので

はないかと考えられる。

「パンク系・その他」の服装を選ぶ人は「気分依存性」と「流行嗜好性」、「T

PO性能」を重視しないことが分かった。気分からの影響を受けず流行の服を

着たいと思わず、TPOに応じて服装を工夫することもあまり意識しなかった

と考えられる。社会意識が低いのではないかと考えられる。

4-3 自己概念と被服意識との関係に関する知見

焦点3は自分の性格や態度の構造が被服意識にどのような違いをもたらし

ているかと意味している。結果から言えば、「気分依存性」、「流行嗜好性」

と「活発的」との間で有意な正の相関が示された。「TPO性能」と「理性的」

との間で有意な正の相関が示された。「気分依存性」と「親切的」との間で有

意な正の相関が認められた。

この論文で述べたように、「カジュアル系」を着用する人は「活発的」ではな

いため、「カジュアル系」を着用する人は「活発的」、「理性的」の人と断言でき

ない。「カジュアル系」の服装を着用する人は単純に性格との相関が判断でき

ず、ある要因を介して影響を与えるという間接効果については知ることができ

る。つまり、「カジュアル系」の服装を選ぶ人は被服系統と自己概念が幅広く分

散している多様性を持った集団だと考えられる。あまり、固定されていない考

え方と見られる。「お兄、お姉系・ギャル系、裏原系・B系・モード系、」の服

装を着用する人は被験者外的な要因よりも自己の価値観、信念、など内的な要

因によって行動するため、状況間で比較的一貫性をもった社会的行動を表すと

考えられる。

53

4-4 まとめ

1、カジュアル系を選択する若者が被服意識が分散して、多様性の性格を持つ、

着る服装と性格との関係が固定されていないとみられる。これはやはり服

装の選択が外的な影響よりもその人の内面が強く出ているということがで

きる。

2、お姉系、お兄系・ギャル系、お裏原系、B系、モード系など、いわゆる個

性的な服装を選ぶ人は被服意識が集中しており、服装系統と性格特性との

関係が固定されていると見られる。

大学生を対象として調査を行った。大学生という時期は人生の中でその人の

個性を最も服装を通して表現しやすい時期のひとつである。服装の選択が自由

なために服装による気分の転換を容易に図ることができるためと思われる。女

性は男性よりも「被服意識」がいっそう顕著であった。被服は美しいことが若

者にとって非常に大切であることを示している。被服の外観が良いことが、機

能や品質よりも大切な要素になると報告されていた。また、カジュアル系を選

択する若者が被服による気分への影響を与えるだけではなく、社会的な適切さ、

自己に適合するような慎重な行動が同時に内在することが伺える、どのような

被服をまとうのか注意を払うといった自己に適合するような慎重な行動が同時

に内在するのはカジュアル系な服装である。個性的な服装を選択する若者たち

は自分と他者との区別を明確するより、むしろ自分らしさを表現しようとする

傾向がある。

これらのことから着る服そのものを楽しむというよりは、服によってもたら

される個人要因があることこそが、被服意識が個人心理的に与える効果の最た

るものである。もっと端的に表現するならば、「からだ」と「こころ」を守るた

めの被服とでも言えようか。

54

おわりに:

この論文の作成にあたっては、多くの方々に協力していただきました。8ペ

ージにもおよぶ長い質問紙に、疲労の蓄積した試験時間中に回答してくださっ

た学生のみなさま、ありがとうございました。

また、テーマの選定から質問紙の作成、論文の作成から仕上げまで、作業を

共にしてくださった研究室のメンバーにも感謝しています。

最後に、ご多忙の中、最後の最後まで熱心に指導してくださった高木英至先

生に心から感謝しています。この場を借りてお礼を言いたいと思います。本当

にありがとうございました。

55

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