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1 ベクトルの内積と外積
R を実数全体の集合とし, Rn によって n次元数ベクトル空間を表す.
定義 1.1 x, y を第 j 成分がそれぞれ xj, yj である n次元数ベクトルとする.
(1) x と y の内積 (x,y) を (x,y) =n∑j=1
xjyj によって定義する.
(2) x の長さ ∥x∥ を ∥x∥ =√(x,x) =
√n∑j=1
x2j によって定義する.
(3) n = 3 の場合, x と y の外積 x× y を x× y =
x2y3 − x3y2
−x1y3 + x3y1
x1y2 − x2y1
によって定義する.
次の結果は内積の定義から容易に確かめられる.
命題 1.2 x,y, z ∈ Rn, r ∈ R とするとき, 次のことが成り立つ.
(1) (x+ y, z) = (x, z) + (y, z), (x,y + z) = (x,y) + (x, z).
(2) (rx,y) = r(x,y) = (x, ry).
(3) (y,x) = (x,y).
(4) (x,x) ≧ 0 であり, x = 0 ならば (x,x) > 0 である.
命題 1.3 x ∈ Rn の第 i 成分を xi とするとき, |xi| ≦ ∥x∥ ≦ |x1|+ |x2|+ · · ·+ |xn| が成り立つ.
定理 1.4 x,y ∈ Rn のとき, 以下の不等式が成り立つ.
(1) |(x,y)| ≦ ∥x∥ ∥y∥ (シュワルツの不等式). (2) ∥x+ y∥ ≦ ∥x∥+ ∥y∥ (三角不等式).
x =
x1x2x3
,y =
y1y2y3
, z =
z1z2z3
∈ R3 に対し, det(x,y, z) によって, x, y, z をそれぞれ第 1列, 第 2列, 第
3列とする 3次正方行列の行列式
∣∣∣∣∣∣∣x1 y1 z1
x2 y2 z2
x3 y3 z3
∣∣∣∣∣∣∣ = x1y2z3 + x2y3z1 + x3y1z2 − x1y3z2 − x2y1z3 − x3y2z1 を表す.
定義 1.5 R3 の基底 x,y, z に対し, [x,y, z] によってベクトルの並ぶ順序も考慮に入れた R3 の基底を表す.
det(x,y, z) > 0 であるとき, [x,y, z] は右手系であるといい, det(x,y, z) < 0 であるとき, [x,y, z] は左手系であ
るという.
内積と外積の定義から, 次の結果が確かめられる.
命題 1.6 x,y, z ∈ R3 と実数 r に対し, 次の等式が成り立つ.
(1) (x+ y)× z = x× z + y × z, x× (y + z) = x× y + x× z
(2) (rx)× y = x× (ry) = r(x× y)
(3) y × x = −x× y, x× x = 0
(4) (x× y)× z = −(y, z)x+ (x, z)y
(5) (x× y, z) = det(x,y, z)
(6) (x× y, z ×w) = (x, z)(y,w)− (x,w)(y, z), ∥x× y∥2 = ∥x∥2∥y∥2 − (x,y)2
(7) Ax×Ay = tA(x× y) (ただし AはAの余因子行列)
注意 1.7 (1) xと y のなす角を θとすれば,上の (6)より∥x×y∥ =√∥x∥2∥y∥2 − ∥x∥2∥y∥2 cos2 θ = ∥x∥∥y∥ sin θ
だから x × y の長さは x と y を 2辺とする平行四辺形の面積に等しい. 従って, x,y が 1次独立であることと
x× y = 0 であることは同値である.
(2) 上の (5)で, z = x,y,x× y の場合を考えると (x× y,x) = (x× y,y) = 0, det(x,y,x× y) = ∥x× y∥2 だから, x× y は x と y の両方に垂直なベクトルであり, x,y が 1次独立ならば [x,y,x× y] は右手系である.
1
2 写像の微分
定義 2.1 p ∈ Rn, r > 0 に対して B(p ; r) = x ∈ Rn| ∥x−p∥ < r とおき, これを半径 r 中心 p の開球という.
以後, X ⊂ Rn, Y ⊂ Rm とし, 写像 f : X → Y を考える.
定義 2.2 p ∈ Rn, q ∈ Rm とする. どんな ε > 0 に対しても, δ > 0 で条件
「x ∈ B(p ; δ) ∩X かつ x = p ならば f(x) ∈ B(q ; ε)」
を満たすものがあるとき, x を p に近づけたときの f の極限は q であるといい, これを limx→p
f(x) = q で表す.
注意 2.3 limx→p
f(x) = q であることは, 言い換えると, どんな ε > 0 に対しても, δ > 0 で 「∥x− p∥ < δ, x ∈ X
かつ x = p ならば ∥f(x) − q∥ < ε」を満たすものがあることである. 従って, このことは limx→p
∥f(x) − q∥ = 0
と同値である.
命題 2.4 p ∈ Rn, q, r ∈ Rm, a, b, c ∈ R とし, 写像 f, g : X → Y は limx→p
f(x) = q, limx→p
g(x) = r を満たし, 関
数 s : X → R は limx→p
s(x) = c を満たすとする. このとき, 次の等式が成り立つ.
(1) limx→p
(af(x) + bg(x)) = aq + br (2) limx→p
s(x)f(x) = cq
証明 (1) 任意の x ∈ X に対し, 三角不等式から
∥(af(x) + bg(x))− (aq + br)∥ = ∥a(f(x)− q) + b(g(x)− r)∥
≦ ∥a(f(x)− q)∥+ ∥b(g(x)− r)∥ = |a|∥f(x)− q∥+ |b|∥g(x)− r∥
であり, 仮定と注意 2.3から x → p のとき, ∥f(x)− q∥ と ∥g(x)− r∥ はともに 0 に近づくため, 上の不等式から,
∥(af(x) + bg(x))− (aq + br)∥ も 0 に近づく. 故に, 注意 2.3により limx→p
(af(x) + bg(x)) = aq + br である.
(2) 任意の x ∈ X に対し, 三角不等式から
∥s(x)f(x)− cq∥ = ∥s(x)f(x)− cf(x) + cf(x)− cq∥ = ∥(s(x)− c)f(x) + c(f(x)− q)∥
≦ |s(x)− c|∥f(x)∥+ |c|∥f(x)− q∥ = |s(x)− c|∥f(x)− q + q∥+ |c|∥f(x)− q∥
≦ |s(x)− c| (∥f(x)− q∥+ ∥q∥) + |c|∥f(x)− q∥
であり, 仮定と注意 2.3から x → p のとき, ∥f(x)− q∥ と |s(x)− c| はともに 0 に近づくため, 上の不等式から,
∥s(x)f(x)− cq∥ も 0 に近づく. 故に, 注意 2.3により limx→p
s(x)f(x) = cq である.
x ∈ X に対し, f(x) ∈ Y の第 i 成分を fi(x) で表すことにする. x を fi(x) に対応させることにより, 関数
fi : X → R が定まる.
命題 2.5 q ∈ Rm の第 i 成分を qi とすれば, limx→p
f(x) = q が成り立つためには, すべての i = 1, 2, . . . ,m に対
して limx→p
fi(x) = qi が成り立つことが必要十分である.
証明 すべての i = 1, 2, . . . ,m に対して limx→p
fi(x) = qi が成り立つならば, limx→p
|fi(x) − qi| = 0 が すべての
i = 1, 2, . . . ,m に対して成り立つため, limx→p
m∑i=1
|fi(x)− qi| = 0 である. ここで, 命題 1.3から 0 ≦ ∥f(x)− q∥ ≦m∑i=1
|fi(x)− qi| だから, limx→p
∥f(x)− q∥ = 0 が成り立つため, 注意 2.3により, limx→p
f(x) = q である.
命題 1.3から, 任意の i = 1, 2, . . . ,m に対して |fi(x) − qi| < ∥f(x) − q∥ だから, limx→p
f(x) = q ならば, 注意
2.3により, limx→p
∥f(x)− q∥ = 0 が成り立つため, すべての i = 1, 2, . . . ,m に対して limx→p
fi(x) = qi である.
定義 2.6 p ∈ X に対し, limx→p
f(x) = f(p) が成り立つとき, f は p で連続であるという. すべての p ∈ X に対
し, f が p で連続であるとき f を連続写像という.
2
注意 2.7 命題 2.4から, 連続写像の和および連続関数と連続写像の積は連続写像である. また命題 2.5から, 写像
が連続であるためには, 各成分の関数が連続であることが必要十分である.
命題 2.8 p ∈ X に対し, 正の実数 r, L で条件「x ∈ B(p ; r) ∩X ならば ∥f(x)− f(p)∥ ≦ L∥x− p∥」を満たすものがあれば, f は p で連続である.
証明 任意の ε > 0 に対して, δ を r とε
Lの小さい方とすれば, x ∈ B(p ; δ) ∩ X ならば ∥f(x) − f(p)∥ ≦
L∥x− p∥ < Lδ ≦ ε だから f は p で連続である.
命題 2.9 X ⊂ Rn, Y ⊂ Rm, Z ⊂ Rk, p ∈ Rn, q ∈ Y とし, 写像 f : X → Y は limx→p
f(x) = q を満たし, 写像
g : Y → Z は q で連続であるとする. このとき limx→p
g(f(x)) = g(q) が成り立つ.
証明 g の q における連続性から, 任意の ε > 0 に対して, δ1 > 0 で「y ∈ B(q ; δ1)∩ Y ならば g(y) ∈ B(g(q) ; ε)
」を満たすものがある. また, f についての仮定から, δ > 0 で,「x ∈ B(p ; δ) ∩ X かつ x = p ならば f(x) ∈B(q ; δ1)」を満たすものがある. 従って x ∈ B(p ; δ) ∩X かつ x = p ならば g(f(x)) ∈ B(g(q) ; ε) となるため,
limx→p
g(f(x)) = g(q) が成り立つ.
定義 2.10 X ⊂ Rn の点 p に対し, B(p ; r) ⊂ X を満たす正の実数 r が存在するとき, p を X の内点という.
定義 2.11 p を X の内点とする. m× n 行列 A で, 次の等式 (∗)を満たすものがあるとき f は p で微分可能で
あるという.
limx→p
f(x)− f(p)−A(x− p)
∥x− p∥= 0 · · · (∗)
以後, 「f は p で微分可能である.」というときは p は f の定義域X の内点であることは仮定する.
写像 f , m× n 行列 A, p ∈ X に対して, 写像 ε = εf,A,p : X → Rm を
εf,A,p(x) =
f(x)− f(p)−A(x− p)
∥x− p∥x = p
0 x = p
で定義すれば, この定義と定義 2.11から次のことがわかる.
命題 2.12 任意の x ∈ X に対して, 等式
f(x) = f(p) +A(x− p) + ∥x− p∥εf,A,p(x)
が成り立ち, f が p で微分可能であるためには, εf,A,p が p において連続, すなわち limx→p
εf,A,p(x) = 0 となるよ
うな, m× n 行列 A が存在することが必要十分である.
補題 2.13 A = (aij) を m× n 行列としてM =√ ∑
1≦i≦m,1≦j≦na2ij とおくと, ∥Ax∥ ≦ M∥x∥ が任意の x ∈ Rn
に対して成り立つ.
証明 x の第 i 成分を xi とし, A の第 i 行の成分を縦に並べて得られるベクトルを ai とすると, シュワルツ
の不等式から
(n∑j=1
aijxj
)2
= (ai,x)2 ≦ ∥ai∥2∥x∥2 =
(n∑j=1
a2ij
)∥x∥2. 従って ∥Ax∥2 =
m∑i=1
(n∑j=1
aijxj
)2
≦
m∑i=1
(n∑j=1
a2ij
)∥x∥2 =M2∥x∥2.
命題 2.14 f が pで微分可能ならば r, L > 0でB(p ; r) ⊂ X かつ「x ∈ B(p ; r)ならば ∥f(x)−f(p)∥ ≦ L∥x−p∥」を満たすものがある. 従って命題 2.8から f は p で連続である.
3
証明 m×n行列 Aは定義 2.11の (∗)を満たすとする. 命題 2.12,三角不等式および補題 2.13から ∥f(x)−f(p)∥ =
∥A(x−p)+∥x−p∥εf,A,p(x)∥ ≦ ∥A(x−p)∥+∥x−p∥∥εf,A,p(x)∥ ≦ (M + ∥εf,A,p(x)∥) ∥x−p∥ · · · (∗) である.
仮定と命題 2.12から limx→p
∥εf,A,p(x)∥ = 0 であるため, r > 0 で B(p ; r) ⊂ X かつ「x ∈ B(p ; r), x = p ならば
∥εf,A,p(x)∥ < 1」を満たすものがとれる. 従って (∗) から x ∈ B(p ; r) ならば ∥f(x)− f(p)∥ < (M + 1)∥x− p∥である.
定義 2.15 p ∈ X, v ∈ Rn とし, 十分小さな r > 0 に対して |t| < r ならば p+ tv ∈ X であるとする. 極限
limt→0
f(p+ tv)− f(p)
t
が存在するとき, f は p において v 方向に微分可能であるといい, この極限のベクトルを f の p における v 方
向の微分という. とくに Y = R (m = 1), v = ej の場合, 上の極限値を∂f
∂xj(p) で表し, f の p における j 番目
の変数に関する偏微分といい, このとき, f は j 番目の変数に関して p において偏微分可能であるという. さら
に f が X の各点で j 番目の変数に関して偏微分可能なとき, p ∈ X を∂f
∂xj(p) に対応させる関数を j 番目の変
数に関する偏導関数と呼んで∂f
∂xj: X → R で表す.
命題 2.16 f : X → Y が p で微分可能なとき, 任意の v ∈ Rn に対して f は p において v 方向に微分可能であ
る. このとき定義 2.11の等式 (∗) における m× n 行列 A は
limt→0
f(p+ tv)− f(p)
t= Av
を満たす. とくに A の第 j 列は limt→0
f(p+ tej)− f(p)
tで与えられるため定義 2.11の等式 (∗) を満たす行列 A
は存在すればただ 1つだけである.
証明 命題 2.12の等式に x = p+ tv を代入すれば,
f(p+ tv) = f(p) + tAv + |t|∥v∥εf,A,p(p+ tv)
となるため,
limt→0
f(p+ tv)− f(p)
t= Av + lim
t→0
|t|t∥v∥εf,A,p(p+ tv) · · · (∗∗)
である.
∥∥∥∥ |t|t ∥v∥εf,A,p(p+ tv)
∥∥∥∥ = ∥v∥ ∥εf,A,p(p+ tv)∥ であり, 仮定と命題 2.12から limt→0
∥εf,A,p(p+ tv)∥ = 0 だ
から (∗∗)から limt→0
f(p+ tv)− f(p)
t= Av が得られる.
定義 2.17 上の命題から定義 2.11の等式 (∗) を満たす行列 A は f と p を与えればただ 1つに定まるため, これ
を f ′(p) で表して, f の p における微分という.
命題 2.18 写像 f : X → Y と x ∈ X に対し, f(x) ∈ Y の第 i 成分を fi(x) で表し, X で定義された実数値関
数 fi : X → R を考える.
(1) f が p で微分可能ならば, 各 fi は p で微分可能で, f ′(p) の (i, j) 成分は∂fi∂xj
(p) である.
(2) 逆に各 fi が p で微分可能ならば f は p で微分可能である.
証明 (1) f ′(p) の第 i 行を Ai とするとf(x)− f(p)− f ′(p)(x− p)
∥x− p∥の第 i 成分は
fi(x)− fi(p)−Ai(x− p)
∥x− p∥だ
から ∣∣∣∣fi(x)− fi(p)−Ai(x− p)
∥x− p∥
∣∣∣∣ ≦ ∥∥∥∥f(x)− f(p)− f ′(p)(x− p)
∥x− p∥
∥∥∥∥4
が成り立つ. x → p のとき, 右辺は 0 に近づくため limx→p
fi(x)− fi(p)−Ai(x− p)
∥x− p∥= 0 となり, fi は p で微分可
能で f ′i(p) = Ai である. A の (i, j) 成分は Ai の第 j 列だから命題 2.16と偏微分の定義から Aiej =∂fi∂xj
(p) に
等しくなる.
(2) A を f ′i(p) を第 i 行とする m× n 行列とすれば, m 次元ベクトルf(x)− f(p)−A(x− p)
∥x− p∥の第 i成分は
fi(x)− fi(p)− f ′i(p)(x− p)
∥x− p∥だから仮定と命題 2.5から lim
x→p
f(x)− f(p)−A(x− p)
∥x− p∥= 0 である.
命題 2.19 X ⊂ Rn, v,p ∈ Rn とし, t ∈ (a, b) ならば p+ tv ∈ X であるとする. ω : (a, b) → X を ω(t) = p+ tv
で定め, 関数 f : X → R は ω(t) (t ∈ (a, b)) において微分可能であるとする. このとき, v の第 j 成分を vj とす
れば, 次の等式が成り立つ.
(fω)′(t) =n∑j=1
vj∂f
∂xj(p+ tv)
証明 命題 2.18から f ′(p+ tv) =
(∂f
∂x1(p+ tv)
∂f
∂x2(p+ tv) · · · ∂f
∂xn(p+ tv)
)である. 一方, 命題 2.16か
ら (fω)′(t) = limh→0
f((p+ tv) + hv)− f(p+ tv)
h= f ′(p+ tv)v だから結果を得る.
定理 2.20 (合成写像の微分法) X ⊂ Rn, Y ⊂ Rm, Z ⊂ Rl とする. f : X → Y が p で微分可能であり,
g : Y → Z が f(p) で微分可能ならば, 合成写像 gf : X → Z も p で微分可能で, 次の等式が成り立つ.
(gf)′(p) = g′(f(p))f ′(p)
証明 写像 εf,f ′(p),p, εg,g′(f(p)),f(p) を, それぞれ, εf,p, εg,f(p) で表すことにすれば, 命題 2.12から
f(x) = f(p) + f ′(p)(x− p) + ∥x− p∥εf,p(x) · · · (1)
g(y) = g(f(p)) + g′(f(p))(y − f(p)) + ∥y − f(p)∥εg,f(p)(y) · · · (2)
が成り立つ. (2)の等式の y に f(x) を代入すれば次の等式が得られる.
g(f(x)) = g(f(p)) + g′(f(p))(f(x)− f(p)) + ∥f(x)− f(p)∥εg,f(p)(f(x))
x = p として, この等式の右辺の第 2項の f(x) に (1)の右辺を代入して, 両辺を ∥x− p∥ で割って整理すれば
(gf)(x)− (gf)(p)− g′(f(p))f ′(p)(x− p)
∥x− p∥= g′(f(p))εf,p(x) +
∥f(x)− f(p)∥∥x− p∥
εg,f(p)(f(x)) · · · (3)
が得られる. 従って x → p としたときに, 上式の右辺が 0 に近づくことが示されれば, gf : X → Z は p で微分
可能で, 定義 2.17により, (gf)′(p) = g′(f(p))f ′(p) であることがわかる.
三角不等式から (3)の右辺の長さについて, 次の不等式が成り立つ.∥∥∥∥g′(f(p))εf,p(x) + ∥f(x)− f(p)∥∥x− p∥
εg,f(p)(f(x))
∥∥∥∥ ≦ ∥g′(f(p))εf,p(x)∥+∥f(x)− f(p)∥
∥x− p∥∥∥εg,f(p)(f(x))∥∥ · · · (4)
まず, A = g′(f(p)) として補題 2.13を用いると ∥g′(f(p))εf,p(x)∥ ≦ M∥εf,p(x)∥ を満たす定数 M があり, 仮定
と命題 2.12から x が p に近づくとき, この不等式の右辺は 0 に近づくため
limx→p
∥g′(f(p))εf,p(x)∥ = 0 · · · (5)
である. 命題 2.14から, r, L > 0 で B(p ; r) ⊂ X かつ ∥x− p∥ < r ならば ∥f(x)− f(p)∥ ≦ L∥x− p∥ を満たすものがあるため, 0 < ∥x− p∥ < r ならば
∥f(x)− f(p)∥∥x− p∥
∥∥εg,f(p)(f(x))∥∥ ≦ L∥∥εg,f(p)(f(x))∥∥ · · · (6)
5
が成り立つ. 命題 2.14 から, f は p で連続だから, limx→p
f(x) = f(p) が成り立つため, 仮定と命題 2.9 から,
limx→p
εg,f(p)(f(x)) = 0 である. 従って x → p のとき, (6)の右辺は 0 に近づくため,
limx→p
∥f(x)− f(p)∥∥x− p∥
∥∥εg,f(p)(f(x))∥∥ = 0 · · · (7)
が成り立つ. (5), (7)と (4)から, x → p のとき, (3)の右辺は 0 に近づくため, 主張は示された.
上の定理で Z = Rの場合を考える. x ∈ X に対し f(x) ∈ Y の第 i成分を fi(x)で表し,実数値関数 fi : X → R
を考えれば,命題 2.18の (1)からm×n行列 f ′(p)の (i, j)成分は∂fi∂xj
(p)であり, 1×m行列 g′(f(p))の (1, j)成分
は∂g
∂xj(f(p))である. 一方 (gf)′(p)の (1, j)成分は
∂gf∂xj
(p)だから, 上で示した等式 (gf)′(p) = g′(f(p))f ′(p)
の両辺の (1, j)成分を比較すれば次の結果が得られる.
系 2.21 f : X → Y が p で微分可能であり, g : Y → R が f(p) で微分可能ならば, 次の等式が成り立つ.
∂gf∂xj
(p) =
m∑k=1
∂g
∂xk(f(p))
∂fk∂xj
(p)
3 空間曲線
定義 3.1 x(t), y(t), z(t) を閉区間 [a, b] で定義された連続関数とし, t ∈ [a, b] に対し, x(t) =
x(t)y(t)
z(t)
とおく. t
が a から b まで動くとき, 3次元数ベクトル x(t) 全体からなる集合 x(t) ∈ R3 | t ∈ [a, b] を空間曲線という. 言
い換えれば, 各 t ∈ [a, b] を 3次元数ベクトル x(t) に対応させる [a, b] からR3 への写像 x を考えると, x による
閉区間 [a, b] の像が空間曲線であり, 写像 x (またはその成分の関数 x(t), y(t), z(t)) をこの空間曲線のパラメー
タ表示 (媒介変数表示, 助変数表示)という.
定義 3.2 写像 x : [a, b] → R3 によってパラメータ表示される空間曲線 C が与えられたとき, t0 = a, tN = b を
満たす単調増加数列 ∆ = tiNi=0 に対して, L(x;∆) =N∑i=1
∥x(ti)− x(ti−1))∥ とおく. 実数 λ で, 次の条件 (i)と
(ii)を満たすものが存在するとき, 曲線 C は長さをもつといい, λ を C の長さと呼ぶ.
(i) t0 = a, tN = b を満たす任意の単調増加数列 ∆ = tiNi=0 に対して, L(x;∆) ≦ λ である.
(ii) λ′ < λ ならば, L(x;∆) < λ′ かつ t0 = a, tN = b を満たす単調増加数列 ∆ = tiNi=0 が存在する.
写像 x : (p, q) → R3 の x成分, y成分, z成分の関数をそれぞれ x(t), y(t), z(t) とする. これらの関数が開区間
(p, q) の各点で微分可能であるとき, t ∈ (p, q) を
x′(t)
y′(t)
z′(t)
に対応させる (p, q) からR3 への写像を x′ で表す. こ
のとき, x′(t) は曲線 C 上の点 x(t) における接線方向のベクトルである.
定理 3.3 写像 x : (p, q) → R3 の各成分の関数 x(t), y(t), z(t) が開区間 (p, q) の各点で微分可能であり, これら
の導関数 x′(t), y′(t), z′(t) はすべて連続であるとする. p < a < b < q に対し, 空間曲線 C が写像 x : [a, b] → R3
によってパラメータ表示されるとき, C の長さは∫ b
a
∥x′(t)∥ dt で与えられる.
以後, x : [a, b] → R3 を空間曲線 C のパラメータ表示とするとき, xは上の定理の条件満たし, さらに各 t ∈ [a, b]
に対して, x′(t) は零ベクトルではないと仮定する.
6
定義 3.4 C を写像 x : [a, b] → R3 によってパラメータ表示される空間曲線とする. t ∈ [a, b] に対し, x′(t) を
x(t) における C の接ベクトルという.
区間 [a, t] に対応する曲線 C の部分の長さを s(t) とすれば, 上の定理から s(t) は
s(t) =
∫ t
a
∥x′(u)∥ du (3.1)
で与えられる. s(t) を区間 [a, b] で定義された t の関数と考えて, s の導関数を考えれば, 微分積分学の基本定理に
より, s′(t) = ∥x′(t)∥ であり, x′(t) は零ベクトルではないという仮定から, すべての t ∈ [a, b] に対して s′(t) > 0
である. 従って s は狭義単調増加関数だから, L = s(b) とおけば, s は [a, b] から [0, L] への 1対 1の関数である.
s−1 : [0, L] → [a, b] を s の逆関数として, 写像 x : [a, b] → R3 との合成写像 x s−1 : [0, L] → R3 を x とおけ
ば, x も曲線 C のパラメータ表示を与える.
x(t) = x s−1(t) =
x(s−1(t))
y(s−1(t))
z(s−1(t))
(3.2)
だから, 合成関数の微分法から
x′(t) =
(s−1)′(t)x′(s−1(t))
(s−1)′(t)y′(s−1(t))
(s−1)′(t)z′(s−1(t))
= (s−1)′(t)
x′(s−1(t))
y′(s−1(t))
z′(s−1(t))
= (s−1)′(t)x′(s−1(t))
が得られる. u = s−1(t) とおけば t = s(u) であり, 逆関数の微分法と s′(t) = ∥x′(t)∥ から
(s−1)′(t) = (s−1)′(s(u)) =1
s′(u)=
1
s′(s−1(t))=
1
∥x′(s−1(t))∥(3.3)
が成り立つため,
x′(t) =1
∥x′(s−1(t))∥x′(s−1(t)) (3.4)
を得る. 故に, x′(t) は単位ベクトルである. 従って, s, t ∈ [0, L] (s < t) に対し, 区間 [s, t] に対応する曲線 C の部
分の長さ∫ t
s
∥x′(u)∥ du =
∫ t
s
du は t− s に等しい.
定義 3.5 空間曲線 C が写像 x : I → R3 (I は区間)によってパラメータ表示され, 各 s, t ∈ I (s < t) に対して区
間 [s, t] に対応する曲線 C の部分の長さが t− s に等しいとき, x を曲線 C の弧長パラメータ表示いう. 上の議
論から, 任意の曲線は弧長パラメータ表示をもつ.
次の結果は, 容易に確かめられる.
命題 3.6 関数 f : (p, q) → Rと写像 x,y : (p, q) → R3 の各成分は微分可能であるとする. 関数 (x,y) : (p, q) → R
と写像 x+ y, fx,x× y : (p, q) → R3 を (x,y)(t) = (x(t),y(t)), (x+ y)(t) = x(t) + y(t), (fx)(t) = f(t)x(t),
(x× y)(t) = x(t)× y(t) によって定義する. このとき, 次の等式が成り立つ.
(1) (x+ y)′(t) = x′(t) + y′(t) (2) (fx)′(t) = f ′(t)x(t) + f(t)x′(t)
(3) (x,y)′(t) = (x′(t),y(t)) + (x(t),y′(t)) (4) (x× y)′(t) = x′(t)× y(t) + x(t)× y′(t)
空間曲線 C が写像 x : [a, b] → R3 によって弧長パラメータ表示されているとき, 任意の t ∈ [a, b] に対して∫ t
a
∥x′(u)∥ du = t− a が成り立つため, この両辺を微分すれば, 微分積分学の基本定理により, ∥x′(t)∥ = 1 が得ら
れる. e(t) = x′(t) とおき, x の各成分の関数は 2回微分可能であるとする. (e(t), e(t)) = ∥e(t)∥2 = ∥x′(t)∥2 = 1
であり, 命題 3.6の (3)から (e, e)′ = (e′, e) + (e, e′) = 2(e′, e) だから, (e′(t), e(t)) = 0 が任意の t ∈ [a, b] に対し
て成り立つことがわかる. すなわち,ベクトル e′(t)は曲線 C 上の点 x(t)における接線方向のベクトル e(t) = x′(t)
に垂直である.
7
定義 3.7 空間曲線 C は写像 x : [a, b] → R3 によって弧長パラメータ表示されているとする.
(1) ベクトル e′(t) の長さ ∥e′(t)∥ を曲線 C 上の点 x(t) における曲率といい, κ(t) で表す.
(2) e′(t) = 0 を満たす t ∈ [a, b] に対して n(t) =1
∥e′(t)∥e′(t) とおき, n(t) を C 上の点 x(t) における主法線
ベクトルという.
(3) e′(t) = 0 を満たす t ∈ [a, b] に対して b(t) = e(t)× n(t) とおき, b(t) を C 上の点 x(t) における従法線ベ
クトルという.
(4) x の各成分の関数は 3回微分可能であるとする. t ∈ [a, b] に対し, e′(t) = 0 であるとき, −(b′(t),n(t)) を
C 上の点 x(t) における捩率といい, τ(t) で表す.
命題 3.8 空間曲線 C は写像 x : [a, b] → R3 によって弧長パラメータ表示されているとする. e′(t) = 0 を満たす
t ∈ [a, b] に対して以下の等式が成り立つ. ((2)の 3つの等式を「フルネ・セレの公式」という.)
(1) (n′(t), e(t)) = −κ(t), (n′(t),n(t)) = (b′(t), b(t)) = (b′(t), e(t)) = 0, (n′(t), b(t)) = τ(t)
(2) e′(t) = κ(t)n(t), n′(t) = −κ(t)e(t) + τ(t)b(t), b′(t) = −τ(t)n(t)
証明 (1) (e′(t), e(t)) = 0 だから, この両辺を t で微分すれば, 命題 3.6の (3)から (e′′(t), e(t))+ (e′(t), e′(t)) = 0
が得られる. 従って (e′′(t), e(t)) = −∥e′(t)∥2 = −κ(t)2 である. n(t) =1
∥e′(t)∥e′(t) を t で微分すれば,
n′(t) = − (e′′(t), e′(t))
∥e′(t)∥3e′(t) +
1
∥e′(t)∥e′′(t)
が得られる. (e′(t), e(t)) = 0 より, 次の等式が成り立つ.
(n′(t), e(t)) =
(− (e′′(t), e′(t))
∥e′(t)∥3e′(t) +
1
∥e′(t)∥e′′(t), e(t)
)=
1
κ(t)(e′′(t), e(t)) = −κ(t)
n(t) と b(t) はともに長さが 1だから, 等式 (n(t),n(t)) = (b(t), b(t)) = 1 を t で微分すれば, 命題 3.6の (3)か
ら (n′(t),n(t)) = (b′(t), b(t)) = 0 が得られる. e′(t) = κ(t)n(t) だから, 命題 3.6の (4)と注意 1.7 の (1)から
b′(t) = e′(t)×n(t)+e(t)×n′(t) = e(t)×n′(t)である. 従って,注意 1.7の (2)から b′(t)は e(t)に垂直なベクトル
になるため, (b′(t), e(t)) = 0である. 命題 1.6の (5)から (n′(t), b(t)) = (n′(t), e(t)×n(t)) = (e(t)×n(t),n′(t)) =
det(e(t),n(t),n′(t)) = −det(e(t),n′(t),n(t)) = −(e(t)× n′(t),n(t)) = −(b′(t),n(t)) = τ(t) が得られる.
(2) e′(t) = κ(t)n(t) は曲率と主法線ベクトルの定義から明らかである. e′(t) = 0 のとき, e(t),n(t), b(t) は
R3 の正規直交基底だから n′(t), b′(t) は n′(t) = (n′(t), e(t))e(t) + (n′(t),n(t))n(t) + (n′(t), b(t))b(t), b′(t) =
(b′(t), e(t))e(t) + (b′(t),n(t))n(t) + (b′(t), b(t))b(t) と表されるため, (1)の結果から残りの等式が得られる.
次の定理はフルネ・セレの公式と線形常微分方程式の解の存在定理を用いて示される.
定理 3.9 (空間曲線の基本定理) 微分可能な関数 κ : (a, b) → (0,∞), τ : (a, b) → R に対し, 空間曲線 C で, その
弧長パラメータ表示 x : (a, b) → R3 による点 x(t) における曲率, 捩率がそれぞれ κ(t), τ(t) であるものが存在
する. C, D がともに上記の条件を満たす曲線で, x,y : (a, b) → R3 をそれぞれ C, D の弧長パラメータ表示とす
るとき, 行列式の値が 1 である直交行列 R とベクトル c で, すべての t ∈ (a, b) に対して y(t) = Rx(t) + c を満
たすものが存在する.
空間曲線 C をパラメータ表示する写像 x : [a, b] → R3 が弧長パラメータ表示ではないとき, (3.1)によって関
数 s を定めれば, C の弧長パラメータ表示は (3.2)によって定義される写像 x によって与えられ, (3.3)と (3.4)か
ら e′(t) = (x′)′(t) は命題 3.6を用いて次の (3.5)で与えられ, κ(t)2 = (e′(t), e′(t)) は (3.5)と命題 1.6の (6)から
次の (3.6)で与えられる.
e′(t) = (x′)′(t) =1
∥x′(s−1(t))∥2x′′(s−1(t))− (x′(s−1(t)),x′′(s−1(t)))
∥x′(s−1(t))∥4x′(s−1(t)) (3.5)
κ(t)2 =∥x′(s−1(t))∥2∥x′′(s−1(t))∥2 − (x′(s−1(t)),x′′(s−1(t)))2
∥x′(s−1(t))∥6=
∥x′(s−1(t))× x′′(s−1(t))∥2
∥x′(s−1(t))∥6(3.6)
8
命題 1.6の (4)の x, y, z にそれぞれ1
∥x′(s−1(t))∥2x′(s−1(t)), x′′(s−1(t)),
1
∥x′(s−1(t))∥2x′(s−1(t)) を代入すれ
ば, (3.5)から次の等式が得られる.
e′(t) =1
∥x′(s−1(t))∥4(x′(s−1(t))× x′′(s−1(t))
)× x′(s−1(t)) (3.7)
さらに (3.4), (3.5), (3.7)と n(t), b(t) の定義から以下の等式が得られる.
n(t) =1
∥e′(t)∥e′(t) =
1
∥(x′(s−1(t))× x′′(s−1(t)))× x′(s−1(t))∥(x′(s−1(t))× x′′(s−1(t)))× x′(s−1(t)) (3.8)
b(t) = e(t)× n(t) =1
∥x′(s−1(t))× x′′(s−1(t))∥x′(s−1(t))× x′′(s−1(t)) (3.9)
上の等式から, 命題 3.6, 1.6を用いて計算すれば, b′(t), τ(t) は次のように与えられることがわかる.
b′(t) = − (x′(s−1(t))× x′′(s−1(t)),x′(s−1(t))× x′′′(s−1(t)))
∥x′(s−1(t))∥∥x′(s−1(t))× x′′(s−1(t))∥3x′(s−1(t))× x′′(s−1(t))
+1
∥x′(s−1(t))∥∥x′(s−1(t))× x′′(s−1(t))∥x′(s−1(t))× x′′′(s−1(t))
τ(t) = − (x′(s−1(t))× x′′′(s−1(t)),x′′(s−1(t)))
∥x′(s−1(t))× x′′(s−1(t))∥2=
det(x′(s−1(t)),x′′(s−1(t)),x′′′(s−1(t))
∥x′(s−1(t))× x′′(s−1(t))∥2
x(t) = x(s(t)) であることに注意して, 以上の結果をまとめれば, 次のようになる.
命題 3.10 写像 x : [a, b] → R3 によってパラメータ表示される曲線 C の x(t) における単位接ベクトル e(t), 主
法線ベクトル n(t), 従法線ベクトル b(t), 曲率 κ(t), 捩率 τ(t) は以下の等式で与えられる.
e(t) =1
∥x′(t)∥x′(t), n(t) =
1
∥(x′(t)× x′′(t))× x′(t)∥(x′(t)×x′′(t))×x′(t), b(t) =
1
∥x′(t)× x′′(t)∥x′(t)×x′′(t),
κ(t) =∥x′(t)× x′′(t)∥
∥x′(t)∥3, τ(t) =
det(x′(t),x′′(t),x′′′(t))
∥x′(t)× x′′(t)∥2
例 3.11 実数 a, b (a = 0) に対し, x(t) =
a cos ta sin t
bt
によって定義される写像 x : R → R3 でパラメータ表示され
る曲線をつるまき線という. t が p から q まで動いたときの曲線の長さは,dx
dt= −a sin t, dy
dt= a cos t,
dz
dt= b よ
り∫ q
p
√(dx
dt
)2
+
(dy
dt
)2
+
(dz
dt
)2
dt =
∫ q
p
√a2 + b2dt =
√a2 + b2(q − p) によって与えられる. また, x′(t) =−a sin t
a cos t
b
, x′′(t) =
−a cos t−a sin t
0
, x′′′(t) =
a sin t
−a cos t0
だから, 上の命題から e(t) =1√
a2 + b2
−a sin ta cos t
b
,
b(t) =a
|a|√a2 + b2
b sin t
−b cos ta
, n(t) =a
|a|
− cos t
− sin t
0
, κ(t) =|a|
a2 + b2, τ(t) =
b
a2 + b2が得られる. 従って, つ
るまき線の曲率と捩率はともに一定である.
4 曲面のパラメータ表示
定義 4.1 D を座標平面 R2 の領域とする. f , g, h を D で定義され, 実数値をとる連続関数とし, u ∈ D に対し,
p(u) =
f(u)g(u)
h(u)
とおく. u が D 全体を動くとき, 3次元数ベクトル p(u) 全体からなる集合 p(u) ∈ R3 |u ∈ D
9
を曲面という. 言い換えれば, 各 u ∈ D を 3次元数ベクトル p(u) に対応させる D からR3 への写像 p を考え
ると, p による領域 D の像が曲面であり, 写像 p (またはその成分の関数 f , g, h) をこの曲面のパラメータ表示
(媒介変数表示, 助変数表示)という.
以下で, 曲面のパラメータ表示の例を与える. cosh, sinh は coshx =ex + e−x
2, sinhx =
ex − e−x
2で定義され
る, 双曲線関数と呼ばれる関数である.
例 4.2 (1) D = R2, p
(u
v
)=
u
vu2
a2 + v2
b2
で領域D と写像 p を定めれば, p は楕円放物面のパラメータ表示を
与える.
(2) D = R2, p
(u
v
)=
u
vu2
a2 − v2
b2
で領域D と写像 p を定めれば, p は双曲放物面のパラメータ表示を与える.
(3) D =
(u
v
)∈ R2
∣∣∣∣∣ |u| ≦ π
2, 0 ≦ v < 2π
, p
(u
v
)=
a cosu cos vb cosu sin v
c sinu
で領域D と写像 p を定めれば, p は
楕円面のパラメータ表示を与える.
10
(4) D =
(u
v
)∈ R2
∣∣∣∣∣ u ∈ R, 0 ≦ v < 2π
, p
(u
v
)=
a coshu cos vb coshu sin v
c sinhu
で領域D と写像 p を定めれば, p は
一葉双曲面のパラメータ表示を与える.
(5) D =
(u
v
)∈ R2
∣∣∣∣∣ u ∈ R, 0 ≦ v < 2π
, p
(u
v
)=
a sinhu cos vb sinhu sin v
c coshu
で領域D と写像 p を定めれば, p は
二葉双曲面の, z座標が c と同符号の部分のパラメータ表示を与える.
11
I を区間とするとき, 座標空間において, xz 平面上の曲線 C が写像 x : I → R3 によってパラメータ表示され
ているとき, C を z軸のまわりに回転させて得られる曲面のパラメータ表示を考える. z軸を軸とした角度 v の回
転は, v ∈ R3 に 3次正方行列
cos v − sin v 0
sin v cos v 0
0 0 1
を v の左からかけたベクトルに対応させる 1次変換だから,
曲線上の点 x(u) を z軸のまわりに角度 v だけ回転させた点は
cos v − sin v 0
sin v cos v 0
0 0 1
x(u) である. 従って, 次のこ
とがわかる.
命題 4.3 座標空間において, xz平面上の曲線 C が写像 x : I → R3 によってパラメータ表示されており, u ∈ I に
対し, x(u) の成分が, 関数 x, z : I → R を用いて x(u) =
x(u)0
z(u)
と表されているとき, D を u ∈ I, 0 ≦ v ≦ 2π
を満たす座標平面の点
(u
v
)全体からなる集合とすれば, C を z軸のまわりに回転させて得られる曲面のパラメー
タ表示は, p
(u
v
)=
cos v − sin v 0
sin v cos v 0
0 0 1
x(u) =
x(u) cos vx(u) sin v
z(u)
で定義される写像 p : D → R3 によって与えら
れる.
例 4.4 (1) 0 < a < b とするとき, xz 平面において, 中心が
b00
, 半径が a の円は x(t) =
a cos t+ b
0
a sin t
で定義される写像 x : [0, 2π] → R3 でパラメータ表示されるが, この円を z 軸のまわりに回転させて得られる曲
面は 2次元トーラスと呼ばれる. D =
(u
v
)∈ R2
∣∣∣∣∣ 0 ≦ u ≦ 2π, 0 ≦ v ≦ 2π
とおけば, この曲面は p
(u
v
)=(a cosu+ b) cos v
(a cosu+ b) sin v
a sinu
で定義される写像 p : D → R3 によってパラメータ表示される.
(2) x(u) =
a sinu cosu2−cos2 u
0a cosu
2−cos2 u
によって定義される写像 x : [0, π] → R3 でパラメータ表示される xz 平面上の曲線
12
はレムニスケートと呼ばれ, この曲線を z 軸のまわりに回転させて得られる曲面は回転レムニスケートと呼ばれ
る. D =
(u
v
)∈ R2
∣∣∣∣∣ 0 ≦ u ≦ π, 0 ≦ v ≦ 2π
とおけば, この曲面は p
(u
v
)=
a sinu cosu cos v
2−cos2 ua sinu cosu sin v
2−cos2 ua cosu
2−cos2 u
で定義される写像 p : D → R3 によってパラメータ表示される.
(3) x(u) =
a cosu
0
a(
12 log
1+sinu1−sinu − sinu
) によって定義される写像 x :
(−π
2 ,π2
)→ R3 でパラメータ表示される
xz平面上の曲線はトラクトリックスと呼ばれ, この曲線を z軸のまわりに回転させて得られる曲面は擬球と呼ばれ
る. D =
(u
v
)∈ R2
∣∣∣∣∣ − π
2< u <
π
2, 0 ≦ v ≦ 2π
とおけば, この曲面は p
(u
v
)=
a cosu cos v
a cosu sin v
a(
12 log
1+sinu1−sinu − sinu
)
で定義される写像 p : D → R3 によってパラメータ表示される.
13
一般に, 座標平面の領域 D を定義域とし, 2つの変数 u, v について偏微分可能な関数 f と D の点 a に対し,
1 × 2 行列(∂f
∂u(a)
∂f
∂v(a)
)を f ′(a) で表す. このとき, 平均値の定理を用いることによって次の結果が示さ
れる.
定理 4.5 座標平面の領域 D を定義域とする関数 f は 2つの変数 u, v について偏微分可能であり, 偏導関数∂f
∂u
と∂f
∂vがともに連続関数ならば
limu→a
f(u)− (f(a) + f ′(a)(u− a))
∥u− a∥= 0
が成り立つ.
上の結果は, u が a に近くの点ならば, f(u) を u の成分の 1次関数 f(a) + f ′(a)(u− a) で近似したときの誤
差は u と a の間の距離 ∥u− a∥ に比べて「非常に小さい」ことを意味している.
以後, 曲面をパラメータ表示する写像の各成分の関数は 2つの変数 u, v について偏微分可能であり, 偏導関数は
すべて連続関数であると仮定する. p : D → R3 を曲面 S のパラメータ表示とし, p の x成分, y成分, z成分の関
数をそれぞれ f , g, h として写像 pu,pv : D → R3 を次のように定める.
pu(u) =
∂f∂u (u)∂g∂u (u)∂h∂u (u)
, pv(u) =
∂f∂v (u)∂g∂v (u)∂h∂v (u)
また, u ∈ D に対して pu(u), pv(u) をそれぞれ第 1列, 第 2列とする 3× 2行列を p′(u) で表すことにする. す
なわち
p′(u) =
∂f∂u (u)
∂f∂v (u)
∂g∂u (u)
∂g∂v (u)
∂h∂u (u)
∂h∂v (u)
である. このとき, u,a ∈ D に対し, ベクトル p(u)− (p(a) + p′(a)(u− a)) の x成分, y成分, z成分はそれぞれ
f(u)− (f(a) + f ′(a)(u− a)), g(u)− (g(a) + g′(a)(u− a)), h(u)− (h(a) + h′(a)(u− a)) だから, 定理 4.5から
limu→a
p(u)− (p(a) + p′(a)(u− a))
∥u− a∥= 0
が成り立つことがわかる. 従って u =
(u
v
),a =
(a
b
)∈ D に対し, p(u) を
p(a) + p′(a)(u− a) = p(a) + (u− a)pu(a) + (v − b)pv(a)
で近似したときの誤差は u と a の間の距離 ∥u− a∥ に比べて「非常に小さい」. pu(a) と pv(a) の一方が他方
の実数倍ではないとき, u =
(u
v
)∈ R2 を p(a) + (u− a)pu(a) + (v− b)pv(a) に対応させる写像は, p(a) を通る
平面のパラメータ表示を与えるが, 上のことから, この平面は p(a) の近くで曲面 S の良い近似を与えているため,
この平面を S の p(a) における接平面と呼ぶことにする.
5 曲面の面積
p : D → R3 を曲面 S のパラメータ表示とし, p の x 成分, y 成分, z 成分の関数をそれぞれ f , g, h と
する. u =
(u
v
)∈ D とし ∆u, ∆v は「微小な」実数で,
(u
v
),
(u+∆u
v
),
(u
v +∆v
),
(u+∆u
v +∆v
)を 4 つ
の頂点とする長方形は D に含まれるとする. この長方形を R(u;∆u,∆v) で表し, p による R(u;∆u,∆v) の
14
像 p(R(u;∆u,∆v)) を考えれば, この面積 (が定義されるとすれば) は ∆u, ∆v の絶対値が小さいとき, p(u),
p(u) +∆upu(u), p(u) +∆vpv(u), p(u) +∆upu(u) +∆vpv(u) を 4つの頂点とする S の p(u) における接平面
上の平行四辺形の面積で近似され, ∆u と ∆v を小さくすればするほど, 近似の誤差は 0 に近づくと考えられる.
一方, 注意 1.7の (3)により, この平行四辺形の面積は ∥pu(u)× pv(u)∥|∆u||∆v| に等しいため, この「微小な」面
積を足し合わせて, ∆u, ∆v を 0 に近づけたときの極限値∫∫D
∥pu(u)× pv(u)∥ dudv
が曲面 S の面積であると定義するのは, 上の議論 (言い訳)から妥当である. そこで, 次のように定義する.
定義 5.1 p : D → R3 を曲面 S のパラメータ表示とするとき, S の面積は∫∫D
∥pu(u)× pv(u)∥ dudv
であると定義する.
上の定義を, S をパラメータ表示する写像 p : D → R3 の成分の関数を用いて書き直すと, S の面積は次の重積
分で与えられる.∫∫D
√(∂g
∂u
∂h
∂v− ∂h
∂u
∂g
∂v
)2
+
(∂h
∂u
∂f
∂v− ∂f
∂u
∂h
∂v
)2
+
(∂f
∂u
∂g
∂v− ∂g
∂u
∂f
∂v
)2
dudv
とくに, S が xz平面上の曲線を z軸の回りに回転させて得られる曲面の場合, 命題 4.3から,
D =
(u
v
)∈ R2
∣∣∣∣∣ a ≦ u ≦ b, 0 ≦ v ≦ 2π
とおけば, D で定義された関数 f , g, h は f
(u
v
)= x(u) cos v, g
(u
v
)= x(u) sin v, h
(u
v
)= z(u) の形だから,
∂f
∂u
(u
v
)= x′(u) cos v,
∂g
∂u
(u
v
)= x′(u) sin v,
∂h
∂u
(u
v
)= z′(u),
∂f
∂v
(u
v
)= −x(u) sin v, ∂g
∂v
(u
v
)= x(u) cos v,
∂h
∂v
(u
v
)= 0
である. 従って, この場合, S の面積は次の公式で与えられる.∫∫D
√z′(u)2x(u)2 + x′(u)2x(u)2 dudv =
∫ b
a
(∫ 2π
0
√z′(u)2x(u)2 + x′(u)2x(u)2 dv
)du
= 2π
∫ b
a
|x(u)|√x′(u)2 + z′(u)2 du
例 5.2 (1) 例 4.2の (3)における楕円面の面積は次の積分で与えられる.∫ π2
−π2
(∫ 2π
0
√b2c2 cos4 u cos2 v + a2c2 cos4 u sin2 v + a2b2 cos2 u sin2 u dv
)du
とくに, a = b = c の場合, この楕円面は半径 a の球面になり, 上の積分の値は 4πa2∫ π
2
0
cosu du = 4πa2 となる
ため, 半径 a の球面の面積は 4πa2 である.
(2) 例 4.4の (1)における 2次元トーラスの面積は x(t) = a cos t + b, z(t) = a sin t とおけば x′(t) = −a sin t,
z′(t) = a cos t だから, 2π
∫ 2π
0
|x(t)|√x′(t)2 + z′(t)2 dt = 2π
∫ 2π
0
a(a cos t+ b) dt = 4π2ab である.
15
(3) −π2< α < β <
π
2を満たす α, β に対して, xy 平面に平行な 2つの平面 z = a
(1
2log
1 + sinα
1− sinα− sinα
)と z = a
(1
2log
1 + sinβ
1− sinβ− sinβ
)にはさまれた部分にある, 例 4.4 の (3) における擬球の面積を A とする.
x(t) = a cos t, z(t) = a
(1
2log
1 + sin t
1− sin t− sin t
)とおけば x′(t) = −a sin t, z′(t) = a sin2 t
cos tだから, A は以下で与
えられる.
2π
∫ β
α
|x(t)|√x′(t)2 + z′(t)2 dt = 2π
∫ β
α
a2| sin t| dt =
2πa2| cosα− cosβ| αβ ≧ 0
2πa2(2− cosα− cosβ) αβ < 0
(4) a を正の定数とするとき, x(t) =
a(1− cos t)
0
a(t− sin t)
で定義される写像 x : [0, 2π] → R3 でパラメータ表示
される xz 平面上のサイクロイドを, z 軸のまわりに回転させて得られる曲面を S とする. x(t) = a(1 − cos t),
z(t) = a(t− sin t) とおけば x′(t) = a sin t, z′(t) = a(1− cos t) だから, S の面積は以下で与えられる.
2π
∫ 2π
0
|x(t)|√x′(t)2 + z′(t)2 dt = 2π
∫ 2π
0
√2a2(1− cos t)
32 dt = 2π
∫ 2π
0
4a2 sin3t
2dt
= 8πa2∫ 2π
0
(1− cos2
t
2
)sin
t
2dt = 8πa2
∫ 1
−1
2(1− x2
)dx =
64πa2
3.
6 局所座標と座標変換
曲面 S が写像 p : D → R3 によってパラメータ表示されているとし, すべての u ∈ D に対して pu(u) と pv(u)
の一方は他方の実数倍ではないと仮定する. 例 4.2の (3)における楕円面では,
pu
(u
v
)=
−a sinu cos v−b sinu sin v
c cosu
, pv
(u
v
)=
−a cosu sin vb cosu cos v
0
だから, u = ±π2のとき, pv
(u
v
)は零ベクトルになるため, この仮定は満たされない. このような仮定をするのと
引き替えに, p による D の像が S 全体であるという, いままで暗黙のうちにしてきた仮定は諦めることにして, 曲
面の定義を修正する. そのために, まず開集合という言葉を導入する.
定義 6.1 R2 または R3 の部分集合 D の点 a に対し, 正の実数 r で条件「∥x− a∥ < r ならば x ∈ D」を満た
すものが存在するとき, a を D の内点といい, D の点がすべて内点であるとき, D を開集合という.
曲面は, パラメータ表示された曲面の一部を滑らかになるように貼り合わせたものとして, 以下のように定義
する.
定義 6.2 R3 の部分集合 S に対して, R2 の開集合の集合 Di| i ∈ I と単射の集合 pi : Di → R3| i ∈ I で次の条件を満たすものが存在するとき, S を曲面と呼ぶ.
(i) すべての i ∈ I に対し, R3 の開集合 Vi が存在して, pi による Di の像が S ∩ Vi と表される.
(ii) S の各点 a に対して i ∈ I と u0 ∈ Di で pi(u0) = a を満たすものがある.
(iii) すべての i ∈ I に対し, pi は C1 級写像である.
(iv) すべての i ∈ I と u ∈ Di に対し, (pi)u(u) と (pi)v(u) の一方は他方の実数倍ではない.
16
例 6.3 楕円面は定義 6.2の意味で, 曲面である. 実際, R2 の部分集合 Di (i = 1, 2, 3, 4) を
D1 =
(u
v
)∈ R2
∣∣∣∣∣ |u| < π
2, 0 < v < 2π
D2 =
(u
v
)∈ R2
∣∣∣∣∣ |u| < π
2, −π < v < π
D3 = D4 =
(u
v
)∈ R2
∣∣∣∣∣ u2a2 +v2
b2< 1
で定め, 写像 pi : Di → R3 (i = 1, 2, 3, 4) を
p1
(u
v
)=
a cosu cos vb cosu sin v
c sinu
p2
(u
v
)=
a cosu cos vb cosu sin v
c sinu
p3
(u
v
)=
u
v
c√
1− u2
a2 − v2
b2
p4
(u
v
)=
u
v
−c√1− u2
a2 − v2
b2
によって定めれば, Di, pi は定義 6.2の条件をすべて満たしていることが確かめられる.
R2 の開集合の集合 Di| i ∈ I と単射の集合 pi : Di → R3| i ∈ I は定義 6.2 の条件を満たすとする.
S ∩ Vi ∩ Vj = ∅ を満たす i, j ∈ I に対し, Dij = u ∈ Di|pi(u) ∈ Vj, Dji = u ∈ Dj |pj(u) ∈ Vi とおけば, pi, pj の連続性から Dij , Dji はともに R2 の開集合である. 定義 6.2の条件 (i)によって, pj は Dj から
S ∩ Vj への全単射とみなせるので, この写像の逆写像を p−1j : S ∩ Vj → Dj で表して写像 φij : Dij → Dji を
φij(u) = p−1j (pi(u)) で定義する.
定義 6.4 定義 6.2における各写像 pi : Di → R3 を S の局所座標という. a ∈ S ∩ Vi に対し, pi(u) = a を満
たす Di の点 u がただ 1つ存在するが, これを局所座標 pi に関する a の座標という. また, 上で定義した写像
φij : Dij → Dji を pi から pj への座標変換という.
注意 6.5 写像 φij の定義から, u ∈ Dij のとき, pj(φij(u)) = pi(u) が成り立つため, pi に関する a ∈ S の座標
が u であるとき, pj に関する a の座標は φij(u) である.
次の結果が成り立つ.
命題 6.6 座標変換 φij : Dij → Dji は C1 級写像である.
7 スカラー場とベクトル場
定義 7.1 D を Rn (n = 2, 3) の部分集合とする.
(1) D 上の実数値関数 f を D のスカラー場という. D が開集合で, f が Cr 級関数であるとき, f を Cr 級ス
カラー場という.
(2) D から Rn への写像 X を D のベクトル場という. D が開集合で, X の各成分の関数が Cr 級関数である
とき, X を Cr 級ベクトル場という.
定義 7.2 (1) D を R2 の開集合とする. D の C1 級スカラー場 f に対し, f の勾配 grad f とは
(grad f)(x) =
(∂f∂x (x)∂f∂y (x)
)
によって定義される D のベクトル場である.
17
(2) D を R3 の開集合とする. D の C1 級スカラー場 f に対し, f の勾配 grad f とは
(grad f)(x) =
∂f∂x (x)∂f∂y (x)∂f∂z (x)
によって定義される D のベクトル場である.
注意 7.3 D 上の C1級スカラー場 f と D の点 p に対し, t(grad f)(p) = f ′(p) だから, 命題 2.16と定義 2.17か
ら v ∈ Rn に対して次の等式が成り立つ.
limt→0
f(p+ tv)− f(p)
t= tf ′(p)v = t(grad f)(p)v = ((grad f)(p)と v の内積)
従って, v が (grad f)(p) に垂直なベクトルならば f の v 方向の微分係数は 0 である.
定義 7.4 D を Rn (n = 2, 3) の開集合, f を D のC1級スカラー場とする. 実数 c に対し, D の部分集合 L(f ; c)
を L(f ; c) = x ∈ D | f(x) = c で定める. n = 2 の場合, L(f ; c) を f の等位曲線といい, n = 3 の場合, L(f ; c)
を f の等位面という.
p ∈ L(f ; c)に対し, (grad f)(p) = 0ならば∂f
∂xj(p) = 0 を満たす 1 ≦ j ≦ nがあるが, 以後簡単のため j = nの
場合を考える. p から第 n成分を除いて得られる n− 1次元数ベクトルを q とおけば, 陰関数定理により q を含む
Rn−1 の開集合 U と, U 上の C1 級関数 g : U → R で, p =( qg(q)
)かつ, すべての x ∈ U に対して f
( xg(x)
)= c
を満たすものがある. 従って L(f ; c) は p の近くで C1 級関数 g のグラフだから, n = 2 の場合は L(f ; c) は C1
級の曲線であり, n = 3 の場合は L(f ; c) は C1 級の曲面である.
命題 7.5 D を Rn の開集合, f を D の C1 級スカラー場とし, p ∈ L(f ; c) に対し, (grad f)(p) = 0 であるとす
る. このとき, (grad f)(p) は L(f ; c) の p における法線ベクトルである.
証明 x : I → Rn を p を通る L(f ; c) 上の任意の曲線とし, t0 ∈ I に対して x(t0) = p とする. すべての t ∈ I に
対して f(x(t)) = c だから, この左辺の関数 f x は定数値関数である. 従ってこの関数の t0 における微分係数を
考えれば, 合成写像の微分法によって f ′(x(t0))x′(t0) = 0 であり, 一方
f ′(x(t0))x′(t0) = f ′(p)x′(t0) =
t(grad f)(p)x′(t0) = ((grad f)(p)と x′(t0)の内積)
だから, (grad f)(p) は p を通る L(f ; c) 上の任意の曲線の p における接ベクトルと垂直である. 故に (grad f)(p)
は L(f ; c) の p における法線ベクトルである.
定義 7.6 X を D のベクトル場とする. 写像 ω : (a, b) → D が任意の t ∈ (a, b) に対して ω′(t) = X(ω(t)) を満
たすとき, ω によってパラメータ表示される D の曲線を X の積分曲線または流線という.
次に述べる常微分方程式の解の存在定理により, D の連続な任意のベクトル場 X と D の任意の点 p0 に対し
て, p0 を通る X の積分曲線が存在する. すなわち, εp0> 0 と写像 ωp0
: (−εp0, εp0
) → D で, ωp0(0) = p0 かつ,
任意の t ∈ (−εp0, εp0
) に対して ω′p0(t) = X(ωp0
(t)) を満たすものがただ 1つ存在する.
定理 7.7 I を開区間, D を Rn の開集合, F : I×D → Rn をCr級写像 (r ≧ 1)とする. 任意の t0 ∈ I と p0 ∈ D
に対し, t0 を含み I に含まれる開区間 J が存在して, 微分方程式 x′ = F (t,x) の J における解 ω : J → D で
ω(t0) = p0 を満たすものが存在する. K が t0 を含み I に含まれる開区間で, γ : K → D も γ(t0) = p0 を満た
す x′ = F (t,x) の解ならば, t ∈ J ∩K に対して γ(t) = ω(t) である.
さらに, 微分方程式の解の初期ベクトルに関する連続性から D の p0 を含む開集合 U と εU > 0 が存在し,
(t,p) ∈ (−εU , εU ) × U を ωp(t) に対応させる (−εU , εU ) × U から D への写像を χU で表せば, χU は連続であ
り, X が Cr 級ベクトル場ならば, この写像は Cr 級写像である.
18
定義 7.8 D の C1級ベクトル場 X が与えられたとき, C1級関数 f : D → R と p0 ∈ D に対し, p0 を含むある
開集合 U と, ある εU > 0 に対して存在する上記の写像 χU : (−εU , εU )× U → D を考え,
X(f)(p) = limt→0
f(χU (t,p))− f(p)
t= limt→0
f(χU (t,p))− f(χU (0,p))
t=∂(f χU )
∂t(0,p)
= f ′(χU (0,p))ω′p(0) = f ′(p)X(p)
とおく. p ∈ D を X(f)(p) に対応させる関数 X(f) : D → R を f のX に関する微分という.
例 7.9 n次正方行列 A (n = 2, 3) に対し Rn のベクトル場 XA を XA(x) = Ax で定義する. p ∈ Rn に対し
て, XA の積分曲線 x で x(0) = p を満たすものは次のようにして与えられる.
Sm = En +A+1
2!A2 + · · ·+ 1
m!Am =
m∑k=0
1
k!Ak
とおけば, S1, S2, . . . , Sm, . . . は実数を成分とする n次正方行列全体からなる R 上のベクトル空間 Mn(R) におけ
る点列であるが, この点列は Mn(R) において収束することが示される. そこで,その極限 limm→∞
Sm =∞∑k=0
1
k!Ak
を exp(A) で表し, A ∈Mn(R) を exp(A) に対応させる写像を「行列の指数写像」という. このとき, x : R → Rn
を x(t) = exp(tA)p で定めれば, x(0) = p であり, x′(t) = A exp(tA)p = XA(x(t)) が成り立つことが確かめら
れる.
例 7.10 p1,p2, · · · ,pl を Rn (n = 2, 3) の l 個の相異なる点, k1, k2, · · · , kl ∈ R とし, D = Rn−p1,p2, · · · ,pl
とおく. D のスカラー場 f を f(x) =l∑i=1
ki∥x− pi∥
で定める. x の第 j 成分を xj とおけば, grad f は
(grad f)(x) = −l∑i=1
ki∥x− pi∥3
(x− pi)
によって与えられる. G を万有引力定数, Mi を点 pi にある質点の質量, m を点 x にある質点の質量とすると
き, ki = −GMim (i = 1, 2, . . . , l)の場合, f(x) は x ∈ D にある質点の重力ポテンシャルであり, −(grad f)(x)
は x ∈ D にある点に働く力である. 従って質点の時刻 t における位置を x(t) とすれば,ニュートンの運動方程
式から, 微分方程式
x′′(t) = −l∑i=1
GMi
∥x(t)− pi∥3(x(t)− pi)
が得られる. とくに n = 2, l = 1, p1 = 0 の場合, c = GM1, x(t) =
(x(t)
y(t)
)とおけば, 上の微分方程式は
x′′(t) = − cx(t)
(x(t)2 + y(t)2)32
y′′(t) = − cy(t)
(x(t)2 + y(t)2)32
となる. x(t) = r(t) cos θ(t), y(t) = r(t) sin θ(t) とおけば,(x′′(t)
y′′(t)
)=
((r′′(t)− r(t)θ′(t)2) cos θ(t)− (2r′(t)θ′(t) + r(t)θ′′(t)) sin θ(t)
(2r′(t)θ′(t) + r(t)θ′′(t)) cos θ(t) + (r′′(t)− r(t)θ′(t)2) sin θ(t)
)
=
(cos θ(t) − sin θ(t)
sin θ(t) cos θ(t)
)(r′′(t)− r(t)θ′(t)2
2r′(t)θ′(t) + r(t)θ′′(t)
)だから, r, θ に関する微分方程式(
cos θ(t) − sin θ(t)
sin θ(t) cos θ(t)
)(r′′(t)− r(t)θ′(t)2
2r′(t)θ′(t) + r(t)θ′′(t)
)= − c
r(t)2
(cos θ(t)
sin θ(t)
)
19
が得られる. この両辺に
(cos θ(t) − sin θ(t)
sin θ(t) cos θ(t)
)−1
をかければ次の方程式が得られる.
(r′′(t)− r(t)θ′(t)2
2r′(t)θ′(t) + r(t)θ′′(t)
)= − c
r(t)2
(cos θ(t) sin θ(t)
− sin θ(t) cos θ(t)
)(cos θ(t)
sin θ(t)
)= − c
r(t)2
(1
0
)
従って r′′(t)− r(t)θ′(t)2 = − c
r(t)2かつ 2r′(t)θ′(t)+ r(t)θ′′(t) = 0 である. θ が定数値関数でない場合は, 2つめの
方程式の両辺を r(t)θ′(t) で割るとθ′′(t)
θ′(t)= −2r′(t)
r(t)が得られ, この両辺を積分すれば log |θ′(t)| = log
1
r(t)2+C (C
は積分定数 )が得られる. そこで K = ±eC とおけば θ′(t) =K
r(t)2が成り立つ. θ が定数値関数の場合は θ′(t) = 0
だから, これは上式の K = 0 の場合に相当する. 上式を 1つめの方程式に代入すれば r′′(t) =K2
r(t)3− c
r(t)2が得ら
れる. この両辺に 2r(t)′ をかけて両辺を積分すれば, L を積分定数として r′(t)2 = L− K2
r(t)2+
2c
r(t)が得られる. こ
こで, r の逆関数を τ とすれば, r′(t) = (τ−1)′(t) =1
τ ′(τ−1(t))だから, r = τ−1(t)とおくと
1
τ ′(r)2= L−K2
r2+2c
r
が得られ, これを τ ′(r) に関して解けば τ ′(r) = ± r√Lr2 + 2cr −K2
が得られる. 一方, φ(r) = θ(τ(r)) とおいて,
θ を r の関数とみなして得られる関数 φ を考えると, θ′(t) =K
r(t)2と上の結果から, ±K を改めて K とおきなお
せば φ′(r) = θ′(τ(r))τ ′(r) =K
r√Lr2 + 2cr −K2
が得られる. このとき, K = 0 ならば φ は定数値関数であり,
K = 0 ならば θ0 を積分定数として φ は以下で与えられる.
φ(r) =
2 tan−1
(√Lr +
√Lr2 + 2cr −K2
K
)+ θ0 L ≧ 0
2 tan−1
(c+
√K2L+ c2
K√−L
√−Lr − c+
√K2L+ c2
Lr + c+√K2L+ c2
)+ θ0 − c2
K2< L < 0
上の結果から φ の定義域は L > 0 ならば[√
K2L+c2−cL ,∞
), L = 0 ならば
[K2
2c ,∞), − c2
K2< L < 0 ならば[
c−√K2L+c2
−L , c+√K2L+c2
−L
]である. また, φ の逆関数は次で定義される関数 r である.
r(φ) =
K2
c+ c cos(φ− θ0) +K√L sin(φ− θ0)
L ≧ 0
K2
c+√K2L+ c2 cos(φ− θ0)
− c2
K2< L < 0
ここで, c cos(φ − θ0) + K√L sin(φ − θ0) =
√K2L+ c2 cos(φ − θ0 + α) を満たす α があるため, θ0 を θ0 + α
で置き換えて, さらに ε =
√K2L+ c2
c, l =
K2
cとおけば r(φ) =
l
1 + ε cos(φ− θ0)が得られる. 故に原点に質
量 M の質点が存在して生まれる重力場における質点の軌道は, 極座標での方程式 r =l
1 + ε cos(θ − θ0)で表さ
れる. 極座標での方程式 r =l
1 + ε cos θで表される曲線を C とすれば, この軌道は C を反時計回りに θ0 だ
け回転させた曲線である. ε = 0 の場合, C は原点を中心とする半径 l の円である. 0 < ε < 1 の場合, C は原
点と(− 2εl
1−ε2 , 0)を焦点とする離心率が ε の楕円である. ε = 1 の場合, C は原点を焦点, 直線 x = l を準線と
する放物線である. ε > 1 の場合, C は原点と(
2εlε2−1 , 0
)を焦点とし, 漸近線が y =
√ε2 − 1
(x− εl
ε2 − 1
)と
y = −√ε2 − 1
(x− εl
ε2 − 1
)である双曲線の x 座標が
l
1 + ε以下の部分である.
20
8 線積分と保存力場
D を Rn (n = 2, 3) の開集合, X を D の連続なベクトル場とする.
命題 8.1 C を D に含まれる C1 級曲線とし, 写像 x : [a, b] → D と y : [c, d] → D がともに C のパラメータ表
示で, x(a) = y(c) かつ x(b) = y(d) であるとき,
∫ b
a
(X(x(t)),x′(t)) dt =
∫ d
c
(X(y(t)),y′(t)) dt が成り立つ.
証明 仮定から, 連続な全単射 φ : [c, d] → [a, b] で (c, d) においてC1級関数であり, φ(c) = a, φ(d) = b, y = x φを満たすものがある. 合成写像の微分法から y′(t) = φ′(t)x′(φ(t)) だから, s = φ(t) とおいて, 変数変換を行えば∫ d
c
(X(y(t)),y′(t)) dt =
∫ d
c
(X(x(φ(t))), φ′(t)x′(φ(t))) dt =
∫ d
c
(X(x(φ(t))),x′(φ(t)))φ′(t) dt
=
∫ b
a
(X(x(s)),x′(s)) ds
が得られる.
定義 8.2 次の条件 (∗)を満たす連続写像 x : [a, b] → Rn を区分的 Cr 級写像という. 曲線 C が区分的 Cr 級写像
によってパラメータ表示されるとき, C を区分的 Cr 級曲線という.
(∗) a = t0 < t1 < · · · < tN = b を満たす数列 t0, t1, . . . , tN が存在して, i = 1, 2, . . . , N に対し x を開区間
(ti−1, ti) に制限すれば Cr 級写像になる.
定義 8.3 C を端点が p, q ∈ D である D に含まれる区分的 C1 級曲線とし, x : [a, b] → D を C のパラメータ
表示で x(a) = p, x(b) = q を満たすものとする. a = t0 < t1 < · · · < tN = b を満たす数列 t0, t1, . . . , tN で,
i = 1, 2, . . . , N に対し x を開区間 (ti−1, ti) に制限すれば C1 級写像であるとき,
N∑i=1
∫ ti
ti−1
(X(x(t)),x′(t)) dt を
p から q への C に沿った X の線積分といい, この値を∫C
X で表す.
定義 8.4 D のベクトル場 X に対して, D の C1 級スカラー場 φ で X = gradφ を満たすものが存在するとき,
X を保存力場といい, X = gradφ を満たす D のスカラー場 φ を X のポテンシャルという.
注意 8.5 X = −gradφ を満たす D のスカラー場 φ を X のポテンシャルということもある.
命題 8.6 X を D の保存力場とし, φ を X のポテンシャルとする. 任意の p, q ∈ D に対し, C を端点が p, q ∈ D
である区分的 C1 級曲線とするとき p から q への C に沿った X の線積分は φ(q)− φ(p) に等しい.
証明 x : [a, b] → D を C のパラメータ表示で x(a) = p, x(b) = q を満たし, a = t0 < t1 < · · · < tN = b を
満たす数列 t0, t1, . . . , tN で, i = 1, 2, . . . , N に対し x を開区間 (ti−1, ti) に制限すれば C1 級写像であるとする.
X = gradφ だから, t ∈ (ti−1, ti) に対し, 合成写像の微分法から
(X(x(t)),x′(t)) = ((gradφ)(x(t)),x′(t)) = t(gradφ)(x(t))x′(t) = φ′(x(t))x′(t) = (φ x)′(t)
が成り立つため,∫C
X =
N∑i=1
∫ ti
ti−1
(X(x(t)),x′(t)) dt =
N∑i=1
∫ ti
ti−1
(φ x)′(t) dt =N∑i=1
[(φ x)(t)]titi−1
=
N∑i=1
((φ x)(ti)− (φ x)(ti−1)) = φ(x(tN ))− φ(x(t0)) = φ(q)− φ(p)
が得られる.
21
D に含まれる質量 m の質点 P が D 上のベクトル場 F で与えられる力を受けているとし, 時刻 t における P
位置を ω(t) とし, P は写像 ω : I → D でパラメータ表示される区分的 C1 級 C 上を動くとする. I = [a, b] の場
合, ω(a) から ω(b) への C に沿った F の線積分∫C
F は時刻 a から時刻 b までの間に力 F のした仕事を表して
いる. C が C2 級曲線で, ω が C2 級写像の場合, ニュートンの運動方程式mω′′(t) = F (ω(t)) から
d
dt
(1
2m∥ω′(t)∥2
)=
1
2md
dt(ω′(t),ω′(t)) = m(ω′′(t),ω′(t)) = (F (ω(t)),ω′(t))
が得られる. 従って微積分学の基本定理から∫C
F =
∫ b
a
(F (ω(t)),ω′(t)) dt =
∫ b
a
d
dt
(1
2m∥ω′(t)∥2
)dt =
1
2m∥ω′(b)∥2 − 1
2m∥ω′(a)∥2 (8.1)
が成り立つ. この等式は, 時刻 a から時刻 b までの間に力 F のした仕事は質点 P の運動エネルギーの変化に等し
いことを示している. さらに, 力の場 F がポテンシャルを持ち, D 上のスカラー場 φ に対して F = −gradφ で
あるとき, 命題 8.6により ∫C
F = φ(ω(a))− φ(ω(b)) (8.2)
だから, (8.1)と (8.2)から1
2m∥ω′(b)∥2 + φ(ω(b)) =
1
2m∥ω′(b)∥2 + φ(ω(b))
が成り立つ. この等式は質点 P の時刻 tにおける全エネルギー1
2m∥ω′(t)∥2 + φ(ω(t)) がつねに一定であるとい
う「エネルギー保存則」を示している.
命題 8.7 Rn の開集合 D 任意の 2点 p, q に対し, p と q を結ぶ区分的 C1級曲線が存在すると仮定する. D の
2つの C1 級スカラー場 φ, ψ が gradφ = gradψ を満たすならば φ− ψ は D の定数値関数である.
証明 D のベクトル場 X を X = gradφ で定義する. x,p ∈ D に対し, C を端点が p, q ∈ D である区分的 C1
級曲線とするとき, 命題 8.6から p から x への C に沿った X の線積分は φ(x)−φ(p) と ψ(x)−ψ(p) の両方に
等しいため, C = φ(p)− ψ(p) とおけば φ(x)− ψ(x) = C が成り立つ.
命題 8.8 D の連続なベクトル場 X に対して D のスカラー場 φ が次の条件 (∗)を満たせばX = gradφ である.
(∗) 任意の p, q ∈ D と, これらを端点とする区分的 C1 級曲線 C に対して, p から q への C に沿った X の線
積分∫C
X は φ(q)− φ(p) に等しい.
証明 D は開集合だから任意の p ∈ D に対して r > 0 で B(p ; r) ⊂ D を満たすものが存在する. 0 < |h| < r を
満たす任意の実数 h に対し, x(t) = p+ thei により写像 x : [0, 1] → Rn を定めれば, ∥x(t)− p∥ = |th| ≦ |h| < r
だから x は p から p+ hei に向かう D の線分である. x′(t) = thei だから, X(x) の第 i成分を fi(x) とおけば,
仮定と積分の平均値の定理から 0 ≦ θ ≦ 1 で次の等式を満たすものが存在する.
φ(p+ hei)− φ(p) =
∫ 1
0
(X(p+ thei), hei) dt =
∫ 1
0
hfi(p+ thei) dt = hfi(p+ θhei)
従って limh→0
φ(p+ hei)− φ(p)
h= lim
h→0fi(p+ θhei) = fi(p) が i = 1, 2, . . . , n に対して成り立つため, φ はすべて
の変数に関して p で偏微分可能であり, X = gradφ である.
x(a) = x(b) を満たす連続写像 x : [a, b] → Rn でパラメータ表示される曲線を閉曲線という.
命題 8.9 D の任意の 2点 p, q に対し, p と q を結ぶ区分的 C1 級曲線が存在すると仮定する. D の連続なベク
トル場 X が保存力場であるためには, D に含まれる任意の区分的 C1 級閉曲線 C に対して, C を 1周する線積
分の値が 0 であることが必要十分である.
22
証明 D に含まれる任意の区分的 C1 級閉曲線に対して, この曲線を 1 周する線積分の値が 0 であると仮定し,
p0 ∈ D を 1つ固定する. 任意の x ∈ D に対し, p0 から x への 2つの区分的 C1 級曲線 Cx, C′x が与えられ,
ωx : [a, b] → D, γx : [c, d] → D をそれぞれ Cx, C′x のパラメータ表示とするとき, 写像 z : [a, b+ d− c] → D を
z(t) =
ωx(t) a ≦ t ≦ b
γx(b+ d− t) b ≦ t ≦ b+ d− c
によって定めて, z によってパラメータ表示される曲線を C とすれば, C は p0 を出発して p0 に戻る区分的C1級曲
線である. 従って,仮定から∫C
X = 0である. 区間 [a, b]に対応する C の部分は Cx であり,区間 [b, b+d−c]に対応
する C の部分を C ′ とすれば,
∫C
X =
∫Cx
X +
∫C′
X である. 数列 t0, t1, . . . , tN は c = t0 < t1 < · · · < tN = d
を満たし, i = 1, 2, . . . , N に対し γx を開区間 (ti−1, ti) に制限すれば C1 級写像であるとする. b ≦ t ≦ b+ d− c
ならば z(t) = γx(b+ d− t) だから, 各 i = 1, 2, . . . , N に対し, 区間 (b+ d− ti, b+ d− ti−1) に制限すれば z は
C1 級写像である. s = b+ d− t とおいて変数変換を行い, z′(t) = −γ′x(b+ d− t) であることに注意すれば∫
C′X =
N∑i=1
∫ b+d−ti−1
b+d−ti(X(z(t)), z′(t)) dt =
N∑i=1
∫ b+d−ti−1
b+d−ti(X(γx(b+ d− t)),−γ′
x(b+ d− t)) dt
= −N∑i=1
∫ ti−1
ti
(X(γx(s)),γ′x(s)) (−1)ds = −
N∑i=1
∫ ti
ti−1
(X(γx(s)),γ′x(s)) ds = −
∫C′
x
X
が得られる. 以上から,
∫Cx
X =
∫C′
x
X となり,
∫Cx
X は p0 から x に向かう区分的 C1 級曲線の選び方に依存
しない. そこで D のスカラー場 φ を φ(x) =
∫Cx
X によって φ(x) を定義する. p, q ∈ D と, これらを端点と
する区分的 C1 級曲線 C が与えられたとする. ωp : [a, b] → D を p0 から p に向かう Cp のパラメータ表示,
α : [c, d] → D を p から q に向かう C のパラメータ表示として ωq : [a, b+ d− c] → D を
ωq(t) =
ωp(t) a ≦ t ≦ b
α(t− b+ c) b ≦ t ≦ b+ d− c
によって定めれば, ωq は p0から qに向かう区分的C1級曲線 Cq のパラメータ表示である. このとき φ(p) =
∫Cp
X,
φ(q) =
∫Cq
X であり, 区間 [a, b]に対応する Cq の部分は Cp であり, 区間 [b, b+d−c]に対応する Cq の部分は C
に他ならないため,上と同様に区間 [b, b+d−c]において s = t−b+cと変数変換を行えば∫Cq
X =
∫Cp
X +
∫C
X
が成り立つ. 故に∫C
X =
∫Cq
X −∫Cp
X = φ(q)− φ(p) が得られ, 命題 8.8の条件 (∗)が満たされるため, X は
φ をポテンシャルとする保存力場である. 逆に X が保存力場ならば命題 8.6によって D に含まれる任意の区分
的 C1 級閉曲線 C に対して, C を 1周する線積分の値は 0 である.
命題 8.10 D の C1 級ベクトル場 X が保存力場ならば, 任意の p ∈ D に対して p におけるX の微分 X ′(p)
は対称行列である. すなわち X(x) の第 i成分を fi(x) とおいて D 上の実数値関数 fi を定義すれば, 任意の
i, j = 1, 2, · · · , n に対して ∂fi∂xj
=∂fj∂xi
が成り立つ.
証明 仮定から D の C1級スカラー場 φ で X = gradφ を満たすものが存在するため, X(x) の第 i成分を fi(x)
とおけば fi =∂φ
∂xiが i = 1, 2, . . . , n に対して成り立つ. ここで各 fi は C1級関数だから, 上式より φ は C2級関
数である. 従って∂fi∂xj
=∂2φ
∂xj∂xi=
∂2φ
∂xi∂xj=∂fj∂xi
が成り立つ.
23
定理 8.11 [a, b]× [c, d] 上の実数値連続関数 f が 1番目の変数に関して偏微分可能であり, 偏導関数∂f
∂xが連続
ならば g(x) =
∫ d
c
f(x, t) dt で定義される [a, b] 上の実数値関数 g は微分可能で, g′(x) =
∫ d
c
∂f
∂x(x, t) dt が成り
立つ.
Rn の部分集合 D に対し p0 ∈ D で, 条件「p ∈ D, 0 ≦ t ≦ 1 ならば p0 + t(p− p0) ∈ D」を満たすものが存
在するとき, D は p0 に関して星形であるという.
定理 8.12 Rn の開集合 D は p0 ∈ D に関して星形であるとする. X が D のC1級ベクトル場で, 任意の p ∈ D
に対して X ′(p) が対称行列ならばX は保存力場である.
証明 D のスカラー場 φ を φ(x) =
∫ 1
0
(X(p0 + t(x− p0)),x− p0) dt によって定義する. X(x) の第 i成分を
fi(x) とおき, x, p0 の第 i成分をそれぞれ xi, pi とすれば, 仮定から任意の i, j = 1, 2, · · · , n に対して ∂fi∂xj
=∂fj∂xi
が成り立つため, 定理 8.11と合成写像の微分法から
∂φ
∂xj(x) =
∫ 1
0
∂
∂xj(X(p0 + t(x− p0)),x− p0) dt =
n∑i=1
∫ 1
0
∂
∂xjfi(p0 + t(x− p0))(xi − pi) dt
=
∫ 1
0
fj(p0 + t(x− p0)) dt+
n∑i=1
∫ 1
0
t∂fi∂xj
(p0 + t(x− p0))(xi − pi) dt
=
∫ 1
0
fj(p0 + t(x− p0)) dt+
n∑i=1
∫ 1
0
t∂fj∂xi
(p0 + t(x− p0))(xi − pi) dt
=
∫ 1
0
(fj(p0 + t(x− p0)) +
n∑i=1
∫ 1
0
t∂fj∂xi
(p0 + t(x− p0))(xi − pi)
)dt
=
∫ 1
0
d
dt(tfj(p0 + t(x− p0))) dt = [tfj(p0 + t(x− p0))]
10 = fj(x)
が得られる. 故に X = gradφ が成り立つため X は保存力場である.
例 8.13 R2−0 のベクトル場 X を X( xy ) =
(−y
x2+y2
xx2+y2
)によって定義すればX ′( xy ) =
(2xy
(x2+y2)2−x2+y2
(x2+y2)2
−x2+y2
(x2+y2)2 − 2xy(x2+y2)2
)だから, 任意の ( xy ) ∈ R2 − 0 に対してX ′( xy ) は対称行列である. 一方, 原点を中心とする半径 r の円を C と
すれば, C は ω(t) =
(r cos t
r sin t
)によって定義される C1級写像 ω : [0, 2π] → R2 −0 によってパラメータ表示さ
れるため, X(ω(t)) =
(− sin tr
cos tr
), ω′(t) =
(−r sin tr cos t
)より
∫C
X =
∫ 2π
0
(X(ω(t)),ω′(t)) dt =
∫ 2π
0
1 dt = 2π = 0
である. また, 点 ( ab ) ∈ R2 − 0 を通るX の積分曲線は x(t) =
(√a2 + b2 cos(t+ c)√a2 + b2 sin(t+ c)
)(c は定数 )の形の写像
でパラメータ表示される, 原点を中心とする円である.
D を Rn の開集合, φ : D → R を D の C1 級スカラー場とする. I を区間とし, C1 級写像 ω : I → D でパラ
メータ表示される曲線 C が与えられているとする. 点 Pは φ から定まる D の保存力場 gradφ : D → Rn のも
とで, C 上を動く質量 m の質点であるとして, 時刻 t における Pの位置ベクトルを x(t) とする. このとき, 区間
J から I への関数 σ で, x(t) = ω(σ(t)) を満たすものが存在する. このとき, 力学的エネルギーの保存法則から1
2m∥x′(t)∥2 + φ(x(t)) は時刻 tによらず一定だから, この値を E とおいて等式
1
2m∥x′(t)∥2 + φ(x(t)) = E (8.3)
24
を得る. そこで x(t) = ω(σ(t)) と x′(t) = σ′(t)ω′(σ(t)) を上の等式に代入すれば次の等式が得られる.
1
2m∥ω′(σ(t))∥2σ′(t)2 = E − φ(ω(σ(t))) (8.4)
定理 8.14 上記の状況の下で, σ が単調増加関数の場合, 質点 P が C 上の点 ω(a) から ω(b) (a < b) まで, C 上
を動くのに要する時間は以下の積分で与えられる.√m
2
∫ b
a
∥ω′(s)∥√E − φ(ω(s))
ds
証明 仮定から σ′(t) ≧ 0 だから (8.4)より σ′(t) =
√2(E − φ(ω(σ(t))))√m∥ω′(σ(t))∥
が t ∈ J に対して成り立つ. 従って σ
の像に属する s ∈ I に対して (σ−1)′(s) =1
σ′(σ−1(s))=
√m∥ω′(s)∥√
2(E − φ(ω(s)))が成り立つ. 質点 P が点 ω(a) を
出発する時刻を t0, 点 ω(b) に到着する時刻を t1 (t0 < t1) とすれば a = σ(t0), b = σ(t1) だから, σ−1(a) = t0,
σ−1(b) = t1 である. 微積分学の基本定理と上式から,
t1 − t0 = σ−1(b)− σ−1(a) =
∫ b
a
(σ−1)′(s) ds =
∫ b
a
√m∥ω′(s)∥√
2(E − φ(ω(s)))ds =
√m
2
∫ b
a
∥ω′(s)∥√E − φ(ω(s))
ds
が得られる.
系 8.15 D = R2 で, φ が φ( xy ) = mg(y + k) で与えられる, 鉛直下方向の重力場のポテンシャル関数の場合,
s ∈ I を ω(s) の x成分, y成分に対応させる関数をそれぞれ ω1, ω2 とおくと, 点 Pが C 上の点 ω(a)から ω(b)
まで, C 上を動くのに要する時間は1√2g
∫ b
a
√ω′1(s)
2 + ω′2(s)
2
Emg − k − ω2(s)
ds
である. さらに出発点 ω(a)における Pの速度が 0ならば, 点 Pが C 上の点 ω(a)から ω(b)まで, C 上を動くの
に要する時間は, 次の広義積分で与えられる.
1√2g
∫ b
a
√ω′1(s)
2 + ω′2(s)
2
ω2(a)− ω2(s)ds
証明 前半の主張は定理 8.14 からただちに分かる. 出発点 ω(a) における P の速度が 0 ならば 8.4 から E =
φ(ω(a)) = mg(ω2(a) + k) だから, 前半の結果に代入すれば後半の結果が得られる.
例 8.16 半径 rの円を x軸上を転がして得られるサイクロイドを x軸に関して対称移動した曲線を Cr とすれば,
Cr は以下で定義される写像 γ : [0, 2π] → R2 によってパラメータ表示される.
γ(s) =
(r(s− sin s)
r(cos s− 1)
)
鉛直下方向の重力場において, 質点 P が速度が 0 で点 γ(a) (0 ≦ a < π) を出発して, Cr 上を動いて γ(b)
(a < b ≦ 2π − a) に到達するのに要する時間は, 系 8.15 により
1√2g
∫ b
a
√γ′1(s)
2 + γ′2(s)2
γ2(a)− γ2(s)ds =
√r
g
∫ b
a
√1− cos s
cos a− cos sds =
√r
g
(π − 2 sin−1
(cos b2cos a2
))(8.5)
である. とくに b = 2π − a の場合, 質点 Pが出発点と同じ高さの点
(r(2π − a+ sin a)
r(cos a− 1)
)に到達するのに要する
時間は 2π
√r
gとなり, a に依存しない. この事実は「サイクロイド振り子」の等時性と言われている.
25
補題 8.17 実数 p > 0, q ≧ 0 に対して r(ξ − sin ξ) = p かつ r(1− cos ξ) = q を満たす正の実数 r と ξ ∈ (0, 2π]
の対 (r, ξ) はただ 1つ存在する.
証明 q = 0 の場合, (r, ξ) =( p
2π, 2π)が r(ξ − sin ξ) = p かつ r(1 − cos ξ) = q を満たす正の実数 r と
ξ ∈ (0, 2π] の唯一の対である. 以下, q > 0 と仮定する. 関数 φ : (0, 2π) → R を φ(x) =x− sinx
1− cosxで定める.
φ′(x) =2− 2 cosx− x sinx
(1− cosx)2だから関数 ψ : [0, 2π] → R を ψ(x) = 2− 2 cosx− x sinx で定めて, ψ(x) の符号を
調べる. ψ′(x) = sinx− x cosx, ψ′′(x) = x sinx だから, 0 < x < π で ψ′′(x) > 0, π < x < 2π で ψ′′(x) < 0 とな
るため, ψ′ は [0, π] で単調増加, [π, 2π] で単調減少である. ψ′(0) = 0, ψ′(π) = π > 0, ψ′( 3π2
)= −1
2< 0 だから
ψ′(α) = 0 を満たす π < α <3π
2がただ 1つ存在する. 従って 0 < x < α で ψ′(x) > 0, α < x < 2π で ψ′(x) < 0
だから, ψ は [0, α] で単調増加, [α, 2π] で単調減少である. 一方, ψ(0) = ψ(2π) = 0 だから, 0 < x < 2π ならば
ψ(x) > 0 であり, φ′(x) > 0 となるため φ は単調増加関数である.
また, x − sinx =x3
6+ o(x4) = x
(x2
6+ o(x3)
), 1 − cosx =
x2
2+ o(x3) だから, lim
x→+0φ(x) = 0 であり,
x→ 2π− 0 のとき, 1− cosx→ +0, x− sinx→ 2π だから limx→2π−0
φ(x) = ∞ である. 従って, 中間値の定理から
φ はすべての正の実数の値をとる. 以上から, 正の実数 p, q に対してξ − sin ξ
1− cos ξ=p
qを満たす ξ ∈ (0, 2π) がただ
1つ存在する. この ξ に対し, r =q
1− cos ξと定めれば, r(ξ − sin ξ) = p, r(1− cos ξ) = q が成り立ち, このよう
な対 (r, ξ) はただ 1つ存在することがわかる.
例 8.18 上の補題から x軸上の点 p =
(p0
0
)と q =
(p1
q
)∈ R2 (p1 > p0, q ≦ 0) に対し, r(ξ − sin ξ) = p1 − p0
かつ r(cos ξ− 1) = q を満たす正の実数 r と ξ ∈ (0, 2π] の対 (r, ξ) はただ 1つ存在するため, 鉛直下方向の重力場
において, 質点Pが速度が 0で p を出発して, γ(s) =
(r(s− sin s) + p0
r(cos s− 1)
)によって定義される写像 γ : [0, ξ] → R2
でパラメータ表示される曲線を動いて γ(ξ) = q に到達するのに要する時間は, 系 8.15から, 次で与えられる.
1√2g
∫ ξ
0
√γ′1(s)
2 + γ′2(s)2
−γ2(s)ds =
√r
g
∫ ξ
0
√1− cos s
1− cos sds = ξ
√r
g(8.6)
とくに q = 0 の場合, ξ = 2π だから r =p1 − p0
2πとなるため, (8.6)の値は
√2π(p1 − p0)
gに等しい. p と q の直
線距離は p0 − p1 で, 質点が移動した曲線の長さは 8r =4(p1 − p0)
πだから, 直線距離で考えた場合の平均速度は√
g(p1 − p0)
2πであり, 質点が実際に移動した経路での平均速度は
√8g(p1 − p0)
π3である. また, 力学的エネルギー
の保存法則から, Pの速度が最大になるのは中間点に達したときで, その速度は
√2g(p1 − p0)
πとなり, 直線距離
で考えた場合の平均速度の 2倍である. さらに p1−p0 が大阪駅と東京駅の直線距離に等しい 403751mで重力加速
度を 9.80665m/s2 とすれば, 移動には約 8分 28秒 61かかり, 直線距離で考えた場合の平均速度は秒速 793.829m
(時速 2857.79km), 質点が実際に移動した経路での平均速度は秒速 1010.735m (時速 3638.65km)である.
9 ベクトル場の発散
X を Rn の開集合 D の Cr 級ベクトル場とする. D の点 p0 に対し, p0 を含む開集合 U と ε > 0 および Cr
級写像 χ : (−ε, ε) × U → D で, 各 p ∈ U に対し, t ∈ (−ε, ε) を χ(t,p) に対応させる写像が X の積分曲線で,
χ(0,p) = p となるものが存在する (第 7節参照).
命題 9.1 s, t, s+ t ∈ (−ε, ε) であり, p,χ(t,p) ∈ U ならば χ(s+ t,p) = χ(s,χ(t,p)) が成り立つ.
26
証明 ωp(t) = χ(t,p) とおけば ω : (−ε, ε) → D は ω(0) = p を満たす X の積分曲線だから s ∈ (−ε, ε − t) を
χ(s,χ(t,p)) に対応させる写像と s ∈ (−ε, ε− t) を χ(s+ t,p) に対応させる写像はともに s = 0 のときに χ(t,p)
を通る X の積分曲線である. 故に常微分方程式の解の一意性から χ(s+ t,p) = χ(s,χ(t,p)) が成り立つ.
t ∈ (−ε, ε) を固定して, 写像 χt : U → D を χt(x) = χ(t,x) によって定める. Vt = x ∈ U |χ(t,x) ∈ Uとおけば, 上の命題から x ∈ Vt ならば χ−t(χt(x)) = χ(−t,χ(t,x)) = χ(0,x) = x であり, x ∈ V−t ならば
χt(χ−t(x)) = χ(t,χ(−t,x)) = χ(0,x) = x だから χ−t : V−t → Vt は χt : Vt → V−t の逆写像である. 従って,
x ∈ Vt に対し, χ′t(x) は正則行列である. また, χ0 は U の恒等写像だから, χ′
0(x) は単位行列である.
補題 9.2 fij (i, j = 1, 2, . . . , n) を開区間 I で上の実数値関数とし, a ∈ I で fij は微分可能であるとする.
t ∈ I に対し, fij(t) を (i, j) 成分とする n 次正方行列を A(t) とおき, i = 1, 2, . . . , n に対し, A(a) の第 i 行(fi1(a) fi2(a) · · · fin(a)
)を(f ′i1(a) f ′i2(a) · · · f ′in(a)
)で置き換えた行列を Ai(a) で表す. δ(t) = det A(t)
によって定義される I 上の実数値関数は a で微分可能で, δ′(a) =n∑i=1
det Ai(a) が成り立つ.
証明 a+ t ∈ I を満たす t 対し, A0(t) = δ(a) とおき, i = 1, 2, . . . , n ならば
Ai(t) =
∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣
f11(a+ t) f12(a+ t) · · · f1j(a+ t) · · · f1n(a+ t)
f21(a+ t) f22(a+ t) · · · f2j(a+ t) · · · f2n(a+ t)...
......
...
fi1(a+ t) fi2(a+ t) · · · fij(a+ t) · · · fin(a+ t)
fi+1 1(a) fi+1 2(a) · · · fi+1 j(a) · · · fi+1n(a)...
......
...
fn1(a) fi2(a) · · · fnj(a) · · · fnn(a)
∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣とおけば δ(a+ t) = An(t) であることと, 行列式の性質から
limt→0
δ(a+ t)− δ(a)
t= limt→0
1
t
(An(t)− A0(t)
)= limt→0
1
t
n∑i=1
(Ai(t)− Ai−1(t)
)
=
n∑i=1
limt→0
∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣
f11(a+ t) f12(a+ t) · · · f1j(a+ t) · · · f1n(a+ t)...
......
...
fi−1 1(a+ t) fi−1 2(a+ t) · · · fi−1 j(a+ t) · · · fi−1n(a+ t)fi1(a+t)−fi1(a)
tfi2(a+t)−fi2(a)
t · · · fij(a+t)−fij(a)t · · · fin(a+t)−fin(a)
t
fi+1 1(a) fi+1 2(a) · · · fi+1 j(a) · · · fi+1n(a)...
......
...
fn1(a) fi2(a) · · · fnj(a) · · · fnn(a)
∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣
=
n∑i=1
∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣
f11(a) f12(a) · · · f1j(a) · · · f1n(a)...
......
...
fi−1 1(a) fi−1 2(a) · · · fi−1 j(a) · · · fi−1n(a)
f ′i1(a) f ′i2(a) · · · f ′ij(a) · · · f ′in(a)
fi+1 1(a) fi+1 2(a) · · · fi+1 j(a) · · · fi+1n(a)...
......
...
fn1(a) fi2(a) · · · fnj(a) · · · fnn(a)
∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣∣
=
n∑i=1
det Ai(a)
が得られる.
27
定理 9.3 X を D の C2 級ベクトル場とする. x ∈ D に対し, X(x) ∈ Rn の第 i 成分を fi(x) とおいて, D 上
の実数値関数 fi を定める. p ∈ U に対して関数 δp : (−ε, ε) → R を δp(t) = det χ′t(p) によって定めれば, 次の
等式が成り立つ.
δ′p(0) = limt→0
δp(t)− δp(0)
t=
n∑i=1
∂fi∂xi
(p)
証明 t ∈ (−ε, ε) と x ∈ U に対して χ(t,x) の第 i 成分を χi(t,x) とおいて, 関数 χi : (−ε, ε)×U → R を考えれ
ば, χ′t(p)は
∂χi∂xj
(t,p)を (i, j)成分とする n次正方行列である. tの関数 αij を αij(t) =∂χi∂xj
(t,p)で定めて χ′0(p)
の第 i行を(α′i1(0) α′
i2(0) · · · α′in(0)
)で置き換えた行列を Ai とおけば, 補題 9.2により δ′p(0) =
n∑i=1
det Ai
が成り立つ. χ′0(x) が単位行列であることから, αjj(0) =
∂χj∂xj
(0,p) = 1, j = k ならば αjk(0) =∂χj∂xk
(0,p) = 0 で
あることに注意すれば, det Ai = α′ii(0) が得られる. ここで, α′
ij(0) = limt→0
1
t
(∂χi∂xj
(t,p)− ∂χi∂xj
(0,p)
)は
∂χi∂xj
の
(0,p) における, 変数 tに関する偏微分係数だから∂2χi∂t∂xj
(0,p) に等しい. 一方, t を χ(t,x) に対応させる写像は
X の積分曲線だから, limt→0
1
t(χ(t,x)−χ(0,x)) の第 i成分
∂χi∂t
(0,x) は X(χ(0,x)) = X(x) の第 i成分 fi(x) に
一致するため, 次の等式が成り立つ.
α′ij(0) = lim
t→0
1
t
(∂χi∂xj
(t,p)− ∂χi∂xj
(0,p)
)=
∂2χi∂t∂xj
(0,p) =∂2χi∂xj∂t
(0,p) =∂fi∂xj
(p)
以上から δ′p(0) =n∑i=1
det Ai =n∑i=1
α′ii(0) =
n∑i=1
∂fi∂xi
(p) が示された.
注意 9.4 χ′0(x) が単位行列であることから det χ′
0(p) = 1 > 0 であり, χ′t(p) は正則行列だから det χ′
0(p) = 0
である. さらに det χ′t(p) は t の連続関数だから中間値の定理によって, χ′
t(p) が定義されているすべての t に対
して χ′t(p) > 0 である. 従って, 行列 χ′
t(p) が表す 1次変換は「向き」を保つ.
実数を成分とする n次正方行列 A に対し, TA : Rn → Rn を TA(x) = Ax で表される Rn の 1次変換とする.
n = 2 の場合, TA は面積を |det A| 倍する 1次変換であり, n = 3 の場合, TA は体積を |det A| 倍する 1次変換で
ある. また, c ∈ Rn に対し, τc : Rn → Rn によって x ∈ Rn を x+ c ∈ Rn に対応させる平行移動を表す写像と
すれば, n = 2 の場合, τc は面積を保つ写像であり, n = 3 の場合, τc は体積を保つ写像である. 従って x ∈ Rn を
c+ Ax ∈ Rn に対応させる写像は, n = 2 ならば面積を |det A| 倍する写像であり, n = 3 ならば体積を |det A|倍する写像である.
Rn (n = 2, 3) の開集合 D の C2級ベクトル場 X が与えられたとき, p ∈ D と絶対値が十分小さい実数 t に対
し, X の積分曲線から定義される写像 χt は p の近くで, x を χt(p) + χ′t(p)(x− p) に対応させる写像によって
近似される. 従って, χt は p の近くで体積を「ほぼ」 det χ′t(p) 倍する写像だから, 定理 9.3は写像 χt による p
における t = 0 での体積の変化率がn∑i=1
∂fi∂xi
(p) であることを示している. そこで, 以下の定義をする.
定義 9.5 X を D の C1 級ベクトル場とする. x ∈ D に対し, X(x) ∈ Rn の第 i 成分を fi(x) とおいて, D 上
の実数値関数 fi を定める. (divX)(x) =n∑i=1
∂fi∂xi
(x) によって定義される D 上の実数値関数 divX をベクトル
場 X の発散という.
10 ベクトル場の回転
命題 10.1 X を n次実正方行列とし, Xs =1
2(X + tX), Xa =
1
2(X − tX) とおく.
(1) Xs は対称行列, Xa は交代行列であり, X = Xs +Xa が成り立つ.
(2) X = Y + Z を満たす対称行列 Y と交代行列 Z の組は (Y, Z) = (Xs, Xa) に限る.
28
証明 対称行列 Y と交代行列 Z が X = Y +Z を満たせば Y +Z = X = Xs+Xa より Y −Xs = Xa−Z だから
Y −Xs =tY − tXs =
t(Y −Xs) =t(Xa − Z) = tXa − tZ = −Xa + Z = −(Xa − Z) = −(Y −Xs)
が成り立つため, 2(Y −Xs) = O が得られる. 従って Y = Xs であり, 再度 Y +Z = Xs+Xa を用いれば Z = Xs
が得られるため, (2)の主張が示された. (1)は明らかである.
実数成分の n次交代行列全体からなる R 上のベクトル空間を Altn(R) で表して, 1次写像 Ω : R3 → Alt3(R),
ω : Alt3(R) → R3 を次のように定める. c =
abc
∈ R3 に対して Ω(c) ∈ Alt3(R) を Ω(c) =
0 −c b
c 0 −a−b a 0
で定め, P = (pij) ∈ Alt3(R) に対して ω(P ) ∈ R3 を ω(P ) =
p32p13
p21
で定める. 次の結果は, 成分の計算をすれ
ば容易に確かめられる.
命題 10.2 Ω と ω は互いに逆写像で, 任意の c,x ∈ R3 に対して Ω(c)x = c× x が成り立つ.
定義 10.3 X を R3 の開集合 D の C1 級ベクトル場とする. x ∈ D を X ′(x)a =1
2(X ′(x)− tX ′(x)) に対応さ
せる D からAlt3(R) への写像を X ′a : D → Alt3(R) で表し, この写像と ω : Alt3(R) → R3 および 2倍する R3
の 1次変換を合成して得られる D のベクトル場 2ω X ′a : D → R3 を rotX で表して, ベクトル場 X の回転
という.
注意 10.4 x ∈ D に対して X(x) =
f(x)g(x)
h(x)
とおけば, f , g, h は D 上の C1 級関数で, X の x における微分
X ′(x) はX ′(x) =
∂f∂x (x)
∂f∂y (x)
∂f∂z (x)
∂g∂x (x)
∂g∂y (x)
∂g∂z (x)
∂h∂x (x)
∂h∂y (x)
∂h∂z (x)
で与えられるため,
X ′(x)a =1
2
0 ∂f∂y (x)−
∂g∂x (x)
∂f∂z (x)−
∂h∂x (x)
∂g∂x (x)−
∂f∂y (x) 0 ∂g
∂z (x)−∂h∂y (x)
∂h∂x (x)−
∂f∂z (x)
∂h∂y (x)−
∂g∂z (x) 0
である. (rotX)(x) はこの行列の (3, 2)成分, (1, 3)成分, (2, 1)成分をそれぞれ x成分, y成分, z成分とするベク
トルを 2倍したものだから (rotX)(x) =
∂h∂y (x)−
∂g∂z (x)
∂f∂z (x)−
∂h∂x (x)
∂g∂x (x)−
∂f∂y (x)
である.
定義 10.5 R3 の開集合 D の C1 級ベクトル場 X に対し, rotX がつねに零ベクトルを値にとる D のベクトル
場ならば, X を渦なしベクトル場という.
例 10.6 3次正方行列 A = (aij) に対して例 7.9で定義したベクトル場 XA を考えれば, 任意の x ∈ R3 に対し
て X ′A(x) = A だから (rotXA)(x) = ω(A− tA) =
a32 − a23
a13 − a31
a21 − a12
である. 従って XA が渦なしベクトル場であ
るためには, A が対称行列であるであることが必要十分である.
29
例 10.7 R3 の単位ベクトル a =
abc
(a2 + b2 + c2 = 1) に対し, 原点を通って方向ベクトルが a である直線を
ℓ(a) で表したとき, ℓ(a) を軸として,a の方向を向いて θ だけ時計回りに R3 のベクトルを回転させるR3 の 1
次変換を表す行列を R(a, θ) で表せば, R(a, θ) は以下で与えられる行列である.
R(a, θ) =
a2(1− cos θ)+ cos θ ab(1− cos θ)− c sin θ ac(1− cos θ)+ b sin θ
ab(1− cos θ)+ c sin θ b2(1− cos θ)+ cos θ bc(1− cos θ)− a sin θ
ac(1− cos θ)− b sin θ bc(1− cos θ)+ a sin θ c2(1− cos θ)+ cos θ
R(a, θ)a =1
2(R(a, θ)a − tR(a, θ)a) = sin θ
0 −c b
c 0 −a−b a 0
だから (rotXR(a,θ))(x) =
2a sin θ
2b sin θ
2c sin θ
= 2 sin θa
であり, ベクトル sin θa を角速度ベクトルという. また, exp(tR(a, θ)a) は次の行列で与えられる. a2(1− cos(t sin θ)) + cos(t sin θ) ab(1− cos(t sin θ))− c sin(t sin θ) ac(1− cos(t sin θ)) + b sin(t sin θ)
ab(1− cos(t sin θ)) + c sin(t sin θ) b2(1− cos(t sin θ)) + cos(t sin θ) bc(1− cos(t sin θ))− a sin(t sin θ)
ac(1− cos(t sin θ))− b sin(t sin θ) bc(1− cos(t sin θ)) + a sin(t sin θ) c2(1− cos(t sin θ)) + cos(t sin θ)
従って交代行列 R(a, θ)a が定める R3 のベクトル場 XR(a,θ)a の積分曲線は, ℓ(a) の点を中心とする, ℓ(a) に垂
直な平面上の円である.
命題 10.8 D を R3 の開集合, X を D の C1級ベクトル場とする. X が保存力場ならば, X は渦なしベクトル
場である. D が星形で, X が渦なしベクトル場ならば, X は保存力場である.
証明 X が保存力場ならば命題 8.10から, 任意の x ∈ D に対してX ′(x) は対称行列だから, X ′(x)a は零行列で
ある. 従って (rotX)(x) = 2ω(X ′(x)a) = 2ω(O) = 0 が任意の x ∈ D に対して成り立つ.
D が星形で, X が渦なしベクトル場ならば, 任意の x ∈ D に対して X ′(x) は対称行列だから, 定理 8.12によっ
て X は保存力場である.
注意 10.9 R3 の開集合 D の C2 級スカラー場 φ に対し, rot(gradφ) = 0 である.
命題 10.10 X が D の C2 級ベクトル場ならば, div(rotX) = 0 である.
証明 x ∈ D に対して X(x) =
f(x)g(x)
h(x)
とおけば, 注意 10.4から (rotX)(x) =
∂h∂y (x)−
∂g∂z (x)
∂f∂z (x)−
∂h∂x (x)
∂g∂x (x)−
∂f∂y (x)
だからdiv(rotX) =
∂
∂x
(∂h
∂y− ∂g
∂z
)+
∂
∂y
(∂f
∂z− ∂h
∂x
)+
∂
∂z
(∂g
∂x− ∂f
∂y
)=
(∂2h
∂x∂y− ∂2g
∂x∂z
)+
(∂2f
∂y∂z− ∂2h
∂y∂x
)+
(∂2g
∂z∂x− ∂2f
∂z∂y
)=
∂2h
∂x∂y− ∂2h
∂y∂x− ∂2g
∂x∂z+
∂2g
∂z∂x+
∂2f
∂y∂z− ∂2f
∂z∂y= 0
が成り立つ.
定義 10.11 R3 の開集合 D のベクトル場 X に対して X = rotY を満たす D の C1級ベクトル場 Y を X の
ベクトルポテンシャルという.
注意 10.12 Y が X のベクトルポテンシャルならば, 注意 10.9から C2 級スカラー場 φ に対し, Y + gradφ も
X のベクトルポテンシャルである. また Y , Z がともに X のベクトルポテンシャルで, 定義域 D が星形ならば
rot(Z − Y ) = 0 より命題 10.8から Z = Y + gradφ を満たす D の C2 級スカラー場 φ が存在する.
30
定理 10.13 D を R3 の開集合, X を D の C1級ベクトル場とする. X の C2級ベクトルポテンシャルが存在す
れば, divX = 0 である. D が星形で, divX = 0 ならば, X のベクトルポテンシャルが存在する.
証明 X の C2 級ベクトルポテンシャル Y が存在すれば, 命題 10.10から divX = div(rotY ) = 0 である.
D は p ∈ D に関して星形で, divX = 0 であると仮定し, x, p の第 j 成分をそれぞれ xj , pj とする. 一般に D
上の C1 級関数 φ に関する等式
d
dt(t2φ(p+ t(x− p))) = 2tφ(p+ t(x− p)) +
3∑j=1
t2∂φ
∂xj(p+ t(x− p))(xj − pj)
の両辺を t に関して 0から 1まで積分すれば
φ(x) = 2
∫ 1
0
tφ(p+ t(x− p)) dt+
3∑j=1
∫ 1
0
(xj − pj)∂φ
∂xj(p+ t(x− p))t2 dt (10.1)
が得られる. x ∈ D を X(x) の第 i成分に対応させる D 上の C1級関数を fi とし, D 上の関数 gi (i = 1, 2, 3) を
次のように定める.
g1(x) =
∫ 1
0
((x3 − p3)f2(p+ t(x− p))− (x2 − p2)f3(p+ t(x− p)))t dt
g2(x) =
∫ 1
0
((x1 − p1)f3(p+ t(x− p))− (x3 − p3)f1(p+ t(x− p)))t dt
g3(x) =
∫ 1
0
((x2 − p2)f1(p+ t(x− p))− (x1 − p1)f2(p+ t(x− p)))t dt
定理 8.11と (10.1)を用いて∂g3∂x2
− ∂g2∂x3
,∂g1∂x3
− ∂g3∂x1
,∂g2∂x1
− ∂g1∂x2
を計算する. 仮定から∂f1∂x1
+∂f2∂x2
+∂f3∂x3
= 0
が成り立つことに注意すれば
∂g3∂x2
(x)− ∂g2∂x3
(x) =
∫ 1
0
(f1(p+ t(x− p)) + (x2 − p2)
∂f1∂x2
(p+ t(x− p))t− (x1 − p1)∂f2∂x2
(p+ t(x− p))t
)t dt
−∫ 1
0
((x1 − p1)
∂f3∂x3
(p+ t(x− p))t−f1(p+ t(x− p))− (x3 − p3)∂f1∂x3
(p+ t(x− p))t
)t dt
= 2
∫ 1
0
tf1(p+ t(x− p)) dt−∫ 1
0
(x1 − p1)
(∂f2∂x2
(p+ t(x− p)) +∂f3∂x3
(p+ t(x− p))
)t2 dt
+
∫ 1
0
((x2 − p2)
∂f1∂x2
(p+ t(x− p))t2 + (x3 − p3)∂f1∂x3
(p+ t(x− p))t2)dt
= 2
∫ 1
0
tf1(p+ t(x− p)) dt+
3∑j=1
∫ 1
0
(xj − pj)∂f1∂xj
(p+ t(x− p))t2 dt = f1(x)
∂g1∂x3
(x)− ∂g3∂x1
(x) =
∫ 1
0
(f2(p+ t(x− p)) + (x3 − p3)
∂f2∂x3
(p+ t(x− p))t− (x2 − p2)∂f3∂x3
(p+ t(x− p))t
)t dt
−∫ 1
0
((x2 − p2)
∂f1∂x1
(p+ t(x− p))t−f2(p+ t(x− p))− (x1 − p1)∂f2∂x1
(p+ t(x− p))t
)t dt
= 2
∫ 1
0
tf2(p+ t(x− p)) dt−∫ 1
0
(x2 − p2)
(∂f1∂x1
(p+ t(x− p)) +∂f3∂x3
(p+ t(x− p))
)t2 dt
+
∫ 1
0
((x1 − p1)
∂f2∂x1
(p+ t(x− p))t2 + (x3 − p3)∂f2∂x3
(p+ t(x− p))t2)dt
= 2
∫ 1
0
tf2(p+ t(x− p)) dt+
3∑j=1
∫ 1
0
(xj − pj)∂f2∂xj
(p+ t(x− p))t2 dt = f2(x)
31
∂g2∂x1
(x)− ∂g1∂x2
(x) =
∫ 1
0
(f3(p+ t(x− p)) + (x1 − p1)
∂f3∂x1
(p+ t(x− p))t− (x3 − p3)∂f1∂x1
(p+ t(x− p))t
)t dt
−∫ 1
0
((x3 − p3)
∂f2∂x2
(p+ t(x− p))t−f3(p+ t(x− p))− (x2 − p2)∂f3∂x2
(p+ t(x− p))t
)t dt
= 2
∫ 1
0
tf3(p+ t(x− p)) dt−∫ 1
0
(x3 − p3)
(∂f1∂x1
(p+ t(x− p)) +∂f2∂x2
(p+ t(x− p))
)t2 dt
+
∫ 1
0
((x1 − p1)
∂f3∂x1
(p+ t(x− p))t2 + (x2 − p2)∂f3∂x2
(p+ t(x− p))t2)dt
= 2
∫ 1
0
tf3(p+ t(x− p)) dt+
3∑j=1
∫ 1
0
(xj − pj)∂f3∂xj
(p+ t(x− p))t2 dt = f3(x)
となり, D のベクトル場 Y を Y (x) =
g1(x)g2(x)
g3(x)
で定めれば, X = rotY である.
定義 10.14 Rn の開集合 D の C2級スカラー場 φ に対し, D のスカラー場 ∇2φ を ∇2φ =n∑j=1
∂2φ
∂x2jで定義する.
φ を ∇2φ に対応させる D の C2級スカラー場全体からなるベクトル空間から D の連続なスカラー場全体からな
るベクトル空間への線形写像 ∇2をラプラシアンという.
注意 10.15 上の定義で n = 3 の場合, ∇2φ = div(gradφ) が成り立つ.
X, Y を Rn の開集合 D の C1級ベクトル場とし X, Y の第 i成分の関数をそれぞれ fi, gi とするとき, ∇2fi
を第 i成分の関数とする D のベクトル場を ∇2X で表し,n∑j=1
fj∂gi∂xj
を第 i成分の関数とする D のベクトル場を
(X,∇)Y で表す.
命題 10.16 R3 の開集合 D のスカラー場 φ, ψ とベクトル場 X, Y に対して以下の等式が成り立つ.
(1) rot(rotX) = grad(divX)−∇2X (2) grad(φψ) = ψ gradφ+ φ gradψ
(3) div(φX) = (gradφ,X) + φdivX (4) rot(φX) = gradφ×X + φ rotX
(5) div(X × Y ) = (rotX,Y )− (X, rotY ) (6) rot(X × Y ) = (Y ,∇)X − (X,∇)Y +XdivY − Y divX
(7) grad(X,Y ) = (X,∇)Y + (Y ,∇)X +X × rotY + Y × rotX
定義 10.17 D を Rn の部分集合とする.
(1) 条件「任意の ε > 0 に対して B(p ; ε) ∩D = ∅」満たす Rn の点 p 全体からなる集合を D の閉包といい,
D で表す.
(2) 条件「任意の ε > 0 に対して B(p ; ε) ∩D = ∅ かつ B(p ; ε) ⊂ D」を満たす Rn の点 p 全体からなる集合
を D の境界といい, ∂D で表す.
定理 10.18 (ポアソンの定理) D を体積確定である R3 の有界な開集合, ρ を D 上の C1 級実数値関数とすると
き, D 上の実数値関数 φ を
φ(p) = − 1
4π
∫∫∫D
ρ(x)
∥x− p∥dxdydz
で定めることができて, φ は「ポアソンの方程式」∇2φ = ρ を満たす.
定理 10.19 (ヘルムホルツの定理) D は ∂D が C1 級曲面であるような R3 の有界な星形の開集合とする. D の
C2 級ベクトル場 X に対し, D の C3 級スカラー場 φ とベクトル場 Y でX = gradφ+ rotY を満たすものが
存在する.
証明 ρ = divX に対して定理 10.18を用いると, D のスカラー場 φ は div(gradφ) = ∇2φ = ρ = divX を満た
す. 従って div(X − gradφ) = 0 だから定理 10.13から D のベクトル場 Y で X − gradφ = Y を満たすものが
存在する.
32
11 グリーンの定理
C を p ∈ Rn から q ∈ Rn に向かう Rn の区分的 C1 級曲線で, 写像 x : [a, b] → Rn によってパラメータ表
示されるとする. このとき, x(t) = x(−t) で定義される写像 x : [−b.− a] → Rn によってパラメータ表示される
q から p に向かう区分的 C1 級曲線を −C で表す. また, Ci (i = 1, 2, . . . , k)を pi ∈ Rn から qi ∈ Rn に向か
う Rn の区分的 C1級曲線で, 写像 xi : [ai, bi] → Rn によってパラメータ表示されるとする. このとき, 形式的に
C1, C2, . . . , Ck を + でつないだ C1 + C2 + · · · + Ck を区分的 C1 級曲線のチェインという. X を Rn の開集合
D のベクトル場とする. 各 Ci が D に含まれる曲線のとき, チェイン C1 + C2 + · · ·+ Ck の線積分を∫C1+C2+···+Ck
X =
k∑i=1
∫Ci
X
で定義する.
定義 11.1 R2 の有界な部分集合 D が以下の条件 (i), (ii)を満たすとき, D は区分的にC1級の境界をもつという.
(i) 区分的 C1級閉曲線 C1, C2, . . . , Ck が存在して, D の境界 ∂D はこれらの合併集合で, i = j ならば Ci と Cj
は共有点を持たない. 以下で Ci は区分的C1級写像 ωi : [αi, βi] → R2 でパラメータ表示されているとする.
(ii) 任意の p ∈ ∂D に対して区分的 C1級関数 φ : [−a, a] → [−b, b] (a, b > 0) と行列式の値が 1である 2次直交
行列 A で次の条件 (a), (b), (c) を満たすものが存在する.
(a) F : [−a, a]× [−b, b] → R2 を F (x, y) = p+A( xy ) で定めれば F の像と ∂D の共通部分は x ∈ [−a, a]を F (x, φ(x)) に対応させる写像によってパラメータ表示される曲線である.
(b) p ∈ Ci ならば区分的 C1 級単調増加関数である全単射 λ : [γ, δ] → [−a, a] ([γ, δ] ⊂ [αi, βi]) で, 各
t ∈ [γ, δ] に対して ωi(t) = F (λ(t), φ(λ(t)) かつ λ の逆関数も区分的 C1級関数であるものが存在する.
(c) F の像と D の共通部分は F による (x, y) | − a ≦ x ≦ a, φ(x) ≦ y ≦ b の像に一致する.
上記の C1, C2, . . . , Ck から得られるチェイン C1 + C2 + · · ·+ Ck も ∂D で表して D の境界チェインという.
例 11.2 ξ, ζ : [c, d] → R は区分的 C1 級関数で, 各 x ∈ (c, d) に対して ξ(x) < ζ(x) が成り立つとする. D ⊂ R2
を D =( xy ) ∈ R2
∣∣ c ≦ x ≦ d, ξ(x) ≦ y ≦ ζ(x)で定め, 写像ω : [c, 2d− c+ ζ(c)+ ζ(d)− ξ(c)− ξ(d)] → R2 を
ω(t) =
(tξ(t)
)c ≦ t ≦ d(
dt−d+ξ(d)
)d ≦ t ≦ d+ ζ(d)− ξ(d)(
2d+ζ(d)−ξ(d)−tζ(2d+ζ(d)−ξ(d)−t)
)d+ ζ(d)− ξ(d) ≦ t ≦ 2d− c+ ζ(d)− ξ(d)( c
2d−c+ζ(c)+ζ(d)−ξ(d)−t)
2d− c+ ζ(d)− ξ(d) ≦ t ≦ 2d− c+ ζ(c) + ζ(d)− ξ(c)− ξ(d)
によって定めて ω でパラメータ表示される曲線を C とする. ξ, ζ : [c, d] → R は区分的 C1級関数だから C は区
分的 C1 級閉曲線であり, D の境界は C に一致するため, 定義 11.1の条件 (i)が満たされる. p ∈ ∂D とする.
p =( pξ(p)
)∈ ∂D (c < p < d) の場合;ξ(p) < ζ(p) だから b =
ζ(p)− ξ(p)
2とおけば b > 0, ξ(p) < ξ(p)+b < ζ(p)
であり, ξ と ζ の連続性から 0 < a < minp− c, d− p で, t ∈ [p− a, p+ a] ならば ξ(t) < ξ(p) + b < ζ(t) を満
たすものがある. 関数 φ : [−a, a] → [−b, b] を φ(x) = ξ(x+ p)− ξ(p), λ : [p− a, p+ a] → [−a, a] を λ(t) = t− p
で定め, A を 2次単位行列 E2 とすれば定義 11.1の条件 (ii)が満たされる.
p =(dq
)∈ ∂D (ξ(d) < q < ζ(d)) の場合;ξ(d) < q − a < q + a < ζ(d) を満たす a > 0 を選べば, ξ と ζ
の連続性から 0 < b < d − c で, t ∈ [d − b, d] ならば ξ(t) < q − a < q + a < ζ(t) を満たすものがある. 関数
φ : [−a, a] → [−b, b] を φ(x) = 0, λ : [d− ξ(d) + q − a, d− ξ(d) + q + a] → [−a, a] を λ(t) = t− q − d+ ξ(d) で
定め, A =(0 −11 0
)とすれば定義 11.1の条件 (ii)が満たされる.
33
p =( pζ(p)
)∈ ∂D (c < p < d)の場合;ξ(p) < ζ(p)だから b =
ζ(p)− ξ(p)
2とおけば b > 0, ξ(p) < ζ(p)−b < ζ(p)
であり, ξ と ζ の連続性から 0 < a < minp−c, d−pで, t ∈ [p−a, p+a]ならば ξ(t) < ζ(p)−b < ζ(t)を満たすも
のがある. 関数 φ : [−a, a] → [−b, b]を φ(x) = ζ(p)−ζ(p−x), λ : [2d+ζ(d)−ξ(d)−p−a, 2d+ζ(d)−ξ(d)−p+a] →[−a, a] を λ(t) = t+ p− 2d− ζ(d) + ξ(d) で定め, A = −E2 とすれば定義 11.1の条件 (ii)が満たされる.
p = ( cq ) ∈ ∂D (ξ(c) < q < ζ(c)) の場合;ξ(c) < q − a < q + a < ζ(c) を満たす a > 0 を選べば, ξ と ζ
の連続性から 0 < b < d − c で, t ∈ [c, c + b] ならば ξ(t) < q − a < q + a < ζ(t) を満たすものがある. 関数
φ : [−a, a] → [−b, b] を φ(x) = 0, λ : [2d−c+ζ(c)+ζ(d)−ξ(d)−q−a, 2d−c+ζ(c)+ζ(d)−ξ(d)+q+a] → [−a, a]を λ(t) = t+ q − 2d+ c− ζ(c)− ζ(d) + ξ(d) で定め, A =
(0 1−1 0
)とすれば定義 11.1の条件 (ii)が満たされる.
上の例における D を y軸方向の区分的 C1級縦線集合という. また, 上の例の D を直線 y = x に関して対称移
動して得られる集合を x軸方向の区分的 C1 級縦線集合という.
例 11.3 D ⊂ R2 を D =( xy ) ∈ R2
∣∣ c2 ≦ x2 + y2 ≦ d2(0 < c < d) で定め, 写像 ω1,ω2 : [0, 2π] → R2 を
ω1(t) =
(d cos t
d sin t
)ω2(t) =
(c cos t
−c sin t
)
によって定めて ωi でパラメータ表示される曲線を Ci とする. Ci は区分的 C1 級閉曲線であり, D の境界は C1
と C2 の合併集合であり, C1 と C2 は共有点を持たないため, 定義 11.1の条件 (i)が満たされる. p ∈ ∂D とする.
p =(d cosαd sinα
)∈ ∂D (0 < α < 2π) の場合;a =
√d2 − c2
2, b =
d− c
2とおいて関数 φ : [−a, a] → [−b, b] を
φ(x) = d−√d2 − x2, λ :
[α− sin−1 a
d , α+ sin−1 ad
]→ [−a, a] を λ(t) = d sin(t− α) で定め, A =
(− sinα − cosαcosα − sinα
)とすれば定義 11.1 の条件 (ii)が満たされる.
p = ( c cosαc sinα ) ∈ ∂D (0 < α < 2π) の場合;a を c とd− c
2の小さい方として, 関数 φ : [−a, a] → [−a, a] を
φ(x) =√c2 − x2−c, λ :
[−α− sin−1 a
c ,−α+ sin−1 ac
]→ [−a, a] を λ(t) = c sin(t+α) で定め, A =
(sinα cosα
− cosα sinα
)とすれば定義 11.1 の条件 (ii)が満たされる.
定理 11.4 [a, b]× [c, d] 上の実数値連続関数 f が 1番目の変数に関して偏微分可能であり, 偏導関数∂f
∂xが連続
であるとする. φ,ψ : [a, b] → [c, d] を C1級関数とするとき, h(x) =
∫ ψ(x)
φ(x)
f(x, t) dt で定義される [a, b] 上の実数
値関数 h は微分可能で, h の導関数は次で与えられる.
h′(x) =
∫ ψ(x)
φ(x)
∂f
∂x(x, t) dt+ f(x, ψ(x))ψ′(x)− f(x, φ(x))φ′(x)
証明 [a, b]× [c, d]× [c, d] 上の実数値関数 g を g(x, u, v) =
∫ v
u
f(x, t) dt によって定めれば h(x) = g(x, φ(x), ψ(x))
だから, 合成写像の微分法から
h′(x) =
(∂g
∂x(x, φ(x), ψ(x))
∂g
∂u(x, φ(x), ψ(x))
∂g
∂v(x, φ(x), ψ(x))
) 1
φ′(x)
ψ′(x)
=∂g
∂x(x, φ(x), ψ(x)) +
∂g
∂u(x, φ(x), ψ(x))φ′(x) +
∂g
∂v(x, φ(x), ψ(x))ψ′(x) · · · (∗)
が成り立つ. 一方, 定理 8.11と微積分学の基本定理から
∂g
∂x(x, φ(x), ψ(x)) =
∫ ψ(x)
φ(x)
∂f
∂x(x, t) dt,
∂g
∂u(x, φ(x), ψ(x)) = −f(x, φ(x)), ∂g
∂v(x, φ(x), ψ(x)) = f(x, ψ(x))
だから, これらを (∗)に代入すれば結果が得られる.
34
R2 の開集合 D の C1 級ベクトル場 X に対し, X の第 1成分, 第 2成分の関数をそれぞれ f , g とするとき,
x ∈ D を∂g
∂x(x)− ∂f
∂y(x) に対応させる D のスカラー場を rotX で表す. このとき D の C2級スカラー場 φ に
対して rot(gradφ) = 0 が成り立つ.
定理 11.5 D を例 11.2で与えた R2 の部分集合とする. D の C1級ベクトル場 X に対し, 次の等式が成り立つ.∫∫D
rotX dxdy =
∫∂D
X
証明 X(x)の第 1成分を f(x), 第 2成分を g(x)とおいて D 上のC1級関数 f , g を考える. 例 11.2の写像 ω の区
間 [c, d], [d, d+ζ(d)−ξ(d)], [d+ζ(d)−ξ(d), 2d−c+ζ(d)−ξ(d)], [2d−c+ζ(d)−ξ(d), 2d−c+ζ(c)+ζ(d)−ξ(c)−ξ(d)]への制限をそれぞれ ω1, ω2, ω3, ω4 として ωi (i = 1, 2, 3, 4)でパラメータ表示される C の部分を Ci とする. こ
のとき ω′1(t) =
(1
ξ′(t)
), ω′
2(t) = ( 01 ), ω′3(t) = −
(1
ζ′(2d+ζ(d)−ξ(d)−t)
), ω′
4(t) =(
0−1
)より次が得られる.
∫C1
X =
∫ d
c
(X(ω1(t)),ω′1(t)) dt =
∫ d
c
f(ω1(t)) dt+
∫ d
c
g(ω1(t))ξ′(t) dt∫
C2
X =
∫ d+ζ(d)−ξ(d)
d
(X(ω(t)2),ω′2(t)) dt =
∫ d+ζ(d)−ξ(d)
d
g(ω2(t)) dt∫C3
X =
∫ 2d−c+ζ(d)−ξ(d)
d+ζ(d)−ξ(d)(X(ω3(t)),ω
′3(t)) dt
= −∫ 2d−c+ζ(d)−ξ(d)
d+ζ(d)−ξ(d)f(ω3(t)) dt−
∫ 2d−c+ζ(d)−ξ(d)
d+ζ(d)−ξ(d)g(ω3(t))ζ
′(2d+ ζ(d)− ξ(d)− t) dt∫C4
X =
∫ 2d−c+ζ(c)+ζ(d)−ξ(c)−ξ(d)
2d−c+ζ(d)−ξ(d)(X(ω4(t)),ω
′4(t)) dt = −
∫ 2d−c+ζ(c)+ζ(d)−ξ(c)−ξ(d)
2d−c+ζ(d)−ξ(d)g(ω4(t)) dt
ξ と ζ がともに C1 級関数の場合, 定理 11.4から
d
dx
∫ ζ(x)
ξ(x)
g( xy ) dy =
∫ ζ(x)
ξ(x)
∂g
∂x( xy ) dy + g
( xζ(x)
)ζ ′(x)− g
( xξ(x)
)ξ′(x)
だから以下の等式が得られる.∫∫D
∂g
∂x( xy ) dxdy =
∫ d
c
(∫ ζ(x)
ξ(x)
∂g
∂x( xy ) dy
)dx =
∫ d
c
(d
dx
∫ ζ(x)
ξ(x)
g( xy ) dy − g( xζ(x)
)ζ ′(x) + g
( xξ(x)
)ξ′(x)
)dx
=
∫ d
c
(d
dx
∫ ζ(x)
ξ(x)
g( xy ) dy
)dx−
∫ d
c
g( xζ(x)
)ζ ′(x) dx+
∫ d
c
g( xξ(x)
)ξ′(x) dx
=
∫ ζ(d)
ξ(d)
g(dy
)dy −
∫ ζ(c)
ξ(c)
g( cy ) dy −∫ d
c
g( xζ(x)
)ζ ′(x) dx+
∫ d
c
g( xξ(x)
)ξ′(x) dx
=
∫ d+ζ(d)−ξ(d)
d
g(
dt−d+ξ(d)
)dt−
∫ 2d−c+ζ(c)+ζ(d)−ξ(c)−ξ(d)
2d−c+ζ(d)−ξ(d)g( c2d−c+ζ(c)+ζ(d)−ξ(d)−t
)dt
−∫ 2d−c+ζ(d)−ξ(d)
d+ζ(d)−ξ(d)g(
2d+ζ(d)−ξ(d)−tζ(2d+ζ(d)−ξ(d)−t)
)ζ ′(2d+ ζ(d)− ξ(d)− t) dt+
∫ d
c
g( xξ(x)
)ξ′(t) dt
=
∫ d+ζ(d)−ξ(d)
d
g(ω2(t)) dt−∫ 2d−c+ζ(c)+ζ(d)−ξ(c)−ξ(d)
2d−c+ζ(d)−ξ(d)g(ω4(t)) dt+
∫ d
c
g(ω1(t))ξ′(t) dt
−∫ 2d−c+ζ(d)−ξ(d)
d+ζ(d)−ξ(d)g(ω3(t))ζ
′(2d+ ζ(d)− ξ(d)− t) dt
35
一方
−∫∫
D
∂f
∂y( xy ) dxdy = −
∫ d
c
(∫ ζ(x)
ξ(x)
∂f
∂y( xy ) dy
)dx = −
∫ d
c
(f( xζ(x)
)− f
( xξ(x)
))dx
=
∫ d+ζ(d)−ξ(d)
2d−c+ζ(d)−ξ(d)f(
2d+ζ(d)+ξ(d)−tζ(2d+ζ(d)−ξ(d)−t)
)dt−
∫ d
c
f(
tξ(t)
)dt
= −∫ d
c
f(ω1(t)) dt+
∫ 2d−c+ζ(d)−ξ(d)
d+ζ(d)−ξ(d)f(ω3(t)) dt
以上から, ξ と ζ がともに C1 級関数の場合は∫∫D
rotX dxdy =
∫∫D
(∂g
∂x( xy )−
∂f
∂y( xy )
)dxdy
=
∫ d+ζ(d)−ξ(d)
d
g(ω2(t)) dt−∫ 2d−c+ζ(c)+ζ(d)−ξ(c)−ξ(d)
2d−c+ζ(d)−ξ(d)g(ω4(t)) dt+
∫ d
c
g(ω1(t))ξ′(t) dt
−∫ 2d−c+ζ(d)−ξ(d)
d+ζ(d)−ξ(d)g(ω3(t))ζ
′(2d+ ζ(d)− ξ(d)− t) dt
−∫ d
c
f(ω1(t)) dt+
∫ 2d−c+ζ(d)−ξ(d)
d+ζ(d)−ξ(d)f(ω3(t)) dt
=
∫C1
X +
∫C2
X +
∫C3
X +
∫C4
X =
∫∂D
X
より, 主張が成り立つ. ξ と ζ が区分的 C1 級関数の場合, c = t0 < t1 < · · · < tN = d を満たす数列 t0, t1, . . . , tN
が存在して, i = 1, 2, . . . , N に対し ξ と ζ を開区間 (ti−1, ti)に制限すればC1級関数になる. D の部分集合 Dk, Ek
を Dk =( xy ) ∈ R2
∣∣ c ≦ x ≦ tk, ξ(x) ≦ y ≦ ζ(x), Ek =
( xy ) ∈ R2
∣∣ tk−1 ≦ x ≦ tk, ξ(x) ≦ y ≦ ζ(x)で定め
れば, Dk = Dk−1∪Ek (k = 1, 2, . . . , N)であり, Dk−1∩Ek は線分( xy ) ∈ R2
∣∣ x = tk−1, ξ(tk−1) ≦ y ≦ ζ(tk−1)
で, 面積が 0 だから ∫∫Dk
rotX dxdy =
∫∫Dk−1
rotX dxdy +
∫∫Ek
rotX dxdy · · · (∗)
が成り立つ. 区間 (c, t1) と (tk−1, tk) では ξ と ζ は C1 級関数だから, 上で示した結果から次の等式が成り立つ.∫∫D1
rotX dxdy =
∫∂D1
X,
∫∫Ek
rotX dxdy =
∫∂Ek
X
帰納的に 2 ≦ k ≦ N に対して∫∫
Dk−1
rotX dxdy =
∫∂Dk−1
X が成り立つと仮定すると (∗)と上式から∫∫Dk
rotX dxdy =
∫∂Dk−1
X +
∫∂Ek
X · · · (∗∗)
である. 写像 ω1 : [c, tk−1] → R2, ω2 : [ξ(tk−1), ζ(tk−1)] → R2, ω3 : [c, tk−1] → R2, ω4 : [ξ(c), ζ(c)] → R2 を
ω1(t) =
(t
ξ(t)
), ω2(t) =
(tk−1
t
), ω3(t) =
(c+ tk−1 − t
ζ(c+ tk−1 − t)
), ω4(t) =
(c
ξ(c) + ζ(c)− t
)で定め, 写像 ω1 : [tk−1, tk] → R2, ω2 : [ξ(tk), ζ(tk)] → R2, ω3 : [tk−1, tk] → R2, ω4 : [ξ(tk−1), ζ(tk−1)] → R2 を
ω1(t) =
(t
ξ(t)
), ω2(t) =
(tk
t
), ω3(t) =
(tk−1 + tk − t
ζ(tk−1 + tk − t)
), ω4(t) =
(tk−1
ξ(tk−1) + ζ(tk−1)− t
)で定める. ωi でパラメータ表示される曲線を Ci, ωi でパラメータ表示される曲線を Ci とすれば∫
C2
X +
∫C4
X =
∫ ζ(tk−1)
ξ(tk−1)
(X(ω2(t)), ω′2(t)) dt+
∫ ζ(tk−1)
ξ(tk−1)
(X(ω4(t)), ω′4(t)) dt
=
∫ ζ(tk−1)
ξ(tk−1)
g(tk−1
t
)dt−
∫ ζ(tk−1)
ξ(tk−1)
g(
tk−1
ξ(tk−1)+ζ(tk−1)−t
)dt = 0
36
であり, さらに Dk−1, Ek, Dk の境界チェインは ∂Dk−1 = C1 + C2 + C3 + C4, ∂Ek = C1 + C2 + C3 + C4,
∂Dk = C1 + C1 + C2 + C3 + C3 + C4 によって与えられるため, 上式から
(∗∗) =∫C1
X +
∫C2
X +
∫C3
X +
∫C4
X +
∫C1
X +
∫C2
X +
∫C3
X +
∫C4
X
=
∫C1
X +
∫C1
X +
∫C2
X +
∫C3
X +
∫C3
X +
∫C4
X =
∫∂Dk
X
が得られる. 故に∫∫
Dk
rotX dxdy =
∫∂Dk
X が成り立つため, DN = D であることから k による帰納法で, 結
果が得られる.
例 11.2の R2 の部分集合より一般の区分的に C1 級の境界をもつ R2 の有界な部分集合 D に対して次の「グ
リーンの定理」が成り立つ.
定理 11.6 R2 の有界な部分集合 D が区分的に C1 級の境界をもつとき D の C1 級ベクトル場 X に対し, 次の
等式が成り立つ. ∫∫D
rotX dxdy =
∫∂D
X
X ( xy ) =
(−y
2x2
)の場合, rotX はつねに値が 1である定数値関数だから,
∫∫D
rotX dxdy は D の面積である.
従って上の定理より次の結果が得られる.
系 11.7 R2 の有界な閉部分集合 D が区分的に C1級の境界をもつとき, ベクトル場 X をX ( xy ) =
(−y
2x2
)で定
めれば∫∂D
X は D の面積に等しい.
定義 11.8 C を C1 級写像 x : [a, b] → R2 で弧長パラメータ表示される R2 の曲線とする. s ∈ [a, b] に対し,
n(s) =
(0 1
−1 0
)x′(s) とおいて, 写像 n : [a, b] → R2 を定める. X が C を含む R2 の部分集合で定義された連
続なベクトル場であるとき,
∫ b
a
(X(x(s)),n(s)) ds をベクトル場 X の法成分線積分といい,
∫C
X · n ds で表す.
定理 11.9 R2 の有界な閉部分集合 D が区分的に C1 級の境界をもつとき D の C1 級ベクトル場 X に対し, 次
の等式が成り立つ. ∫∫D
divX dxdy =
∫∂D
X · n ds
証明 R =
(0 1
−1 0
)とおき, D のベクトル場 X∗ をX∗(x) = tRX(x) で定義する. X(x) の第 1成分を f(x), 第
2成分を g(x) とおいて D 上の C1級関数 f , g を考えれば X∗(x) =
(−g(x)f(x)
)だから rotX∗ = divX が成り立
つ. 命題 8.1から D の境界チェインの曲線はすべて弧長パラメータ表示されていると仮定してよい. また, C を D
の境界チェインの 1つとし, C1級写像 x : [a, b] → R2 で弧長パラメータ表示されているとすれば, Rx′(s) = n(s)
と, 内積と転置行列に関する等式 (Aa, b) = (a, tAb) を用いると∫C
X∗ =
∫ b
a
(X∗(x(s)),x′(s)) ds =
∫ b
a
(tRX(x(s)),x′(s)) ds =
∫ b
a
(X(x(s)), Rx′(s)) ds
=
∫ b
a
(X(x(s)),n(s)) ds =
∫C
X · n ds
だから∫∂D
X∗ =
∫∂D
X · n ds が成り立つため, 結果が得られる.
37
12 面積分とストークスの定理
定義 12.1 S を曲面とし, S の局所座標の集合 pi : Di → R3| i ∈ I で, 定義 6.2の (i)から (v)の条件に加えて
次の条件 (vi)を満たすものが存在するとき, S は向き付け可能であるという.
(vi) i, j ∈ I に対し, S∩Vi∩Vj が空集合でないとき, pi から pj への座標変換 φij : Dij → Dji は任意の u ∈ Dij
に対して det φ′ij(u) > 0 を満たす.
定義 12.2 n を曲面 S のベクトル場とする. 任意の x ∈ S に対して n(x) が x における S の法線に平行なベク
トルであるとき, n を S の法ベクトル場という. さらに n(x) がつねに単位ベクトルであるとき, n を S の単位
法ベクトル場という.
補題 12.3 p : D → R3, q : E → R3 を曲面 S の局所座標として p, q の像をそれぞれ V , W とする. V ∩Wが空集合でないとき, D = u ∈ D |p(u) ∈ W, E = u ∈ E | q(u) ∈ V とおいて, p から q への座標変換を
φ : D → E とすれば, 任意の u ∈ D に対して pu(u)× pv(u) = detφ′(u)(qu(φ(u))× qv(φ(u))) が成り立つ.
証明 p = qφが成り立つため,合成写像の微分法から p′(u) = q′(φ(u))φ′(u)が得られる. 故に φ′(u) =
(a b
c d
)とおけば detφ′(u) = ad− bc であり pu(u) = aqu(φ(u)) + cqv(φ(u)), pv(u) = bqd(φ(u)) + cqv(φ(u)) だから,
pu(u)× pv(u) = (aqu(φ(u)) + cqv(φ(u)))× (bqu(φ(u)) + dqv(φ(u)))
= aqu(φ(u))× bqu(φ(u)) + aqu(φ(u))× dqv(φ(u))
+ cqv(φ(u))× bqu(φ(u)) + cqv(φ(u))× dqv(φ(u))
= adqu(φ(u))× qv(φ(u)) + bcqv(φ(u))× qu(φ(u)) = detφ′(φ(u))(qu(φ(u))× qv(φ(u))).
命題 12.4 曲面 S が向き付け可能であるためには, S の単位法ベクトル場が存在することが必要十分である.
証明 S が向き付け可能であるとして, pi : Di → R3| i ∈ I を定義 12.1を満たす S の局所座標の集合とする.
x ∈ S に対して, i ∈ I と u ∈ Di で pi(u) = x を満たすものを選び
n(x) =1
∥(pi)u(u)× (pi)v(u)∥((pi)u(u)× (pi)v(u))
によって n(x) を定めれば, n(x) は S の点 x における S の単位法線ベクトルである. j ∈ I と v ∈ Dj も
pj(v) = x を満たすとき, u ∈ Dij だから補題 12.3から (pi)u(u) × (pi)v(u) = detφ′ij(u)((pj)u(v) × (pj)v(v))
であり, 仮定から det φ′ij(u) > 0 より ∥(pi)u(u)× (pi)v(u)∥ = detφ′
ij(u)∥(pj)u(v)× (pj)v(v)∥ である. 従って
1
∥(pi)u(u)× (pi)v(u)∥((pi)u(u)× (pi)v(u)) =
1
∥(pj)u(v)× (pj)v(v)∥((pj)u(v)× (pj)v(v))
が成り立つため, n(x) の定義は pi(u) = x を満たす i ∈ I の選び方に依存しない. 故に n は S の単位法ベクト
ル場である.
逆に S の単位法ベクトル場 nが存在すると仮定して pi : Di → R3| i ∈ Iを S の局所座標の集合とする. この
とき各 i ∈ I に対して Di は連結であると仮定してよい. i ∈ I に対し, u ∈ Di を det((pi)u(u), (pi)v(u),n(pi(u)))
に対応させる関数は連続であるが, Di の連結性から中間値の定理によって, この関数のつねに正の値をとるかつ
ねに負の値をとるかいずれかである. 後者の場合, T : R2 → R2 を T ( xy ) = ( x−y ) で定め, Di の T−1 = T によ
る像を Di とおけば, T は R2 の同型写像だから, Di も開集合であり, pi : Di → R3 を pi = pi T で定めれば, pi の像は pi の像と一致して, pi は定義 6.2の条件 (i)から (iv)を満たす. さらに T は pi から pi への座標
変換であり, 合成写像の微分法から p′i(u) = p′
i(T (u))T′(u) だから, T ′(u) が
(1 0
0 −1
)であることに注意して
38
この等式の両辺の列ベクトルを比較すれば (pi)u(u) = (pi)u(T (u)), (pi)v(u) = −(pi)v(T (u)) が得られる. 従っ
て det((pi)u(u), (pi)v(u),n(pi(u))) = −det((pi)u(T (u)), (pi)v(T (u)),n(pi(T (u)))) > 0 が成り立つため, i ∈ I
で, det((pi)u(u), (pi)v(u),n(pi(u))) < 0 となる u ∈ Di が存在する局所座標 pi : Di → R3 は pi : Di → R3 で
置き換えることによって, S の局所座標の集合 pi : Di → R3| i ∈ I で, すべての i ∈ I と u ∈ Di に対して,
det((pi)u(u), (pi)v(u),n(pi(u))) > 0 を満たすものが得られる. このとき (pi)u(u) × (pi)v(u) は pi(u) の法線
ベクトルであり, det((pi)u(u), (pi)v(u), (pi)u(u)× (pi)v(u)) > 0 だから, (pi)u(u)× (pi)v(u) = ri,un(pi(u)) を
満たす正の実数 ri,u が存在する. i, j ∈ I に対し, S ∩ Vi ∩ Vj が空集合でないとして, pi から pj への座標変換
φij : Dij → Dji を考えれば, 補題 12.3から
ri,un(pi(u)) = (pi)u(u)× (pi)v(u) = detφ′ij(u)((pj)u(φij(u))× (pj)v(φij(u)))
= rj,φij(u) detφ′ij(u)n(pj(φij(u))) = rj,φij(u) detφ
′ij(u)n(pi(u))
が成り立つため, ri,u = rj,φij(u) detφ′ij(u) が得られて detφ′
ij(u) > 0 であることがわかる.
定義 12.5 曲面 S の単位法ベクトル場を S の向きという. S の単位法ベクトル場 n に対し, S の局所座標系
pi : Di → R3| i ∈ I が任意の i ∈ I と u ∈ Di に対して det((pi)u(u), (pi)v(u),n(pi(u))) > 0 を満たすとき,
pi : Di → R3| i ∈ I を S の向き n と両立する局所座標系という.
注意 12.6 曲面 S が連結であるとき, S が向き付け可能で, n が S の単位法ベクトル場ならば, −n も S の単位
法ベクトル場であり, S の単位法ベクトル場は n か −n のいずれかである.
曲面 S がただ 1つの局所座標 p : D → R3 の像であるとき, S は向き付け可能である. このとき, S の局所座標
系 p : D → R3 と両立する S の単位ベクトル場 n は
n(x) =1
∥pu(p−1(x))× pv(p−1(x))∥
(pu(p−1(x))× pv(p
−1(x)))
で与えられる. 以後, 曲面 S はただ 1つの局所座標の像である場合についてのみ扱う.
定義 12.7 S を 1つの局所座標 p : D → R3 で覆われている曲面とする.
(1) S の部分集合 M に対し, E = u ∈ D |p(u) ∈ M で与えられる D の部分集合 E が区分的に C1 級の境
界をもつとき, M を境界付き曲面という. このとき E の境界 ∂E の p による像を M の境界といい, ∂M で表す.
(2) 上記の境界付き曲面 M 上の関数 f が与えられたとき, f の M 上の面積分∫∫
M
f dA を
∫∫M
f dA =
∫∫E
f(p( uv ))∥pu( uv )× pv(uv )∥ dudv
によって定義する.
(3) n を S の局所座標系 p : D → R3 と両立する S の向きとする. M のベクトル場 X に対し, X の M
上の面積分∫∫
M
X dA を∫∫
M
X dA =
∫∫M
(X,n) dA で定義する. ここで, (X,n) は x ∈M を (X(x),n(x))
に対応させる M 上の関数を表す. このとき, n(p(u)) =1
∥pu(u)× pv(u)∥(pu(u) × pv(u)) であることと, 上の
定義から次の等式が成り立つ.∫∫M
X dA =
∫∫E
(X(p( uv )),n(p(uv )))∥pu( uv )× pv(
uv )∥ dudv =
∫∫E
(X(p( uv )),pu(uv )× pv(
uv )) dudv
命題 12.8 D を R2 の開集合とし, p : D → R3 を C1 級写像とする. X を R3 の部分集合 M のベクトル
場とし, M は p の像を含むとする. このとき, D のベクトル場 X で, すべての u ∈ D と v ∈ R2 に対して
(X(p(u)),p′(u)v) = (X(u),v) を満たすものがただ 1つ存在する.
39
証明 u ∈ D に対して X(u) =
((X(p(u)),pu(u))
(X(p(u)),pv(u))
)によって X を定義すれば, v = ae1 + be2 ∈ R2 に対し,
(X(u),v) = a(X(p(u)),pu(u)) + b(X(p(u)),pv(u)) = (X(p(u)), apu(u) + bpv(u)) = (X(p(u)),p′(u)v)
が成り立つ. a, b ∈ R2 に対し, (a,v) = (b,v) がすべての v ∈ R2 に対して成り立てば a = b であることから, X
は一通りに定まる.
上の命題の X を X の p による引き戻しといい, p∗X で表す.
命題 12.9 命題 12.8の仮定の下で, 次が成り立つ.
(1) D に含まれる区分的 C1 級曲線 C の p による像を p(C) で表せば,
∫p(C)
X =
∫C
p∗X である.
(2) p が C2 級写像で, X が C1 級ベクトル場ならば任意の u ∈ D に対して次の等式が成り立つ.
(rotp∗X)(u) = ((rotX)(p(u)),pu(u)× pv(u))
証明 (1) ω : [a, b] → D を C のパラメータ表示とすれば, p ω : [a, b] → M は p(C) のパラメータ表示である.
合成写像の微分法から∫C
p∗X =
∫ b
a
(p∗X(ω(t)),ω′(t)) dt =
∫ b
a
(X(p(ω(t))),p′(ω(t))ω′(t)) dt
=
∫ b
a
(X((p ω)(t)), (p ω)′(t)) dt =
∫p(C)
X
(2) p∗X(u)の第 1成分,第 2成分をそれぞれ f(u), g(u)とすれば,命題 12.8の証明から f(u)=(X(p(u)),pu(u)),
g(u) = (X(p(u)),pv(u)) である. 合成写像の微分法から次の等式が成り立つ.
∂(X p)∂u
(u) = X ′(p(u))pu(u),∂(X p)
∂v(u) = X ′(p(u))pv(u)
故に次の等式が得られる.
∂g
∂u(u) = (X ′(p(u))pu(u),pv(u)) + (X(p(u)),puv(u))
∂f
∂v(u) = (X ′(p(u))pv(u),pu(u)) + (X(p(u)),puv(u))
一方 rotX の定義から, 任意の x ∈ R3 に対して (rotX)(p(u)) × x = (X ′(p(u)) − tX ′(p(u)))x が成り立つた
め, 上の 2つの等式を用いれば
((rotX)(p(u)),pu(u)× pv(u)) = det((rotX)(p(u)),pu(u),pv(u)) = ((rotX)(p(u))× pu(u),pv(u))
= ((X ′(p(u))− tX ′(p(u)))pu(u),pv(u))
= (X ′(p(u))pu(u),pv(u))− (tX ′(p(u))pu(u),pv(u))
= (X ′(p(u))pu(u),pv(u))− (pv(u),tX ′(p(u))pu(u))
= (X ′(p(u))pu(u),pv(u))− (X ′(p(u))pv(u),pu(u))
=∂g
∂u(u)− ∂f
∂v(u) = (rotp∗X)(u)
が導かれる.
次の定理を「ストークスの定理」という.
定理 12.10 M を R3 の有界閉集合である向き付けられた境界付き C2 級曲面とし, n を M の向きとする. X
を M の C1 級ベクトル場とするとき, 等式∫∫
M
rotX dA =
∫∂M
X が成り立つ.
40
証明 定義 12.7の (3)の等式と命題 12.9の (2)およびグリーンの定理から∫∫M
rotX dA =
∫∫E
((rotX)(p( uv )) ,pu(uv )× pv(
uv )) dudv =
∫∫E
rotp∗X( uv ) dudv =
∫∂E
p∗X · · · (∗)
が得られる. ∂E の境界チェインを C1 + C2 + · · ·+ Ck とし, Ci の p による像を p(Ci) で表せば, ∂M は ∂E の
p による像だから ∂M の境界チェインは p(C1) + p(C2) + · · ·+ p(Ck) である. 従って命題 12.9の (1)から∫∂M
X =
∫p(C1)+p(C2)+···+p(Ck)
X =
k∑i=1
∫p(Ci)
X =
k∑i=1
∫Ci
p∗X =
∫C1+C2+···+Ck
p∗X =
∫∂E
p∗X · · · (∗∗)
が成り立つ. 故に (∗)と (∗∗)から∫∫
M
rotX dA =
∫∂M
X が得られる.
次の結果を積分の平均値の定理という.
定理 12.11 (1) D を R2 の連結な有界閉集合かつ面積確定集合, f を D 上の連続関数とし, D の面積を v(D)
で表す. このとき c ∈ D で∫∫
D
f( xy ) dxdy = f(c)v(D) を満たすものが存在する.
(2) D を R3 の連結な有界閉集合かつ体積確定集合, f を D 上の連続関数とし, D の体積を v(D) で表す. こ
のとき c ∈ D で∫∫∫
D
f(xyz
)dxdydz = f(c)v(D) を満たすものが存在する.
証明 D は有界閉集合で f は連続関数だから, 最大値・最小値の定理により f の最大値と最小値が存在する. f の
最大値を M , 最小値を m とすれば, 任意の x ∈ D に対してm ≦ f(x) ≦M だから,
m =1
v(D)
∫∫D
mdxdy ≦ 1
v(D)
∫∫D
f( xy ) dxdy ≦ 1
v(D)
∫∫D
M dxdy =M
または
m =1
v(D)
∫∫D
mdxdydz ≦ 1
v(D)
∫∫D
f(xyz
)dxdydz ≦ 1
v(D)
∫∫D
M dxdydz =M
が成り立つ. D は連結で f は連続関数だから, 中間値の定理により c ∈ D で1
v(D)
∫∫∫D
f( xy ) dxdy = f(c) また
は1
v(D)
∫∫∫D
f(xyz
)dxdydz = f(c) を満たすものが存在する.
例 12.12 X を R3 の開集合 V の C1 級ベクトル場とする. c ∈ R3, n を R3 の単位ベクトルとし, c を通り
n に垂直な平面を S とする. c を中心として半径が ε の S に含まれる円板 x ∈ R3 | ∥x − c∥ ≦ ε, x ∈ S をDn(c ; ε) で表す. c ∈ V のとき, Dn(c ; ε) ⊂ V となる ε > 0 に対し, ストークスの定理から∫∫
Dn(c ;ε)
rotX dA =
∫∂Dn(c ;ε)
X · · · (∗)
が成り立つ. [pu,pv,n] が右手系の R3 の正規直交基底になるように pu,pv ∈ R3 を選び, p : R2 → R3
を p( uv ) = c + upu + vpv によって定めれば, p は S の局所座標である. このとき pu × pv = n であり,
E(ε) = u ∈ R2 | ∥u∥ ≦ ε とおけば, p による E(ε) の像が Dn(c ; ε) に一致するため, 定義 12.7の (2)の等式
と定理 12.11から a2 + b2 ≦ 1 を満たす a, b で次の等式を満たすものが存在する.∫∫Dn(c ;ε)
rotX dA =
∫∫E(ε)
((rotX)(c+ upu + vpv),n) dudv = πε2((rotX)(c+ ε(apu + bpv)),n)
従って (∗)から ((rotX)(c+ ε(apu + bpv)),n) =1
πε2
∫∂Dn(c ;ε)
X が得られる. ε→ +0 としたとき, この等式の
左辺は ((rotX)(c),n) に近づくため, 右辺の極限も存在して
((rotX)(c),n) = limε→+0
1
πε2
∫∂Dn(c ;ε)
X · · · (∗∗)
41
が成り立つ. 円 ∂Dn(c ; ε) の周囲の長さは 2πε だから, X が V の中を流れる流体の速度ベクトルの場であると
すれば,1
2πε
∫∂Dn(c ;ε)
X は円 ∂Dn(c ; ε) の接線方向の速度成分の平均速度を表しており, さらにこの値を円の半
径 ε で割った1
2πε2
∫∂Dn(c ;ε)
X は円 ∂Dn(c ; ε) を 1周したときの平均の角速度を表している. そこで,
ωX(c,n) = limε→+0
1
2πε2
∫∂Dn(c ;ε)
X
とおけば, ωX(c,n) はベクトル場の n を軸とした点 c における「回転」の角速度を表していると考えられる. 故
に (∗∗)より ((rotX)(c),n) = 2ωX(c,n) が成り立つ. シュワルツの不等式から次の不等式が得られる.
|2ωX(c,n)| = |((rotX)(c),n)| ≦ ∥(rotX)(c)∥
故に (rotX)(c) = 0 と仮定すればn =(rotX)(c)
∥(rotX)(c)∥の場合に 2ωX(c,n) は最大値 ∥(rotX)(c)∥ をとる. このこ
とから, (rotX)(c) はベクトル場 X の回転軸で点 c における回転の角速度が最大になる方向を表し, ∥(rotX)(c)∥はその角速度の最大値である.
例 12.13 a > 0 に対して, 原点を中心とし 半径が a である球面を S とする. ( uv ) ∈ R2 に対して(
00−a
)と(uv0
)を結ぶ線分と S の交点を p( uv )とおくことによって写像 p : R2 → R3 を定義すれば, 次の等式が成り立つ.
p( uv ) =
2a2u
u2+v2+a2
2a2vu2+v2+a2
a(a2−u2−v2)u2+v2+a2
, pu(uv ) =
2a2(a2−u2+v2)(u2+v2+a2)2
− 4a2uv(u2+v2+a2)2
− 4a3u(u2+v2+a2)
, pv(uv ) =
− 4a2uv
(u2+v2+a2)2
2a2(a2+u2−v2)(u2+v2+a2)2
− 4a3v(u2+v2+a2)2
このとき p は R2 から S −
(00−a
)への全単射であり, 写像 q : R2 → R3 を q(u) = −p(u) で定義すれば, q
は R2 から S −(
00a
)への全単射である. このとき, p : R2 → R3, q : R2 → R3 は S の局所座標系である.
さらに
pu(uv )× pv(
uv ) =
4a4
(u2 + v2 + a2)2p( uv ) · · · (∗)
が成り立つ. M を z座標が a cosλ (0 < λ < π) 以上である S の点全体からなる S の部分集合とすれば M は境
界付き C∞級曲面である. M の単位法線ベクトル場 n として n(x) =1
ax で定義される, 球面から外向きのベク
トル場を考えることによって M の向きを定める. このとき (∗)より pu(uv )× pv(
uv ) =
4a5
(u2 + v2 + a2)2n(p( uv ))
が成り立つため, p : R2 → R3 は n と両立する S の局所座標で, Da =x ∈ R2
∣∣ ∥x∥ ≦ a tan λ2
とおけば, p
は Da から M への全単射と ∂Da から ∂M への全単射を定める. さらに ∂Da には反時計回りの向きが定まるの
で, ∂Da は ω(t) =
(a tan λ
2 cos t
a tan λ2 sin t
)で定義される写像 ω : [0, 2π] → R2 でパラメータ表示される. 従って ∂M は
p ω でパラメータ表示され, この写像は p ω(t) =
a sinλ cos ta sinλ sin t
a cosλ
で与えられる. M 上のベクトル場 X に対
し, X(x) の x, y, z成分をそれぞれ f(x), g(x), h(x) とすれば, ストークスの定理から次の等式が得られる.
∫∫M
rotX dA =
∫∂M
X = a sinλ
∫ 2π
0
cos t g
a sinλ cos ta sinλ sin t
a cosλ
− sin t f
a sinλ cos ta sinλ sin t
a cosλ
dt
13 ガウスの定理
閉区間 [a, b] で定義された区分的 C1 級関数関数 c, d はすべての x ∈ [a, b] に対して c(x) ≦ d(x) を満たすとし
て, R2 の部分集合 I を I =( xy ) ∈ R2
∣∣ a ≦ x ≦ b, c(x) ≦ y ≦ d(x)によって定める. I 上の C1 級関数 φ, ψ
42
はすべての x ∈ I に対して φ(x) ≦ ψ(x) を満たすとして, R3 の部分集合 D を
D =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ ( xy ) ∈ I, φ( xy ) ≦ z ≦ ψ( xy )
によって定める. そこで, D の境界 ∂D の部分集合 S1, S2, S3, S4, S5, S6 を以下で定める.
S1 =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ ( xy ) ∈ I, z = φ( xy )
S2 =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ ( xy ) ∈ I, z = ψ( xy )
S3 =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ a ≦ x ≦ b, y = c(x), φ( xc(x)
)≦ z ≦ ψ
( xc(x)
)S4 =
(xyz
)∈ R3
∣∣∣ a ≦ x ≦ b, y = d(x), φ( xd(x)
)≦ z ≦ ψ
( xd(x)
)S5 =
(xyz
)∈ R3
∣∣∣ x = a, c(a) ≦ y ≦ d(a), φ( ay ) ≦ z ≦ ψ( ay )
S6 =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ x = b, c(b) ≦ y ≦ d(b), φ(by
)≦ z ≦ ψ
(by
)このとき ∂D = S1 ∪ S2 ∪ S3 ∪ S4 ∪ S5 ∪ S6 であり, 各 Si は以下で定義される写像 pi でパラメータ表示される.
p1(xy ) =
x
y
φ( xy )
, p2(xy ) =
x
y
ψ( xy )
, p3(xz ) =
x
c(x)
z
, p4(xz ) =
x
d(x)
z
, p5(yz ) =
ayz
, p6(yz ) =
byz
ただし pi の定義域を Ej とおけば E1 = E2 = I であり, E3 =
( xz ) ∈ R3
∣∣ a ≦ x ≦ b, φ( xc(x)
)≦ z ≦ ψ
( xc(x)
),
E4 =( xz ) ∈ R3
∣∣ a ≦ x ≦ b, φ( xd(x)
)≦ z ≦ ψ
( xd(x)
), E5 =
( yz ) ∈ R3
∣∣ c(a) ≦ y ≦ d(a), φ( ay ) ≦ z ≦ ψ( ay ),
E6 =( yz ) ∈ R3
∣∣ c(b) ≦ y ≦ d(b), φ(by
)≦ z ≦ ψ
(by
)である. さらに各 Si には以下で与える法線ベクトルに
よって「外向き」の向きを付ける.
−(p1)u(xy )× (p1)v(
xy ) =
∂φ∂x (
xy )
∂φ∂y (
xy )
−1
(p2)u(xy )× (p2)v(
xy ) =
−∂ψ∂x (
xy )
−∂ψ∂y (
xy )
1
(p3)u(xz )× (p3)v(
xz ) =
c′(x)
−1
0
−(p4)u(
xz )× (p4)v(
xz ) =
−d′(x)1
0
−(p5)u(yz )× (p5)v(
yz ) =
−1
0
0
(p6)u(yz )× (p6)v(
yz ) =
1
0
0
次の結果をガウスの定理という.
定理 13.1 D を上で与えた R3 の部分集合とする. D の C1 級ベクトル場 X に対して, 次の等式が成り立つ.∫∫∫D
divX dxdydz =
∫∫∂D
X dA
証明 X(x) の x, y, z 成分をそれぞれ f1(x), f2(x), f3(x) として, D のベクトル場 Xi を Xi(x) = fi(x)ei
(i = 1, 2, 3) で定義する. このとき, X = X1 +X2 +X3 だから, rotX = rotX1 + rotX2 + rotX3 である.
(p3)u(xz ) × (p3)v(
xz ), −(p4)u(
xz ) × (p4)v(
xz ), −(p5)u(
yz ) × (p5)v(
yz ), (p6)u(
yz ) × (p6)v(
yz ) の z 成分はすべ
て 0 だからそれぞれX3(p3(xz )), X3(p4(
xz )), X3(p5(
yz )), X3(p6(
yz )) と直交するため, i = 3, 4, 5, 6 に対して∫∫
Si
X3 dA = 0 となる. 従って
∫∫D
divX3 dxdydz =
∫∫D
∂f3∂z
(xyz
)dxdydz =
∫∫I
(∫ ψ( xy )
φ( xy )
∂f3∂z
(xyz
)dz
)dxdy =
∫∫I
[f3
(xyz
)]z=ψ( xy )z=φ( xy )
dxdy
=
∫∫I
f3(p2(xy )) dxdy −
∫∫I
f3(p1(xy )) dxdy
=
∫∫E1
(X3(p1(xy )) ,−(p1)u(
xy )× (p1)v(
xy )) dxdy +
∫∫E1
(X3(p2(xy )) , (p2)u(
xy )× (p2)v(
xy )) dxdy
=
∫∫S1
X3 dA+
∫∫S2
X3 dA =
6∑i=1
∫∫Si
X3 dA =
∫∫∂D
X3 dA.
43
定理11.4より∂
∂y
∫ ψ( xy )
φ( xy )f2
(xyz
)dz =
∫ ψ( xy )
φ( xy )
∂f2∂y
(xyz
)dz + f2
( xy
ψ( xy )
)∂ψ
∂y( xy )− f2
( xy
φ( xy )
)∂φ
∂y( xy )が成り立つ.
また, −(p5)u(yz )× (p5)v(
yz ), (p6)u(
yz )× (p6)v(
yz ) の y成分はいずれも 0 だからそれぞれX2(p5(
yz )), X2(p6(
yz ))
と直交するため, i = 5, 6 に対して∫∫
Si
X3 dA = 0 となる. 従って
∫∫D
divX2 dxdydz =
∫∫D
∂f2∂y
(xyz
)dxdydz =
∫ b
a
(∫ d(x)
c(x)
(∫ ψ( xy )
φ( xy )
∂f2∂y
(xyz
)dz
)dy
)dx
=
∫ b
a
(∫ d(x)
c(x)
(∂
∂y
∫ ψ( xy )
φ( xy )f2
(xyz
)dz − f2
( xy
ψ( xy )
)∂ψ
∂y( xy ) + f2
( xy
φ( xy )
)∂φ
∂y( xy )
)dy
)dx
=
∫ b
a
[∫ ψ( xy )
φ( xy )f2
(xyz
)dz
]y=d(x)y=c(x)
dx−∫ b
a
(∫ d(x)
c(x)
(f2(p2(
xy ))
∂ψ
∂y( xy ) + f2(p1(
xy ))
∂φ
∂y( xy )
)dy
)dx
=
∫ b
a
∫ ψ( xd(x)
)φ( xd(x)
) f2( xd(x)z
)dz
dx−∫ b
a
∫ ψ( xc(x)
)φ( xc(x)
) f2( xc(x)z
)dz
dx−∫ b
a
(∫ d(x)
c(x)
f2(p2(xy ))
∂ψ
∂y( xy )
)dxdy
+
∫ b
a
(∫ d(x)
c(x)
f2(p1(xy ))
∂φ
∂y( xy )
)dxdy
=
∫∫E4
f2(p4(xz ))dxdz −
∫∫E3
f2(p3(xz ))dxdz −
∫∫E2
f2(p2(xy ))
∂ψ
∂y( xy ) dxdy +
∫∫E1
f2(p1(xy ))
∂φ
∂y( xy ) dxdy
=
∫∫E4
(X2(p4(xz )),−(p4)u(
xz )× (p4)v(
xz )) dxdz +
∫∫E3
(X2(p3(xz )), (p3)u(
xz )× (p3)v(
xz )) dxdz
+
∫∫E2
(X2(p2(xy )), (p2)u(
xy )× (p2)v(
xy )) dxdy +
∫∫E1
(X2(p1(xy )),−(p1)u(
xy )× (p1)v(
xy )) dxdy
=
∫∫S4
X2 dA+
∫∫S3
X2 dA+
∫∫S2
X2 dA+
∫∫S1
X2 dA =
6∑i=1
∫∫Si
X2 dA =
∫∫∂D
X2 dA.
定理 11.4より∂
∂x
∫ ψ( xy )
φ( xy )f1
(xyz
)dz =
∫ ψ( xy )
φ( xy )
∂f1∂x
(xyz
)dz + f1
( xy
ψ( xy )
)∂ψ
∂x( xy )− f1
( xy
φ( xy )
)∂φ
∂x( xy ) だから
∫∫D
divX1 dxdydz =
∫∫D
∂f1∂z
(xyz
)dxdydz =
∫ b
a
(∫ d(x)
c(x)
(∫ ψ( xy )
φ( xy )
∂f1∂x
(xyz
)dz
)dy
)dx
=
∫ b
a
(∫ d(x)
c(x)
(∂
∂x
∫ ψ( xy )
φ( xy )f1
(xyz
)dz − f1
( xy
ψ( xy )
)∂ψ
∂x( xy ) + f1
( xy
φ( xy )
)∂φ
∂x( xy )
)dy
)dx
=
∫ b
a
(∫ d(x)
c(x)
(∂
∂x
∫ ψ( xy )
φ( xy )f1
(xyz
)dz
)dy
)dx−
∫∫E2
f1(p2(xy ))
∂ψ
∂x( xy ) dxdy
+
∫∫E1
f1(p1(xy ))
∂φ
∂x( xy ) dxdy · · · (i)
g( xy ) =
∫ ψ( xy )
φ( xy )f1
(xyz
)dz とおくと, 定理 11.4より
d
dx
∫ d(x)
c(x)
(∫ ψ( xy )
φ( xy )f1
(xyz
)dz
)dy =
d
dx
∫ d(x)
c(x)
g( xy )dy =
∫ d(x)
c(x)
∂g
∂x( xy )dy + g
( xd(x)
)d′(x)− g
( xc(x)
)c′(x)
=
∫ d(x)
c(x)
(∂
∂x
∫ ψ( xy )
φ( xy )f1
(xyz
)dz
)dy +
∫ ψ( xd(x)
)φ( xd(x)
) f1
(xd(x)z
)d′(x) dz −
∫ ψ( xc(x)
)φ( xc(x)
) f1
(xc(x)z
)c′(x) dz
44
だから∫ b
a
(∫ d(x)
c(x)
(∂
∂x
∫ ψ( xy )
φ( xy )f1
(xyz
)dz
)dy
)dx =
∫ b
a
(d
dx
∫ d(x)
c(x)
(∫ ψ( xy )
φ( xy )f1
(xyz
)dz
)dy
)dx
−∫ b
a
∫ ψ( xd(x)
)φ( xd(x)
) f1
(xd(x)z
)d′(x) dz
dx+
∫ b
a
∫ ψ( xc(x)
)φ( xc(x)
) f1
(xc(x)z
)c′(x) dz
dx=
[∫ d(x)
c(x)
(∫ ψ( xy )
φ( xy )f1
(xyz
)dz
)dy
]x=bx=a
−∫∫
E4
f1(p4(xz ))d
′(x) dxdz +
∫∫E3
f1(p3(xz ))c
′(x) dxdz
=
∫ d(b)
c(b)
∫ ψ(by
)φ(by
) f1
(byz
)dz
dy − ∫ d(a)
c(a)
(∫ ψ( ay )
φ( ay )f1
(ayz
)dz
)dy −
∫∫E4
f1(p4(xz ))d
′(x) dxdz
+
∫∫E3
f1(p3(xz ))c
′(x) dxdz
=
∫∫E6
f1(p6(yz )) dydz −
∫∫E5
f1(p5(yz )) dydz −
∫∫E4
f1(p4(xz ))d
′(x) dxdz +
∫∫E3
f1(p3(xz ))c
′(x) dxdz
が得られる. 従って (i)は以下の式に等しい.
(i) =
∫∫E6
f1(p6(yz )) dydz −
∫∫E5
f1(p5(yz )) dydz −
∫∫E4
f1(p4(xz ))d
′(x) dxdz
+
∫∫E3
f1(p3(xz ))c
′(x) dxdz −∫∫
E2
f1(p2(xy ))
∂ψ
∂x( xy ) dxdy +
∫∫E1
f1(p1(xy ))
∂φ
∂x( xy ) dxdy
=
∫∫E6
(X1(p6(yz )), (p6)u(
yz )× (p6)v(
yz )) dydz +
∫∫E5
(X1(p5(yz )),−(p5)u(
yz )× (p5)v(
yz )) dydz
+
∫∫E4
(X1(p4(xz )),−(p4)u(
xz )× (p4)v(
xz )) dxdz +
∫∫E3
(X1(p3(xz )), (p3)u(
xz )× (p3)v(
xz )) dxdz
−∫∫
E2
(X1(p2(xy )), (p2)u(
xy )× (p2)v(
xy )) dxdy +
∫∫E1
(X1(p1(xy )),−(p1)u(
xy )× (p1)v(
xy )) dxdy
=
∫∫S6
X1 dA+
∫∫S5
X1 dA+
∫∫S4
X1 dA+
∫∫S3
X1 dA+
∫∫S2
X1 dA+
∫∫S1
X1 dA =
∫∫∂D
X1 dA
以上から i = 1, 2, 3 に対して∫∫∫
D
divXi dxdydz =
∫∫∂D
Xi dA が成り立つため結果が得られる.
R3 の Cr 級曲面が連結な有界閉集合であるとき, Cr 級閉曲面という.
定義 13.2 R3 の有界な部分集合 D の境界 ∂D は C1級閉曲面 S1, S2, . . . , Sk の合併集合で, i = j ならば Si と
Sj は共有点を持たないとする. さらに各 p ∈ ∂D に対して次の条件 (∗)が満たされるとき, D は C1級の境界をも
つという. a, b, c > 0, p ∈ R2 と 3次正方行列 A に対し, F : [−a, a]× [−b, b]× [−c, c] → R3 を F (x) = p+ Ax
で定義される写像とする.
(∗) a, b, c > 0 と |A| = 1 である 3次直交行列 A および C1級関数 φ : [−a, a]× [−b, b] → [−c, c] で φ( 00 ) = 0 を
満たすものが存在し, 以下の条件 (a)と (b)が満たされる.
(a) F の像と D の共通部分は F による(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ − a ≦ x ≦ a, −b ≦ y ≦ b, φ( xy ) ≦ z ≦ cの像に
一致する.
(b) F の像と ∂D の共通部分は ( xy ) ∈ [−a, a] × [−b, b] を F
( xy
φ( xy )
)に対応させる写像によってパラメー
タ表示される曲面である.
定義 13.3 R3 の有界閉集合 D の境界 ∂D が C1級の曲面であり, p を ∂D の点とする. p における ∂D の零ベ
クトルでない法線ベクトル n が次の条件 (∗)を満たすとき, n を p における ∂D の外向きの法線ベクトルという.
(∗) ε > 0 で条件「0 < t < ε ならば p+ tn ∈ D かつ −ε < t < 0 ならば p+ tn ∈ D」を満たすものがある.
45
注意 13.4 C1級の曲面を境界にもつ R3 の有界閉集合 D の境界 ∂D の各点に外向きの単位法線ベクトルを対応
させることによって, ∂D の向きを定める
ガウスの定理は, C1 級の曲面を境界とする R3 の有界閉集合に対しても成り立つ.
定理 13.5 D を C1級の曲面を境界とする R3 の有界閉集合とする. D の C1級ベクトル場 X に対して, 次の等
式が成り立つ. ∫∫∫D
divX dxdydz =
∫∫∂D
X dA
注意 13.6 R3 の有界閉集合 D の境界 ∂D が「ほとんど」C1級曲面で, Dの任意の C1級ベクトル場 X に対し
て∫∫
∂D
X dA が定義されて, 等式∫∫∫
D
divX dxdydz =
∫∫∂D
X dA が成り立つとき, 「D に対し, ガウスの定
理が成り立つ.」という.
例 13.7 0 < a < b に対して, x ∈ R3 | a ≦ ∥x∥ ≦ b を D(a, b) で表す. このとき, D(a, b) の境界 ∂D(a, b) は 2
つの球面 S(a) = x ∈ R3 | ∥x∥ = a と S(b) = x ∈ R3 | ∥x∥ = b の合併集合である. ここで正の実数 r に対し
pr(θφ
)=
r cosφ sin θ
r sinφ sin θ
r cos θ
によって pr : [0, π]× [0, 2π] → R3 を定めれば p は原点を中心とする半径 r の球面の
パラメータ表示であり,
prθ(θφ
)=
r cosφ cos θ
r sinφ cos θ
−r sin θ
, prφ(θφ
)=
−r sinφ sin θ
r cosφ sin θ
0
, prθ(θφ
)× prφ
(θφ
)= r2 sin θ
cosφ sin θ
sinφ sin θ
cos θ
が成り立つ. 従って prθ
(θφ
)× prφ
(θφ
)= r sin θ pr
(θφ
)だから, pbθ
(θφ
)× pbφ
(θφ
)は S(b) の外向きの法線ベクトル
場であり, −paθ(θφ
)× paφ
(θφ
)は S(a) の内向きの法線ベクトル場である. X を X(x) = ∥x∥αx で定義される
D(a, b) のベクトル場とすれば, divX = (α + 3)(x2 + y2 + z2)α2 である. 極座標変換によって D(a, b) は領域
[a, b]× [0, π]× [0, 2π] に対応するため,∫∫∫D(a,b)
divXdxdydz =
∫∫∫D(a,b)
(α+ 3)(x2+ y2+ z2)α2 dxdydz =
∫∫∫[a,b]×[0,π]×[0,2π]
(α+ 3)rα+2 sin θ drdθdφ
=
(∫ b
a
(α+ 3)rα+2 dr
)(∫ π
0
sin θ dθ
)(∫ 2π
0
dφ
)= 4π(bα+3 − aα+3)
一方, S(b) の外向きの法線ベクトル場で向きをつけた S(b) 上での X の面積分と S(a) の内向きの法線ベクトル
場で向きをつけた S(a) 上での X の面積分はそれぞれ以下で与えられる.∫∫S(b)
X dA =
∫∫[0,π]×[0,2π]
(X(pb(θφ
)),pbθ(θφ
)× pbφ
(θφ
))dθdφ
=
∫∫[0,π]×[0,2π]
(bαpb
(θφ
), b sin θ pb
(θφ
))dθdφ
=
∫∫[0,π]×[0,2π]
bα+3 sin θ dθdφ = bα+3
(∫ π
0
sin θ dθ
)(∫ 2π
0
dφ
)= 4πbα+3
∫∫S(a)
X dA =
∫∫[0,π]×[0,2π]
(X(pa(θφ
)),−paθ
(θφ
)× paφ
(θφ
))dθdφ
=
∫∫[0,π]×[0,2π]
(aαpa
(θφ
),−a sin θ pa
(θφ
))dθdφ
= −∫∫
[0,π]×[0,2π]
aα+3 sin θ dθdφ = −aα+3
(∫ π
0
sin θ dθ
)(∫ 2π
0
dφ
)= −4πaα+3
∂D(a, b) 上の X の面積分は上で求めた値の和だから∫∫
∂D(a,b)
X dA = 4π(bα+3 − aα+3) となって, この場合に
ガウスの定理が成り立つことが確かめられた.
46
14 応用例
命題 14.1 S を境界付き C1 級曲面, S 上にない点 p ∈ R3 を始点とする任意の半直線と S との交点は 1個以下
であるとする. E = y ∈ R3 |y = p + t(x − p) を満たす t > 0 と x ∈ S が存在する. とおき, p を中心とする
半径 1の球面と E の共通部分の面積を ω(S,p) とおけば ω(S,p) =
∫∫S
(x− p,n(x))
∥x− p∥3dA が成り立つ. ここで,
x ∈ S における S の単位法線ベクトル n(x) は (x− p,n(x)) ≧ 0 を満たすものとする.
証明 r > 0 を条件「∥y − p∥ ≦ r ならば y ∈ S」を満たすように選んで R3 の部分集合 D を次のように定める.
D = y ∈ R3 | ∥y − p∥ ≧ r かつ y = p+ t(x− p)を満たす 0 < t ≦ 1と x ∈ S が存在する.
R3 −p のベクトル場 X を X(x) =1
∥x− p∥3(x− p) によって定めれば divX = 0 だから, ガウスの定理より∫∫
∂D
(x− p,n(x))
∥x− p∥3dA =
∫∫∂D
X dA =
∫∫∫D
divX dxdydz = 0 · · · (∗)
が成り立つ. p を中心とする半径 aの球面と E の共通部分を S(a) で表し, D の部分集合 T を次で定める.
T = y ∈ R3 | ∥y − p∥ ≧ r かつ y = p+ t(x− p)を満たす 0 < t ≦ 1と x ∈ ∂S が存在する.
D の境界は S ∪ T ∪S(r) であり, x ∈ S(r) における S(r) の外向きの単位法線ベクトル n(x) は −1
r(x− p) であ
り, x ∈ T における T の外向きの単位法線ベクトル n(x) は x−p と直交する. また, x 7→ r(x−p)+p で与えら
れる写像 S(1) → S(r) で変数変換を行えば, この変数変換のヤコビ行列式の値は r2 だから次の等式が得られる.∫∫∂D
(x− p,n(x))
∥x− p∥3dA =
∫∫S(r)
(x− p,n(x))
∥x− p∥3dA+
∫∫T
(x− p,n(x))
∥x− p∥3dA+
∫∫S
(x− p,n(x))
∥x− p∥3dA
= −∫∫
S(r)
1
r2dA+
∫∫S
(x− p,n(x))
∥x− p∥3dA = −
∫∫S(1)
dA+
∫∫S
(x− p,n(x))
∥x− p∥3dA
= −ω(S,p) +∫∫
S
(x− p,n(x))
∥x− p∥3dA
故に (∗)から結果が得られる.
定義 14.2 S を向きが与えられた C1 級曲面とする. p ∈ R3 に対し S 上の面積分∫∫
S
(x− p,n(x))
∥x− p∥3dA が存在
するとき, この値を p から見た S の立体角といい, ω(S,p) で表す.
命題 14.3 D を R3 の有界閉集合とし, D の境界 ∂D は連結な C1 級閉曲面であるとする. ∂D に外向きの単
位法線ベクトル場を与えることによって ∂D に向きを付けるとき, p ∈ D ならば ω(∂D,p) = 0, p ∈ Di ならば
ω(∂D,p) = 4π が成り立つ.
証明 R3 − p のベクトル場 X を X(x) =1
∥x− p∥3(x− p) によって定めれば divX = 0 である.
p ∈ D の場合, ガウスの定理より ω(∂D,p) =
∫∫∂D
X dA =
∫∫∫D
divX dxdydz = 0 が得られる.
p ∈ Di の場合, p を中心とする半径 ε > 0 の開球 B(p ; ε) = x ∈ R3 | ∥x− p∥ < ε の閉包が ∂D と共有点を
もたないように ε を選ぶ. このとき D − B(p ; ε) の境界は ∂D と ∂B(p ; ε) の合併集合であり, x ∈ ∂B(p ; ε) に
おける ∂(D −B(p ; ε)) の外向きの単位法線ベクトルは −1
ε(x− p) である. ∂B(p ; ε) の面積は 4πε2 だから∫∫∫
D−B(p ;ε)
divX dxdydz =
∫∫∂(D−B(p ;ε))
X dA =
∫∫∂D
X dA+
∫∫∂B(p ;ε)
(X(x),−1
ε(x− p)
)dA
= ω(∂D,p)− 1
ε2
∫∫∂B(p ;ε)
dA = ω(∂D,p)− 4π
がガウスの定理から得られる. 一方∫∫∫
D−B(p ;ε)
divX dxdydz = 0 だから上式から ω(∂D,p) = 4π である.
47
例 14.4 a, bを正の実数とする. 円板 S =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ x2 + y2 ≦ a2, z = bに対し, 写像 q : [0, a]×[0, 2π] → S
を q( rθ ) =(r cos θr sin θb
)で定めれば q は S のパラメータ表示であり, qr(
rθ ) =
(cos θsin θ0
), qθ(
rθ ) =
(−r sin θr cos θ
0
)だから
qr(rθ ) × qθ(
rθ ) =
(00r
)は q( rθ ) との内積が正である S の法線ベクトルである. 故に S を原点から見た立体角
ω(S,0) は次のように求められる.
ω(S,0) =
∫∫S
(x,n(x))
∥x∥3dA =
∫∫[0,1]×[0,2π]
(q( rθ ) , qr(rθ )× qθ(
rθ ))
∥q( rθ ) ∥3drdθ =
∫ a
0
(∫ 2π
0
br
(r2 + b2)32
dθ
)dr
=
∫ a
0
2πbr
(r2 + b2)32
dr =
[− 2πb√
r2 + b2
]a0
= 2π − 2πb√a2 + b2
Rn の部分集合 D の C1 級スカラー場 f と D の C1 級ベクトル場 v に対し, x ∈ D を f の x における v(x)
方向の微分 limt→0
f(x+ tv(x))− f(x)
tに対応させる D のスカラー場を
∂f
∂vで表す. このとき, 注意 7.3から x ∈ D
に対して∂f
∂v(x) = ((grad f)(x),v(x)) が成り立つ. 次の定理の公式を「グリーンの公式」という.
定理 14.5 D を R3 の有界閉集合とし, ∂D の外向きの単位法線ベクトル場を n で表す. D に対してガウスの定
理が成り立つならば, D の C2 級スカラー場 f , g に対して以下の等式が成り立つ.
(1)
∫∫∫D
(f∇2g + (grad f, grad g)
)dxdydz =
∫∫∂D
f∂g
∂ndA
(2)
∫∫∫D
(f∇2g − g∇2f
)dxdydz =
∫∫∂D
(f∂g
∂n− g
∂f
∂n
)dA
(3)
∫∫∫D
∇2fdxdydz =
∫∫∂D
∂f
∂ndA,
∫∫∫D
∥grad f∥2dxdydz =∫∫
∂D
f∂f
∂ndA−
∫∫∫D
f∇2f dxdydz
(4) f , g が D において ∇2f = ∇2g = 0 を満たすならば∫∫
∂D
(f∂g
∂n− g
∂f
∂n
)dA = 0.
(5) f が D において ∇2f = 0 を満たすならば∫∫
∂D
∂f
∂ndA = 0,
∫∫∫D
∥grad f∥2dxdydz =∫∫
∂D
f∂f
∂ndA.
従って任意の x ∈ ∂D に対して f(x) = 0 または (grad f)(x) が ∂D の接平面上のベクトルならば f は定数値関
数である.
証明 (1) D のベクトル場 X を x ∈ D に対し, X(x) = f(x)(grad g)(x) によって定義すれば命題 10.16の (3)か
ら divX = fdiv(grad g) + (grad f, grad g) = f∇2g + (grad f, grad g) である. 従ってガウスの定理から∫∫∫D
(f∇2g + (grad f, grad g)
)dxdydz =
∫∫∫D
divX dxdydz =
∫∫∂D
X dA =
∫∫∂D
(X(x),n(x)) dA
=
∫∫∂D
f(x)((grad g)(x),n(x)) dA =
∫∫∂D
f∂g
∂ndA.
(2) (1)の等式の f と g を入れ替えれば∫∫∫
D
(g∇2f + (grad f, grad g)
)dxdydz =
∫∫∂D
g∂f
∂ndA であり, この
等式を (1)の等式から辺々引けば (2)の等式が得られる.
(3) (1)の等式の f と g を入れ替えたものにおいて, g がつねに値が 1である定数値関数である場合を考えれば
1つ目の等式が得られる. また (1)の等式で g = f として∫∫∫
D
f∇2f dxdydz の項を右辺に移項すれば 2つ目の
等式が得られる.
(4) D において ∇2f = ∇2g = 0 ならば (2)の等式の左辺は 0になるため, (4)の等式が得られる.
(5) D において ∇2f = 0 ならば (3)の 1つ目の等式の左辺は 0になるため, 1つ目の等式が得られ, (3)の 2つ目
の等式の右辺の∫∫∫
D
f∇2f dxdydz の項は 0になるため, 2つ目の等式が得られる. 仮定から任意の x ∈ ∂D に
対して f(x)∂f
∂n(x) = f(x)((grad f)(x),n(x)) = 0 だから, 2つ目の等式から ∥(grad f)(x)∥ = 0 が得られるので,
後半の主張が示される.
48
命題 14.6 D を R3 の有界閉集合とし, ∂D の外向きの単位法線ベクトル場を n で表す. D に対してガウスの定
理が成り立つとし, D 連続なスカラー場 ρ が与えられているとする.
(1) ∂D の C2 級関数 λ に対し, D におけるポアソン方程式 ∇2f = ρ の解 f で, すべての x ∈ ∂D に対して
f(x) = λ(x) を満たすものが存在すればただ 1つである.
(2) ∂D の C1 級関数 λ に対し, D におけるポアソン方程式 ∇2f = ρ の解 f で, すべての x ∈ ∂D に対して∂f
∂n(x) = λ(x) を満たすものが存在するとき, そのような解は定数の差を除けば 1通りに定まる.
証明 (1) D 上の C2 級関数 f , g が ∇2f = ∇2g = ρ とすべての x ∈ ∂D に対して f(x) = g(x) = λ(x) を満たす
とき, h(x) = f(x)− g(x) によって D 上の関数 h を定めれば, h は ∇2h = 0 を満たし, すべての x ∈ ∂D に対し
て h(x) = 0 が成り立つため, 定理 14.5の (5)の後半の主張から, h は定数値関数である. さらに x ∈ ∂D ならば
h(x) = 0 だから h は値がつねに 0である. 故に f = g である.
(2) D 上の C2級関数 f , g が ∇2f = ∇2g = ρ とすべての x ∈ ∂D に対して∂f
∂n(x) =
∂g
∂n(x) = λ(x) を満たす
とき, h(x) = f(x)− g(x) によって D 上の関数 h を定めれば, h は ∇2h = 0 を満たし, すべての x ∈ ∂D に対し
て∂h
∂n(x) = 0 が成り立つため, 定理 14.5の (5)の後半の主張から, h は定数値関数である.
p ∈ R3, R3 の単位ベクトル n と ε > 0 に対し, p を通り n に垂直な平面を S とするとき, p を中心として半
径が ε の S に含まれる円板 x ∈ R3 | ∥x− p∥ ≦ ε, x ∈ S を Dn(p ; ε) で表す. (例 12.12参照)
命題 14.7 V を R3 の開集合とし, X, Y を V の C1 級ベクトル場とする. V において rotX = Y が成り立つ
ことと, 任意の c ∈ V , 単位ベクトル n ∈ R3 と Dn(c ; ε) ⊂ D を満たす任意の ε > 0 に対して∫∂Dn(c ;ε)
X =
∫∫Dn(c ;ε)
Y dA · · · (∗)
が成り立つことは同値である. ただし, Dn(c ; ε) には Dn(c ; ε) の単位法線ベクトル n によって向きを与える.
証明 rotX = Y が成り立てば, ストークスの定理から, 任意の c ∈ V , 単位ベクトル n ∈ R3 と Dn(c ; ε) ⊂ V を
満たす任意の ε > 0 に対して∫∂Dn(c ;ε)
X =
∫∫Dn(c ;ε)
rotX dA =
∫∫Dn(c ;ε)
Y dA が成り立つ.
逆に任意の c ∈ V , 単位ベクトル n ∈ R3 と Dn(c ; ε) ⊂ V を満たす任意の ε > 0 に対して (∗)が成り立つと仮定する. 命題 12.12の証明における Dn(c ; ε) のパラメータ表示 p : E(ε) → Dn(c ; ε) を考えれば, ストークスの
定理と定理 12.11から a2 + b2 ≦ 1, c2 + d2 ≦ 1 を満たす a, b, c, d で次の等式を満たすものが存在する.∫∂Dn(c ;ε)
X =
∫∫Dn(c ;ε)
rotX dA =
∫∫E(ε)
((rotX)(c+ upu + vpv),n) dudv
= πε2((rotX)(c+ ε(apu + bpv)),n)∫∫Dn(c ;ε)
Y dA =
∫∫E(ε)
(Y (c+ upu + vpv),n) dudv = πε2(Y (c+ ε(cpu + dpv)),n)
従って (∗)から ((rotX)(c + ε(apu + bpv)),n) = (Y (c + ε(cpu + dpv)),n) であり, ε → +0 のときこの等式の
左辺は ((rotX)(c),n) に近づき, 右辺は (Y (c),n) に近づくため ((rotX)(c),n) = (Y (c),n) が得られる. 故に
((rotX)(c)− Y (c),n) = 0 が任意の単位ベクトル n に対して成り立つため, (rotX)(c) = Y (c) である.
命題 14.8 D を R3 の開集合とし, X, Y を D の C1 級ベクトル場, φ を D の連続なスカラー場とする. D に
おいて divX = φ が成り立つことと, 任意の p ∈ D と B(p ; ε) ⊂ D を満たす任意の ε > 0 に対して∫∫∂B(p ;ε)
X dA =
∫∫∫B(p ;ε)
φdxdydz · · · (∗)
が成り立つことは同値である. ただし, ∂B(p ; ε) には外向きの単位法線ベクトル場によって向きを与える.
49
証明 divX = φ が成り立てば, ガウスの定理から, 任意の p ∈ D と B(p ; ε) ⊂ D を満たす任意の ε > 0 に対し
て∫∫
∂B(p ;ε)
X dA =
∫∫B(p ;ε)
divX dxdydz =
∫∫∫B(p ;ε)
φdxdydz が成り立つ.
逆に任意の p ∈ D と B(p ; ε) ⊂ D を満たす任意の ε > 0 に対して (∗)が成り立つと仮定する. ガウスの定理か
ら, (∗)の左辺は∫∫
B(p ;ε)
divX dxdydz に等しく, さらに定理 12.11から,
∫∫B(p ;ε)
divX dxdydz = (divX)(x)v(B(p ; ε)),
∫∫∫B(p ;ε)
φdxdydz = φ(y)v(B(p ; ε))
を満たす x,y ∈ B(p ; ε) が存在する. 従って (divX)(x) = φ(y) であり, x,y ∈ B(p ; ε) だから ε→ +0 のとき x
と y はともに p に近づくため, ε→ +0 のとき, divX と φ の連続性から (divX)(p) = φ(p) が得られる.
例 14.9 E を電場の強さ, B を磁束密度, ρ を電荷密度, J を電流密度, ϵ を誘電率, µ を透磁率とするとき, 以下
の 4つの方程式をマックスウェルの方程式という.
divE =ρ
ϵ(14.1)
divB = 0 (14.2)
rotE = −∂B∂t
(14.3)
rotB = µJ + ϵµ∂E
∂t(14.4)
(1) R3 の有界閉集合 D においてガウスの定理が成り立つ場合, (14.1)と (14.2)から次の等式が成り立つ.∫∫∫D
ρ
ϵdxdydz =
∫∫∫D
divE dxdydz =
∫∫∂D
E dA · · · (i),∫∫
∂D
B dA =
∫∫∫D
divB dxdydz = 0 · · · (ii)
また命題 14.8から, E, B の定義域に属する任意の p と p を中心として E, B の定義域に含まれる任意の球体
D = B(p ; ε) に対して (i), (ii)が成り立つことはそれぞれ (14.1), (14.2)が成り立つことと同値である.
D に含まれる電荷の総量を Q とすれば, Q =
∫∫∫D
ρ dxdydz だから, (i)からQ
ϵ=
∫∫∂D
E dA が得られる.
この等式は「ガウスの法則」と呼ばれ, D に含まれる電荷の総量を誘電率で割ったものが D の境界を通過する
「電束」に一致することを示している. また∫∫
∂D
B dA = 0 は D の境界を通過する「磁束」の総和はつねに 0 で
あることを意味する.
(2) M を向き付けられた C1級曲面とし, (14.3)の両辺の M 上の面積分を考えると, B がすべての変数に関し
て C1 級関数ならばストークスの定理と定理 8.11から次の等式が成り立つ.
− ∂
∂t
∫∫M
B dA = −∫∫
M
∂B
∂tdA =
∫∫M
rotE dA =
∫∂M
E · · · (iii)
また命題 14.7から, E, B の定義域に属する任意の p と p を中心として E, B の定義域に含まれる任意の円板
M = Dn(p, ε) に対して (iii)が成り立つことは (14.3)が成り立つことと同値である.
(iii)は M の表面を通過する磁束の総和の時間変化率の符号を変えたものが, M の境界に沿った電束の総和, す
なわち電場 E による起電力に等しいことを意味し, これは「ファラデーの法則」と呼ばれる.
D ⊂ Rn 上の C2 級関数 u が D において ∇2u = 0 を満たすとき, u を D 上の調和関数という.
命題 14.10 p ∈ Rn と区間 (0,∞)上の C2級関数 f に対して, Rn −p上の関数 u を u(x) = f(∥x− p∥) で定める. このとき u が調和関数ならば, 定数 A, C が存在して, n = 2 の場合は f(r) = A log r + C, n = 2 の場合
は f(r) =A
rn−2+ C という形の関数である.
50
証明 p の第 i成分を pi とすれば,∂
∂xi∥x− p∥ =
xi − pi∥x− p∥
だから,∂u
∂xi(x) =
(xi − pi)f′(∥x− p∥)
∥x− p∥である. 故に
∂2u
∂x2i(x) =
f ′(∥x− p∥)∥x− p∥
+(xi − pi)
2f ′′(∥x− p∥)∥x− p∥2
− (xi − pi)2f ′(∥x− p∥)
∥x− p∥3
=(∥x− p∥2 − (xi − pi)
2)f ′(∥x− p∥)∥x− p∥2
+(xi − pi)
2f ′′(∥x− p∥)∥x− p∥2
となるため,
∇2u(x) =
n∑i=1
∂2u
∂x2i(x) =
n∑i=1
(∥x− p∥2 − (xi − pi)2)f ′(∥x− p∥)
∥x− p∥3+
n∑i=1
(xi − pi)2f ′′(∥x− p∥)
∥x− p∥2
=(n∥x− p∥2 − ∥x− p∥2)f ′(∥x− p∥)
∥x− p∥3+
∥x− p∥2f ′′(∥x− p∥)∥x− p∥2
= f ′′(∥x− p∥) + (n− 1)f ′(∥x− p∥)∥x− p∥
が得られる. 従って r = ∥x − p∥ とおけば, 偏微分方程式 ∇2u = 0 は常微分方程式 f ′′ +n− 1
rf ′ = 0 と同値で
ある. g = f ′ とおけば変数分離形の微分方程式 g′ = −n− 1
rg が得られ, この解は g(r) =
A
rn−1の形である. 故に
n = 2 ならば f(r) = A log r + C, n = 2 ならば f(r) =A
rn−2+ C という形になる.
定理 14.11 D を R3 の有界閉集合で, C1級の境界 ∂D を持つものとし, n を ∂D の単位法線ベクトル場とする.
任意の p ∈ Di に対して r : ∂D → R を r(x) = ∥p− x∥ で定めるとき, D 上の調和関数 u に対して次の等式が
成り立つ.
u(p) =1
4π
∫∫∂D
(1
r
∂u
∂n− u
∂
∂n
(1
r
))dA
証明 p ∈ Di に対して条件「∥x− p∥ ≦ ε ならば x ∈ Di を満たす ε > 0 をとり, B(ε) = x ∈ R3 | ∥x− p∥ ≦ ε,V (ε) = Di −B(ε) とおく. このとき V (ε) の閉包は C1級の境界 ∂D ∪ ∂B(ε) をもつ有界閉集合だから u と
1
rに
対して定理 14.5の (4)を用いると∫∫∂D
(1
r
∂u
∂n− u
∂
∂n
(1
r
))dA+
∫∫∂B(ε)
(1
r
∂u
∂n− u
∂
∂n
(1
r
))dA =
∫∫∂V (ε)
(1
r
∂u
∂n− u
∂
∂n
(1
r
))dA = 0
が得られる. V (ε) の境界のうち, ∂B(ε) の点 x における, V (ε) から見た外向きの単位法線ベクトルは, p を中心
とする球面 ∂B(ε) の内向きの単位法線ベクトル −1
ε(x− p) であり, grad
(1
r
)= − 1
ε3(x− p) だから,
∂
∂n
(1
r
)=
(grad
(1
r
),−1
ε(x− p)
)=
(− 1
ε3(x− p),−1
ε(x− p)
)=
1
ε2
である. 従って q(θφ
)= p +
(ε sin θ cosφε sin θ sinφε cos θ
)によって定められる写像 q : [0, π] × [0, 2π] → ∂B(ε) によって ∂B(ε)
をパラメータ表示すれば, qθ(θφ
)× qφ
(θφ
)= ε2 sin θ
(sin θ cosφsin θ sinφ
cos θ
)だから, 次の等式が得られる.
∫∫∂B(ε)
(1
r
∂u
∂n− u
∂
∂n
(1
r
))dA =
∫∫[0,π]×[0,2π]
(1
ε
∂u
∂n
(q(θφ
))− 1
ε2u(q(θφ
)))∥∥qθ( θφ )× qφ(θφ
)∥∥ dθdφ= ε
∫∫[0,π]×[0,2π]
∂u
∂n
(q(θφ
)sin θ
)dθdφ−
∫∫[0,π]×[0,2π]
u(q(θφ
))sin θ dθdφ · · · (∗)
一方, u の連続性から任意の η > 0 に対して δ > 0 で条件「∥x− p∥ < δ ならば |u(x)− u(p)| < η」を満たすも
のがあるため, 0 < ε < δ ならば任意の θ ∈ [0, π], φ ∈ [0, 2π] に対して u(p)− η < u(q(θφ
))< u(p) + η が成り立
つ. このとき∫∫
[0,π]×[0,2π]
sin θ dθdφ = 4π であることから, 0 < ε < δ ならば次の不等式が成り立つ.
4π(u(p)− η) ≦∫∫
[0,π]×[0,2π]
u(q(θφ
))sin θ dθdφ ≦ 4π(u(p) + η)
51
故に limε→0
∫∫[0,π]×[0,2π]
u(q(θφ
))sin θ dθdφ = 4π だから, (∗)より lim
ε→0
∫∫∂B(ε)
(1
r
∂u
∂n− u
∂
∂n
(1
r
))dA = −4πu(p)
であることがわかる. 故に最初の等式から∫∫
∂D
(1
r
∂u
∂n− u
∂
∂n
(1
r
))dA− 4πu(p) = 0 が得られるため, 主張が
示される.
上の定理の応用として, 次の「ガウスの平均定理」と呼ばれる定理が導かれる.
定理 14.12 u を R3 の開集合 D 上の調和関数とする. p ∈ D に対し, B(p ; a) = x ∈ R3 | ∥x− p∥ ≦ a が D
に含まれるとき, 次の等式が成り立つ. ただし, ∂B(p ; a) には外向きの法線ベクトル場 n を与える.
u(p) =1
4πa2
∫∫∂B(p ;a)
u dA
証明 x ∈ ∂B(p ; a) ならば r(x) = a であり, x における ∂B(p ; a) の外向きの単位法線ベクトルは1
a(x − p) で
あり, grad
(1
r
)= − 1
a3(x− p) だから,
∂
∂n
(1
r
)=
(grad
(1
r
),1
a(x− p)
)=
(− 1
a3(x− p),
1
a(x− p)
)= − 1
a2
が成り立つ. このことと定理 14.11, 定理 14.5の (3)の 1番目の等式から
u(p) =1
4πa
∫∫∂B(p ;a)
∂u
∂ndA− 1
4π
∫∫∂B(p ;a)
u∂
∂n
(1
r
)dA =
1
4πa2
∫∫∂B(p ;a)
u dA
が成り立つ.
さらに上のガウスの平均定理の応用として, 次の「最大値の原理」と呼ばれる結果が示される.
定理 14.13 u を R3 の開集合 D 上の調和関数とする.
(1) u は D において最大値または最小値をとれば, u は定数値関数である.
(2) D が有界で, u が D の閉包 D 上の連続関数に拡張されるとき, u はD における最大値と最小値は D の境
界 ∂D 上の点でとる.
証明 (1) p ∈ D と a > 0 に対し, B(p ; a) = x ∈ R3 | ∥x− p∥ ≦ a ⊂ D とする. ∂B(p ; a) における最大値と最
小値をそれぞれ M(p ; a), m(p ; a) とすれば,
m(p ; a) =m(p ; a)
4πa2
∫∫B(p ;a)
dA ≦ 1
4πa2
∫∫∂B(p ;a)
u dA ≦ M(p ; a)
4πa2
∫∫B(p ;a)
dA =M(p ; a)
だから, 定理 14.12によってm(p ; a) ≦ u(p) ≦ M(p ; a) が成り立つ. p を固定して v(y) = u(y)− u(p) で D 上
の関数 v を定めれば v も D 上の調和関数だから, 定理 14.12によって次の等式が成り立つ.
1
4πa2
∫∫∂B(p ;a)
(u− u(p)) dA =1
4πa2
∫∫∂B(p ;a)
v dA = v(p) = 0
u が p で D における最大値をとれば, 任意の x ∈ ∂B(p ; a) に対して u(x) − u(p) ≦ 0 だから, u の連続性と上
式から u(x) = u(p) がすべての x ∈ ∂B(p ; a) に対して成り立ち, u が p で D における最小値をとれば, 任意の
x ∈ ∂B(p ; a) に対して u(x) − u(p) ≧ 0 だから, u の連続性と上式から u(x) = u(p) がすべての x ∈ ∂B(p ; a)
に対して成り立つ. 従って, u が p において最大値または最小値 µ をとれば, B(p ; a) ⊂ D を満たす任意の a に
対し, u(x) = µ がすべての x ∈ B(p ; a) に対して成り立つ. そこで, A = x ∈ D |u(x) = µ とおけば, 任意の
p ∈ A は A の内点になるため, A は開集合である. 一方 u の連続性から u は D の閉部分集合でもあるため, D
の連結性から A = D である. 故に u は D において一定の値 µ をとるため, 定数値関数である.
(2) 仮定から D は R3 の有界閉集合だから, u は D において最大値と最小値をとるが, (1)の結果から u が定
数値関数でなければ D において u は最大値と最小値をとらないため, D における u の最大値と最小値は D の境
界 ∂D 上の点でとる. u が定数値関数ならば, 主張は明らかである.
52
15 まとめ
[線積分]C を写像 ω : [a, b] → Rn (n = 2, 3)でパラメータ表示される曲線とする.
・ C を含む Rn の部分集合で定義された関数 f に対して, f の C 上の線積分∫C
f ds は次のように定義される.
∫C
f ds =
∫ b
a
f(ω(t))∥ω′(t)∥dt
・ C を含む Rn の部分集合で定義されたベクトル場 X に対して, X の C 上の線積分∫C
X は次のように定義
される. ∫C
X =
∫ b
a
(X(ω(t)),ω′(t)) dt
[保存力場]Rn の部分集合 D のベクトル場 X に対して, D の C1級スカラー場 φ で X = gradφ を満たすもの
が存在するとき, X を保存力場といい, X = gradφ を満たす D のスカラー場 φ を X のポテンシャルという.
・X が保存力場で, φ が X のポテンシャルならば, p から q に向かう任意の区分的 C1級曲線 C に対して次の
等式が成り立つ. ∫C
X = φ(q)− φ(p)
・X が保存力場ならば rotX = 0 であり, 逆に D の任意の閉曲線を連続的に変形して一点に縮めることができ
るとき, rotX = 0 を満たす D のベクトル場X は保存力場である.
[ベクトルポテンシャル]Rn の部分集合 D のベクトル場 X に対して, D の C1 級ベクトル場 Y で X = rotY
を満たすものが存在するとき, Y を X のベクトルポテンシャルという. X がベクトルポテンシャルをもてば,
divX = 0 である. 逆に D が星形で, divX = 0 ならば X はベクトルポテンシャルをもつ.
[グリーンの定理]R2 の開集合 D の C1級ベクトル場 X に対し, X の第 1成分, 第 2成分の関数をそれぞれ f ,
g とするとき, D のスカラー場 rotX を (rotX)(x) =∂g
∂x(x) − ∂f
∂y(x) で定義する. R2 の有界な閉部分集合 D
が区分的に C1 級の境界をもつときD の C1 級ベクトル場 X に対し, 次の等式が成り立つ.∫∫D
rotX dxdy =
∫∂D
X
p : D → R3 を曲面 M のパラメータ表示とし, p の x成分, y成分, z 成分の関数をそれぞれ f , g, h とすると
き,∂f
∂u,∂g
∂u,∂h
∂uをそれぞれ x成分, y成分, z成分の関数とする写像を pu : D → R3 で表し,
∂f
∂v,∂g
∂v,∂h
∂vをそれ
ぞれ x成分, y成分, z成分の関数とする写像を pu : D → R3 で表す.
[面積分]M を写像 p : D → R3 (D は R2 の面積確定集合)でパラメータ表示される C1 級曲面とする.
・ M を含む R3 の部分集合で定義された関数 f に対して, f の M 上の面積分∫∫
M
f dA は次で定義される.∫∫M
f ds =
∫∫D
f(p( uv ))∥pu( uv )× pv(uv )∥ dudv
・ M の単位法線ベクトル場 n によって向きが与えられているとき, M を含む R3 の部分集合で定義されたベ
クトル場 X に対して, X の M 上の面積分∫∫
M
X dA は次のように定義される.
∫∫M
X dA =
∫∫
D
(X(p( uv )) ,pu(uv )× pv(
uv )) dudv n(p(u)) =
pu(u)× pv(u)
∥pu(u)× pv(u)∥∫∫D
(X(p( uv )) ,−pu(uv )× pv(
uv )) dudv n(p(u)) = − pu(u)× pv(u)
∥pu(u)× pv(u)∥
53
[ストークスの定理]M を R3 の有界閉集合である向き付けられた境界付き C2級曲面とし, n を M の向きとす
る. X を M の C1 級ベクトル場とするとき, 次の等式が成り立つ.∫∫M
rotX dA =
∫∂M
X
[ガウスの定理]D を C1級の曲面を境界とする R3 の有界閉集合とし, D の境界 ∂D には外向きの法線ベクトル
場によって向きを与える. D の C1 級ベクトル場 X に対して, 次の等式が成り立つ.∫∫∫D
divX dxdydz =
∫∫∂D
X dA
[重心]R3 の曲線, 曲面, 体積確定集合の重心を以下のように定義する.
・ C を R3 の C1 級曲線, ρ : C → [0,∞) を連続関数とする. 実数 m(C), gi(C) (i = 1, 2, 3) を次で定める.
m(C) =
∫C
ρ ds, g1(C) =
∫C
xρ ds, g2(C) =
∫C
yρ ds, g3(C) =
∫C
zρ ds
m(C) を C の質量といい,gi(C)
m(C)を第 i成分とする R3 の点を, ρ を密度関数とする C の重心という.
・ S を R3 の C1 級曲面, ρ : S → [0,∞) を連続関数とする. 実数 m(S), gi(S) (i = 1, 2, 3) を次で定める.
m(S) =
∫∫S
ρ dA, g1(S) =
∫∫S
xρ dA, g2(S) =
∫∫S
yρ dA, g3(S) =
∫∫S
zρ dA
m(S) を S の質量といい,gi(S)
m(S)を第 i成分とする R3 の点を, ρ を密度関数とする S の重心という.
・ D を R3 の体積確定集合, ρ : D → [0,∞) を連続関数とする. 実数 m(D), gi(D) (i = 1, 2, 3) を次で定める.
m(D)=
∫∫∫D
ρ dxdydz, g1(D)=
∫∫∫D
xρ dxdydz, g2(D)=
∫∫∫D
yρ dxdydz, g3(D)=
∫∫∫D
zρ dxdydz
m(D) を D の質量といい,gi(D)
m(D)を第 i成分とする R3 の点を, ρ を密度関数とする D の重心という.
16 ベクトル解析自習用演習問題
1. 次のベクトル場 X のうちで保存力場であるものを答え, 保存力場であるものに対しては, そのポテンシャルを
求めよ.
(1) X
(x
y
)=
(3x2y + 2xy
x3 + x2 + 2y
)(2) X
(x
y
)=
(xy cosxy + sinxy
x2 cosxy + y2
)(3) X
xyz
=
2xyz3 + z
x2z3
3x2yz2 + x
(4) X
xyz
=
y + z
x+ z
x+ y
(5) X
xyz
=
x+ y
y + z
x+ z
(6) X
xyz
=
0
x2
3xz
(7) X
xyz
=
x− y
−xz
(8) X
xyz
=
x+ y
z
y
(9) X
xyz
=
2xy2 + z
2x2y − z
x− y
(10) X
xyz
=
x2−yzx2zy2−xzxy2
z2−xyyz2
(11) X
xyz
=
1− 1y + y
zxz + x
y2
−xyz2
(12) X
xyz
=
2xyz + y2z + yz2
2xyz + x2z + xz2
2xyz + x2y + xy2
54
2. 次の線積分を計算せよ. ただし (5)では a > b > 0 とし, C の点が x軸の正の方向に向かって右ねじの向きに x
軸のまわりを回るように C の向きが付いているとする.
(1) C は半円( xy ) ∈ R2
∣∣ x2 + y2 ≦ a2, x ≧ 0の境界を反時計回りに回る曲線,
∫C
y2 ds
(2) C は半円( xy ) ∈ R2
∣∣ x2 + y2 ≦ a2, x ≧ 0の境界を反時計回りに回る曲線, X( xy ) = (−yx ),
∫C
X
(3) C は ω(t) =( t
1−tt2
)で定義される写像 ω : [0, 1] → R3 でパラメータ表示される曲線,
∫C
(xy + yz + xz) ds
(4) C は ω(t) =(
cos tsin tt2
)で定義される写像 ω : [0, 2π] → R3 でパラメータ表示される曲線, X
(xyz
)=(xyz
),
∫C
X
(5) C =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ x2 + y2 = a2, y2 + z2 = b2, x > 0, X
(xyz
)=(yzx
),
∫C
X
3. 次の面積分を計算せよ. (5), (6), (7), (9)の S の単位法線ベクトル場 n は, 各 x ∈ S に対し, (n(x),x) ≧ 0 を
満たすものとし, (8)の S の単位法線ベクトル場 n は, 各 x ∈ S に対し, n(x) の z 成分が正であるものとする.
(10)の S の単位法線ベクトル場は S の外向きの単位法線ベクトルで与えられるものとし, a > b とする.
(1) D =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ √x2 + y2 ≦ z ≦ 1,
∫∫∂D
(x2 + y2) dA
(2) S =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ z =√x2 + y2, x2 + y2 ≦ 2ax,
∫∫S
(xy + yz + xz) dA
(3) D =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ x ≧ 0, y ≧ 0, z ≧ 0, x+ y + z ≦ 1,
∫∫∂D
1
(1 + x+ y)2dA
(4) S =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ z = x2 + y2, z ≦ 1,
∫∫S
|xyz| dA
(5) S =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ x2 + y2 + z2 = a2, z ≧ 0, X
(xyz
)=(x+1yz
),
∫∫S
X dA
(6) S =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ x2 + y2 + z2 = a2, z ≧ 0, X
(xyz
)=
(y2
z2
x2
),
∫∫S
X dA
(7) S =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ x2 + y2 + 3z2 = 1, z ≦ 0, X
(xyz
)=
(y−xx3y2z
),
∫∫S
rotX dA
(8) S =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ 2x+ y + z = 1, x2 + y2 ≦ 1, X
(xyz
)=(x2
x3
z
),
∫∫S
rotX dA
(9) S =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ z = x2 − y2, x2 + y2 ≦ a2, X
(xyz
)=( zxy
),
∫∫S
rotX dA
(10) S =
(xyz
)∈ R3
∣∣∣∣ (√x2 + y2 − a)2
+ z2 = b2, X
(xyz
)=(pxqyrz
),
∫∫S
X dA
4. M を中心が原点で半径が a の球面 x2 + y2 + z2 = a2 の x座標, y座標, z 座標がすべて 0以上の部分とする.
M のベクトル場 X を X(xyz
)=
(y2+kz2
z2+kx2
x2+ky2
)で定めるとき, ストークスの定理を用いて線積分
∫∂M
X を求めよ.
ただし, M には原点と反対方向の単位法線ベクトル場を与える.
5. S を中心が原点で半径が R の球面として, S には外向きの単位法線ベクトル場により向きをつける. このとき,
次のベクトル場 X に対して S 上の面積分∫∫
S
X dA を求めよ.
(1) X(xyz
)=(axbycz
)(2) X
(xyz
)=( yzzxxy
)(3) X
(xyz
)=
1
(x2 + y2 + z2)α
(xyz
)6. 以下で与えられる曲線・曲面の重心の座標を求めよ. なお, 線密度や面密度はすべて均一であるとする.
(1) ω(t) =(a(t−sin t)a(1−cos t)
)によって定義される写像 ω : [0, 2π] → R2 でパラメータ表示される曲線.
(2) 中心が原点で半径が a である球面の h ≦ z ≦ a の部分.
(3) p( rθ ) =(r cos θr sin θcθ
)によって定義される写像 p : [0, a]× [0, π] → R3 でパラメータ表示される曲面.
(4) D =( xy ) ∈ R2
∣∣ x ≧ 0, y ≧ 0, x+ y ≦ 1, f( xy ) =
2
3
(x
32 + y
32
)で定義される関数 f : D → R のグラフ.
7. a < b, c < d, h > 0 とする. 長方形 S =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ a ≦ x ≦ b, c ≦ y ≦ d, z = hを原点から見た立体角を
求めよ.
55
ベクトル解析自習用演習問題の解答例
1. (1) rotX = 0, φ
(x
y
)= x3y + x2y + 2y (2) rotX = 0, φ
(x
y
)= x sinxy +
1
3y3
(3) rotX =
0
0
0
, φ
xyz
= x2yz3 + xz (4) rotX =
0
0
0
, φ
xyz
= xy + yz + xz
(5) rotX =
−1
−1
−1
=
0
0
0
保存力場ではない. (6) rotX =
0
−3z
2x
=
0
0
0
保存力場ではない.
(7) rotX =
0
0
0
, φ
xyz
=x2
2− xy +
z2
2(8) rotX =
0
0
−1
=
0
0
0
保存力場ではない.
(9) rotX =
0
0
0
, φ
xyz
= x2y2 + xz − yz (10) rotX =
0
0
0
, φ
xyz
=x
z+y
x+z
y
(11) rotX =
0
0
0
, φ
xyz
= x− x
y+xy
z(12) rotX =
0
0
0
, φ
xyz
= xyz(x+ y + z)
2. (1) C は ω(t) =
( a cos ta sin t ) −π
2 ≦ t ≦ π2(
0a(π
2 +1−t)
)π2 ≦ t ≦ π
2 + 2によって定義される写像 ω :
[−π
2 ,π2 + 2
]→ R2 によってパ
ラメータ表示される. ω′(t) =
(−a sin ta cos t
)−π
2 ≦ t ≦ π2(
0−a)
π2 ≦ t ≦ π
2 + 2だから ∥ω′(t)∥ = a である.
∫C
y2 ds =
∫ π2
−π2
a3 sin2 t dt+
∫ π2 +2
π2
a3(t−π−1)2 dt =
[a3
4(2t− sin 2t)
]π2
−π2
+
[a3
3(t− π − 1)3
]π2 +2
π2
=a3(π
2+
2
3
)
(2) D を与えられた半円とすれば, D の面積は1
2πa2 だからグリーンの定理によって
∫C
X =
∫∫D
2dxdy = πa2.
(3) ω′(t) =(
1−12t
)だから ∥ω′(t)∥ =
√4t2 + 2 である. 従って
∫C
(xy + yz + xz) ds =
∫ 1
0
t√4t2 + 2 dt =
[1
12(4t2 + 2)
32
]10
=
√6
2−
√2
6.
(4) ω′(t) =(− sin t
cos t2t
)だから
∫C
X =
∫ π
0
2t3 dt =
[1
2t4]π0
=π4
2.
(5) D =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ x2 + y2 = a2, y2 + z2 ≦ b2, x > 0とおけば D は p ( rθ ) =
(√a2−r2 cos2 θr cos θr sin θ
)で定義さ
れる写像 p : [0, b] × [0, 2π] → R3 によってパラメータ表示され, C = ∂D である. このとき, rotX =(−1
−1−1
),
pr(rθ ) =
(− r cos2 θ√
a2−r2 cos2 θ
cos θsin θ
), pθ (
rθ ) =
(r2 cos θ sin θ√a2−r2 cos2 θ
−r sin θr cos θ
), pr(
rθ ) × pθ (
rθ ) =
( rr2 cos θ√
a2−r2+r2 sin2 θ
0
)だから, ストークス
の定理から∫C
X =
∫∫D
rotX dA =
∫ b
0
(∫ 2π
0
(−r − r2 cos θ√
a2 − r2 + r2 sin2 θ
)dθ
)dr =
∫ b
0
(−2πr) dr = −πb2.
3. (1) S =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ z =√x2 + y2, z ≦ 1, T =
(xyz
)∈ R3
∣∣∣ x2 + y2 ≦ 1, z = 1とおく.
p ( rθ ) =(r cos θr sin θr
)で定義される写像 p : [0, 1]×[0, 2π] → R3 によって S はパラメータ表示される. pr(
rθ ) =
(cos θsin θ1
),
56
pθ(rθ ) =
(−r sin θr cos θ
0
), pr(
rθ )× pθ(
rθ ) =
(−r cos θ−r sin θ
r
), ∥pr( rθ )× pθ(
rθ )∥ =
√2r だから∫∫
S
(x2 + y2) dA =
∫ 1
0
(∫ 2π
0
√2r3 dθ
)dr =
∫ 1
0
2√2πr3 dr =
π√2
である. E =( xy ) ∈ R2
∣∣ x2 + y2 ≦ 1とおく. q ( xy ) =
( xy1
)で定義される写像 q : E → R3 によって S は
パラメータ表示される. qx (xy ) =
(100
), qy (
xy ) =
(010
), qx (
xy ) × qy (
xy ) =
(001
), ∥qr(
xy )× qθ(
xy )∥ = 1 だから∫∫
T
(x2 + y2) dA =
∫∫E
(x2 + y2) dxdy
∫ 1
0
(∫ 2π
0
r3 dθ
)dr =
∫ 1
0
2πr3 dr =π
2である. ∂D = S ∪T であり, S ∩T
の面積は 0 だから∫∫
∂D
(x2 + y2) dA =
∫∫S
(x2 + y2) dA+
∫∫T
(x2 + y2) dA =π√2+π
2.
(2) D =( rθ ) ∈ R2
∣∣ − π2 ≦ θ ≦ π
2 , 0 ≦ r ≦ 2a cos θとおく. p ( rθ ) =
(r cos θr sin θr
)で定義される写像 p : D → R3
によって S はパラメータ表示される. pr(rθ ) =
(cos θsin θ1
), pθ(
rθ ) =
(−r sin θr cos θ
0
), pr(
rθ ) × pθ(
rθ ) =
(−r cos θ−r sin θ
r
),
∥pr( rθ )× pθ(rθ )∥ =
√2r だから∫∫
S
(xy + yz + xz) dA =
∫∫D
√2r3(cos θ sin θ + cos θ + sin θ) drdθ
=
∫ π2
−π2
(∫ 2a cos θ
0
√2r3(cos θ sin θ + cos θ + sin θ) dr
)dθ
=
∫ π2
−π2
4√2a4(cos5 θ sin θ + cos5 θ + cos4 θ sin θ) dθ =
∫ π2
0
8√2a4 cos5 θ dθ =
64√2a4
15
(3) S =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ x ≧ 0, y ≧ 0, z ≧ 0, x+ y + z = 1, T =
(xyz
)∈ R3
∣∣∣ x = 0, y ≧ 0, z ≧ 0, y + z ≦ 1,
U =(
xyz
)∈ R3
∣∣∣ x ≧ 0, y = 0, z ≧ 0, x+ z ≦ 1, V =
(xyz
)∈ R3
∣∣∣ x ≧ 0, y ≧ 0, z = 0, x+ y ≦ 1とおき,
さらに D =( uv ) ∈ R3
∣∣ u ≧ 0, v ≧ 0, u+ v ≦ 1とおく. p ( uv ) =
(uv
1−u−v
)で定義される写像 p : D → R3 で
S はパラメータ表示される. pu(uv ) =
(10−1
), pv(
uv ) =
(01−1
), pu(
uv )× pv(
uv ) =
(111
), ∥pr( uv )× pθ(
uv )∥ =
√3 だ
から∫∫S
1
(1 + x+ y)2dA =
∫∫D
√3
(1 + u+ v)2dudv =
∫ 1
0
(∫ 1−u
0
√3
(1 + u+ v)2dv
)du =
∫ 1
0
[−
√3
1 + u+ v
]v=1−u
v=0
du
=
∫ 1
0
( √3
1 + u−
√3
2
)du =
√3 log 2−
√3
2
p ( uv ) =(
0uv
)で定義される写像 p : D → R3 で T はパラメータ表示される. pu(
uv ) =
(010
), pv(
uv ) =
(001
),
pu(uv )× pv(
uv ) =
(100
), ∥pr( uv )× pθ(
uv )∥ = 1 だから∫∫
T
1
(1 + x+ y)2dA =
∫∫D
1
(1 + v)2dudv =
∫ 1
0
(∫ 1−u
0
1
(1 + v)2dv
)du =
∫ 1
0
[− 1
1 + v
]v=1−u
v=0
du
=
∫ 1
0
(− 1
2− u+ 1
)du = 1− log 2
p ( uv ) =(u0v
)で定義される写像 p : D → R3 で U はパラメータ表示される. pu(
uv ) =
(100
), pv(
uv ) =
(001
),
pu(uv )× pv(
uv ) =
(0−10
), ∥pr( uv )× pθ(
uv )∥ = 1 だから∫∫
U
1
(1 + x+ y)2dA =
∫∫D
1
(1 + u)2dudv =
∫ 1
0
(∫ 1−v
0
1
(1 + u)2du
)dv =
∫ 1
0
[− 1
1 + u
]u=1−v
u=0
dv
=
∫ 1
0
(− 1
2− v+ 1
)dv = 1− log 2
57
p ( uv ) =(uv0
)で定義される写像 p : D → R3 で V はパラメータ表示される. pu(
uv ) =
(100
), pv(
uv ) =
(010
),
pu(uv )× pv(
uv ) =
(100
), ∥pr( uv )× pθ(
uv )∥ = 1 だから∫∫
V
1
(1 + x+ y)2dA =
∫∫D
1
(1 + u+ v)2dudv =
∫ 1
0
(∫ 1−u
0
1
(1 + u+ v)2dv
)du =
∫ 1
0
[− 1
1 + u+ v
]v=1−u
v=0
du
=
∫ 1
0
(1
1 + u− 1
2
)du = log 2− 1
2
∂D = S ∪ T ∪ U ∪ V であり, S, T , U , V のどの 2つの共通部分の面積は 0だから∫∫∂D
1
(1 + x+ y)2dA =
∫∫S
1
(1 + x+ y)2dA+
∫∫T
1
(1 + x+ y)2dA+
∫∫U
1
(1 + x+ y)2dA
+
∫∫V
1
(1 + x+ y)2dA =
(√3− 1
)(log 2 +
√3
2
)
(4) p ( rθ ) =(r cos θr sin θr2
)で定義される写像 p : [0, 1]× [0, 2π] → R3 で S はパラメータ表示される. pr(
rθ ) =
(cos θsin θ2r
),
pθ(rθ ) =
(−r sin θr cos θ
0
), pr(
rθ )× pθ(
rθ ) =
(−2r2 cos θ−2r2 sin θ
r
), ∥pr( rθ )× pθ(
rθ )∥ = r
√4r2 + 1 である. t =
√4r2 + 1 と変数
変換を行えば, r2 =t2 − 1
4, 2r dr =
t
2dt だから∫∫
S
|xyz| dA =
∫ 1
0
(∫ 2π
0
r5| cos θ sin θ|√
4r2 + 1 dθ
)dr =
∫ 1
0
(∫ π2
0
2r5 sin 2θ√4r2 + 1 dθ
)dr
=
∫ 1
0
2r5√4r2 + 1 dr =
∫ √5
1
t2(t2 − 1)2
32dt =
[t7
224− t5
80+t3
96
]√5
1
=25
√5
84− 1
420
(5) p(θφ
)=
(a sin θ cosφa sin θ sinφa cos θ
)によって定義される写像 p :
[0, π2
]× [0, 2π] → R3 で S はパラメータ表示される.
このとき pθ(θφ
)=
(a cos θ cosφa cos θ sinφ−a sin θ
), pφ
(θφ
)=(−a sin θ sinφa sin θ cosφ
0
), pθ
(θφ
)× pφ
(θφ
)=
(a2 sin2 θ cosφ
a2 sin2 θ sinφ
a2 cos θ sin θ
)= a sin θ p
(θφ
)で
ある. 従って(X(p(θφ
)),pθ(θφ
)× pφ
(θφ
))=(p(θφ
)+ e1, a sin θ p
(θφ
))= a2 sin θ(a+ sin θ cosφ) だから∫∫
S
X dA =
∫ π2
0
(∫ 2π
0
(X(p(θφ
)),pθ(θφ
)× pφ
(θφ
))dφ
)dθ =
∫ π2
0
(∫ 2π
0
a2 sin θ(a+ sin θ cosφ) dφ
)dθ
=
∫ π2
0
2πa3 sin θ dθ = 2πa3
(6) p(θφ
)=
(a sin θ cosφa sin θ sinφa cos θ
)によって定義される写像 p :
[0, π2
]× [0, 2π] → R3 で S はパラメータ表示される. こ
のとき pθ(θφ
)=
(a cos θ cosφa cos θ sinφ−a sin θ
), pφ
(θφ
)=(−a sin θ sinφa sin θ cosφ
0
), pθ
(θφ
)× pφ
(θφ
)=
(a2 sin2 θ cosφ
a2 sin2 θ sinφ
a2 cos θ sin θ
)= a sin θ p
(θφ
)であ
る. 従って(X(p(θφ
)),pθ(θφ
)× pφ
(θφ
))= a4 sin2 θ(sin2 θ sin2 φ cosφ+ cos2 θ sinφ+ cos θ sin θ cos2 φ) だから∫∫
S
X dA =
∫ π2
0
(∫ 2π
0
(X(p(θφ
)),pθ(θφ
)× pφ
(θφ
))dφ
)dθ
=
∫ π2
0
(∫ 2π
0
a4 sin2 θ(sin2 θ sin2 φ cosφ+ cos2 θ sinφ+ cos θ sin θ cos2 φ) dφ
)dθ
=
∫ π2
0
πa4 sin3 θ cos θ dθ =π
4a4
(7) p(θφ
)=
(sin θ cosφsin θ sinφ
1√3cos θ
)によって定義される写像 p :
[π2 , π
]× [0, 2π] → R3 で S はパラメータ表示される. こ
のとき pθ(θφ
)=
(cos θ cosφcos θ sinφ
− 1√3sin θ
), pφ
(θφ
)=(− sin θ sinφ
sin θ cosφ0
), pθ
(θφ
)× pφ
(θφ
)=
(1√3sin2 θ cosφ
1√3sin2 θ sinφ
cos θ sin θ
)である. 従って
58
(pθ(θφ
)× pφ
(θφ
),p(θφ
))=
sin θ√3
≧ 0 である. S の境界 ∂S は ω(t) = p( π
2t
)=(
cos tsin t0
)によって定義される
写像 ω : [0, 2π] → R3 でパラメータ表示される. 従ってストークスの定理から∫∫S
rotX dA =
∫∂S
X =
∫ 2π
0
(X(ω(t)),ω′(t)) dt =
∫ 2π
0
(−1) dt = −2π.
(8) p ( rθ ) =(
r cos θr sin θ
1−2r cos θ−r sin θ
)で定義される写像 p : [0, 1]× [0, 2π] → R3 によって S はパラメータ表示される.
pr(rθ ) =
(cos θsin θ
−2 cos θ−sin θ
), pθ(
rθ ) =
( −r sin θr cos θ
2r sin θ−r cos θ
), pr(
rθ )× pθ(
rθ ) =
(2rrr
)である. 従って
1√6
(211
)は S に関し
て原点と反対方向である S の単位法線ベクトルである. S の境界 ∂S は ω(t) = p ( 1t ) =(
cos tsin t
1−2 cos t−sin t
)によっ
て定義される写像 ω : [0, 2π] → R3 でパラメータ表示される. 故にストークスの定理から∫∫S
rotX dA =
∫∂S
X =
∫ 2π
0
(X(ω(t)),ω′(t)) dt
=
∫ 2π
0
(cos4 t− cos2 t sin t+ 2 cos 2t− 3 cos t sin t− cos t+ 2 sin t) dt =
∫ 2π
0
(1 + cos 2t
2
)2
dt
=
∫ 2π
0
1
4
(1 + 2 cos 2t+
1 + cos 4t
2
)dt =
3π
4
(9) p ( rθ ) =(
r cos θr sin θr2 cos 2θ
)で定義される写像 p : [0, a] × [0, 2π] → R3 によって S はパラメータ表示される.
pr(rθ ) =
(cos θsin θ
2r cos 2θ
), pθ(
rθ ) =
(−r sin θr cos θ
−2r2 sin 2θ
), pr(
rθ )× pθ(
rθ ) =
(−2r2 cos θ2r2 sin θ
r
)である. 従って pr(
rθ )× pθ(
rθ ) は S
に関して原点と反対方向である S の法線ベクトルである. S の境界 ∂S は ω(t) = p ( at ) =(
a cos ta sin ta2 cos 2t
)によって定
義される写像 ω : [0, 2π] → R3 でパラメータ表示される. 故にストークスの定理から∫∫S
rotX dA =
∫∂S
X =
∫ 2π
0
(X(ω(t)),ω′(t)) dt =
∫ 2π
0
(a3 sin3 t− a3 cos2 t sin t+ a2 cos2 t− 4a3 sin2 t cos t) dt
= πa2
(10) E =( uv ) ∈ R2
∣∣ 0 ≦ ρ ≦ b, 0 ≦ u ≦ 2π, 0 ≦ v ≦ 2πとおいて, ψ
(ρuv
)=
((ρ cosu+a) cos v(ρ cosu+a) sin v
ρ sinu
)で定義される
写像 ψ : E → D によって変数変換を行う. ψ′(ρuv
)=
(cosu cos v −ρ sinu cos v −(ρ cosu+a) sin vcosu sin v −ρ sinu sin v (ρ cosu+a) cos v
sinu ρ cosu 0
)だから ψ のヤコビ
行列式は∣∣∣∣∣∣∣cosu cos v −ρ sinu cos v −(ρ cosu+ a) sin v
cosu sin v −ρ sinu sin v (ρ cosu+ a) cos v
sinu ρ cosu 0
∣∣∣∣∣∣∣ = ρ(ρ cosu+ a)
∣∣∣∣∣∣∣cosu cos v − sinu cos v − sin v
cosu sin v − sinu sin v cos v
sinu cosu 0
∣∣∣∣∣∣∣= −ρ(ρ cosu+ a)
ガウスの定理より∫∫∂D
X dA =
∫∫∫D
divX dxdydz =
∫ b
0
(∫ 2π
0
(∫ 2π
0
ρ(p+ q + r)(ρ cosu+ a) du
)dv
)dρ
=
∫ b
0
(∫ 2π
0
2πaρ(p+ q + r) dv
)dρ =
∫ b
0
4π2aρ(p+ q + r) dρ = 2π2ab2(p+ q + r)
4. x ∈ M における原点と反対方向の単位法線ベクトル n(x) は1
ax である. M は p
(θφ
)=
(a sin θ cosφa sin θ sinφa cos θ
)で定
義される写像 p :[0, π2
]×[0, π2
]→ R3 によってパラメータ表示される. x =
(xyz
)∈ M に対して (rotX)(x) =
59
(2ky−2z2kz−2x2kx−2y
)だから ((rotX)(x),n(x)) =
2(k − 1)
a(xy+ yz+ xz) である. また
∥∥pθ( θφ )× pφ(θφ
)∥∥ = a2 sin θ だか
ら, ストークスの定理より∫∂M
X =
∫∫M
rotX dA =
∫∫M
2(k − 1)
a(xy + yz + xz) dA
=
∫∫[0,π2 ]×[0,
π2 ]
2a3(k − 1)(sin2 θ cosφ sinφ+ sin θ cos θ sinφ+ sin θ cos θ cosφ) sin θ dθdφ
=
∫ π2
0
(∫ π2
0
a3(k − 1)(sin3 θ sin 2φ+ 2 sin2 θ cos θ sinφ+ 2 sin2 θ cos θ cosφ) dφ
)dθ
=
∫ π2
0
a3(k − 1)((1− cos2 θ) sin θ + 4 sin2 θ cos θ) dθ
= a3(k − 1)
(∫ 1
0
(1− t2) dt+
∫ 1
0
4t2 dt
)= 2a3(k − 1)
5. D を中心が原点で半径が R の球体 x2 + y2 + z2 ≦ R2 とすれば, S は D の境界 ∂D である.
(1) ガウスの定理より∫∫S
X dA =
∫∫∫∂D
X dA =
∫∫D
divX dxdydz =
∫ R
0
(∫ π
0
(∫ 2π
0
r2(a+ b+ c) sin θ dφ
)dθ
)dr
=
∫ R
0
(∫ π
0
2πr2(a+ b+ c) sin θ dθ
)dr =
∫ R
0
4πr2(a+ b+ c) dr =4
3πR3(a+ b+ c)
(2) divX = 0 だからガウスの定理より∫∫
S
X dA =
∫∫∫∂D
X dA =
∫∫D
divX dxdydz = 0.
(3) p(θφ
)=
(R sin θ cosφR sin θ sinφR cos θ
)によって定義される写像 p : [0, π]× [0, 2π] → R3 で S はパラメータ表示される. こ
のとき pθ(θφ
)=
(R cos θ cosφR cos θ sinφ−R sin θ
), pφ
(θφ
)=(−R sin θ sinφR sin θ cosφ
0
), pθ
(θφ
)× pφ
(θφ
)=
(R2 sin2 θ cosφ
R2 sin2 θ sinφ
R2 cos θ sin θ
)= R sin θ p
(θφ
)で
ある. 従って(X(p(θφ
)),pθ(θφ
)× pφ
(θφ
))=(R−2αp
(θφ
), R sin θ p
(θφ
))= R3−2α sin θ だから∫∫
S
X dA =
∫∫[0,π]×[0,2π]
(X(p(θφ
)),pθ(θφ
)× pφ
(θφ
))dθdφ =
∫ π
0
(∫ 2π
0
R3−2α sin θ dφ
)dθ
=
∫ π
0
2πR3−2α sin θ dθ = 4πR3−2α
6. (1) ω′(t) =(a(1−cos t)a sin t
)より曲線の長さは∫ 2π
0
∥ω′(t)∥dt =∫ 2π
0
a√2(1− cos t) dt =
∫ 2π
0
2a sint
2dt =
[−4a cos
t
2
]2π0
= 8a
である. 従って与えられた曲線の重心の x座標は
1
8a
∫ 2π
0
a(1− cos t)∥ω′(t)∥dt = 1
8a
∫ 2π
0
√2a2(1− cos t)
32 dt =
a
2
∫ 2π
0
sin3t
2dt =
a
2
∫ 2π
0
(1− cos2
t
2
)sin
t
2dt
= a
∫ 1
−1
(1− u2) du =4a
3
である. 対称性から与えられた曲線の重心の y座標は πa である.
(2) 与えられた曲面を S として, α = cos−1 h
aとおき, p : [0, α]× [0, 2π] → R3 を p
(θφ
)=
(a sin θ cosφa sin θ sinφa cos θ
)によっ
て定めれば p は S のパラメータ表示であり, pθ(θφ
)=
(a cos θ cosφa cos θ sinφ−a sin θ
), pφ
(θφ
)=(−a sin θ sinφa sin θ cosφ
0
),
pθ(θφ
)× pφ
(θφ
)= a2 sin θ
(sin θ cosφsin θ sinφ
cos θ
),
∥∥pθ( θφ )× pφ(θφ
)∥∥ = a3 sin θ
60
だから, ∫∫S
dA =
∫ α
0
(∫ 2π
0
a2 sin θ dφ
)dθ =
∫ α
0
2πa2 sin θ dθ = 2πa2(1− cosα) = 2πa(a− h)∫∫S
z dA =
∫∫[0,α]×[0,2π]
a cos θ∥∥pθ( θφ )× pφ
(θφ
)∥∥ dθdφ =
∫ α
0
(∫ 2π
0
a3 cos θ sin θ dφ
)dθ
= πa3∫ α
0
sin 2θ dθ =πa3
2[− cos 2θ]α0 =
πa3
2(1− cos 2α) = πa(a2 − h2)
である. 故に S の重心の z座標はa+ h
2である. S の対称性から S の重心の x座標と y座標はともに 0 である.
(3) pr(rθ ) =
(cos θsin θ0
), pθ(
rθ ) =
(−r sin θr cos θc
), pr(
rθ )× pθ(
rθ ) =
(c sin θc cos θr
)だから,∫∫
S
dA =
∫ a
0
(∫ π
0
√r2 + c2 dθ
)dr =
∫ a
0
π√r2 + c2 dr =
π
2
(a√a2 + c2 + c2 log
(a+
√a2 + c2
)− c2 log c
)∫∫
S
x dA =
∫ a
0
(∫ π
0
r cos θ√r2 + c2 dθ
)dr = 0∫∫
S
y dA =
∫ a
0
(∫ π
0
r sin θ√r2 + c2 dθ
)dr =
∫ a
0
2r√r2 + c2 dr =
2
3
((a2 + c2)
32 − c3
)∫∫
S
z dA =
∫ a
0
(∫ π
0
c θ√r2 + c2 dθ
)dr =
∫ a
0
π2c
2
√r2 + c2 dr
=π2c
2
(a
2
√a2 + c2 +
c2
2log(a+
√a2 + c2
)− c2
2log c
)
である. 故に S の重心の座標は
0,4((a2 + c2)
32 − c3
)3π(a√a2 + c2 + c2 log
(a+
√a2 + c2
)− c2 log c
) , πc2
である.
(4) 与えられた曲面を S として, p : D → R3 を p( xy ) =
( xy
23
(x
32 +y
32
)) で定めれば p は S のパラメータ表示で
あり, px(xy ) =
( 10√x
), py(
xy ) =
( 01√y
), px(
xy )× py(
xy ) =
(−√x
−√y
1
),∥∥px( xy )× py(
xy )∥∥ =
√1 + x+ y だから,
∫∫S
dA =
∫ 1
0
(∫ 1−x
0
√1 + x+ y dy
)dx =
∫ 1
0
2
3
(2
32 − (1 + x)
32
)dx =
4
15
(√2 + 1
)∫∫
S
x dA =
∫ 1
0
(∫ 1−x
0
x√1 + x+ y dy
)dx =
∫ 1
0
2
3
(2
32x− x(1 + x)
32
)dx
=2√2
3−[4
15x(1 + x)
52
]10
+
∫ 1
0
4
15(1 + x)
52 dx =
2
105
(11
√2− 4
)∫∫
S
z dA =
∫∫D
2
3
(x
32 + y
32
)√1 + x+ y dxdy
=
∫ 1
0
(∫ 1−x
0
2
3x
32
√1 + x+ y dy
)dx+
∫ 1
0
(∫ 1−y
0
2
3y
32
√1 + x+ y dx
)dy
=4
3
∫ 1
0
(∫ 1−x
0
x32
√1 + x+ y dy
)dx =
8
9
∫ 1
0
(2
32x
32 − x
32 (1 + x)
32
)dx
=32√2
45−∫ 1
0
(x2 + x)32 dx =
(√2− 1
)(61√2− 15 log
(√2 + 1
))96
xと yの対称性から S の重心の x座標と y座標は等しいため, S の重心の座標は次のようになる.(26− 15
√2
14,26− 15
√2
14,
(√2− 1
)(61√2− 15 log
(√2 + 1
))96
)
61
7. q : [a, b]×[c, d] → S を q( xy ) =( xyh
)で定めれば q は S のパラメータ表示であり, qx (
xy ) =
(100
), qy (
xy ) =
(010
)だから qx (
xy )× qy (
xy ) =
(001
)は q( xy ) との内積が正である S の法線ベクトルである. 故に S を原点から見た立
体角 ω(S,0) は次のように求められる.
ω(S,0) =
∫∫S
(x,n(x))
∥x∥3dA =
∫∫[a,b]×[c,d]
(q( xy ) , qx(
xy )× qy(
xy ))
∥q( xy ) ∥3drdθ =
∫ b
a
(∫ d
c
h
(x2 + y2 + h2)32
dy
)dx
=
∫ b
a
[hy
(x2 + h2)√x2 + y2 + h2
]y=dy=c
dx =
∫ b
a
(ch
(x2 + h2)√x2 + c2 + h2
− dh
(x2 + h2)√x2 + d2 + h2
)dx
=
[1
chtan−1
(x2 + h2 + x
√x2 + c2 + h2
ch
)− 1
dhtan−1
(x2 + h2 + x
√x2 + d2 + h2
dh
)]ba
=1
chtan−1
(b2 + h2 + b
√b2 + c2 + h2
ch
)− 1
chtan−1
(a2 + h2 + a
√a2 + c2 + h2
ch
)
− 1
dhtan−1
(b2 + h2 + b
√b2 + d2 + h2
dh
)+
1
dhtan−1
(a2 + h2 + a
√a2 + d2 + h2
dh
)
62