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慈恵ICU勉強会 2017110急性・重症患者看護専門看護師 坂木 孝輔 意識のある人工呼吸管理を受けている重症患者との コミュニケーション:システマティックレビュー Critical Care201620:333

意識のある人工呼吸管理を受けている重症患者との コミュニケーション:システマティックレビュー · システマティックレビューにより、ICUで人工呼吸管理が行われた患

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Page 1: 意識のある人工呼吸管理を受けている重症患者との コミュニケーション:システマティックレビュー · システマティックレビューにより、ICUで人工呼吸管理が行われた患

慈恵ICU勉強会2017年1月10日

急性・重症患者看護専門看護師坂木 孝輔

意識のある人工呼吸管理を受けている重症患者とのコミュニケーション:システマティックレビュー

CriticalCare.2016;20:333

Page 2: 意識のある人工呼吸管理を受けている重症患者との コミュニケーション:システマティックレビュー · システマティックレビューにより、ICUで人工呼吸管理が行われた患

Background

• コミュニケーションはケアの質と安全を改善するために欠かせないが、ICUの患者は挿管のために発声やコミュニケーション能力を奪われる

• 発声の喪失と欲求不満やストレス、不安、抑うつのような重大な感情の反応には関係がある

Scand JCaringSci.2015;29:205–14.Qual HealthRes.2007;17:1165–77.

IntensiveCrit CareNurs.2013;29:88–95.IntensiveCrit CareNurs.2015;31:179–86.

Nurs Inq.2012;19:247–58.AmJCrit Care.2011;20:470–9.HeartLung.1998;27:245–52.HeartLung.2004;33:308–20.

Qual HealthRes.2012;22:157–73.

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目的:ICUにおいて人工呼吸器管理下にある患者の体験についての質的研究から解釈された知識を集めて統合すること方法:1994から2012年までの期間の9つの質的研究をメタ統合した。SandelowskiとBarossoの方法を用いて結果を抽出し継続比較分析を行った。結果:15個の概念が抽出された。家族の存在によりこれらの経験を軽減することができた。

ICUにおける人工呼吸器を装着した患者の体験:質的メタ統合Scand JCaring Sci.2015;29:205–14.

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目的:ICUにおいて人工呼吸器管理下にある患者の体験についての質的研究から解釈された知識を集めて統合すること方法:1994から2012年までの期間の9つの質的研究をメタ統合した。SandelowskiとBarossoの方法を用いて結果を抽出し継続比較分析を行った。結果:15個の概念が抽出された。家族の存在によりこれらの経験を軽減することができた。

ICUにおける人工呼吸器を装着した患者の体験:質的メタ統合Scand JCaring Sci.2015;29:205–14.

<本文より>

言葉も道具を使ってもコミュニケーションをとることができないことは最悪の体験の一つで、人間と見なされないことへの怒りとフラストレーションを感じた。

コミュニケーションへの試みはしばしば消耗につながるので断念された。

Ø コミュニケーションができない経験をしている

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目的:ICUにおいて人工呼吸器管理下にある患者の体験についての質的研究から解釈された知識を集めて統合すること方法:1994から2012年までの期間の9つの質的研究をメタ統合した。SandelowskiとBarossoの方法を用いて結果を抽出し継続比較分析を行った。結果:15個の概念が抽出された。家族の存在によりこれらの経験を軽減することができた。

ICUにおける人工呼吸器を装着した患者の体験:質的メタ統合Scand JCaring Sci.2015;29:205–14.(文献2)日本集中治療医学会雑誌 (2014.01)21巻.[NP-38-2]

慈恵ICUでは?

目的:12時間以上人工呼吸器管理を受けた患者の記憶を含めたICUストレス経験の実態と関連要因を明らかにすること方法:ICUStressfulExperiences質問紙を用いた構造化面接法

Ø 慈恵ICUでの調査においてもコミュニケーションができない経験がストレスの上位である

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“話せないことは恐ろしい”:人工呼吸器中のコミュニケーションについての記述的相関研究

目的:人工呼吸器中のコミュニケーションに関する患者の経験を記述すること方法:- 人工呼吸器中の患者の鎮静と記憶についての研究のデータの二次的分析- IntensiveCareExperience質問用紙を使用- アメリカの中西部の内科系ICUと外科系ICU

患者の声の一部抜粋

Page 7: 意識のある人工呼吸管理を受けている重症患者との コミュニケーション:システマティックレビュー · システマティックレビューにより、ICUで人工呼吸管理が行われた患

“話せないことは恐ろしい”:人工呼吸器中のコミュニケーションについての記述的相関研究

目的:人工呼吸器中のコミュニケーションに関する患者の経験を記述すること方法:- 人工呼吸器中の患者の鎮静と記憶についての研究のデータの二次的分析- IntensiveCareExperience質問用紙を使用- アメリカの中西部の内科系ICUと外科系ICU

「私はボードを持っていて指すことができた。しかし、簡単な単語でさえ、一部の人しか理解できない。イライラしたことの一つは、私が単語を指そうとすると、彼らはフライングして言うこと…。あぁ、違う単語…。そして、看護師も家族も…私が質問し始めたり、何か欲したりすることは何でも、あなたは知っていると、私がしようとすることを推測する」

「私は書き続けたが彼女(看護師)は質問に答えなかったので…。私が言う前に私が言おうとすることを予測しようとするのは妻のようだった。それで、彼女は私に書き終わらせようとしなかった。だから私は大きい字で書いた。聞いてくれと。」

患者の声の一部抜粋

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“話せないことは恐ろしい”:人工呼吸器中のコミュニケーションについての記述的相関研究

目的:人工呼吸器中のコミュニケーションに関する患者の経験を記述すること方法:- 人工呼吸器中の患者の鎮静と記憶についての研究のデータの二次的分析- IntensiveCareExperience質問用紙を使用- アメリカの中西部の内科系ICUと外科系ICU

「私はボードを持っていて指すことができた。しかし、簡単な単語でさえ、一部の人しか理解できない。イライラしたことの一つは、私が単語を指そうとすると、彼らはフライングして言うこと…。あぁ、違う単語…。そして、看護師も家族も…私が質問し始めたり、何か欲したりすることは何でも、あなたは知っていると、私がしようとすることを推測する」

「私は書き続けたが彼女(看護師)は質問に答えなかったので…。私が言う前に私が言おうとすることを予測しようとするのは妻のようだった。それで、彼女は私に書き終わらせようとしなかった。だから私は大きい字で書いた。聞いてくれと。」

Ø患者はコミュニケーションの失敗と情報の欠如に伴うフラストレーションを表現し、よりよいシステムを望んでいる

患者の声の一部抜粋

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ICUにおける看護師-患者間のコミュニケーションの相互作用

目的:ICUにおいて看護師と話すことができない重症患者についてのコミュニケーション方法と支援の相互作用を記述すること方法:記述的観察研究、アメリカの大学病院の32床のMICUと22床のCTICUにおいて、ランダムに選んだ10名の看護師と30名の患者における相互作用をビデオに録画し、コミュニケーションの頻度、成功、質、方法、技術を調査した

人工呼吸管理中の患者のコミュニケーション方法の使用頻度(n=1693)

Ø医療者は現在ICUにおいて患者にほとんどツールを使っていない

Nurse-PatientCommunicationInteractionsintheIntensiveCareUnitAm J Crit Care.2011March;20(2):e28–e40.doi:10.4037/ajcc2011433.

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標準化されたAACの選択アプローチであるコミュニケーションアルゴリズムを用いることによってコミュニケーションの改善は達成することができる

http://www.asha.org/public/speech/disorders/AAC/.Accessed1Jan2016.

目的システマティックレビューにより、ICUで人工呼吸管理が行われた患者とのコミュニケーションにおけるエビデンスを要約する

次にそれを基に、これらの患者とのコミュニケーションのアルゴリズムを開発する

AAC(Augmentativeandalternativecommunication)とは;口で話すこと以外のコミュニケーションのすべてのタイプのこと(表情や、身振り、記号や写真、書くことなどすべてを含む)

しかし、ICUにおける挿管された患者とのコミュニケーションに関するプロトコールやガイドラインは現在存在しない

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Methods

選択基準

ICUにおいて挿管または気切チューブで意識のあるすべての成人患者

除外基準

カフをしぼませることができる患者(目的が完全に人工呼吸器に依存している患者のため)

フルテキストのない会議録

研究の選択についてのどんな意見の相違でも、ミーティングを行い解決した

WebofSciencePsychInfoCinahl

CochraneEmbasePubMed

データベースを検索

2人の独立したreviewer

A:ICU、呼吸ケアユニットなど

B:人工呼吸、重症患者など

clinicaltrials.gov

C:非言語的コミュニケーション

D:瞬き、身振り、文字盤など

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MethodsØ研究の質はQATSDDを使用Ø多様な研究デザイン(質的、量的研究を含む)に適用することができ、スケールで明確に定義する。

ØQATSDDは16の基準から構成され、質的研究に適用する基準は14項目、量的件研究に適用する基準も14項目

Ø各項目0〜3点で評価される(合計0〜42点)

【データの抽出と質の評価】

QATSDD

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MethodsØ研究の質はQATSDDを使用Ø多様な研究デザイン(質的、量的研究を含む)に適用することができ、スケールで明確に定義する。

ØQATSDDは16の基準から構成され、質的研究に適用する基準は14項目、量的件研究に適用する基準も14項目

Ø各項目0〜3点で評価される(合計0〜42点)

【データの抽出と質の評価】

QATSDD明確な理論的枠組み

目的の提示

研究施設の明確な提示

サンプルサイズの根拠

サンプル抽出は適切性

データ収集の手続きの記述

データ収集ツール選択の理論的根拠

データの詳細

統計評価の信頼性と測定ツールの妥当性

研究疑問とデータ収集方法の一貫性

研究疑問とデータ収集ツールの一貫性

研究疑問と分析方法の一貫性

分析方法を選択した正当な理由

分析プロセスの信頼性の評価

デザインにおけるユーザーの関与

強みと限界の考察

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Methods【データの合成と分析】• システマティックレビューをするためにPRISMAのチェックリストを用いた

• 研究の方法論や介入、結果における異質性のため、メタアナリシスを行う量的データの蓄積はできなかった

• そこでPopayらの“GuidanceontheConductofNarrativeSynthesisinSystematicReviews”を参考にナラティブ統合を行った

• 次に患者特性によって特定のコミュニケーション方法の使用と関連があるか分析した

• 1992年にWilliamsが発表したコミュニケーション方法に基づいてアルゴリズムを開発した

• アルゴリズムの構成概念は集中治療医、クリティカルケア看護師、博士課程の学生により議論された

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Results

29の異なる研究(2文献は段階的に行われた研究)

<29件の研究デザインの内訳>準実験研究:4件ケースシリーズ:16件ケースレポート:4件予備的観察研究:4件後ろ向き研究:1件

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Results

29の異なる研究(2文献は段階的に行われた研究)

<29件の研究デザインの内訳>準実験研究:4件ケースシリーズ:16件ケースレポート:4件予備的観察研究:4件後ろ向き研究:1件

4つのタイプを特定- コミュニケーションボード- スピーチバルブ- 電気式人工喉頭(EL)- ハイテクAAC装置

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Results:Qualityassessment

スコアは9〜35点(中央値17点)/42点全体を通して、小さな研究が多く、サンプルサイズの計算をしている研究は2件のみだったすべての研究に重大な研究の限界があった

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Results:コミュニケーションボード

• コミュニケーションボードは基本的なニーズを表すアイコンと写真で構成される

• 3つの研究で用いられた(1つは後ろ向きコホート、あとの2つは準実験研究)

• すべての研究でコミュニケーションボードはコミュニケーションの効率と速度を増加させ、フラストレーションと早く伝えたいというニーズを減少させた

• コミュニケーションボードに情報量が多いという困難がある一方で、特定の欲求や要件はボードに欠如していた→最適なコミュニケーションボードを提示することは難しい

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目的:挿管された患者とICU内のスタッフ間のコミュニケーションに役立つコミュニケーションボードを開発すること方法:準実験的デザイントルコの心血管外科ICU開心術を受けた挿管患者90名を対照群と介入群に分け、研究者の開発したコミュニケーションボードを使用した

DeterminingtheeffectivenessofillustratedcommunicationmaterialforcommunicationwithintubatedpatientsatanintensivecareunitICUにおいて挿管された患者とのコミュニケーションのためのコミュニケーションボードの有効性

患者とのコミュニケーションに医療スタッフが使用した方法の妥当性

医療スタッフとのコミュニケーションに困難を有する患者の状態

適切

適切でない

困難

困難でない時々困難

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目的:挿管された患者とICU内のスタッフ間のコミュニケーションに役立つコミュニケーションボードを開発すること方法:準実験的デザイントルコの心血管外科ICU開心術を受けた挿管患者90名を対照群と介入群に分け、研究者の開発したコミュニケーションボードを使用した

DeterminingtheeffectivenessofillustratedcommunicationmaterialforcommunicationwithintubatedpatientsatanintensivecareunitICUにおいて挿管された患者とのコミュニケーションのためのコミュニケーションボードの有効性

患者とのコミュニケーションに医療スタッフが使用した方法の妥当性

医療スタッフとのコミュニケーションに困難を有する患者の状態

適切

適切でない

困難

困難でない時々困難

Øコミュニケーションボードは患者の満足度を高め、困難感を軽減する可能性がある

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コミュニケーションボードのいろいろ

IntJNursPract.2014;20:490-8. Appl Nurs Res.2006;19:182–90.

基本的なニーズを表すイラストやアルファベットで構成されている

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慈恵ICUのはこんな感じ…

コミュニケーションボードのいろいろ

IntJNursPract.2014;20:490-8. Appl Nurs Res.2006;19:182–90.

基本的なニーズを表すイラストやアルファベットで構成されている

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Results;カフ付きスピーキング気切チューブ

The Portex Trach-TalkCommuni-TrachⅠThePortex BLUSATracheostomyTube

Blom TracheostomyTube

カフ上に追加の内腔があって、空気を口頭に流入させることができる

2つの個別の弁構造が組み込まれていて、呼吸器によって送気される吸入空気はすべて肺に向けられ、呼気はカフ上の内腔を介して上気道に向かい発声を可能にする

現在、6つのタイプのカフ付きスピーキング気切チューブが利用可能(JMedSpeechLangPathol.2014;21:309–18.)

2種類の特別な気切のスピーチチューブは8つの研究において評価された

聞き取れる発声は大部分の患者(74〜100%)で達成されたが、より多くの研究が安全かつ有効に使用されるためには必要である

1984〜1990年の研究が4つ2014年の研究が1つ

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新しいカフ付き気管切開チューブを用いた機械換気中の喉頭発声の第一報

PreliminaryReportofLaryngealPhonationDuringMechanicalVentilationViaaNewCuffedTracheostomyTube

Respir Care.2010;55:1661–70.

目的:Blom TracheostomyTubeの安全性、有効性、患者の耐用性、患者満足度、カフが完全に膨張したまま話せる新しいデバイスを調査すること方法:呼吸器管理中の10名の気切された患者に、Blom TracheostomyTubeを30分間使用し、ベースラインとの呼吸器設定、バイタルサインの変化、発声の成功率を評価する

10名中9名が会話を維持できた

1:不安のため発声はできたが3回目は中止4、10:発声を改善するための介入をした8、10:SpO2の低下あり(90%未満)

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新しいカフ付き気管切開チューブを用いた機械換気中の喉頭発声の第一報

PreliminaryReportofLaryngealPhonationDuringMechanicalVentilationViaaNewCuffedTracheostomyTube

Respir Care.2010;55:1661–70.

目的:Blom TracheostomyTubeの安全性、有効性、患者の耐用性、患者満足度、カフが完全に膨張したまま話せる新しいデバイスを調査すること方法:呼吸器管理中の10名の気切された患者に、Blom TracheostomyTubeを30分間使用し、ベースラインとの呼吸器設定、バイタルサインの変化、発声の成功率を評価する

10名中9名が会話を維持できた

1:不安のため発声はできたが3回目は中止4、10:発声を改善するための介入をした8、10:SpO2の低下あり(90%未満)

Ø 人工呼吸器装着中でもBlom TracheostomyTubeを使用して会話ができる可能性がある

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Results;電気式人工喉頭(EL)• バッテリー駆動の手で持てる装置で、頚部の皮膚に押し付け、振動した電子音を口咽頭腔に伝達し音声を生成する

• 7つの研究があり、全対象の72%が気切患者だった• すべての研究の気切患者で理解可能な音声が観察された

86%(n=19);Chest.1986;89:407–9.100%(n=8);AmJNurs.1975;75:2153–6.80%(n=5);JSpeechHearDisord.1973;38:335–8.100%(n=2);IntensiveCareMed.2015;41:547–8.79%(n=15);1974;2:152–4.

• 挿管された患者においても理解可能な音声が観察された50%(n=2);Crit CareMed.1974;2:152–4.46%(n=6);Intensive CareMed.2015;41:547–8.

• 困難さは使い始めのELの音声の理解の問題と、不自然な音質によるもので、装置を当てるのに支援が必要な場合もある

Page 27: 意識のある人工呼吸管理を受けている重症患者との コミュニケーション:システマティックレビュー · システマティックレビューにより、ICUで人工呼吸管理が行われた患

Theelectrolarynx improvescommunicationinaselectedgroupofmechanicallyventilatedcriticallyillpatients:afeasibilitystudy

IntensiveCareMed(2015)41:547–548電気式人工喉頭は人工呼吸器装着中の重症患者とのコミュニケーションを改善する

目的

人工呼吸器装着中の患者に対する電気式人工喉頭の使用の指針となるスコアリングシステムとプロトコールを開発すること方法ICUで覚醒し人工呼吸器装着中の15名の患者にELを使用Electrolarynx Effectivity Score(EES)で評価結果15名の患者のうち気管挿管13名、気切2名15名中6名(40%)がESS4〜5だった

Page 28: 意識のある人工呼吸管理を受けている重症患者との コミュニケーション:システマティックレビュー · システマティックレビューにより、ICUで人工呼吸管理が行われた患

Theelectrolarynx improvescommunicationinaselectedgroupofmechanicallyventilatedcriticallyillpatients:afeasibilitystudy

IntensiveCareMed(2015)41:547–548電気式人工喉頭は人工呼吸器装着中の重症患者とのコミュニケーションを改善する

目的

人工呼吸器装着中の患者に対する電気式人工喉頭の使用の指針となるスコアリングシステムとプロトコールを開発すること方法ICUで覚醒し人工呼吸器装着中の15名の患者にELを使用Electrolarynx Effectivity Score(EES)で評価結果15名の患者のうち気管挿管13名、気切2名15名中6名(40%)がESS4〜5だった

1.覚醒して、挿管または気切されている2.口唇、顎、舌を動かすことができる3.電気式人工喉頭の使い方を説明する4.適切な位置を見つける5.簡単な単語を患者と練習する6.文章を練習する7.看護師や家族と練習する

ESS4:効果的で、言葉を話すことができる5:非常に効果的で、文章を作れる

Ø 挿管された患者でも使用可能

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Results;ハイテクAAC装置• ハイテクAAC装置は9つの研究で用いられた• すべての電子AAC装置はメイン画面にICUにおける主要なコミュニケーションニーズ(緊急、痛み、感情など)に関するトピックスがあり、あらかじめ保存されたフレーズや絵が選択されると、音声合成によって音声化される

• VOCAsを使った2つの研究(Heart Lung.2004;33:92–101.、Oncol Nurs Forum.2005;32:1179–87.)

- 両方の研究ですべての患者が有効なメッセージを生成することができ、観察場面の74%および94%で複数のAACが用いられた(ジェスチャーやうなずき、筆記など)

Page 30: 意識のある人工呼吸管理を受けている重症患者との コミュニケーション:システマティックレビュー · システマティックレビューにより、ICUで人工呼吸管理が行われた患

Results;ハイテクAAC装置• ハイテクAAC装置は9つの研究で用いられた• すべての電子AAC装置はメイン画面にICUにおける主要なコミュニケーションニーズ(緊急、痛み、感情など)に関するトピックスがあり、あらかじめ保存されたフレーズや絵が選択されると、音声合成によって音声化される

• VOCAsを使った2つの研究(Heart Lung.2004;33:92–101.、Oncol Nurs Forum.2005;32:1179–87.)

- 両方の研究ですべての患者が有効なメッセージを生成することができ、観察場面の74%および94%で複数のAACが用いられた(ジェスチャーやうなずき、筆記など)

VOCAs 慈恵ICUにこんなのありました

Page 31: 意識のある人工呼吸管理を受けている重症患者との コミュニケーション:システマティックレビュー · システマティックレビューにより、ICUで人工呼吸管理が行われた患

Results;ハイテクAAC装置• ハイテクAAC装置は9つの研究で用いられた• すべての電子AAC装置はメイン画面にICUにおける主要なコミュニケーションニーズ(緊急、痛み、感情など)に関するトピックスがあり、あらかじめ保存されたフレーズや絵が選択されると、音声合成によって音声化される

• VOCAsを使った2つの研究(Heart Lung.2004;33:92–101.、Oncol Nurs Forum.2005;32:1179–87.)

- 両方の研究ですべての患者が有効なメッセージを生成することができ、観察場面の74%および94%で複数のAACが用いられた(ジェスチャーやうなずき、筆記など)

• 2つの研究は複数のAAC介入を調査し、異なる制御装置(タッチセンサー、目線、赤外線まばたきセンサーなど)は身体的な制限が装置の使用を妨げないことを証明した

(MinervaAnestesiol.2013;79:165–75.、Surgery.2016;159:938–44.)

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Results;アルゴリズム

患者の特徴とシステマティックレビューの結果を使用しアルゴリズムを構築した

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Results;アルゴリズム意識は十分か(RASS-3以上)

認知は十分か(CAM-ICU)

評価する- 聴力- 視力- 言語

機能を評価する

意識・認知が改善するまで基本的な支持療法を提供

微細運動は保たれている?

書ける? 粗大運動は保たれている?

口の動きは保たれている?

挿管されている?

気切されている?

喉頭の構造は保たれている?

カフを抜いても耐えられる?

痰は粘稠で多い?

有効性を評価し記録する(もし、効果的でなければ他のコミュニケーション方法を試す)

患者の特徴とシステマティックレビューの結果を使用しアルゴリズムを構築した

Page 34: 意識のある人工呼吸管理を受けている重症患者との コミュニケーション:システマティックレビュー · システマティックレビューにより、ICUで人工呼吸管理が行われた患

Discussion(1)

• クリティカルケアでの研究の関心は、ICU患者とのコミュニケーションの可能性を改善することに比較的低かった

• 4つの主要なコミュニケーション介入が明らかになり、それらを併用する戦略が推奨される

(コミュニケーションボード、スピーチバルブ、EL、ハイテクAAC)

これらの装置を通じたコミュニケーションの強化は、脆弱な患者の重度の情緒反応および医療決定に対する寄与を改善し、それによって幸福に大きな影響を与える可能性がある

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Discussion(2)

研究の強み

- 人工呼吸器装着中の患者とのコミュニケーション介入における最初のシステマティックレビューであること

- 強力な検索戦略とツールを用いた質の評価

研究の限界

- 質の評価が低〜中でRCTがなく、メタ解析を行うことができなかった

- 出版バイアス、言語バイアス、ホーソン効果が働く可能性

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Discussion(3)• コミュニケーションボード- 最も簡単な方法で効果的だが、複雑なニードを完全に理解することはできない

•カフ付きスピーキング気切チューブ- 潰瘍で瘻孔が形成されたという報告がある(Laryngoscope.1989;99:194–6.)- 近年開発されたBlom TracheostomyTubeは持続的な発声を実現できそうであるが、主要なコミュニケーション手段として使用できるか判断するにはより多くの研究が必要

•電気式人工喉頭(EL)- 扱いやすく簡潔な装置だと思われる- 有効性は主に気切患者で実証されたが、挿管患者でも有効な可能性がある

•ハイテクAAC装置- 物理的な制限が装置の使用を妨げない利点がある- しかし種類が多く、どのソフトウェアが最もよいかを判断することは難しい

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Discussion(4)コミュニケーション介入を行う体系的な方法がないことが非効率的なコミュニケーションを続けている原因になっている

→コミュニケーション介入のプロトコールがあると良い

① 簡単で疲れず、患者にもスタッフにも有益な方法② AACの引き出しを多く持つICU③ ケアする人のAACについての知識④ 成功した方法を記録して追跡できるようにしておく

話すことのできない重症患者の特定のニーズに合わせて調節することが重要で、今回開発したアルゴリズムは出発点である

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Discussion(5)

今後の課題

- 人工呼吸器装着中の患者にとって最も良いコミュニケーションの介入は明らかにされていない

- 多様なコミュニケーション手法の有効性を比較するだけでなく、より大規模な多施設共同研究が必要

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Conclusions• 4タイプの介入はすべてコミュニケーションを改善した• 様々な方法を組み合わせることで最も効果的なコミュニケーションの選択ができる可能性がある

• 各研究のエビデンスは低く、ほとんどの研究は比較できなかったため、結果は慎重に解釈されるべきである

• コミュニケーションツールの使用を制限する要因は、鎮静レベル、認知機能の低下、筋力である

• ICUにおける人工呼吸器装着中の患者とのコミュニケーション介入のための、実践と研究の指針となるアルゴリズムを開発した

Page 40: 意識のある人工呼吸管理を受けている重症患者との コミュニケーション:システマティックレビュー · システマティックレビューにより、ICUで人工呼吸管理が行われた患

私見

• 長期挿管が予測できる患者には、事前に患者と話し合ってコミュニケーション方法を検討しておくと良いのでは(術前訪問やICU見学など)

• 医療者の行いやすい方法ではなく、患者に合わせた方法を模索する姿勢が重要

• ICUのスタッフは病態生理も大切だが、コミュニケーションのトレーニングも必須だと感じた

• ELなど使えるAACの引き出しを増やしてみたいとりあえずコミュニケーションボードの改善から…。